Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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佐藤俊介
 ヨーロッパ在住のヴァイオリニスト佐藤俊介は、2013年より名門古楽アンサンブルのオランダ・バッハ協会のコンサートマスターを務めている。
 その彼が、長年に渡って音楽を監督を務めているヨス・ファン・フェルツホーフェンの後任として、2018年6月1日に同協会の音楽監督に就任することになった。
 2021/22年シーズンに創立100周年を迎えるオランダ・バッハ協会は、33歳の若き音楽監督(就任時)を迎えることになり、日本の若手演奏家が音楽監督に就任するのは異例のこととなる。
 佐藤俊介は1984年東京生まれ。2歳のときに才能教育教室でヴァイオリンを始め、4歳から父親の米国留学のために渡米。ニューヨーク、そしてパリで学び、国際コンクールでも好成績を残している。
 なかでも、2010年7月にライブツィヒで開催されたヨハン・セバスティアン・バッハ国際コンクールのヴァイオリン部門(バロックとモダン楽器奏者を合わせて審査)において銀賞と聴衆賞を受賞したことが記憶に新しい。
 その後、録音にも積極的に取り組み、近年では世界初のガット弦による「パガニーニ/24のカプリース」(ユニバーサル)をリリースしている。
 佐藤俊介はソロ、室内楽、オーケストラでの演奏と幅広く活躍しているが、オランダ・バッハ協会では何度も指揮も行っている。ただし、指揮者として前に立つ形ではなく、コンサートマスターとしてのポジションで弾き振りを行っているのである。
 バッハは、ヴァイオリニストまたはチェンバリストとしてオーケストラのメンバーたちをリードしながら指揮していたとされる。佐藤俊介は、まさにその形を引き継いでいるようだ。
 彼は「コンサートマスターとして、オランダ・バッハ協会で演奏をスタートした日から、物怖じせずのびのびと演奏できました。すばらしい音楽家が集まってひとつのチームとなっているオランダ・バッハ協会は、ヨス・ファン・フェルツホーフェンが35年間じっくりとプロに仕上げた名声ある楽団です。この理事会と同僚の楽員たちが私を選んでくれたことは、とても光栄で嬉しいです」と語っている。
 実は、もうかなり前の2008年2月、「朝日カルチャーセンター」の「グリーグを愛す」と題する講座で佐藤俊介とトークを行ったことがある。
 インタビューでは何度か話を聞いていたが、こうした対談形式は初めて。もちろん演奏も披露してもらった。
 当時もすばらしい才能の持ち主だと思ったが、あれからより成長し、いまや偉大なポジションを任されるまでになった。感慨ひとしきりである。
 佐藤俊介は6月にコンサートで帰国するため、そのときに久しぶりにインタビューをしたいと思っている。きっと自信に満ち、成熟した様子が見られるに違いない。演奏と話が楽しみである。
 今日の写真は、佐藤俊介のオフィシャル写真。(ⓒ Yat Ho Tsang)


 
| 情報・特急便 | 21:44 | - | -
菊池裕介
 ピアニストの菊池裕介は、一家言をもった人である。 
 昨日は、久しぶりに彼に会って話を聞いた。銀座のヤマハのアーティストサービスのスタジオで話を聞き、写真も撮った。



 今年は留学から帰国して10年という節目の年にあたり、年に2回のペースで豊田と東京でリサイタルを行う(5月7日、11月19日 音楽サロン A・PIACERE in 豊田)(5月10日、11月24日 東京文化会館小ホール)。
 題して「10年を刻む春と秋〜シューマンの名曲とともに〜」。春は「子どもの情景」「クライスレリアーナ」「謝肉祭」。秋は「アレグロ」「交響的練習曲」「トッカータ」「幻想曲」というオール・シューマン・プログラムである。
 そのプログラムに関して、シューマンの音楽とのつきあい、留学時代のこと、恩師の教え、ヨーロッパでの生活、そして帰国してから現在までの活動、教えることについて、自身の会社を作ったことなど、さまざまな面の質問を行い、それに対してことばを尽くして話してくれた。
 このインタビューは、ヤマハのWEB「ピアニスト・ラウンジ」と「ピアノの本」に書く予定である。
 菊池裕介は、いつもインタビュー後にブログの写真を撮る際、ユニークなポーズをとってくれる。以前もそうした写真を掲載したことがあるが、今回も3つもポーズをとってくれた。
 こういう写真は、他ではお目にかかれない。インタビューで気持ちがいい方向に働き、リラックスしてくれたからだろう。
 彼が一家言のある人だと感じるのは、話の端々に自分のいいたいことをしっかり主張してくるからである。
 ふつうは、「こういうことをいうと、誤解を招くかな」とか、「もっとオブラートに包んだいい方をした方がいいかな」と感じるところでも、率直な語り口で歯に衣着せぬ話し方をする。私にとっては、それがとても気持ちがいいと感じ、そこまで気を許して話してくれることに感謝する思いだ。
 そんな本音が素直に出るような文章を書きたいと思うし、菊池裕介というピアニストの人間性が音楽性にリアルに反映していることを記事にしたいと考えている。
 今日の写真は、彼のスリーポーズ。ねっ、なかなか見られないでしょう、こんな素顔。コマネチのポーズまで飛び出したもん(笑)。






 
 
 
 
 
| 情報・特急便 | 00:02 | - | -
ルーカス・ゲニューシャス
 1990年モスクワ生まれのピアニスト、ルーカス・ゲニューシャスの演奏は、2010年のショパン国際ピアノ・コンクールのときから聴いている。
 このコンクールでは第2位入賞を果たし、次いで2015年のチャイコフスキー国際コンクールでも、第2位を獲得した。
 先日、そのゲニューシャスに、また会うことができた。2014年のインタビュー以来のことである。
「ショパン・コンクールの入賞は、ぼくの人生に大きな変化をもたらした。一気にコンサートのオファーが増えたし、世界各地で演奏することが可能になったんだ。チャイコフスキー・コンクールの場合もコンサートの回数が増えたのは同じだけど、特にロシアでの演奏の機会が格段に増えた感じ」
 久しぶりに会うゲニューシャスは、堂々として自信に満ちていた。最近は、ストラヴィンスキーの作品の研究に時間を費やしているそうで、その作品論になったら、話が止まらない感じだった。
 彼は、5月4日〜6日まで東京国際フォーラムで開催される「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2017」への参加が決まっている。今回は、ショパンの「マズルカ集から」、ラヴェルの「ソナチネ」、ストラヴィンスキーの「兵士の物語」からタンゴ、ワルツ、ラグタイムを演奏する予定で、4日と5日の2回公演が組まれている。
「今年のテーマは“ラ・ダンス 舞曲の祭典”でしょう。だから、すごく作品を選ぶのが楽だったんだよ。だって、舞曲の要素が入っている作品が多いからね。弾きたい曲はたくさんあるし。でも、この3曲に絞った。特にストラヴィンスキーは聴きどころだよ。本当はもっと弾きたいんだ(笑)」
 これはあまり演奏される機会に恵まれない珍しい作品。要注目である。
 このインタビューは、「ぶらあぼ」と「intoxicate」に書く予定になっている。
 ゲニューシャスは、バロックから現代作品まで幅広いレパートリーの持ち主だが、現代の作曲家の作品を演奏することにも意欲を示しているとか。
 ショパン・コンクール入賞時から、はや7年目。世界を飛び回る超多忙なピアニストになった姿を目の当たりにし、「よかった、よかった」と心のなかでつぶやいた。
 このストラヴィンスキーは、やはり聴き逃せないなあ。でも、小さな会場だからすぐに売り切れてしまうかも。
 今日の写真は、インタビュー中の自信たっぷりなルーカス。ロシアのピアニストは、本当に若いころからこういう雰囲気を持ち合わせている人が多い。不思議よねえ、教育の賜物かしら…。 


 
| 情報・特急便 | 22:52 | - | -
ルネ・マルタン
 今年も、ラ・フォル・ジュルネの季節が巡ってきた(5月4日〜6日、東京国際フォーラム)。
 2017年のテーマは「LA DANCE ラ・ダンス 舞曲の祭典」。ルネサンスから今日までの、600年にわたる躍動感や爆発的なエネルギーを含む舞曲やダンス音楽が会場を彩ることになる。
 今日は、アーティスティック・ディレクターのルネ・マルタンにインタビューし、今年のテーマと内容、選曲、音楽家の人選などについて聞いた。
 彼はいつも内容に関しては熱く語ってくれるが、やはり舞曲をテーマにするのは長年の夢だったようだ。
 このインタビューは、3月号と4月号の「日経新聞」に書くことになっている。
 とりわけマルタンの口調がなめらかになったのが、初出演の人、珍しい楽器、バロック時代の作品に関して。
 私もバロック時代の作品は大好きなため、話が弾んだ。
 すでにラ・フォル・ジュルネの公式サイトでは概要が発表されているため、参考にしてほしいと思う。
 今年も3日間、フォーラムの各会場では熱き演奏が朝から晩まで繰り広げられ、人々の心も躍動するに違いない。
 今日の写真は、いつもながら情熱的な語りがとどまるところを知らないルネ・マルタン。彼は小さなオーディオ・グッズを目の前に置いて、作品の話になるとすぐに音楽をかける。それが延々と止まらなくなると、インタビュー時間はどんどん短くなってしまう。
 私も、音楽は聴きたいし、時間は気になるし、これが悩むところなんだよねえ。


 
 
| 情報・特急便 | 23:48 | - | -
第19回別府アルゲリッチ音楽祭
 今日は、第19回別府アルゲリッチ音楽祭の記者発表会が、銀座の大分県東京事務所県人会ホールで開催され、その後、同ビルのなかにある「坐来大分」で大分料理をいただきながらランチ交流会が行われた。
 第19回のテーマは、「小さな子どもだったあなたへ〜私たちの星で音楽を奏でる理由(わけ)」。
 このテーマに関しては、「大切なことは目に見えない」という「星の王子さま」の中で語られるメッセージとともに、人々にとり何が大切なのかを問い、穏やかに共生していける世界への願いを音楽に託したいと思います、と説明がなされている。
 今回の大きな特色のひとつとして、「現代に望み得る最高の2大巨匠による饗宴」と題する小澤征爾とアルゲリッチの初共演が挙げられる。これは同音楽祭と水戸室内管弦楽団共同制作によるもので、5月17日にiichiko総合文化センター・iichikoグランシアタで行われる。 
 ふたりの夢の共演とあって、すでに海外からもチケットの問い合わせが殺到しているそうだ。
 ふたつ目は、「出会いから始まる音楽祭オリジナル企画として」マラソン・コンサートが再開される。これはアルゲリッチをはじめ、ベテランから新人まで、幅広い音楽家がさまざまな組み合わせで演奏をつないでいくスタイル。5月20日にビーコンプラザ・フィルハーモニーホールで行われる。
 3つ目は、「ミッシャ・マイスキー しいきアルゲリッチハウス スペシャル・コンサートVol.3」。木のぬくもりに満ちた最高の音響を誇る150席の空間で、マイスキーとピアニストの娘、リリー・マイスキーがデュオを繰り広げる。これは5月8日に予定されている。
 この他、多彩な音楽家による興味深いコンサートが多数組まれており、5月6日から26日の間に、別府以外の都市でもコンサートが開かれることになっている。
 記者発表の最後には、海外に向けて大分県民出演の歓迎PR動画が流されたが、これはYoutubuで公開されている。
 実は、3月4日に同音楽祭の会場のひとつである、しいきアルゲリッチハウスで、講演を行うことになっている。テーマは「ピアノと室内楽の楽しみ」。じっくりと内容を吟味し、参加してくださった方たちに納得してもらえるような講演を行わなくてはならない。
 今日の写真は、記者発表会でプログラムを説明する音楽祭総合プロデューサーの伊藤京子(ピアニスト)。



 あとの2枚は、「坐来大分」のとびっきり美味なる大分料理。小皿に新鮮な海の幸や山の幸が詰め込まれ、目にも鮮やか。どのお料理もヘルシーで新鮮で、味付けもとてもからだにやさしいものだった。





 音楽祭関係者は、もう来年の第20回も視野に入れ、さまざまなアイデアを練っているそうだ。別府アルゲリッチ音楽祭には県外からの聴衆もかなり多く、みなさん大分県の温泉を堪能し、美食に舌鼓を打ち、そして音楽を全身に浴びてリフレッシュするという。
 クラシックを楽しむには、そうした土地の環境も大切なのだろうと考えさせられた。ああ、「日本一のおんせん県おおいた」の温泉に早く入りたいなあ(笑)。
 
| 情報・特急便 | 22:17 | - | -
エリソ・ヴィルサラーゼ
 ジョージア(グルジア)出身の名ピアニスト、エリソ・ヴィルサラーゼは、来日のたびにピアノ好きの心をとらえる演奏を披露し、深い感動を与える。
 私も毎回ソロやコンチェルトを聴くたびに、虚飾を排し、徹底的に作品を磨き抜いた自然かつ静かな情熱を秘めた演奏に、心をわしづかみにされるような強い衝撃を受ける。
 彼女は、インタビューなどで会うごとに、「あらあ、久しぶり。元気にしてる?」と素朴な笑顔を見せてくれ、再会を喜んでくれる。
 今日は、母校の東京音楽大学のレッスン室で会うことができた。ここでマスタークラスを行っているようで、その合間を縫ってのインタビューとなった。
 2017年は、ヴィルサラーゼの多面的な活動が日本で展開される。
 ひとつは、「ショスタコーヴィチ・マラソン」と題し、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全15曲を1日で演奏するという驚異的なプログラムを敢行し、話題となっているサンクト・ペテルブルク出身で、現在はベルリンを拠点に世界各地で活躍しているアトリウム弦楽四重奏団との共演(11月28日 紀尾井ホール)。
 プログラムは、モーツァルト、ショスタコーヴィチ、シューベルト、シューマンが組まれている。
 もうひとつは、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパンのコンチェルトをアレクサンダー・ルーディン指揮新日本フィルとの共演により、一夜で演奏するというプログラム(11月23日 すみだトリフォニーホール)。
 今日のインタビューは、これらのコンサートについて聞きながら、彼女の音楽論や教育論、恩師たちの思い出、各々の作品との出合いやエピソードなど多角的な話を聞いた。
 ヴィルサラーゼは、一本芯の通った凛とした人である。あまり笑わないが、目はとても優しくおだやかな光を放ち、真摯な語り口が人を惹きつける。
 私は会うたびに、演奏を聴くたびに、この自然体で思慮深く、人生をまっすぐに歩んでいる精神性の高さに触れ、「ああ、同時代に生きていてよかった」という気持ちにさせられる。
 ヴィルサラーゼは、恩師のゲンリフ・ネイガウスやヤコフ・ザークの偉功を受け継ぎ、それを体現し、さらに次世代へと受け渡す役割を担っているからである。そうしたピアニストのナマの演奏に触れることができるのは、本当に幸せである。
 今日のインタビューは、「ぶらあぼ」に書くとともに、各ホールのHPや刊行物にも綴ることになっている。
 写真は、1999年にリサイタルを行ったときの紀尾井ホールのプログラムをなつかしそうに見るヴィルサラーゼ。ちなみに、アトリウム弦楽四重奏団とは初共演ゆえ、とても楽しみにしているとのこと。それから、一夜に3曲のコンチェルトを弾くのはけっして大変なことではないが、それぞれの作品の曲想や解釈、表現を弾き分けるのはとても大変だと笑っていた。


 
 
 
| 情報・特急便 | 21:46 | - | -
音の旅人
 2月1日発売の「家庭画報」3月号から、「音の旅人」と題した辻井伸行の連載が始まった。
 毎月4〜5ページのカラー連載ゆえ、彼のコンサートに同行したり、インタビューをしたり、さまざまな取材をすることになっている。
 実は、この2月のフランス、スイス、ドイツ公演の密着レポートを行う予定だったが、諸般の事情から出張はキャンセルとなった。
 編集担当者のSさんとは、以前からページ構成についてさまざまな打ち合わせを行っているが、雑誌の連載の場合かなり先の号まで内容を決めていかないとならず、その準備に多くの時間を要する。
 でも、この連載は、辻井伸行をデビュー当時から取材し続けている私にとって、とても大きな意義をもつ。
 ぜひ、彼の活動の詳細を読者に伝え、ひとりでも多くの人がナマの演奏に触れたいと思ってもらえるよう、興味深い記事を書いていきたいと思う。
 さて、今後のページ構成はどうなるのだろうか。また、Sさんとじっくり打ち合わせをしなくては…。
 今日の写真は、連載第1回目のページの一部。辻井伸行をずっと撮り続けているカメラマンのHさんの写真が全ページを彩る。

| 情報・特急便 | 21:47 | - | -
寺下真理子
 ヴァイオリニストの寺下真理子には、デビュー・アルバムをリリースしたときにインタビューをしている。 
 今回は約2年ぶりに会い、第2弾のアルバム「ROMANCE」(キング 2月22日発売)に関して話を聞いた。この記事は次号の「intoxicate」に掲載される予定である。
 彼女は、以前こんなことをいっていた。
「人間はそれぞれ使命をもって生まれてくるのだと思います。各々の使命が輝き、どう生きるかが重要で、私自身はヴァイオリニストですから音楽で人の心を救いたい。そのために日々練習を重ねています。人は本来、夢をたくさん抱いているのに、それが年を重ねることにより、また他者との交流のなかで壊れていったり失われたりしてしまう。その夢をあきらめないで探求し続けてほしいし、私も音楽を通して自分の夢を実現したいと願っています」
 演奏は柔らかな音色と優しい歌心、ゆったりと心に染み込んでくる弦の音が特徴だが、素顔は凛とした、一本芯の通った性格。以前は一匹狼のようなところがあると話していたが、今回は、「仕事をしていると周囲の人たちとの協調性が大切だと思う」と大きな変化を見せていた。
 新譜は、恋、愛、ロマンスをテーマした楽曲を集めたもの。ブラームスやファリャ、ラフマニノフなどの名旋律が紡がれているが、最近はロシア作品に無性に惹かれているそうで、ストラヴィンスキーやショスタコーヴィチの音楽を演奏したくてたまらないとか。
 彼女と話していると、いつもいろんな方面に話題が広がっていき、音楽以外の話にも花が咲いてしまう。
 現在は、台湾や韓国でも人気があり、アジア地域も視野に入れて活動を展開しているそうだ。
 今日の写真は、インタビュー後のワンショット。近々、ロシア作品だけのコンサートやレコーディングも期待できるかもしれない。

| 情報・特急便 | 23:15 | - | -
ベルリン・フィル八重奏団
 ベルリン・フィルの室内楽アンサンブルとして、80年以上前に結成されたベルリン・フィル八重奏団は、メンバーを変えながら長年世界各地で演奏を展開してきた。
 現在のメンバーは、樫本大進(第1ヴァイオリン)、ロマーノ・トマシーニ(ルクセンブルク、第2ヴァイオリン)、アミハイ・グロス(イスラエル、ヴィオラ)、クリストフ・イゲルブリンク(ドイツ、チェロ)、エスコ・ライネ(スウェーデン、コントラバス)、ヴェンツェル・フックス(オーストリア、クラリネット)、シュテファン・ドール(ドイツ、ホルン)、モル・ビロン(イスラエル、ファゴット)の国際色豊かな8人。
 彼らは1月19日から31日まで、2014年1月以来2度めの日本ツアーを行い、ニールセンの「軽快なセレナード」、ドヴォルザーク(シェーファー編)の「5つのバガテル」、シューベルトの「八重奏曲」を演奏した。
 今回はこのアンサンブル結成のきっかけとなった、シューベルトの「八重奏曲」のレコーディングもあり、彼ら8人にインタビューを行った。
 31日には東京オペラシティコンサートホールで演奏を聴いたが、非常に緊密で一体感のあるアンサンブルをじっくりと聴かせた。
 翌日、サントリーホールの楽屋でインタビューは行われ、映像も同時に収録された。
 なにしろ相手は8人である。よく弦楽四重奏団のインタビューを行うと、全員に平均して話してもらうのに苦労を要するが、8人となると、もうこれはひとつの質問で次々に答えてもらうしかない。
 それでも、長く話す人とほんの短いコメントの人があり、答えはまちまち。しかし、シューベルトの作品に関しては、全員が作品に関し、自身の楽器が果たす役割に関し、いいたいことは山ほどあるという感じだった。
 それが終わるとすぐに、今回のレコーディングのプロデューサーであり、ベルリン・フィルの録音を数多く手掛けているクリストフ・フランケに話を聞くことになり、場所を移してインタビューを行った。
 このCDは、リリース予定が決まり次第、また情報を流したいと思う。
 アーティストもプロデューサーも、「納得いく仕上がり」と語っていたから、きっとすばらしく内容の濃い、各楽器が雄弁な音の対話を繰り広げる録音ができ上がるに違いない。
 今日の写真は、8人にインタビューしている写真。CDのジャケットなどデザインを担当するOさんからシェアしてもらった。もう1枚は、インタビューに答えるクリストフ・フランケ。 


| 情報・特急便 | 23:42 | - | -
ロジャー・フェデラー優勝!
 2週間、真夏のメルボルンで開催されたテニスの全豪オープンが、最終日を迎えた。
 今日は男子シングルスの決勝。ロジャー・フェデラーとラファエル・ナダルという、大会が始まったときにはだれも想像できないような好カードになった。
 ロジャーもラファもケガから復帰した大会であり、どこまで復調しているか、心配されていた。
 しかし、ふたを開けてみると、ふたりのテニスは以前のようなすばらしさに戻っていた。そしてなんと、決勝まで駆け上がったのである。
 もう今日は最初からハラハラドキドキの連続で、シーソーゲームのような展開。5セットまで進んだときは、ロジャーの右足が悲鳴を上げていた。
 でも、最後はフェデラーの執念がナダルのとてつもないフィジカルとメンタルの強さに勝ったようだ。
 ロジャー・フェデラーは18回目のグランドスラムのタイトルを手にし、涙に暮れた。世界中のフェデラー・ファンがこのときを待っていたのである。みんな一緒にうれし涙を流したのではないだろうか。
 私も長年待ち望んでいた瞬間で、フェデラーが17歳のときから応援しているが、こんなにうれしかった優勝はない。
 彼はまだまだできる、というところを示した。女子もセレナ・ウィリアムズが優勝し、ともに35歳である。
 今年のテニス界は、30代が活躍する年になるような予感がする。
 ロジャー、おめでとう!!
 最後まであきらめない姿勢に、勇気をもらいました。
 
 
| 情報・特急便 | 23:47 | - | -
アレクサンダー・クリッヒェル
 本日8時、「音楽を語ろうよ」のアレクサンダー・クリッヒェルの記事がアップされた。
 2016年は怒涛の1年だったため、なかなかHPの更新がままならず、かなり間が空いてしまった。
 今年最初のクリッヒェルの記事、ぜひ読んでくださいね。
 これからはあまり間を置かず、次の記事もアップしていきたいと思う。
| 情報・特急便 | 10:57 | - | -
辻井伸行
「家庭画報」の2017年3月号(2月1日発売)から1年間に渡り、辻井伸行の連載ページを担当することになった。
 ピアニストとして日々成長し、海外公演も多数行い、レコーディングも積極的にこなしている辻井伸行。それをカラーページで伝えていく。
 彼の場合、日本ツアーも常に完売で、昨日は「バッハ・モーツァルト・ベートーヴェン」の昨年12月からのツアーの中間地点での最終日だった。このツアーは、また3月に公演が組まれている。
 日本での活動と海外公演、そして作品に対する考えや自作品にまつわること、各地でのエピソードやプライヴェートライフまで、幅広く紹介していく連載記事になる予定だ。
 今回のツアーは、J.S.バッハの「イタリア協奏曲」、モーツァルトのピアノ・ソナタ第17番、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番「月光」、同第23番「熱情」というプログラム。
 バッハに関しては、初めて大きな作品をリサイタルで取り上げることになり、昨年のインタビューではそのきっかけや作品に対する思いなどを聞いた。
「イタリア協奏曲」は全3楽章の内容、構成、表現、解釈などが非常に異なる作品だが、辻井伸行は真摯にバッハと対峙し、内なるエネルギーを爆発させ、とりわけ終楽章では目の覚めるようなパッションとスピードと情熱を披露して会場を沸かせた。
 こうした演奏の醍醐味も、連載で伝えていきたいと思う。
 終演後、楽屋で話をしたときに、「つい先日、バッハを弾きたいんですといっていたのに、もう本番に登場するなんてすごいですよね。早くてビックリ」というと、「バッハはピアニストにとって本当に大切な作曲家ですので、一生懸命練習したんですよ。そんなに早いですか、そういってもらえるとうれしいなあ」と、にこやかな笑顔を見せていた。
 彼の演奏は、聴くたびに大きな成長を示している。それも階段を一気に駆け上がっていくような勢いで…。
 今日の写真は、演奏が終わってホッとした表情を見せる辻井伸行。辻井さん、これから1年間、密着取材しますからね〜。





  
| 情報・特急便 | 23:00 | - | -
ティボー・ガルシア
 ギター好き、スペイン好きの私が、最近ほとんど毎日聴いているCDがある。
 ギター界の新星、スペインの血を引く、フランス生まれのティボー・ガルシア22歳の録音である。
 ガルシアは21歳までに各地の国際コンクールを6度も受け、すべて優勝という快挙を成し遂げた。
 そして2015年、現在のギター・コンクールの最高峰と称されるアメリカのGFA国際ギター・コンクールで第1位を獲得し、これを機にカーネギー・ホールで演奏したり、録音を行ったり…。
 私が聴いているのは、エラート・レーベル専属契約の第1弾で、ラテン・ギターの伝説的作品をぎっしり詰め込んだ「レイエンダ〜伝説のギター」(ワーナー)。彼の演奏は、繊細かつ情熱的で、豊かな歌心が全編を覆っている。
 このアルバムにはアルベニス、ファリャ、ロドリーゴ、タレガというスペインの作曲家の有名な作品が選ばれ、ピアソラの曲も含まれていて、ガルシアがライナーノーツに綴っているように、彼の人生、旅、スペイン系のルーツを思い出させる選曲となっている。
 なかでも印象的なのは、スペインに生まれ、アルゼンチンで亡くなったアントニオ・ヒメネス・マンホーン(1866〜1919)の「バスクの歌」が収録されていること。ガルシアの得意とする曲のようで、コンクールでも演奏し、手の内に入った演奏となっている
 ふだんあまり耳にする機会のない曲だが、バスク地方特有のリズム、哀愁と情熱に彩られた旋律がまっすぐ心に響いてきて、深い感動をもたらす。
 近年、ギター界にはミロシュが登場し、みずみずしく鮮烈なギターで話題を呼んだが、またまた新たな才能が現れた。
 ティボー・ガルシアの切々と語りかけるタレガの「アルハンブラの思い出」の演奏は、私をグラナダへと一気にいざなってくれる。
 今日の写真は、そのジャケット写真。ぜひ来日してほしいと願う。ギターはナマの音で真価が明確になるから。


 
| 情報・特急便 | 21:21 | - | -
ごごラジ!
 プラシド・ドミンゴの9月のインタビューに関しては、これまで新聞、ラジオ、女性誌、音楽専門誌、一般誌、WEBなど、さまざまな媒体で紹介してきたが、2月27日(月)にNHKの「ごごラジ!」というラジオ番組に出演して、来日情報やドミンゴについて話すことになった。
 今日はその打ち合わせで、広尾のおそば屋さん「さ和長」に関係者が集まった。
 ここはプロモーションの責任者のHさんのお薦めのお店で、おそばはもちろん、お料理がとてもおいしい。
 番組の担当者のYさん、Iさんと私の4人で目いっぱい食べて飲んで、おしゃべりして…。
 あまり番組の打ち合わせをしなかったが、それは明日メールで詳細を送ってくれるとのこと。ナマ放送なので、しっかり準備していかなければならない。
 また、放送間際になったら、情報をお伝えしま〜す。
 最近、NHKのラジオ出演が続いている。
 今回はドミンゴの録音から2曲流すことになっているが、さて、何がいいだろうか。いまはバリトンに転向したからその声を聴いてもらいたいのだが、録音はまだない。やっぱり、テノールの名曲で、得意なオペラ・アリアがいいだろうな。じっくり考えようっと。
 
 
| 情報・特急便 | 21:56 | - | -
おんな城主 直虎
 今日から放送が開始されるNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」。
 この音楽を担当しているのは、「花は咲く」「ごちそうさん」などの作曲を手がけた菅野よう子。そのテーマ音楽の演奏は、ラン・ラン(ピアノ)、パーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団、そして大河ドラマ紀行は五嶋みどり(ヴァイオリン)である。
 昨年12月、「直虎」の試写会と合同記者会見があり、このとき、短時間ながらラン・ランとパーヴォ・ヤルヴィのふたりがそろってインタビューに応じてくれた。
 彼らはそれぞれこの音楽を担当するにあたって、菅野よう子からドラマの説明を受け、自分のなかでイメージをふくらませていったという。
 このインタビューは、次号の「CDジャーナル」に掲載される予定になっている。
 ラン・ランは、フランスの印象派のような音楽だと感じ、色彩感と生き生きとした前向きな曲想を大切にしたと語った。
 一方、パーヴォ・ヤルヴィは首席指揮者を務めているNHK交響楽団との一体化を目指し、事前に内容は聞いていたものの、録音では音楽に集中したという。
 彼らの演奏がこれから1年間、全50回のドラマのなかで流される。
 ラン・ランの単独インタビューは昨年9月に行われ、このときも新譜のほか、「直虎」に関しても語っている。
 このときのインタビューは、次号の「レコード芸術」に掲載されることになっている。
 今日の写真は、合同記者会見の後にインタビューに応じたラン・ランとマエストロ・ヤルヴィ。
 ラン・ランは「パーヴォはすばらしい指揮者。ソリストのもてるものを存分に発揮させてくれる。ぼくは音楽性も人間性も大好きで、愛しているんだよ」といえば、ヤルヴィも「私も同じですよ。ラン・ランには不可能はない。それを共演者にも伝えてくれ、私もなんでも可能だと思ってしまう」と語った。
 写真も相思相愛の雰囲気が出ているでしょ(笑)。
 ふたりは、「ドラマは内容に集中してしまうだろうけど、音楽にも耳を傾けてくれたらうれしい」といっていた。ぜひ、その気概を音楽から受け取ってほしい。



 なお、この演奏を収録したCDが1月11日にリリースされる(ソニー)。ここではさまざまなシーンに登場する音楽が20曲収録されている。


 
| 情報・特急便 | 18:46 | - | -
モーツァルトのCD
 今月は、各社の新年号が出そろう月である。
「家庭画報」の2017年新年号も発売され、例年のように華やかな表紙となっている。
 ここ数年、新年号のクラシック特集に携わってきたが、今回は付録のCD解説だけを担当している。
 モーツァルトの特集が組まれているため、CDもモーツァルトのアルバムで、オペラをメインに、ピアノ・ソナタ、協奏曲、声楽曲などを選曲した。
 こういう女性誌の付録のCD解説を書くときは、できる限り専門語を使わず、しかも内容がきちんと伝わるように書かなくてはならない。
 専門語を使える場合は、非常に表現が簡潔で文章も短くて済むため書きやすいが、専門語を使用せずにその内容を短いことばで端的に表すのは、至難の業である。
 私は独立したときに、10年以上にわたって「Hanako」の連載や特集記事を担当したため、ここでみっちり仕込まれた。
 タイトル、小見出しなどのキャッチの表現も、いまでは割に早く表現できるようになった。
 一般誌は本文のみならず、そうしたコピーライター的な文も要求されるため、最初はどうしたらいいかとまどったが、回数を重ねるごとに慣れ、いまでは直感的に、写真とレイアウトを見ると文が浮かんでくるようになった。
 なんでも、経験がものをいうのだろう。
 でも、どうしてもひとつの文が浮かんでこないこともあり、そういうときは時間ばかり経ち、心は焦るばかり。これもまた、経験上、しばらく他のことを考えたり、お茶を飲んだり、リラックスして気を紛らわせたりして再度挑戦する。
 今日の写真は、「家庭画報」の新年号の表紙と、付録のモーツァルトのCDの表紙。この解説文も、結構時間を要したっけ…。




 
 
| 情報・特急便 | 23:20 | - | -
リュカ・ドゥバルグ
 6月7日のブログにリュカ・ドゥバルグのことを綴り、「次回はぜひリサイタルを聴きたい」と書いたら、早くもそれが実現することになった。
 12月1日に浜離宮朝日ホールで来日公演が行われる予定である。
 リュカ・ドゥバルグは2015年のチャイコフスキー国際コンクールで入賞し、その自由で個性的なピアニズムが大きな話題となった逸材である。
 ギドン・クレーメルとの初来日の様子はブログに書いた通りだが、デビュー・アルバム「スカルラッティ・ショパン・リスト・ラヴェル」(ソニー)もとても興味深い演奏で、次なる録音が待たれていた。
 セカンド・アルバムは、「バッハ・ベートーヴェン・メトネル」。デビュー・アルバムでは、コンクールで大喝采を浴びたラヴェルの「夜のガスパール」が収録され、来日公演でもこの作品を披露した。
 そのラヴェルは、まさに自家薬籠中のものとなった演奏で、新たな才能に出会った喜びを感じさせてくれた。
 今回リリースされたセカンド・アルバムでも、コンクールでセンセーションを巻き起こしたメトネルのピアノ・ソナタ第1番を収録し、作品の真の魅力に肉薄する演奏を聴かせている。
 来日公演では、モーツァルト、シューベルト、シマノフスキ、プロコフィエフのピアノ・ソナタが組まれている。このリサイタルのプログラムに原稿を寄せ、リュカの魅力について綴った。
 今日の写真は、セカンド・アルバムのジャケット。手足が長く、スリムで、飄々とした雰囲気でステージに登場する。そしてピアノに向かうと、一気にからだのなかから音楽がほとばしり出る感じだ。
 クレーメルが才能にほれ込んだように、私も彼のピアノに強く惹かれている。


 
| 情報・特急便 | 22:11 | - | -
庄司紗矢香
 毎年、この時期になると、「東芝グランドコンサート」のソリストのインタビューが続く。プログラムに記事を書くためである。
 2017年のコンサートは、いまもっとも熱い視線を浴びている若手指揮者のひとり、クシシュトフ・ウルバンスキが指揮するNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団(ハンブルク北ドイツ放送交響楽団)。
 ソリストは先日インタビューしたアリス=紗良・オットと庄司紗矢香である。
 昨日は庄司紗矢香のインテビューがあり、六本木のホテルまで出かけた。
 今回、彼女が演奏するのはプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番。以前、このコンサートでは第2番の方を演奏したため、その作品についていろいろ聞いたが、今回は第1番についてさまざまな質問を投げかけた。
 庄司紗矢香は、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲を非常に得意としている。その作品との出合い、共演した指揮者から得たこと、第1番と第2番のコンチェルトの違い、第1番との思い出やエピソード、プロコフィエフについて、ロシアでの演奏についてなど、幅広いことを聞いた。
「東芝グランドコンサート2017」は、3月7日から15日まで、東京、仙台、名古屋、川崎、福岡、大阪の6公演が予定されている。
 庄司紗矢香はプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番、アリス=紗良・オットはベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を演奏する予定である。
 オーケストラのプログラムは、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」、R.シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」などが組まれている。
 庄司紗矢香と話すと、いつも絵が好きな彼女と、いろんな美術館のことや、パリで開催された美術展の話などに花が咲く。
 このインタビューは、来日公演のプログラム原稿が主たる媒体となるが、他にも情報誌やWEBなどにも書くことになっている。
 今日の写真は、いつもスリムな庄司紗矢香。実は、私は彼女のパンツ姿を初めて見たような気がしたため、それを話すと、「えーっ、私いつもパンツばかりですよ。スカートは年に2、3回 それも特別なときしかはきません」という。
「じゃ、私のインタビューのときは、特別なときなの? スカートやワンピース姿しか見たことないわよ」
「そうでしたっけ。じゃ、特別なときだわ(笑)」
 まあ、そうですか。光栄ですわ、スカートはいていただいて(笑)。
 ふだんはジーンズが多いと聞いて、びっくり。彼女にはコンクール優勝時の若いころから取材を続けているが、ジーンズのイメージはまったくない。
 この話題のときばかりは、ハスキーでささやくように話すいつもの声の調子が変わり、一気にテンションが上がった。
 庄司紗矢香のプロコフィエフ、非常に楽しみである。ウルバンスキとは、一度共演したことがあり、とても息が合うそうだ。


| 情報・特急便 | 22:50 | - | -
ゾルタン・コチシュ
 ハンガリーの指揮者・ピアニスト・作曲家のゾルタン・コチシュが11月6日、亡くなった。享年64。
 コチシュは2012年に心臓手術を受け、最近は体調を崩して、10月に予定されていたハンガリー国立フィル日本公演に同行することができず、心配されていた矢先の訃報である。
 コチシュは1952年5月30日、ブダペスト生まれ。バルトーク音楽院とリスト音楽院で学び、18歳のときにハンガリー国営放送が主催するベートーヴェン・ピアノ・コンクールで優勝して注目され、国際的な活動をスタートさせる。
 1975年に初来日。やがて指揮者としての活動も開始し、1983年、指揮者のイヴァン・フィッシャーとともにブダペスト祝祭管弦楽団を設立した。
 1997年、小林研一郎の後任としてハンガリー国立交響楽団の音楽監督に就任、名称をハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団に変更し、楽員の大幅な入れ替えを実施してレヴェル・アップを図り、国際的な活動を展開するようになる。
 コチシュには、以前インタビューを行ったが、そのときの様子はブログの2014年3月26日の「インタビュー・アーカイヴ」で紹介している。
 ぜひ、読んでほしいと思う。
 なお、ヤマハの「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」で、2014年の来日時のプログラムに寄せた文章を転載して追悼文に代えたいと思っている。
| 情報・特急便 | 22:38 | - | -
TOKYO FM
 年末のFM放送でプラシド・ドミンゴの特集が組まれ、番組に出演するため、放送局に出かけた。
 先日のロサンゼルスでのドミンゴのインタビューの話を含め、3時間番組で流す音源を選曲し、担当者3人と事前に打ち合わせを行い、いざ収録となった。
 これはTOKYO FMミュージックバードのTHE CLASSIC(クラシック専門チャンネル)
ウィークエンド・スペシャルで、「スーパースター、ドミンゴ来日!〜デビュー50周年&日本デビュー30周年記念」と題されている。
 放送は2016年12月18日(日)19:00〜22:00で、再放送は12月24日(土)12:00〜16:00。
 聞き手の田中美登里アナウンサーとともにマイクに向かい、音楽を流す間にもスタッフとこまかな打ち合わせを行い、収録を進めていった。
 このメンバーとは以前にも一緒に仕事をしたことがあるため、安心して番組に臨める。ただし、トチったり、言い直したりしないよう、終始気を引き締めながらの出演となった。
 曲は、ドミンゴの得意とするオペラ・アリアからスペインの民俗オペラであるサルスエラ、歌曲まで多彩なプログラムを組み、曲をかけている間は雑談をし、みんなで「いい声だよねえ」「いまも主役を張っている現役って、すごい」「この声、すごく若いときで、なつかしい感じ」などといいながら、和気あいあいの雰囲気のなかで時間が経過した。
 今日の写真は、スタッフの3人。左から渡邊未帆さん、田中美登里さん、篠崎めぐみさん。
 みなさん、お世話になりました。番組をひとりでも多くの人が聴いてくれることを願っています。


| 情報・特急便 | 23:56 | - | -
プラシド・ドミンゴ
 先日、ロサンゼルスに出張した件が、ようやく情報解禁になった。
 実は、来春のドミンゴのコンサートのために、インタビューに行ったのである。コンサート情報は下記の通り。

 Citigroup Japan Presents
 プラシド・ドミンゴ&ルネ・フレミング 
 プレミアム コンサート イン ジャパン2017
 2017年3月13日(月)19:30開演 東京国際フォーラムホールA
 入場料金 SS席43,000円 S席38,000円 A席30,000円 B席21,000円 C席14,000円 D席7,000円
 発売日 2016年12月10日(土)午前10時〜
 ユージン・コーン指揮 東京フィル「プラシド・ドミンゴ」特別編成オーケストラ
 曲目は決定次第発表となる。
 予約・問い合わせ チケットスペース 03-3234-9999
 チケットスペースオンライン 検索

 ドミンゴにインタビューをしたのは、9月18日。前日、彼は総監督を務めるロサンゼルス・オペラでヴェルディ「マクベス」の初日の主役をうたい、その夜は午前2時までパーティに参加した。
 私のインタビューは18日のお昼から。「きっと無理だよねえ」と取材班はみんなで懸念していたが、なんと、午後1時半すぎには元気にインタビュー会場に現れた。
 それから撮影を含め4時間以上、ドミンゴは私たちの要求に応え、ずっと笑顔で対応してくれたのである。
 このインタビューの様子は来日公演プログラム、雑誌、新聞、情報誌、WEBなどに書く予定になっている。
 ドミンゴにはこれまで何度もインタビューを行い、各地の3大テノールの会場でも取材を続けたが、いつもどんな質問に対しても的確な答えを戻してくれる。
 今回は、ルネ・フレミングとの共演、震災後の日本公演のこと、テノールからバリトンに転向したこと、今後の抱負まで、さまざまなことを聞いた。
 今日の写真は、プログラムの表紙用にと、スーツからタキシードに着替えてもらった直後の表情。右側に撮影用の準備が行われているため、ちょっと切り取った形の写真となってしまった。
 でも、元気そうでしょ。ご本人も、いまとても声の調子がいいといっていた。
 ぜひ、日本でのリサイタル30周年、唯一無二の輝けるデュオを聴いてくださいな。
「いつも日本の聴衆の前でうたうのは大いなる喜び。会場には特別な空気が流れ、魔法の時間を共有できるから。ルネとの一夜限りのコンサートでも、特別な空気が流れると思うよ」といっていた。



| 情報・特急便 | 22:54 | - | -
阪田知樹
 何度かインタビューをしてすっかり意気投合してしまった若手ピアニスト、阪田知樹が、フランツ・リスト国際ピアノ・コンクール(ブダペスト国際音楽コンクール)で優勝の栄冠に輝いた。
 同コンクールは1933年に始まった歴史あるもので、ハンガリーのブタペストで5年に1度開催されている。今年は偉大なピアニストであり、作曲家のフランツ・リストの没後130年を記念し、その名を冠している。
 なお、このコンクールでは、日本人男性ピアニストとして阪田知樹が初めての優勝者となった。
 このニュースを聞き、私は飛び上がらんばかりに喜んでしまった。
 阪田知樹は、2013年にアメリカで開催された第14回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールにおいて最年少入賞(当時、19歳)を果たしたことで、一躍広く知られるところとなり、以後、内外で活発な演奏活動を続けていた。
 その彼が次なるステップを目指してリスト・コンクールに挑戦し、見事結果を出したからである。
 2014年10月からはドイツのハノーファー音楽大学に留学し、名教授として知られるアリエ・ヴァルディに師事している。加えて、パウル・バドゥラ=スコダのもとでも学んでいる。
 そうした研鑽の日々が、今回の優勝となって実を結んだことになる。
 彼はよくメールを送ってくれるため、私もすぐに返事を出しているが、このニュースを聞き、早速お祝いのメールを送った。
 さて、次は日本でのコンサートが計画されるだろうから、それを楽しみに待ちたいと思う。
 今日の写真は、しばらく前の阪田知樹。若手アーティストは、ちょっと会わないとすぐに容姿が変化してしまう。成長著しく、どんどん風貌が変っていくのである。
 きっと、阪田知樹も次に会うときは、自信に満ちた表情をしているに違いない。リスト・コンクールの話を、ぜひ聞きたいと思っている。


 
| 情報・特急便 | 21:43 | - | -
マレイ・ペライア
 私が長年にわたって愛し続けているピアニストのひとり、マレイ・ペライアが、ドイツ・グラモフォンに移籍したというニュースが飛び込んできた。
 第1弾のアルバムは、J.S.バッハ「フランス組曲」で、10月26日リリース予定である。
 ペライアは、この契約に関して、こう語っている。
「ドイツ・グラモフォンとの契約で、私が心から愛している作品の録音が実現できるのを、楽しみにしています。録音は、同じ作品にもう一度新たに取り組む機会を与えてくれます――作品について改めて考え、新たな気持ちで感じとる――それを通じて、ピアノ作品の傑作を自分の成長のあらゆる段階で探求することができるのです。バッハ、ベートーヴェン、モーツァルト、ショパン、ブラームスなどの作品と新たに向き合うことは、私にとってまさに特別な体験です。永遠に枯れることのない豊かさをもつ作品は、常にインスピレーションの源泉なのです。今回ドイツ・グラモフォンと結んだすばらしい絆を通じて、世界中の音楽ファンに私の演奏をお届けできるようになるでしょう」
 そして、ドイツ・グラモフォン社長Dr.クレメンス・トラウトマンが、こう続ける。
「マレイ・ペライアと録音計画を推進できるのは、大いに喜ばしいことです。今後何10年先にも画期的な演奏として残る録音が、実現できると確信しています。音楽家としても人間としても、ペライアのすばらしい点のひとつは、彼が常に自分自身に挑戦し、最高の結果が出るまでけっしてあきらめないことです。ペライアの現在の演奏は、比類ないキャリアを開いた最初のころの新鮮さや説得力をまったく失っていません。そしてもちろん、長年にわたり幅広い経験と鍛練を積み重ねてきた現在、彼の主要作品の演奏には、アカデミックな面でもピアニスティックな面でも、長年にわたるみずからの経験と研究の成果がにじみ出ています。ペライアはドイツ・グラモフォンに所属するアーティストにとっても、音楽ファンにとっても、豊かなインスピレーションの源泉となることでしょう」
 ペライアは、指の故障でピアノが弾けない時期、バッハの作品を徹底的に研究し、楽譜を読み込み、ケガが癒えたら、バッハを演奏したいと願っていたと、以前のインタビューで語ってくれた。
 そしてケガから復帰したときには、バッハを演奏し、来日公演でも心に響く演奏を聴かせてくれた。
 ドイツ・グラモフォンの移籍第1弾は、やはりバッハが登場することになった。録音を聴くのがひたすら待ちどおしい。
 今日の写真は、契約時のにこやかなペライアと、社長のトラウトマンとのツーショット。写真 Carsten Windhorst / DG




 
| 情報・特急便 | 22:21 | - | -
フェデラーとワウリンカ欠場
 もうすぐリオ・オリンピックが始まる。
 私はテニスをとても楽しみにしていたが、スイスのふたり、ロジャー・フェデラーとスタン・ワウリンカはけがのために欠場となってしまった。
 フェデラーはひざの手術の経過がよくないらしく、今シーズンのすべての試合の欠場を表明、リハビリに励むことになった。
 ワウリンカも先ごろ、オリンピックに参加できないことを発表、これでスイスは大きな戦力を失ったことになる。
 フェデラーはワウリンカと組んで北京オリンピックのダブルスで金メダル、ロンドン・オリンピックはシングルスで銀メダルに輝いている。
 リオではシングルス、ワウリンカとのダブルス、マルティナ・ヒンギスとのミックス・ダブルスに出場する予定で、当初は大きな話題となったが、すべてがなくなってしまった。とても残念だ。
 オリンピックというのは、みんな自国の選手を応援するものだから、私のように他国の選手に注目しても、テレビ放映はかなわない。観ることができないから、結果だけを調べることになる。
 それにしてもサッカーの日本の最初の相手、ナイジェリアは、リオに到着したのだろうか。
 これからいろんなニュースが日々入ってくるに違いない。
 スポーツ観戦の大好きな私は、仕事をにらみつつ、いろんな競技を見たいと思っている。
 今日の段階では、まだ聖火の最終ランナーが発表されていない。サプライズがあるそうだが、いったいだれなのだろうか…。
| 情報・特急便 | 23:24 | - | -
チョン・キョンファ
 昨年1月、極寒のソウルに取材に行き、チョン・キョンファのインタビューを行ったが、先日彼女が来日して、新譜のインタビューに応じた。
 この新譜は、ソウルのときには「まだまだ演奏は先になると思うわ」と語っていた、J.S.バッハの「6つの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」(ワーナー 9月30日発売予定)。
 このライナーノーツも頼まれたため、レコード会社から事前に録音のニュースを聞いていたわけだが、その一報が届いたときは、「ついに録音したんだ!」と感慨深かった。
 インタビューでは、その録音にいたるまでの様子、録音時のこと、バッハの作品に関すること、各々の作品との出合い、どのように解釈と表現が変ってきたかなど、さまざまな角度から話を聞いた。インタビューは次号の「intoxicate」に書く予定である。
 キョンファは、とても雄弁だ。大声でガンガンまくしたてる。そのスピードとリズムに、演奏を重ね合わせることができる。
 ジョークやユーモア、ウイットに富んだことも交え、身振り手真似も豊かで、芝居をしているようだ。
 このバッハは、本人いわく、「大きな挑戦」とのことで、満を持してレコーディングに臨んだという。
 今後はロンドンやニューヨークで、このバッハの無伴奏を演奏する予定が入っていて、2017年には日本公演も考えているそうだ。
 彼女は、長い間、手の故障でヴァイオリンが弾けない時期を乗り越え、いまはじっくりマイペースで演奏活動を行っている。
「バッハと向き合うと、自分のことがよくわかるのよ」
 彼女はこういって、このときばかりは真摯な表情を見せた。まだ、音源は届いていないが、届き次第、ライナーノーツの執筆に取りかからなければならない。
 今日の写真は、インタビュー後のチョン・キョンファ。写真を撮っている間も、ずっと「よく撮ってね〜」といいながら、ケラケラ笑っていた。
 それにしても、とてつもなくエネルギッシュな人である。



 
| 情報・特急便 | 22:30 | - | -
中村紘子
 昨夜から今日に日付が変わるころ、音楽事務所からピアニスト中村紘子(本名:福田紘子)の訃報が送られてきた。7月26日午後(22時25分)、大腸がんのため自宅で逝去したとのことだった。享年72。
 彼女は2015年に大腸がんの診断を受けたことを公表し、治療しながら演奏活動を行ってきたが、最近は治療に専念するため、コンサートを休止していた。
 訃報が届いたときは信じられない思いでいっぱいとなり、しばらく何も手につかなくなった。
 思えば、中村紘子にはずいぶんインタビューや取材を行ってきた。ショパン・コンクールのときも、現地で審査員としての感想を聞いたり、プラハでも取材を行った。自宅でのパーティにも招いていただき、ずいぶん前のことになるが、ご主人の庄司薫氏とともに食事に出かけたこともある。
 そんなさまざまな思い出が走馬灯のように脳裏に蘇り、完全に脳が覚醒し、眠れなくなってしまった。
 今朝は、9時過ぎから次々に新聞や雑誌の担当者から追悼文の依頼が入り、週明けまでに原稿を入稿することになった。
 今日は、もっとも最近のインタビューを「インタビュー・アーカイヴ」第71回として紹介したいと思う。

[レコード芸術 2014年10月号]

“あるがままの現在(いま)”を写しとる デビュー55周年記念アルバム

 日本を代表するピアニストのひとりとして、長年第一線で活躍を続けている中村紘子がデビュー55周年を迎え、記念アルバムを作り上げた(DREAMUSIC)。プログラムはモーツァルトのピアノ協奏曲第24番&第26番「戴冠式」と、ショパンのマズルカ集という組み合わせ。モーツァルトは山田和樹指揮横浜シンフォニエッタとの共演である。

山田和樹との出会い

 開口一番、「55周年とは早いものですね」という問いかけに対し、彼女らしいウイットとユーモアに富んだひとことが戻ってきた。
「私ね、1歳でデビューしたものですから(笑)」
 今回のアルバムは、昔から好きだったという作品を選んでいる。
「私とモーツァルトは、ちょっとミスマッチのような感じがするといわれ、モーツァルトのコンチェルトはこれまで圏外にあるような作品だったんです。でも、あるコンサートですばらしい指揮者と巡り会い、この人との共演ならとひらめいたわけです」
 2014年2月17日、中村紘子は山田和樹指揮横浜シンフォニエッタとともにベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を演奏した。そのときに初めて山田和樹に出会ったわけだが、そのコンサートの成功が今回の録音における共演へとつながった。
「山田さんは音楽的素養がすばらしく、人柄も誠実で人徳を備え、とてもさわやか。一緒に演奏して、一度でその音楽性と人間性に魅せられてしまったの」
 この共演話はすぐに決まったが、山田和樹がスイス・ロマンド管弦楽団との来日時だったため、2日間しか空き時間がない。そこでオーケストラのリハーサルとピアノの準備、マイクセッティングなどに1日を当て、コンチェルト収録はたった1日で行った。
「山田さんは横浜シンフォニエッタと入念なリハーサルを行ったのですが、このオーケストラは実力派ぞろいゆえ、どんどん音楽がよくなっていき、最後はすばらしい演奏を聴かせてくれました。もちろん私も短時間に集中して取り組みました」
 山田和樹に絶対的な信頼を置き、彼にすべて任せたと明言する中村紘子。これまでは、結構こまかいことまで気にしたが、今回は「なるようになる」という精神で臨んだ。
「うまくいくことも、そうでないことも、録音の現場ではいろいろなことが起こります。以前は、それを気にしていましたが、最近はいいじゃないか、これもひとつの運命と、こまかなことにこだわらなくなったの。年齢と経験のなせるワザかしらね(笑)」

新垣隆作曲のカデンツァ

 今回のピアノ協奏曲第26番第1楽章のカデンツァは、新垣隆が担当している。
「新垣さんも短時間で仕上げてくれました。でも、できあがった譜面を見ると、彼の人柄がよく表れているようなとても控えめなカデンツァでした。スケールの大きさなどがなくこぢんまりとした感じで、音域の幅も小さかったので、もうちょっと華やかにしてくださいとお願いしました」
 その結果、ごく自然な形でカデンツァに入っていくことができる作品に仕上がり、納得のいく演奏ができた。
「カデンツァというのは、ソリストのすべてを大公開して見せるところ、デモンストレーションのようなものなんですね。華やかさもあり、奏者の知識も盛り込まれます。私はこれまでブラームスやパウル・バドゥーラ=スコダをはじめ、いろんな人が作ったカデンツァを見ていますが、本当に多種多様。今回の新垣さんの作曲によるカデンツァは、オーソドックスで知的な感じです」

ワルシャワで勉強したショパン《マズルカ》

 一方、ショパンの《マズルカ》に関しては、さまざまな思い出がある。マズルカは非常に数多いが、今回選んだ第18番ハ短調作品30―1には、とりわけ深い思い出が刻まれている。
「このマズルカは、私がショパンにのめりこむきっかけとなった作品で、ポーランドに留学する機会を与えられたともいうべきものなのです。私が16、17歳のころ、1955年のショパン国際ピアノ・コンクールで優勝したアダム・ハラシェヴィチが初来日し、演奏会を開いたんです。オール・ショパン・プロで、演奏は流麗で伝統的なスタイルでした。なかでもマズルカのハ短調作品30―1がすばらしく、心に深く響いてきたんです。とても率直なショパンで、聴き手の心に飛び込んでくるようなところがあったのです」
 そこで、中村紘子はハラシェヴィチに会い、「あなたに弟子入りしたい」と申し出る。すると彼は「自分は教える仕事はしていないので、代わりに私の先生を紹介してあげよう」といって、ポーランドのピアニストであり、最高のピアノ教師として知られるズビグニェフ・ジェヴィエツキを紹介してくれた。
「当時、私はジュリアード音楽院で学んでいたのですが、夏休みの3カ月を利用してワルシャワに勉強に行きました。そのころ、ポーランドは食べ物にも事欠くような状態で、治安もよくなく、ジェヴィエツキ先生はとても心配してくれ、あらゆる面倒をことこまかに見てくれました。私はとても尊敬していますし、感謝もしています。当時のワルシャワで学んだショパンの音楽というものは、私にとって忘れられないものとなりました」
 その後、1965年、21歳のときにショパン国際ピアノ・コンクールを受けて入賞とともに最年少者賞も受賞するわけだが、このときに弾いた《マズルカ》は、第20番変ニ長調作品30―3と第21番嬰ハ短調作品30―4。この2曲も今回収録している。
「これらの《マズルカ》は、ワルシャワで勉強した作品です。2曲とも大好きな曲で、ショパンらしさが現れていると思います。今回、モーツァルトのピアノ協奏曲と一緒にレコーディングするのなら、ショパンの《マズルカ》しかないと思ったのです。でも、ショパンの《マズルカ》というのは、大きなステージで聴衆を相手に演奏するには少しためらいがあったのも事実。というのは、《マズルカ》はショパンの心情がもっとも素直に現れ、ショパンのエッセンスが凝縮している作品。もちろん家では好んで弾いていますが、これまであまりステージでは弾いていません。今回は、それをさまざまな思い出を掘り起こしながら録音しました」
 実は、《マズルカ》第20番変ニ長調作品30―3は大好きな作品なのだが、ショパン国際ピアノ・コンクール後、ウラディーミル・ホロヴィッツの演奏を聴いてあまりのすばらしさに衝撃を受け、以来あまり自身では演奏しなくなったのだという。それを今回、ようやく封印を解いて録音した。

55年という歳月が刻まれたアルバム

 中村紘子がこうしたショパンの舞曲の要素が盛り込まれた作品に強く惹かれるのは、もちろんワルシャワで学んだことも大きな理由だが、もうひとつ、10歳のころに師事したポーランド出身のレオニード・コハンスキの影響も考えられる。
「コハンスキ先生のレッスンで一番覚えているのは、ショパンの《ワルツ》や《マズルカ》を私と一緒に踊ってくれたことです。私はまだ子どもでしたから、大きなからだの先生が私を抱えるようにしてワルツやマズルカのリズムを踊って示してくれたのは、貴重な経験となりました。いまなお、私がこうした舞曲に根差した音楽を抵抗なく楽しんでいられるのは、先生の教えのおかげです」
 こうした多くの記憶が鮮明に刻まれた今回の録音。次はぜひ、ショパンの《マズルカ》全曲録音を、という声も聞かれる。55周年という年月には、さまざまな人との出会い、各地で演奏した経験、そしてそれにまつわる作品との思い出などあらゆるものが詰まっている。それらすべてが演奏に投影され、聴きごたえ十分のディスクが出来上がった。
「モーツァルトとショパンのエッセンス、それを聴き取ってほしいですね」 

 こう語っていた中村紘子。残念ながら《マズルカ》の全曲録音は、かなわぬ夢となってしまった。このインタビュー後も、何度か彼女に会う機会があり、病気の公表後も前向きに明るく話していた。
 これから機会を見て、これまでの取材記事を徐々に紹介していきたいと思う。
 今日の写真は、その雑誌の一部。謹んでご冥福をお祈りいたします。




 
 
| 情報・特急便 | 23:27 | - | -
ダニール・トリフォノフ
 本日、「音楽を語ろうよ」のコンテンツにダニール・トリフォノフの記事をアップしました。ぜひ、寄ってくださいね。
 彼はいまもっとも勢いのある若手ピアニストといわれ、世界中から演奏のオファーが絶えない。
 2010年のショパン・コンクールから聴き続けているが、一気に天空に飛翔していくような凄みを見せ、著名な指揮者や器楽奏者からも共演依頼が殺到している。
 素顔は、知的で思索的で完璧主義者の様相を呈しているが、ジョークも忘れない。
 とてもおしゃれで、インタビューの撮影が終わるとすぐに革ジャンをはおり、ラフないでたちに変身。
 実は、私も革ジャンが大好きで、とくにイタリアやスペイン製のジャケットを愛用しているが、トリフォノフが来ていた柔らかなラムスキンのカッコいい黒の革ジャンにひと目ぼれ。
「あらあ、ステキ。こんな皮ジャンがほしい」
 と、まじまじと見てしまった(笑)。彼は、私があまりジャケットばかり見ているので、不思議そうな顔をしていたけど…。
 トリフォノフは来日ごとに大きく成長した演奏を聴かせてくれる。次回の来日も待ち遠しい。
 今日の写真は、スマホではなく、きちんとカメラで撮った1枚。HPの「音楽を語ろうよ」の方には別の写真を載せたので、ブログではこちらを紹介。
 凛としたいい表情に撮れているでしょう、いかがでしょうか。


| 情報・特急便 | 11:17 | - | -
中村芙悠子
 新人のデビューには、ひと目見てその人の特徴がわかるキャッチが必要となる。
 ビクターからデビューするピアニスト、中村芙悠子のキャッチは、「女神すぎる癒し系ピアニスト」
 彼女は8月24日に「ピアノ愛奏曲集」と題したCDでデビューを飾り、9月24日(土)には東京文化会館小ホールでピアノ・リサイタルを行う予定だ。
 デビューCDに収録された曲は、ドビュッシーの「ベルガマスク組曲」やラヴェルの「水の戯れ」、シベリウスの「樹木の組曲」、バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」など。リサイタルでは、ハイドンのピアノ・ソナタ ハ長調、シューマンの「花の曲」「謝肉祭」他が組まれている。
 先日、「CDジャーナル」のインタビューのため、レコード会社に出向いて話を聞いた。
 実は、中村芙悠子はミス日本コンテスト2016では約1500人のなかから東日本大会(26人)に進出した美貌の持ち主。
「でも、最終選考には残りませんでしたが、とてもいい経験になりました。ステージの上で自分をどう表現するか、それを学んだ気がします」
 目の大きな美女だが、音楽の話をし出すと、目いっぱい表情を変えながら雄弁に語る。
 作品が内包する物語性をとらえ、自分なりのイメージを描いて曲を仕上げていくという。
 2カ月前からベルリンに留学し、「いまは見るもの、聴くものがすべて新鮮で、楽しくてたまらない」そうだ。
 できる限り長くドイツにとどまりたいと意欲を示し、自分を一から磨き直したいと真摯な一面をのぞかせる。
 これまでハノイ国際ピアノコンクール第2位、東京音楽コンクール第3位という入賞歴があるが、今後も大きな国際コンクールに挑戦したいという。
 今日の写真は、ビクターのシンボルマーク「ニッパー」の絵を自身が描いたホワイトボードの前で。
「下手なんですけど、絵を描くの大好きなんですよ」
 ぜひ、ドイツでさまざまな経験をし、表現力豊かなピアニストに成長してほしい。


  
| 情報・特急便 | 23:32 | - | -
マキシミリアン・ホルヌング
 前回からだいぶ時間が空いてしまったが、本日、「音楽を語ろうよ」のマキシミリアン・ホルヌングの記事をアップした。
 とても才能のある人なので、今後が楽しみである。
 ぜひ、記事を読んでくださいね。
 ホルヌングは以前ブログにも書いたが、とてもフランクな性格で、私がインタビューを終えて電車に乗ったら、すぐあとにチェロをヒョイとかついで同じ電車に乗ってきた。
「ハーイ、さっきはありがとう」
 こういいながら、電車の奥にズンズンと歩いていった。
 なんだか、もう長年にわたり東京に住んでいるような、この町に慣れているような感じで、その気楽で自然な態度にクスリと笑ってしまった。
 チェロの好きな方、注目株ですよ。
 
 
| 情報・特急便 | 21:27 | - | -
浜田理恵
 フランス在住のソプラノ、浜田理恵は、長年フランスを中心に数多くのオペラに出演し、日本では後進の指導も行っている。
 彼女が、親しい作曲&ピアノの三ツ石潤司と組んで、新たな試みに挑戦することになった。
 先日、フランスから一時帰国している浜田理恵にその話を聞くことができた。
「言葉は歌い、音楽は語る」(9月22日16:00東京文化会館小ホール)と題されたオリジナルの舞台で、ジングシュピールがもっとも近い形だという。テキストはルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」をもとに、英語が用いられ、日本語で小品のつなぎを補っていく。
 共演者もいて、舞台衣裳もオリジナルの物が制作され、いまや徐々に形と構成が見えてきた段階だという。
 これまで長年オペラの世界に身を置き、既存の作品を表現してきたが、三ツ石潤司と何か新しいことをしたいということで意見が一致、三ツ石潤司・音楽遊戯「アリスの国の不思議」(新作初演)の運びとなった。
 このインタビューは、ヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に書く予定である。
 そこでは詳しい内容をお伝えします。彼女の意欲的な語りを再現しながら…。
 今日の写真は、インタビュー中の浜田理恵。ずっとフランスで活動を展開している彼女の話はとても興味深く、最近のオペラ界のことから、フランスの経済事情、今年のバカンスの過ごし方まで、幅広い内容を聞くことができた。
 今年の夏休みは、家族とローマで過ごすそうだ。ああ、真夏のローマは酷暑なのに…。余計なお世話か(笑)。




| 情報・特急便 | 22:55 | - | -
フジコ・ヘミング
 フジコ・ヘミング「たどりつく力」(幻冬舎)の出版を記念し、フジコさんの演奏や語りなどが紹介される番組が放映されることになった。
 NHK「おはよう日本」の6月8日(水)朝7時10分くらいからの放送で、時間は少し流動性があるという。
 私はビデオをセットすることにした。
 これからいろんな書評や書籍紹介記事などが出てくるだろうが、いま書店では新刊書のところに平積みされているところが多く、小さなサイズの本でありながら、かなり存在感がある感じだ。
 本はもうひとり歩きを始めている。
 6月24日にはすみだトリフォニーホールにリサイタルを聴きにいくことになっているため、そのときに彼女に会えるのが楽しみである。
 さて、どんな番組が放映されるのだろうか。
 朝早いですが、ぜひ見てくださいね。夜型の人は、私のようにビデオセットをお忘れなく(笑)。
 今日の写真は、昨秋のインタビュー時に撮ったもの。そのときのブログにはタバコをくゆらしている、リラックスした1枚を掲載したが、これは真剣な表情で話しているときのワンショット。

| 情報・特急便 | 12:51 | - | -
広瀬悦子
 パリで学び、1999年マルタ・アルゲリッチ国際コンクールで優勝の栄冠に輝いたピアニストの広瀬悦子が、あこがれの存在だというシプリアン・カツァリスと組んでピアノ・デュオ・リサイタルを開くことになった(12月1日、かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール)。
 プログラムはチャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」より、ストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」(世界初演)、ベートーヴェンの交響曲第5番より第1楽章(広瀬)、同交響曲第7番より第2楽章(カツァリス)、同交響曲第9番より第4楽章(2台ピアノ)他が組まれている。
 この「火の鳥」はギリシャ系の作曲家に編曲を依頼した作品で、すでにカツァリスと広瀬悦子はパリで録音を行っている。
 その録音の話を中心に、今日は「CDジャーナル」のインタビューを行った。
 カツァリスとは、私が「ショパン」にいたころからのお付き合いで、パリの自宅まで取材に訪れたことがあり、「Hanako」のクラシックの連載を書いていた時代に、この雑誌の特別イヴェントで彼を招待し、演奏してもらったこともある。
 このときは、1日だけの演奏のためにパリから飛んできてくれ、成田から練習場に直行、練習魔、完璧主義者の一面を見せ、「Hanako」の関係者を驚かせたものだ。
 そんな完璧主義者のカツァリスとの録音は大変だったそうで、広瀬悦子は6日間におよび、全神経を集中させ、「ボロボロになりました」と、苦笑していた。
「でも、あらゆる面でものすごく勉強になり、すばらしい経験でした」と、初共演を述懐していた。 
 なお、カツァリスは10月に来日し、10月14日に浜離宮朝日ホールでリサイタルを行う。
 彼のプログラムへのこだわりは相当なものだが、今回もよく知られた作品からあまり演奏される機会に恵まれない作品まで多岐に渡っている。
 このときに、今度はカツァリスに会い、ピアノ・デュオの話を聞くことになっている。
 もうひとつ、12月7日には東京オペラシティコンサートホールで11時30分からの「ポーズ・デジュネ(フランス語で昼休憩)」と題された約60分のコンサートが組まれ、ここではカツァリスと広瀬悦子がチャイコフスキーの「白鳥の湖」、「くるみ割り人形」から何曲か演奏する。
 広瀬悦子は、もうパリに住んで15年になるという。とても暮らしやすいと感じていて、仲間とさまざまな室内楽を楽しんでいるようだ。
 来月は、エカテリンブルクでドミトリー・リス指揮ウラル・フィルとチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番をライヴ収録するそうで、カツァリスとの録音が終わってホッとするのもつかの間、いまはそちらに気持ちが向いているようだ。
 彼女には長年に渡って話を聞いているが、演奏同様、性格も主張が明確で芯の強さを感じさせるようになってきた。
 やはり、海外で活動している人は強くなっていくのだと実感。そうでないと、生き残れない世界だから。
 この「火の鳥」のほんの一部を聴かせてもらったが、まさにふたりの火花が散るようなエキサイティングな演奏。これから音源の編集に入るそうで、これまた大変だと彼女は笑っていた。
 今日の写真は、スリムながらたくましさを身に付けた雰囲気の広瀬悦子。どんな難題もバシッ、バシッと切り抜けていくんだろうな。あやかりたいものだワ(笑)。


 
| 情報・特急便 | 22:51 | - | -
バッハを愛す
 長年、連載を続けているヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」で、「バッハを愛す」というシリーズを始めた。
 バッハにまつわるさまざまな話題を毎週綴っていくもので、すでに5回の原稿を入稿している。
 HPの全コンテンツの左下にバナーが設けられているため、そこからアクセスできる。ぜひ、読んでくださいな。
 このサイトの記事は、2010年8月から書き始めた。すでに6年目を迎えることになる。
 基本的には、ウィークリーで記事を入稿する。何を書くか、どんな内容にするかなど、すべて書き手に委ねられているため、本当に自由なサイトである。
 できる限りニュース性をもたせたいと思っているが、ときには長いものも書きたくなるため、今回はJ.S.バッハにフォーカスした。
 以前は、アーティストのインタビューを何度かに分けて書く、「アーティストの本音トーク」を続けたこともある。
 通常のインタビューは1時間だが、雑誌や新聞の記事はスペースが限られているため、たくさんの有意義な内容を聞いても、ほとんど捨てることになってしまう。
 これに常々、頭を悩ませていた。
 もっと長く書けるスペースがないだろうか、せっかく興味深いことを聞いたのにお蔵入りになってしまうとは、なんともったいないことかと。
 WEBの記事の場合、文字数はかなり自由である。長い記事を綴っても大丈夫だから、制限なしに思いっきり書くことができる。
 というメリットを生かし、「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」では、視野を広げてあらゆる内容を綴ってきた。
 今後も、短期間のシリーズものや、連載ものを考えていきたいと思う。
 「バッハを愛す」は、まだまだ続きますよ。お楽しみに〜。
 今日の写真は、アイゼナハのバッハ博物館の前に立つバッハ像。


 
| 情報・特急便 | 22:57 | - | -
フランチェスコ・トリスターノ
 ピアニストのフランチェスコ・トリスターノは、超のつく親日家である。
 初来日のときからディープな日本を体験し、すっかり日本びいきになった。驚いたのは、武蔵小山の銭湯にいったという話。
 ちょっと私の口からはいえないが、銭湯に関してとてもユニークな発言をたくさんしていた。
 彼のモットーは、演奏を楽しむこと。ただひたすら部屋にこもって練習するのではなく、外に飛び出していろんな人とコラボレーションするのが好きだという。
「ぼくがピアノを弾くのは、指が求めているから。さまざまな語学を学んでいるのは、人々とコミュニケーションしたいから。よく音と音の間(ま)が絶妙だといわれてうれしいと感じているけど、これは休符も音楽だと思っているから。ぼくは内声に深く入り込んでいく音楽が好きなんだ。表面的な演奏ではなく、味わい深い音楽が表現できるピアニストになりたい。それが聴いてくれる人たちひとりひとりの心のなかに沁み込んでいくと信じているから」
 そんなフランチェスコのアーティストレシピを考えてみた。
 今日のアップ記事、ぜひ見てくださいね。
| 情報・特急便 | 22:18 | - | -
カラヴァッジョ展
 3月1日から6月12日まで、上野の国立西洋美術館で開催されているカラヴァッジョ展。
 いこういこうと思っていたが、なかなか時間がとれず、ようやく足を運ぶことができた。
 今回は代表作が複数展示されているが、なかでも大きな話題となっているのは、「法悦のマグダラのマリア」の世界初公開。すばらしい作品で、近くで見ると、ものすごくリアリティに富んでいる。
 ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(1571〜1610)は、イタリアを代表する画家で真の天才と称されるが、数奇な運命をたどり、殺人を犯したために各地を転々とし、38歳で非業の死を遂げた。
 そのカラヴァッジョが、死の直前まで手放さなかった作品が「法悦のマグダラのマリア」だといわれている。
 悔悛の表情を浮かべるマリアの頬には涙の粒が見られるが、その描き方のすばらしさに、呆然と見入ってしまう。
 ほかにも、「エマオの晩餐」「メドゥーサ」「バッカス」「トカゲに噛まれた少年」「ナルキッソス」「エッケ・ホモ」「女占い師」など、カラヴァッジョの天才性を示す作品が多数見られ、時間を忘れる。
 実は、私は昔からカラヴァッジョに魅せられ、多数の書物を読破し、海外でもいくつかカラヴァッジョの作品と出会っている。
 とりわけ印象深かったのは、エルミタージュ美術館の「リュートを弾く若者」。カラヴァッジョは肌の描き方に特徴があるといわれるが、この絵も特有の肌の輝きを放っていた。
 ちなみに、エルミタージュでは、レンブラントの「放蕩息子の帰還」も強い印象を受けた。
 本当は、カラヴァッジョが逃避行したマルタのヴァレッタにあるサン・ジョヴァンニ大聖堂の「洗礼者ヨハネの斬首」を見にいきたいのだが、マルタはやはり遠すぎて、いけそうもない。
 一生に一度はいってみたい、そんなあこがれの島なのだが…。
 やはり、カラヴァッジョの絵は、圧倒的な存在感と説得力と強靭なエネルギーに満ちていた。
 今日の写真は、美術館の前にあるカラヴァッジョ展の看板。もう展示も終わりに近いため非常に混雑しているが、夜8時まで開いている日を選べば、比較的ゆっくり鑑賞できる。

| 情報・特急便 | 22:13 | - | -
家庭画報6月号
 創刊700号記念の「家庭画報」6月号が発売となった。
 先日もブログに書いたが、今回は「音楽の殿堂《サントリーホール》30年の軌跡」の特集ページの取材と記事、特別付録の「祝祭」のベスト・オブ・クラシックCDの選曲と解説を担当している。
 この雑誌はいずれのページも写真がとても美しく、サントリーホールの写真も非常にゴージャスな感じだ。
 今回の付録のCDは、ウィーンを中心に活躍したモーツァルト、クライスラー、グルック、ベートーヴェン、レハール、シューベルト、ブラームスらの作曲家の作品を選び、ひとつだけ「家庭画報」の読者アンケートで人気No.1になったというヴィヴァルディの「四季」より「春」を付け加えた。
 いまは、5月末に発売される予定の単行本の最終チェックの段階で、これが終わると、次なる単行本の資料整理にアーティストのご自宅に通うことになる。
 ここからまた、根気のいる仕事の始まりだ。
 でも、ひとつひとつこうして出来上がった雑誌や完成間近の単行本を見ていると、大変な作業だったことは忘れ、多くの人が読んでくれるといいなあ、という気持ちだけが湧いてきて感慨が新たになる。
 今日の写真は、「家庭画報」の創刊700号記念の表紙。


 
 
 
 
| 情報・特急便 | 18:19 | - | -
佐渡裕
 本日8時、「音楽を語ろうよ」のコンテンツに、佐渡裕の記事をアップした。
 いつもは「ブログしか読まないよ」というかた、ぜひインタビュー記事も読んでくださいな。
 インタビューというのは、記事のなかに書けない話もたくさんある。
 このときは時間に限りがあったため、録音に関した話がメインとなったが、佐渡さんは、レコーディングのトーンマイスターのことに関してもっと詳しく話したいという感じだった。
 というのは、録音のときも編集のときも、非常にすばらしい仕事ぶりで、彼と佐渡さんは何かテレパシーのようなものを感じ合ったとか。
「ぼくがこういう音がほしい、ここはこうしたいと感じていると、即座にそういう音が出てくる。こんなトーンマイスターは、そうそういない。最高のパートナーでした」
 私も海外の録音現場に立ち会ったことが何度かあるが、凄腕のトーンマイスターは、スコアも録音技術もアーティストのこともすべて頭に入っていて、すばらしい職人芸を発揮する。
 実は今日、女性誌の取材でホールの音響設計の第一人者にインタビューをした。その人も、まさしくその道のプロフェッショナルで、海外のホールも担当し、多くの偉大なアーティストから一目置かれている存在。
 そういう人の話はとても説得力があり、しかも面白く、もっといろいろ聞きたいほどだった。
 この人も、ストイックなまでに職人芸を極めていくタイプ。でも、ユーモアもたっぷりだった。記事もぜひ、その雰囲気が伝わるように書きたい。
 
 
 
| 情報・特急便 | 22:29 | - | -
エマールのインタビュー
 今日、HPの「音楽を語ろうよ」のコンテンツに、ピエール=ロラン・エマールのインタビュー記事をアップした。
 エマールは、メシアンをはじめとする現代の作曲家の作品の第一人者として知られる一方、J.S.バッハの演奏にも意欲を示している。
 じっくりと作品と向き合うタイプで、そのピアノは熟成した美しさとシンプルな構築感、おだやかながら凛とした表情を備えている。
 インタビューの受け応えも実に知的で明快で、精神性の高さを感じさせる。
 そんな彼の素顔と音楽が浮かび上がればと思い、いろんな角度から行ったインタビューを簡潔にまとめてみた。
 ぜひ、読んでくださいね。
 
| 情報・特急便 | 17:59 | - | -
第18回別府アルゲリッチ音楽祭
 毎年、春の風物詩として大分で開催されている「別府アルゲリッチ音楽祭」が、第18回を迎える。
 今年は5月1日から26日の開催日程で、大分県出身の若手演奏家コンサート、アルゲリッチ ショスタコーヴィチを弾く、第1回音楽祭の秘蔵映像を公開するフィルムコンサート、ベスト・オブ・ベストシリーズ、Vol.4 アルゲリッチ&レーピン室内楽コンサート、レーピンによるヴァイオリン・マスタークラス、日本生命presents アルゲリッチ ベートーヴェンを弾く、ピアノと朗読で贈るスペシャルコンサートなどがプログラムに組まれている。
 今日は銀座で記者発表会があり、アルゲリッチ芸術振興財団副理事長で総合プロデューサーの伊藤京子、日本生命保険相互会社執行役員CSR推進部長の山内千鶴(東京公演スポンサー)、大分県企画振興部芸術文化スポーツ局長の土谷晴美の3氏が音楽祭の意義や現況、公演内容、そして大分県の魅力を語った。
 なお、全日程のなかで、5月17日のアルゲリッチがベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番を演奏するコンサートは大分ではなく、東京オペラシティコンサートホールで開催されることになっている。
 記者発表でも大分がおんせん県であることや、上質な水が特徴ゆえ、おいしい食事が供されることなどが紹介されたが、会見後には大分県の郷土料理のレストラン、「坐来大分」に場所を移し、ランチ交流会が行われた。
 海の幸、山の幸などが絶妙の味わいで美味なる郷土料理になっていて、冷麺や肉まん、スイーツまで多種多彩なお料理を味わうことができた。
 この音楽祭では、アルゲリッチは自分の家に戻ったような感覚を抱いているそうだが、温泉、美食、のどかな環境などが彼女をリラックスさせることにひと役買っているのだろう。
 加えて、2015年5月にはアルゲリッチ芸術振興財団の名誉理事、椎木正和氏から尊敬と親愛の証しとして「しいきアルゲリッチハウス」が贈られた。
 ここは杉の木で建設された上質な音響を誇るサロンで、アルゲリッチ専用のピアノ「マルティータ(彼女の幼いころの愛称)」が置かれている。
 音楽祭では、このサロンも使用される予定となっている。
 今日の写真は、ランチ交流会でトークを行う伊藤京子。それから、おいしいお料理の数々。こういう物をいただくと、すぐにでも大分に行きたくなるよね。
 温泉、お料理、そして音楽。もう、究極の癒しを感じるワ〜。ああ、時間に追われる日々から解放されて、心身に休息を与えたいなあ。






 
| 情報・特急便 | 15:43 | - | -
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2016
 今年も、「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」が近づいてきた。
 昨日は、東京国際フォーラムで記者会見があり、2016年のテーマと内容が発表された。
 今年のテーマは「la nature ナチュール―自然と音楽」。5月3日から5日まで、東京国際フォーラム、日比谷野音(日比谷公園大音楽堂)、大手町、丸の内、有楽町エリアで開催され、出演アーティストは2000人以上、300以上のコンサートが予定されている。東京以外では、新潟、びわ湖、金沢でも開催される。
 いつの時代も、作曲家は自然から多くのインスピレーションを得て、数々の傑作を生み出したとのコンセプトから、「四季」「自然万物」「風景」「動物」「スペシャリティ」というカテゴリーに分けられて作品がプログラミングされている。
 ヴィヴァルディの「四季」、ベートーヴェンの「田園」、スメタナの「モルダウ」、ブラームスの「雨の歌」、メシアンの「鳥のカタログ」、サン=サーンスの「白鳥」、J.シュトラウス2世の「美しく青きドナウ」、シューベルトの「野ばら」、ヘンデルの「水上の音楽」、ドビュッシーの「月の光」などの有名な作品から、マックス・リヒターのリコンポーズによるヴィヴァルディの「四季」というナントで評判の高かった作品まで、多種多彩。
 出演アーティストは、これまでおなじみとなったオーケストラや器楽奏者、歌手に加え、アンサンブル・ジャック・モデルン、レ・パラダン、ピエール=ロラン・エマール、小川典子ら実力派が参加。和太鼓の林英哲、尺八の三橋貴風、アフリカ・パーカッションのドラマーズ・オブ・ブルンジというメンバーも加わり、個性的な響きを奏でる。
 プログラムを俯瞰すると、ふだんはなかなか聴くことができない珍しい作品が多く組まれ、それらを世界各地から集結するアーティストがじっくりと聴かせるわけだが、きっと各々の会場で新たな発見が生まれるに違いない。
 記者会見では、アーティスティック・ディレクターのルネ・マルタンが、それぞれの選曲や演奏家を紹介し、2月初旬にナントで行われた音楽祭の様子が映像で流された。
 今週末には、ルネ・マルタンのインタビューが控えている。そこでは、より詳しくプログラムについて聞くつもりだ。
 今日の写真は、今年のテーマビジュアル。美術家・日本画家の四宮義俊の作である。




 


 
| 情報・特急便 | 23:36 | - | -
佐渡裕
 2015年秋、指揮者の佐渡裕が108年の歴史と伝統を誇るウィーンのトーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督に就任した。
 先日、その彼にインタビューする機会をもち、トーンキュンストラー管との出会い、音楽監督を引き受けた経緯、ウィーン楽友協会「黄金のホール」での演奏、さらに2016年5月の音楽監督就任記念日本ツアー、3月リリースのR.シュトラウス「英雄の生涯/ばらの騎士組曲」の録音(ナクソス)などについて、実に多くのことを聞くことができた。
 このインタビューは、HPの「音楽を語ろうよ」で紹介する予定である。
 佐渡裕には何度かインタビューを行っているが、彼は常に熱血漢。演奏と同様、音楽に関する話はエネルギッシュで前向きで、非常に雄弁である。
 とりわけ、今回は同オーケストラに就任してからそう時間が経っていない時期の初レコーディングとあって、さまざまな面で苦労があったという。
「でも、みんなで苦難を乗り越えると、達成感と結束力が生まれるんだよね」
 このCDは、3月23日に日本発売予定で、世界は4月2日リリースとなる。
 そしてその2カ月後、5月21日(ミューザ川崎シンフォニーホール)、22日(NHKホール)、23日(サントリーホール)というコンサート・スケジュールが組まれている。
 地方公演も多数あり、5月13日から29日まで、全14公演が予定されている。
 なお、今回のツアーにはふたりのソリストが参加、ヴァイオリンのレイ・チェンとピアノのアリス=紗良・オットである。
「アジアの血をもつふたりに参加してもらいます。ぼくとは、何度も共演して、とても親しいので」とのこと。
 さらにアジア人である佐渡裕がウィーンの名門オーケストラのシェフに就任したことで、今回のツアーは日本とオーストリアの架け橋的な意味合いをもっていると語る。それを考えて、ソリストを選んだと。
 このインタビューの翌日には、もうウィーンに戻るといっていた佐渡裕。超多忙な彼は、「今日はちょっとからだのことを考えて、コーヒーではなくホットミルクにしようかな」といい、熱々のミルクを飲んでいた。
 今日の写真は、インタビュー中のマエストロ。内容のいっぱい詰まったインタビュー記事、どうぞお楽しみに!



 
| 情報・特急便 | 17:20 | - | -
第21回宮崎国際音楽祭
 昨日は、銀座の三笠会館で第21回宮崎国際音楽祭の記者懇談会が行われた。
 今年は4月29日から5月15日までの17日間に、メインプログラム、スペシャルプログラム、教育プログラムの14公演が予定されている。他に関連コンサート・イベントも行われる。
 出演者は音楽監督の徳永二男、ピンカス・ズーカーマン、ウラディーミル・アシュケナージ、辻井伸行、三浦文彰、福井敬をはじめとする実力派が勢ぞろい。
 今年から始まるシリーズ「Oh!My!クラシック」の第1回目は、小泉純一郎氏が登場。彼の音楽談義で進めるトーク・コンサートとなっている(4月30日)。
 小泉氏はクラシックに精通し、朝起きたときから夜寝るまでずっとクラシックを聴き続けているという。
 ロンドン大学留学時代にイギリス国歌をパガニーニが編曲したヴァイオリンの無伴奏作品に触れ、大きな感動を得たそうで、今回はそれを徳永二男が演奏する。
「この曲、ものすごく難易度が高いんですよ。まだいまは完璧に弾けません。本番までになんとか弾き込みます」
 記者会見の席上、徳永二男はこういって苦笑していた。
 なんでも、小泉氏は中・高校時代にヴァイオリンを習っていて、最初に弾いた曲はJ.S.バッハの協奏曲第2番だったのだという。
 このシリーズは、今回から新たに総監督を務めることになった佐藤寿美氏のアイデアによるもの。クラシックを仕事としている人ではなく、異なった世界で活躍するクラシック好きの人が毎年自分の音楽とのつきあいを語るというもので、その話のなかに出てくる曲を音楽家たちが演奏していくというスタイルだ。
 私もこのシリーズはとても興味深い。
 以前、ヤマハ関連の新聞で、音楽家以外の人にインタビューをして、その人とクラシックとのつきあいを話してもらうというページを担当していたことがあるが、それを思い出してしまった。
 そのときは、俳優、作家、建築家、画家など、さまざまなジャンルで仕事をしている人に話を聞いたが、いまでも思い出すほど、それぞれの人の話はおもしろかった。
 この音楽祭のシリーズも、きっと人気が出るに違いない。
 それから、なんといっても演奏面では、辻井伸行が再びアシュケナージと共演し、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏するのが待ち遠しい(5月7日)。
 今年もぜひ、取材に訪れたいと思う。
 今日の写真は、記者懇談会で話す徳永二男音楽監督(右)、佐藤寿美総監督(中)。




 
| 情報・特急便 | 22:40 | - | -
シャルル・リシャール=アムラン
 昨日のショパンのピアノ・ソナタ第3番の心に響く演奏を胸に、今日はシャルル・リシャール=アムランのインタビューに出かけた。
 リシャール=アムランは1989年カナダ生まれ。これまでいくつか国際コンクールで賞を獲得しているが、2015年のショパン国際ピアノ・コンクールで第2位に輝き、同時にソナタ賞(ツィメルマン賞)も受賞した。
 今日はこのソナタに関する話題から始め、ショパン・コンクールのこと、ショバンの作品との出合い、作品論から今後の抱負まで多岐に渡って聞くことができた。
 このインタビューは、春ころ発刊の「ぶらあぼ」に書く予定である。
 リシャール=アムランは欲のない人で、「シンプルな人生」が好みだそうだ。第1位ではなく、第2位とソナタ賞を得たことで「夢がかなった」といっていた。
 今後は世界中でおびただしい数のコンサートが入っているそうだが、「自分は世界を精力的に飛び回るスターのような生活は合わない。じっくり作品と向き合って、ゆっくり歩みを進めたい」そうだ。
 ショパン・コンクールを受けたことにより、各々の作品を深い部分まで掘り下げることができ、作曲家の真意に近づくことができたことが一番のプラスだという。
 彼はいまどきのスリムなタイプではなく、下半身がどっしりとした体格。コンクール時にワルシャワでは「テディベア」という愛称で親しまれたが、それをおだやかな笑みを見せながら「みんなに愛されているということだから、うれしい」といっていた。
 でも、私はステージへの登場の仕方が、往年のラザール・ベルマンをほうふつさせるように思える。
 それを伝えると、「ええっ」と一瞬驚いたようだが、「ウワーっ、大好きなピアニストだから、そういわれるとすごくうれしいなあ」とビッグスマイルを見せた。
 リシャール=アムランの演奏は、いわゆるガツガツしていない、余裕のあるピアニズム。大人の音楽がそこには存在する。
 懐が大きく、奥が深く、弱音の美しさが際立つ。ショパン特有のルバートもごく自然だ。
 5月23日には、東京オペラシティコンサートホールでオール・ショパン・プロによる日本リサイタル・デビューが開催される。
 もちろん、プログラムのフィナーレを飾るのは、ピアノ・ソナタ第3番。楽章ごとに表情や色彩や空気を変え、聴き手の耳を最後まで引き付けてやまない演奏に、ぜひ多くの人が触れてほしいと願う。
 今日の写真はインタビュー中の1枚。この人、大器晩成型のような気がする。


 
| 情報・特急便 | 17:29 | - | -
ピエール・アモイヤル
 インタビューでは時折、「もっと話をしたい」という表情が顔に出る人がいる。
 昨日会って話を聞いた、ヴァイオリニストのピエール・アモイヤルもそのひとりである。
 彼は幼いころからピアノを習っていたが、ヤッシャ・ハイフェッツの演奏を聴いてヴァイオリンに目覚め、以来ヴァイオリンに楽器を変え、アメリカに渡って17歳から23歳までハイフェッツのもとで学ぶ。
 そのころ、チェロのグレゴール・ピアティゴルスキーにも出会い、両巨匠の性格の違いをまざまざと見せつけられたという。
 インタビューは、時間に限りがある。
 今回は「intoxicate」(次号)のインタビューで、新譜について聞かなくてはならない。アモイヤルは名教師としても知られ、ローザンヌ音楽院の教え子たちから成るカメラータ・ド・ローザンヌを創設。これは国際色豊かな精鋭13人の弦楽器奏者による室内合奏団である。
 彼らは2002年から活動を開始したが、このたびデビューアルバムを作り上げた。モーツァルトの協奏交響曲K364&コンチェルトーネK190と、チャイコフスキーの弦楽セレナード&フィレンツェの想い出の2枚同時発売である(ワーナー)。
 このライナーノーツも依頼を受けているため、とにかく新譜についてさまざまな角度から聞かなくてはならなかったのだが、アモイヤルは私がハイフェッツの話に興味をもったためか、その時代の知られざる逸話などを雄弁に語り出した。
 まるでハイフェッツがすぐそばにいる存在のように思える語り口で、非常に興味深いのだが、この話題でどんどん時間が過ぎてしまう。
 私は内心焦り、彼の話がひと段落するとすぐに次の質問に切り替えたのだが、話の途中からまたハイフェッツの話に戻ってしまった。
 アモイヤルはピアノのアレクシス・ワイセンベルクとも親しく、ふたりはローザンヌ夏期音楽アカデミーの芸術監督を務めた。
 ワイセンベルクの話もまた、ダーッと広がってしまった。
 いやはや、どうしよう。新譜の話、新譜の話だよ〜。
 そうこうするうちに時間になってしまい、最後はなんとか帳尻を合わせたものの、まだ話し足りないという表情のアモイヤルにお礼をいい、ブログ用の写真を写し、インタビュー室を辞した。
 部屋を出た直後、ワーナーの担当者のOさんと、「このハイフェッツの話、クラシック・ファンだったらみんな読みたいよねえ。もう一度、時間をとってもらって思いッきり話してもらった方がいいんじゃない。なんか、ドラマを感じるし…」という話になった。
 ピエール・アモイヤルとカメラータ・ド・ローザンヌは、7月に初来日公演が予定されている。その前に、録音は3月23日にリリースされる。
 いやあ、原稿だ原稿。どうやってこの短い新譜の話をライナーにまとめるんじゃ〜、困ったわい。
 今日の写真は、愛器ストラディヴァリウス「コハンスキ」(1717年製)を携えたアモイヤル。「話し足りない」というのが顔に出ているでしょ(笑)。

| 情報・特急便 | 21:36 | - | -
HPのリニューアル完成
 ついにHPのリニューアルが完成を見た。
 明日の午後には、これまでのHPが新しいものに変わる。
 思えば、1年半にわたっていろいろと試行錯誤を繰り返し、さまざまな仕事仲間からアドヴァイスをもらい、それをWEBのデザイン事務所の人たちと話し合い、骨子を定めて歩みを進めてきた。
 もちろん最初からすぐに完璧なものはできないが、これから徐々に内容を充実させていきたいと思う。
 ブログだけでなく、ぜひHPのいろんなコンテンツを見てくださいね。

http://yoshikoikuma.jp/



 
| 情報・特急便 | 21:22 | - | -
ジャニーヌ・ヤンセン
 ようやく、週末の原稿がすべて終わった。
 いまは、ジャニーヌ・ヤンセンの来日プログラムの原稿を入稿したばかり。
 これは2月22日に東京文化会館で行われるヴァイオリン・リサイタルで、ピアノは彼女の盟友であるイタマール・ゴラン。
 ブラームスのソナタ第2番、バルトークのソナタ第2番、ルトスワフスキのスビト、ベートーヴェンのソナタ第10番というプログラムである。
 彼女は、今月リリースした新譜でブラームスのヴァイオリン協奏曲とバルトークのヴァイオリン協奏曲第1番を収録(ユニバーサル)。ブラームスとバルトークにはハンガリーという共通項があると指摘している。
 ヤンセンの演奏はこれまで何度も聴き、デビュー当時の録音のライナーノーツも書いているが、もっとも印象に残っているのは2007年にノルウェーのベルゲン国際フェスティヴァルの会場のひとつ、ローゲン劇場で聴いた室内楽。
 ヤンセンは昔から室内楽をこよなく愛し、2003年には自身のフェスティヴァル、ユトレヒト室内楽国際音楽祭を創設している。
 いまやこの音楽祭は多くの人々が待ちに待っている、人気の高い音楽祭となっている。
 彼女の演奏は、凛とした知的でクールな面と、力強く躍動感あふれる面、さらに抒情的で豊かにうたう面という多様さを備えている。
 新譜のブラームスとバルトークも聴きごたえ十分。パッパーノのカンタービレを大切にする指揮に支えられ、いずれのコンチェルトも豊かな歌心にあふれている。
 来日公演のブラームスとバルトークのソナタが待ち遠しい!
 今日の写真は、その新譜のジャケット。ジャニーヌって、「彫刻のような美しい容姿」と形容したヨーロッパの新聞があったが、まさにその通りだ。同性の私でも、惚れ惚れしてしまうワ(笑)。




 
| 情報・特急便 | 23:20 | - | -
ドミトリー・マスレエフ
 今年はチャイコフスキー、リーズ、ショパン、浜松など、ピアノ部門のある国際コンクールが重なる年だった。
 そのチャイコフスキー・コンクールのピアノ部門の優勝者が、1988年ロシア生まれのドミトリー・マスレエフ。
 以前、来日公演を行った際にインタビューをしたことを綴ったが、彼の来年のリサイタルのチラシの原稿を書いたものが出来上がり、音楽事務所から送られてきた。
 この写真がすばらしい。
 ホールのステージ上にあるピアノの前に座っている写真だが、ロシアの雰囲気がリアルに感じられ、マスレエフの表情もいい。
 記事は、インタビューをしたときのことばを挟みながら書き、彼の演奏に関しても私が感じているままを率直に記した。
 リサイタルは、6月13日(月)に浜離宮朝日ホールで行われる(19時開演)。スカルラッティのソナタ2曲からスタート。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第26番「告別」、プロコフィエフのピアノ・ソナタ第2番と続き、前半終了。
 後半は、ラフマニノフの幻想曲、前奏曲、絵画的練習曲集のなかから選ばれた曲が演奏され、最後はリストの「死の舞踏」で締めくくられる。
 マスレエフは、温かく情感豊かでピュアな音楽性の持ち主。けっしてバリバリとテクニックを前面に押し出して弾くタイプではない。
 ゲルギエフが非常に高く評価し、支援を惜しまないという。
 若き優勝者が、コンクール後どのような成長を見せるか、興味は尽きない。
 今日の写真は、そのコンサートのチラシ。このカメラアングル、いいよねえ。今度、機会があったら、こういう角度で撮ってみたいなあ。
 さて、だれがモデルになってくれるか…。


 
| 情報・特急便 | 22:56 | - | -
クルト・マズア
 ドイツの指揮者クルト・マズアが、19日に自宅のあるアメリカで亡くなった。享年88。
 マズアはドレスデン・フィル、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、ニューヨーク・フィル、ロンドン・フィル、フランス国立管などの音楽監督や首席指揮者を歴任し、読売日本交響楽団の名誉指揮者も務め、日本にもファンが多かった。
 マズアは、1989年にライブツィヒの「月曜デモ」を無血で終わらせた功績が、いまなお多くの人に語り継がれている。
 実は、1989年というのは私が独立した年で、マズアが東ドイツ当局に対し、デモ鎮圧のための武力行使を避け、平和的解決を呼びかけたことは「文芸春秋」に記事を書いたため、よく覚えている。
 その後、来日したマズアは、記者会見などでこの件に関していろいろ質問されていた。
 当時、出張に行ったときにゲヴァントハウスでマズアの演奏を聴くことができ、体躯堂々とした彼がからだを目いっぱい使ってスケール大きく明快な音楽を作り出す指揮法に、強い印象を受けたものだ。
 彼はさまざまなオーケストラを指揮してきたが、私はやはりライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の重厚で堂々とした伝統の響きが、もっともマズアの音楽性に合うと思う。
 レパートリーは広く、録音も多かったが、なかでもブルックナーの交響曲全曲とブラームスの交響曲全曲録音の評価が高い。
 ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」も強い意志を反映させたもので、1981年の録音は再建されたゲヴァントハウスのこけら落としのライヴである。
 このホールは音響のよさで知られるが、実際に席にすわって聴くと、広いホールにもかかわらず、音にふんわりと包み込まれる感じを受ける。
 マズアの演奏を思い出していたら、ライプツィヒの景観が脳裏に蘇ってきた。今日の写真は、2009年の真冬に訪れたゲヴァントハウスの内部で撮影したもの。ホールの真上から見た模型で、非常に精巧に作られている。




 
 
  
 
 
| 情報・特急便 | 16:30 | - | -
羽生結弦
 フィギュアスケートの上位6人で争われるグランプリシリーズ2015が、バルセロナで開かれている。
 今日は、11月のNHK杯においてSPとフリーの両方で世界最高得点をマークし、300点を超える高得点で優勝を果たした羽生結弦が、またまたSPで世界最高得点をマークして首位に立った。
 今回のSPは、ショパンのバラード第1番が使われている。序奏の部分をほんの少しだけ聴き、ゆっくりと流れるように演技が始まる。
 バラード第1番は、ピアノ技法を最大限生かしたストーリー性のある作品。ユニゾンの序奏、異なる主題の対比、大胆な転調、当時としては画期的な和声進行、変奏曲の妙など、斬新性と創意工夫に満ちた曲想が特徴だ。
 羽生結弦は、ショパンが新しさを描き出した作品にピタリと寄り添い、自身も新しい側面を遺憾なく発揮。ショパンの洗練された美と調和を美しいスケーティングで表現した。
 フィギュアスケートでは、クラシックの作品が使われることが多い。その演技を見るときは、つい音楽との融合性に気持ちが向いてしまう。
 私は、難度の高いジャンプにももちろん感動するが、もっとも興味があるのはステップ。高橋大輔のこまやかで、創造性あふれるステップが大好きだった。
 さて、これから女子が続き、男女のフリーへと進む。優勝するのはだれだろうか。
 また、クラシックの名曲がいくつか登場するかもしれないな。
 
 
 
| 情報・特急便 | 22:04 | - | -
ノーベル賞コンサート2015
 12月8日、ストックホルム・コンサートホールで「ノーベル賞コンサート2015」が開催された。
 今年ロイヤル・ストックホルム・フィルを指揮したのはフランツ・ウェルザー=メスト。ソリストとして、ダニール・トリフォノフが参加した。
 プログラムは、トリフォノフがソロを務めるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番と、R.シュトラウスの「英雄の生涯」。
 このコンサートは、ノーベル賞の受賞者の功績を称えようと開かれる公式行事で、毎年さまざまなアーティストが招かれている。
 今年は、とりわけトリフォノフの演奏に賛辞が集まった。
 以前、ヴァイオリニストのレイ・チェンがこのコンサートで演奏する機会に恵まれ、指揮者のクリストフ・エッシェンバッハと共演した。そのときにレイ・チェンが「録音でもぜひ一緒に演奏してほしい」と直談判し、エッシェンバッハのピアノ&指揮のレコーディングが可能になったといっていた。
「ですから、ぼくにとって、ノーベル賞コンサートはとても大切な意味合いをもっているんです」
 レイ・チェンの高揚した表情が忘れられない。
 それにしても、トリフォノフの快進撃はすばらしい。先日インタビューしたときにも、今後のスケジュールを教えてくれたが、ビッグなコンサート、偉大なアーティストとの共演が目白押し。それを淡々と語る彼は、なんとたくましくなったことか。
 2010年のショパン国際ピアノ・コンクールのときに初めて彼の演奏を聴いてから、まだ5年しかたっていない。この間、チャイコフスキー国際コンクールの覇者となり、世界各地で演奏し、多い年で120回のコンサートを行っているという。
「ちょっと多すぎるよね。もう少し、勉強の時間を確保しないといけないから、今後はもっと抑えようと思っている」
 そりゃそうでしょう。少し多いどころじゃありませんよ。数を聞いて驚愕したもの。
 彼は作曲にも意欲を示しているから、曲作りの時間も欲しいに違いない。
 こうして若芽がぐんぐん空に向かって伸びていく姿を見ていると、こちらもエネルギーが湧き、元気になれる。
 今日の写真は、大好きだというファツィオリのピアノの前で撮影したもの。
 相変わらずスリムだけど、ステージに登場する姿は堂々とした様子に変わり、演奏もより説得力が増した。2016年もきっと走り続けるに違いない。


 
 
| 情報・特急便 | 21:33 | - | -
浜松国際ピアノコンクール
 昨夜、第9回浜松国際ピアノコンクールの審査発表があった。
 イタリア出身の20歳のアレクサンデル・ガジェヴが優勝の栄冠に輝き、聴衆賞も併せて受賞した。第2位はウクライナのロマーン・ロパティンスキー。
 今回は審査発表までかなりの時間を要し、何度も投票をやり直したそうで、第3位が3人という結果となった。ロシアのアレクセイ・メリニコフ、アメリカのダニエル・シュー、ギリシャ/ベネズエラのアレクシーア・ムーサである。第4位と室内楽賞はルーマニアのフロリアン・ミトレアが受賞。なお、第5位と第6位はなしという結果となった。
 日本人作品最優秀演奏賞はロシアのイーゴリ・アンドレエフ、奨励賞は日本の三浦謙司が受賞した。
 私が聴いたのは、本選の2日間だったが、6人とも実力が伯仲し、これは審査が困難だろうなと思わせた。案の定、本選1日目の審査員の記者会見では、各人が今回の参加者のレヴェルの高さについて言及し、審査の難しさが語られた。
 審査発表の段階でも、海老彰子審査委員長が、「今回は非常にレヴェルが高く、特に本選の6人は上手すぎました」と話し、会場からは笑いがこぼれた。
 それでも、順位はつけなければならず、結果が判明すると、参加者たちのそれぞれの顔には複雑な表情が見てとれた。
 長年、国際コンクールの取材は続けているが、この審査発表のときはいつも私自身も複雑な思いに駆られる。優勝者の笑顔は見ていて喜ばしいものだが、あとの人たちは、みな胸の奥で感情を押し殺している。
 こうした僅差の結果の場合は、なおさらである。
 今回は、本選出場者が、全員ラフマニノフ、プロコフィエフ、チャイコフスキーのピアノ協奏曲を選んだ。これも複雑な思いがよぎる。モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、ショパンなどの課題曲を選んだ人もいたが、本選には残れなかった。こういう情感豊かなコンチェルトを聴いてみたかったのだが…。
 今回は、第2次予選に委嘱作品が2曲課題曲として出されたが、これを暗譜で演奏することに対しても、今後の課題となったようだ。
 コンクールは、開催されるごとにいろんな問題が提起され、それらをひとつひとつ関係者が話し合いで解決していく。世界中のコンクールが、それぞれ問題を抱え、試行錯誤を繰り返している状態だ。
 さて、浜松国際ピアノコンクールは無事に終了し、あとは明日の東京文化会館小ホールにおける入賞者披露演奏会(ガラコンサート)を残すのみとなった。
 明日は各人のソロを聴くことができる。
 先日、前回の優勝者イリヤ・ラシュコフスキーにインタビューした際、「浜松が終わってから、演奏の場が一気に増え、とても忙しくなった。もっとレパートリーを増やして勉強しなくちゃ」と、真摯な表情で語っていたが、まさに「コンクールはスタート台」である。
 今回の優勝者、入賞者たちも、今後の活躍如何で道は大きく分かれる。彼らの今後を見守りたいと思う。 
 今日の写真は、授賞式の様子と優勝者のアレクサンデル・ガジェヴ。




 
 
| 情報・特急便 | 22:44 | - | -
浜松国際ピアノコンクール
 浜松国際ピアノコンクールに出かけるまで、あと2日しかない。
 この間に、たまっている原稿をすべて入稿していこうと意気込んでいたのだが、やはりかなりこぼれてしまいそうだ。
 今日は、第3次予選の結果が発表され、本選出場者が決まった。
 
 アレクサンデル・ガジェヴ(イタリア)
 ダニエル・シュー(アメリカ)
 ロマーン・ロバティンスキー(ウクライナ)
 アレクセイ・メリニコフ(ロシア)
 フロリアン・ミトレア(ルーマニア)
 アレクシーア・ムーサ(ギリシャ)

 以上の6人である。
 彼らのコンチェルトを聴きに、5日から出かける。いまは便利な時代で、演奏もネットでライヴを聴くことができ、今夜の記者会見もリアルタイムで視聴することができた。
 いよいよ6日の日曜日の夜には優勝者が決まる。その後、表彰式・入賞者記者会見が行われ、フェアウェルパーティが開催される予定になっている。
 7日に戻り次第、その情報・詳細はお伝えしますね。

 
| 情報・特急便 | 21:53 | - | -
浜松国際ピアノコンクール
 11月22日に第1次予選がスタートした第9回浜松国際ピアノコンクール。今夜は第2次予選通過者が決定し、12月1日から行われる第3次予選に進む12人の名前が発表された。

 アレクサンデル・ガジェヴ イタリア 1994年生まれ
 ダニエル・シュー アメリカ 1997年生まれ
 ロマーン・ロバティンスキー ウクライナ 1993年生まれ
 ドミトリー・マイボロダ ロシア 1993年生まれ
 アレクセイ・メリニコフ ロシア 1990年生まれ
 フロリアン・ミトレア ルーマニア 1989年生まれ
 三浦謙司 日本 1993年生まれ
 アレクシーア・ムーサ ギリシャ/ベネズエラ 1989年生まれ
 ノ・イェジン 韓国 1986年生まれ
 シェン・ルウ 中国 1985年生まれ
 イリヤ・シムクレル ロシア 1994年生まれ
 マーク・タラトゥシキアン ロシア 1990年生まれ

 私は、今回コンクールの公式講評の5人のひとりに任命されているため、12月5日、6日の本選と、8日の入賞者披露演奏会(ガラコンサート)東京公演に行くつもりである。
 さて、本選出場者6人が決まるのは、12月2日の夜である。
 日本人が残るだろうか。ショパン・コンクールのときも、審査発表をネットでチェックするときはハラハラドキドキしたが、今回も同様の思いを抱く。
 でも、浜松に出かける前に、まだまだやらなくてはならないことが山積みだ。すっきりした気分で出かけられるよう、スピードアップしなくちゃね。
 
 

 

| 情報・特急便 | 22:41 | - | -
ロイック・リョー
 モディリアーニ弦楽四重奏団が来日中で、先週の21日(土曜日)には神奈川県立音楽堂に演奏を聴きに行ったことは書いたが、今日は王子ホールで第2ヴァイオリンのロイック・リョーにインタビューを行った。
 今回は、チェロのフランソワ・キェフェルが事故で左肩を痛めたため来日できず、元イザイ弦楽四重奏団のマルク・コッペイが加わっている。
 ロイックによれば、12年間いつも4人で一緒に演奏してきたため、チェリストが変わったことにより、何かが変わるだろうと思っていたが、新たな発見がいくつもあったそうだ。
「ここはこう弾く、こう表現するという形ができていたところに、マルクの新たな表現が加わり、ああ、こういうこともできるんだと思った。3人がそれぞれいろんな発見をし、作品を見直す力も備わったよ。フランソワはゆっくり治療して、どんどんよくなっているから心配はいらないと思う。きっと、ひとり静かに休養することができて、喜んでいるんじゃないかな。ぼくたち、いつもみんなでワーワーしゃべりまくっているから、すごくうるさいんだよ」
 こう笑いながら話していた。
 このインタビューは、王子ホールの「The Magazine」に書くことになっている。モディリアーニ弦楽四重奏団は来年も来日公演を予定しており、その詳細はいずれ紹介したいと思う。
 彼らは学生時代の延長で非常に仲がよく、いつも一緒にいて飽きることはないという。
「でも、言い争いや喧嘩はしょっちゅうだよ。でも、最後はなんとなく意見がまとまって、元通りになる。お互いに知り尽くしているからね」
 今日の話のなかで、もっとも印象深かったのは、ふたりずつで練習することが多いということ。
「ぼくたちはそれぞれが練習して、集まったときに4人一緒に合わせることはもちろんだけど、ふたりずつの練習も多い。ヴァイオリンとヴィオラ、ヴァイオリンとチェロ、ヴィオラとチェロというふうに組んで練習する。これがとてもいい状況を作り出し、自分の音楽を練り直すことができるんだ」
 ロイックは、話のなかにユニークなたとえや、ジョークを織り交ぜていくのが好き。ハンサムな顔をくしゃくしゃに崩して大笑いしたり、目を見開いて相手の反応を見たり、身を乗り出して一気に話したりと、表情や表現が自由自在。
 今日の写真は、そのなかでも特にシリアスな表情。
 さて、明日は王子ホールでコンサートが行われる。「終わったら、絶対楽屋に来てよ」といわれたから、顔を出してインタビューのお礼をいわなくっちゃ。

| 情報・特急便 | 21:33 | - | -
イリヤ・ラシュコフスキー
 11月21日から12月8日まで、第9回浜松国際ピアノコンクールが開催される。
 今日は、前回の優勝者、イリヤ・ラシュコフスキーに話を聞いた。彼は昨日のコンクールのオープニングコンサートで演奏し、今日の午前中に東京に移動、練習前のひととき、インタビューに応じてくれた。
 明日は、武蔵野市民文化会館でスクリャービンのピアノ・ソナタ全10曲を弾くリサイタルが行われ、その翌日にはこのライヴと同じ演奏が収録される(日本アコースティックレコーズ)。
 ラシュコフスキーには以前も会ったことがあるため、スムーズにインタビューが進んだ。コンクール優勝後から現在まで、各地で演奏し、いまはとても忙しいといっていた。
 スクリャービンのソナタについて、全10曲のそれぞれの作品への思いを聞いたのだが、とてもていねいに各曲の特徴、どう表現するか、演奏の難しさなどを語った。
 ラシュコフスキーは、繊細で優雅で温かなピアノを奏でる人である。素顔もとても優しい笑顔の持ち主で、話し方も好感がもてる。
 このインタビューは、HPのリニューアル後のインタビュー・コンテンツで紹介するつもりである。
 私のインタビュー後、練習スタジオで3時間通して練習するそうだ。リサイタルとライヴ収録に備えるのだろう。
 スクリャービンのピアノ・ソナタ全曲録音はなかなか行われないため、仕上がりが非常に楽しみである。
 これは3月21日リリース予定となっている。
 今日の写真は、インタビュー中のラシュコフスキー。記事にも書くが、彼はウラディーミル・クライネフに師事している。そのクライネフを「第2の父」というほど敬愛し、多くを学んだそうだ。クライネフの死は、本当にショックだったようで、この話になると、優し気な表情が一気に暗くなった。

 
| 情報・特急便 | 22:20 | - | -
メナヘム・プレスラー来日中止
 今月、待望の来日公演が行われる予定だったピアニストのメナヘム・プレスラーが、健康上の理由から来日中止となった。
 当初は一部だけキャンセルということで療養に務め、東京公演は予定通りとのことだったが、医師の判断により、全面的に中止となった。
 昨年の来日時にインタビューした際、「来年もまたインタビューにおいで」といわれていたため、演奏とともに話を聞くのを楽しみにしていた。
 91歳という年齢だが、昨年はとても健康そうだったし、いまはソロでピアノを弾くことがたまらなく楽しいと語っていた。
 一日も早く回復し、また元気な姿で来日してくれるよう祈るばかりだ。
 今回は、来日公演のプログラムの原稿も書く予定で、そこでは、プレスラーのユーモアたっぷりの心温まるエピソードを紹介するつもりだった。
 実は、プレスラーの10月新譜のライナーノーツを書いた。「プレスラー90歳 バースデイ・コンサート・イン・パリ」、ボザール・トリオのメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番、ドヴォルザークのピアノ三重奏曲第4番「ドゥムキー」、同じくボザール・トリオのショスタコーヴィチのピアノ三重奏曲第1番&第2番、ブロークの詩による7つの歌の3本である(ワーナー)。
 ライナーを書くときに、いずれの作品もじっくり聴いたため、彼のピアノはもう脳裏に焼き付いている。あとは来日公演を楽しみにしているところだった。
 プレスラーの音楽は、心にゆったりと染み込んでくる。その真摯で温かな人間性がピアノに全面的に反映し、聴き手の心身を癒し、元気づけ、深い感動をもたらす。
 さて、またCDを聴いて、活力をもらいましょうか。でも、パリ公演のアンコールでも弾いているプレスラーの大好きなショパンのノクターン嬰ハ短調(遺作)は、元気がもらえるというよりも、涙がこぼれそうになる抒情的な美しさ。こういう曲は、ナマで聴くとまずいよねえ、目がウルウルになってしまうから…。
 今日の写真は3枚の新譜のジャケット。90歳の記念コンサートは、先日来日したばかりのエベーヌ弦楽四重奏団との共演だ。


 
 
| 情報・特急便 | 22:00 | - | -
ショパン・コンクール審査発表
 20日の本選を終え、同日深夜に第17回ショパン国際ピアノ・コンクールの審査結果が発表された。
 第1位 チョ・ソンジン(韓国)、第2位 シャルル・リシャール=アムラン(カナダ)、第3位 ケイト・リウ(アメリカ)、第4位 エリック・ルー(アメリカ)、第5位 イーケ・(トニー・)ヤン(カナダ)、第6位 ドミトリー・シシキン(ロシア)。副賞のポロネーズ賞はチョ・ソンジン、マズルカ賞はケイト・リウ、ソナタ賞はシャルル・リシャール=アムランが受賞した。
 日本から唯一本選に出場した小林愛実は、残念ながら入賞することはできなかった。
 今日は結果が判明した時点で、小林愛実の気持ちを考え、いてもたってもいられない気持ちになった。さぞ、落ち込んでいるだろう。いますぐにでも飛んでいってなぐさめたい、そんな思いに駆られた。
 彼女は、デビュー当初からとてもなついてくれ、なんだか親族のような気持ちになったものだ。アメリカに留学してからは会うこともなく、もう20歳になったわけだから、今度会ったら大人っぽくなっているだろうが、コンクールの映像を見る限り、基本的な奏法や表現は変わっていない。きっと、性格もあまり変わっていないのではないだろうか。
 それにしても、本当にこのコンクールの審査はきびしい。小林愛実ほどの実力をもっても、入賞を逃すとは、なんと高い壁だろうか。
 今日は仕事をしながら、一日中、彼女のことを考えてしまった。
 しかし、前回のインゴルフ・ヴンダーのように、初めて受けたショバン国際ピアノ・コンクールで納得のいく結果が出せず、一時はピアノがまったく弾けなくなっても、そのどん底からはい出て、次に挑戦していい結果を出す例もある。
 小林愛実には、ぜひこの苦境を乗り越えて前に進んでほしいと願う。彼女にはそれだけの力があると確信しているから。
 これから、コンクールに出かけた友人や知人が次々に帰国する。みんなからいろんな話を聞くことができそうだ。
 
| 情報・特急便 | 23:16 | - | -
第17回ショパン国際ピアノ・コンクール
 いま、ワルシャワでは第17回ショパン国際ピアノ・コンクールが華々しく開催されている。
 第1次予選は10月3日から7日、第2次予選は9日から12日、セミ・ファイナルは14日から16日で、ショパンの命日17日をはさみ、18日から20日がオーケストラとの共演によるファイナルというスケジュールである。
 参加者を見ると、ポーランドと中国が最多の15名。日本からは中桐望(28歳)、小林愛実(20歳)、須藤梨菜(27歳)、野上真梨子(24歳)、有島京(23歳)、古海行子(17歳)、木村友梨香(22歳)、丸山凪乃(16歳)、三重野奈緒(20歳)、中川真耶加(21歳)、小野田有紗(19歳)、竹田理琴乃(21歳)という12名が参加している。
 そして10月7日、午後10時過ぎ、第1次予選通過者の名前が発表された。
 日本は12人中5人が通過、有島京、小野田有紗、小林愛実、須藤梨菜、中川真耶加が9日からの第2次予選に進むことになった。
 コンクールの様子は、ショパン・コンクールの現地のWEBサイトでライヴ演奏が見られるようになっている。もちろん時差もあり、演奏のスケジュールにもよるため、全部は見られないが、ライヴを聴くことができるというのは貴重だ。
 さて、この5人の日本のピアニストは、第2次予選でどんな演奏を聴かせてくれるのだろうか。興味は尽きない。
 
 
| 情報・特急便 | 22:08 | - | -
ヴィルサラーゼ&ブッフビンダー
 心にしみじみと響いてくるピアノを聴かせてくれるベテラン・ピアニストが、今冬から来春にかけて来日し、すみだトリフォニーホールでリサイタルを開く。
 エリソ・ヴィルサラーゼ(11月21日)と、ルドルフ・ブッフビンダー(2016年3月4日)のふたりである。
 実は、このふたりにアルド・チッコリーニを加えた3人がグレイト・ピアニスト・シリーズに組まれていたが、チッコリーニは2015年2月に89歳で急逝したため、演奏はかなわぬこととなってしまった。
 ヴィルサラーゼは2014年、ブッフビンダーは2012年に同ホールで圧倒的な存在感を放つ演奏を披露し、その印象はいまだ心の奥に深く刻み込まれている。
 このリサイタル・シリーズのチラシ裏面の原稿を書いたため、ずいぶん前からふたりの演奏会に期待が高まっていた。
 ヴィルサラーゼもブッフビンダーも、演奏同様インタビューでも真摯で純粋で前向きな姿勢を崩さない。そしてふたりに共通しているのは、「常に新たな演奏をすること」。長年弾き慣れた作品でも、まったく新しい作品と対峙するような姿勢で演奏に臨むという。
 今回、ヴィルサラーゼはモーツァルトのピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲付き」、第13番、ロンド イ短調、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番「熱情」、そして得意とするシューマンの「謝肉祭」をプログラムに組んでいる。
 一方、ブッフビンダーはJ.S.バッハのイギリス組曲第3番、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」、そして待望のシューベルトのピアノ・ソナタ第21番が演奏される予定だ。
 いずれもピアノ好きにはたまらない選曲。きっと今回も、感動のあまり、終演後しばらく席を立てない状況に陥るのではないだろうか。
 今日の写真は、その来日公演のチラシ。これらの日は、何がなんでも空けておかなくちゃ…。


 
| 情報・特急便 | 18:13 | - | -
ボリショイ・バビロン
 2013年1月17日にモスクワのボリショイ・バレエ団で起こった事件は、世界を震撼させた。
 バレエ団の元スターダンサーで芸術監督のセルゲイ・フィーリンが、覆面をした男に襲われ、顔面に硫酸を浴びせられたのである。
 このニュースはまたたくまに世界中に広がり、ロシアが誇るボリショイ・バレエ団のさまざまな秘密や陰謀、嫉妬などが明るみになっていく。
 フィーリンは医師団の懸命な治療により回復するが、片目は失明という悲劇に見舞われることになる。
 そんな舞台裏をリアルに描き出すのが、イギリス人のニック・リード監督・撮影による映画「ボリショイ・バビロン」。彼と信頼できる仲間であるマーク・フランチェッティが製作・共同監督を務めている。
 これはドキュメンタリーで、ボリショイ・バレエのすばらしいバレエがふんだんに盛り込まれ、その合間にダンサーや劇場関係の人々の話が次々に挟み込まれていく手法。
 国の宝ともいうべきボリショイ・バレエの秘密の扉が徐々に開かれていく感じで、ここまで率直に語っていいのだろうか、とひやひやしてしまうほどだ。
 事件後にボリショイ劇場の新たな総裁に任命されたウラジーミル・ウーリンは、「新たな体制は、外部から見えやすい組織作り」という考えの持ち主。ウーリンが承諾してくれたため、劇場の内部まで撮影が可能になったようだ。
 結局、嫉妬などの感情により、犯行に及んだダンサーのパーヴェル・ドミトリチェンコが実行犯、運転手とともに逮捕され、フィーリンは再びバレエ芸術監督の座に復帰するが、ウーリンとは必ずしもうまくいくわけではない。
 今後、ロシアの威信を背負ったボリショイ・バレエは、どのような形で再び信頼と誇りを取り戻し、歴史と伝統を担っていくのか。
 映画は、明確な結論は出さず、見る側にそれを考えるよう仕向けている。
 チャイコフスキーの「白鳥の湖」をはじめ、バレエの名場面が多数登場し、きびしいレッスンも映し出される。そしてダンサーが、いかに身を削って踊りに命を賭けているかということもわかる。
 今日の写真は、映画のパンフレットの表紙。9月19日(土)よりBunkamuraル・シネマでロードショー。



| 情報・特急便 | 21:43 | - | -
樫本大進&コンスタンチン・リフシッツ
 私の仕事のひとつに、コンサートのチラシの原稿を書くというものがある。来日公演のかなり前にチケットが発売されるため、それに合わせて制作されるチラシの裏面に掲載される原稿である。
 今日は、2016年2月3日から2月19日まで全国8公演が予定されている、樫本大進&コンスタンチン・リフシッツのデュオ・リサイタルのチラシができ上がり、音楽事務所から送られてきた。
 ふたりは出会いから10数年を経て、2010年12月に日本でベートーヴェン・チクルスを開始。ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏を行い、同時に海外で録音も行った。
 そんな彼らが再び共演することになった。
 今回は、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第7番に、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第2番、プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第1番というプログラム。大進とコンスタンチンは、このプログラムを組むために何度も話し合い、お互いの意見を尊重し、練りに練った結果、この3曲に決めたという。
「コンスタンチンとぼくは、ともに演奏するたびに絆がどんどん深くなっていくのを感じます。彼の演奏はスリリングで、次に何が出てくるのかわからないような未知なる魅力を秘めています。その刺激的な演奏にぼくも触発され、自分もより高みを目指す演奏をしたいと考えるようになるんです」
 大進のことばを受けて、コンスタンチンが続ける。
「大進と演奏すると、いつも心の奥から喜びが湧いてくるんです。ぼくはヴァイオリンとのデュオでは、ひとつのストーリーを描き出したいと思っています。いずれの作品にも、作曲家がそのなかに込めた物語が存在するからです」
 今日の写真は、届いたばかりのチラシ。ベートーヴェン・チクルスのときは、とりわけ第7番のソナタが印象に残った。それが再現される。ブラームスとプロコフィエフも、入念な準備のもとに演奏されるに違いない。この3曲の組み合わせ、いまから楽しみだ。


 
 
| 情報・特急便 | 22:32 | - | -
ユンディ・リ
 アーティストのCDのライナーノーツを書く仕事は、作品が出来上がってくるのがとても楽しみで、そのCDがとても特別ものに思えるから不思議だ。
 つい先ごろ、ユンディ・リのショパン「プレリュード全集」(ユニバーサル)のCDが届いた(9月16日発売)。
 これはユンディが2015年6月にベルリンで録音したもので、「24のプレリュード作品28」と、プレリュード嬰ハ短調作品45(第25番)、プレリュード変イ長調遺作(第26番)が収録されている。
 ショパン・コンクール優勝から15年が経過し、ユンディはいま再びショパンの演奏に戻っている。一時期、ショパンから離れ、さまざまなレパートリーに幅を広げたが、やはり彼にとってショパンはレパートリーの根幹をなすようだ。
 このプレリュードは、そんなユンディの現在の心を映し出すように、雄弁な演奏となっている。特有の美音も健在だ。
 彼は来月開催されるショパン・コンクールの審査員を初めて務めることになり、最年少審査員となる。いつか、その話を聞きたいものだ。
 ユンディには長年インタビューを続けているが、いつも音楽の話の合間に彼のヘアスタイルが話題となる。そのつど、変わっているからだ。もっとも、彼自身は「いま、この髪型が一番気に入っているんだよ」と、笑っているが…。
 今回のCDのジャケットでは、やわらかくパーマをかけてウェーブをつけ、サイドはかなり短め。このスタイルは、初めてだワ。
 このジャケット、なかにもたくさん顔写真が掲載されているんですよ。さすが、人気ピアニストならではのジャケットだ。
 ショパンのプレリュードは、じっくり聴くと本当にすばらしい作品で、ショパンの様式、表現、創造性、革新性、物語性など、さまざまな側面が味わえる。さて、またユンディの録音で、ショパンの偉大さに触れましょうか。
 今日の写真はCDのジャケット。この表情、ちょっと俳優みたいだよねえ。






 
| 情報・特急便 | 22:42 | - | -
北村朋幹
 8月26日から9月13日までイギリスで開催されていた、第18回リーズ国際ピアノ・コンクール。
 今日はファイナルの結果発表があり、日本人で唯一ファイナルまで進んだ北村朋幹は、第5位入賞となった。
 北村朋幹は、現在24歳。ベルリン芸術大学のピアノ科と古楽科に籍を置き、研鑽を積んでいる。
 私は1980年代にリーズ・コンクールに取材にいき、そのレヴェルの高さに驚いたものだ。他の国際コンクールの優勝者や入賞者が数多く参加していたからだ。
 当時は、本選のコンチェルトの指揮をサイモン・ラトルが担当し、その起用にもびっくりした。
 のちにラトルにその話をすると、「ああ、私にとって、あのコンクールの指揮はとても楽しいものだった。これから世に出ていく若いピアニストのサポートができるなんて、最高じゃないか。彼らは私との共演をすごく思い出深いものとしてとらえてくれるからね」と、話してくれた。
 ラトルが若い世代の音楽家を支援する気持ちが強いのはよく知られたことだが、当時からこういう思いを抱いていたのだ。
 北村朋幹はこれを機に、よりいっそう高みを目指して頑張ってほしい。
 コンクールというのは、第5位入賞だとあまり話題にならないが、リーズ・コンクールは参加者にとって、とても意義深いコンクールだと思うからである。
 さて、今年はチャイコフスキー、リーズと大きなピアノ関係の国際コンクールが終了した。さて、いよいよショパン国際ピアノ・コンクールが近づいてきた。もう来月の頭にスタートである。待ち遠しいなあ。
 
| 情報・特急便 | 21:29 | - | -
JOICE&TONY
 先日、アメリカのメゾ・ソプラノ、ジョイス・ディドナートと指揮者のアントニオ・パッパーノがピアノ伴奏を務めるウィグモア・ホールでのライヴCDを紹介したばかりだが、今日はこんなニュースが飛び込んできた。
 このアルバムが、UKクラシック・チャートで初登場にして第1位を獲得したというのである。
 やっぱりねえ。みんな、いい演奏に対する思いは同じなのね。本当にこのアルバムは人気が出ると思ったんだよね。私もいろんなところで紹介してしまった。
 それにしても、初登場で第1位とはたいしたもんだ。
 私は、この週末もまだまだ原稿締め切りから抜け出せず、他のことは一切できない状況に陥っているが、こういうときこそひとつの原稿が終わったら、JOICE&TONYのデュオを聴いて、気分一新といきたいものだと思う。
 そういう矢先、2つの原稿が終わった。さて、1曲聴きますか…。
 今日の写真はふたりのステージでの様子(CDの解説書より)。いい感じだよねえ。




 


 
 
| 情報・特急便 | 22:12 | - | -
IL DEVU
 総重量約500キロという、重量級の男性ヴォーカル・グルーブをご存じだろうか。テノールの望月哲也、テノールの大槻孝志、バリトンの青山貴、バスバリトンの山下浩司、この4人にピアニストの河原忠之が加わった、「IL DEVU」(イル・デーヴ)というグループで、世界で活躍する4人のイケメンヴォーカル・グループ、「IL DIVO」をもじって命名された。
 4人ともふだんはオペラ歌手として、リサイタルやコンサート歌手として活躍、河原忠之は指揮者やオペラのコレペティトゥールも務め、年間100回のステージをこなす超多忙な音楽家。
 2011年にコンサート・デビューを果たし、2013年12月にはデビュー・アルバム「DEBUT」をリリース(コロムビア)。その後、コンサートはほとんど完売となり、全員がスケジュールを調整して集まり、「飯会」と称した会でわしわし食べながら打ち合わせをしているという。
 昨日は、彼らのセカンド・アルバム「NUKUMORI」(9月16日発売)を前にインタビューを行った。
 大槻孝志だけは参加できず、4人だけとなったが、さすがに近くで会うとその迫力たるやスゴイ。なんでも、ひとりあたり体重90キロを切ったら、強制脱退させられるというルールがあるそうだが、「でも、ファンの方たちから、健康面を心配する声が多く届いているんですよね」と、ダイエットしたいという雰囲気も…。
 話題は結成時のことからネーミングに関すること、ステージでの役割、リハーサルから本番までの道のり、レパートリーに関して、今後の目標までいろんなことが次々に登場し、ジョークも飛び出し、笑いいっぱいのインタビューとなった。この記事は「レコード芸術」に書く予定になっている。
 セカンドアルバムは日本の歌も多く、歌詞を大切にしているとのこと。約3オクターブの音域をカヴァーし、美しくハモル四重唱を聴かせている。
 9月19日には紀尾井ホールで、CD発売記念コンサートが開かれるそうだ。
 グループのネーミングはコミカルだが、全員がすごく真面目で、音楽ひと筋。ステージと客席との対話を楽しみたいと声をそろえた。
 
 
| 情報・特急便 | 21:46 | - | -
ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声
 映画にクラシック音楽が使用される場合、そのプログラムやパンフレット、マスコミ用資料などに原稿を寄せることがある。
 今回は、9月11日に全国ロードショーとなる「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」の劇場公開用パンフレットの原稿を書いた。
 これはきびしいオーディションで主役をつかんだギャレット・ウェアリングが長編映画初出演となる作品で、美しいボーイ・ソプラノを聴かせている。
 彼が演じるのは、複雑な家庭環境に育った12歳の少年ステット。類まれなる美しい声に恵まれているが、投げやりな人生を送っていて、その才能を伸ばそうと努力しない。しかし、アメリカを代表する国立少年合唱団のオーディションを受けて入団したことから、人生が変わっていく。
 この合唱団の厳格な指導者を演じているのが、ダスティン・ホフマン。彼が演じるカーヴェルは、自身が音楽家としての才能を伸ばすことができず、指導者になったわけだが、神から美声を与えられているにもかかわらずそれを伸ばそうとしないステットにきびしくあたる。
 ここでは、ヘンデルやフォーレ、ブリテンなどの宗教曲やクリスマスキャロルが多数うたわれ、合唱団が日本ツアーにいくというシーンでは日本のわらべ歌「ほたるこい」も登場する。
 監督は、「グレン・グールドをめぐる32章」「レッド・バイオリン」などでおなじみのフランソワ・ジラール。キャシー・ベイツ、デブラ・ウィンガー、ジョシュ・ルーカスら名優が顔をそろえている。
 ステットは、保守的な先生たちと合わなかったり、少年たちの嫉妬やいじめに遭ったり、父親に実子とは認めてもらえなかったり、さまざまな苦難に遭遇するが、最後は彼の天使のような純粋無垢な歌声がすべてのことを洗い流し、輝かしいステージで燦然と輝く。そしてずっと切望していた「家族」を手に入れる。
 ボーイ・ソプラノという声域は、美しい声を与えられた才能のある少年が、ほんのひとときだけ発揮することができる稀有な歌声。幻想的で繊細で情感あふれる歌声は、聴き手の心に深く浸透し、夢を見させてくれる。
 ステットは苦難を乗り越え、ひたすら努力し、栄光をつかんだ。哀愁に満ち、孤独の影をただよわせるギャレット・ウェアリングが、見事な歌と演技を披露し、ステット役を好演している。
 今日の写真は、映画のチラシ。すばらしい歌声をぜひ聴いてほしい。


 
| 情報・特急便 | 22:16 | - | -
ビデオ・メッセージ
 先日撮影したNCAC音楽大学の講座のビデオ・メッセージが、「こんな形になりましたよ」と担当者のMさんから送られてきた。
 私が事務所のCD棚の前で、今回の講座の内容について語っているビデオである。自分の話している姿を見るというのも、なんだか妙な感じで、結構照れくさい。
 ぶっつけ本番で、台本もないため、ときどきことばがちょっとトチリ気味になっているところが気になったり、顔の表情がなんだかなあと思ったり、どうもマイナス要素ばかりに気持ちがいってしまう。
 でも、これをみんなが見てくれ、講座に参加してくれるわけだから、私も本当は胸を張って「これ見て、ぜひ参加してね。楽しいですよ」と、明るくいわなければならないんだろうな。
 もちろん、ビデオのなかの私はいつもの早口でまくしたて、いろんなことを一気にしゃべっている。講座では、これにもっともっと拍車がかかるはずだ(笑)。
 これは長野市芸術館のHPに掲載され、今日からアップされているようだ。
 こういうビデオ・メッセージ、私のHPでも、ゆくゆくはアーティストに登場してもらって掲載したいなと思っている。先日買ったカメラは、動画も撮れるし、まずはそこからスタートかな…。
| 情報・特急便 | 23:30 | - | -
ドミトリー・マスレーエフ
 昨夜は、サントリーホールでPMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)2015の東京公演があり、ワレリー・ゲルギエフ指揮PMFオーケストラの演奏が行われた。
 前半は、ロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲からスタート。ゲルキエフの熱血指揮に若きPMFオーケストラ(世界各地からオーディションで選ばれた若手音楽家が札幌のPMFに集結し、夏の1カ月間、世界を代表する音楽家から指導を受け、才能を開花させていく)が呼応し、みずみずしく情熱的な演奏を繰り広げた。
 次いで登場したのが、2015年のチャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門の優勝者、ロシア出身のドミトリー・マスレーエフ。ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番をエネルギッシュに、かつリリカルに奏で、優勝者としての実力を発揮した。
 この後、私はマスレーエフのインタビューが入っていたため、後半のショスタコーヴィチの交響曲第10番は聴かずに、楽屋へ直行。ゲルギエフがマスレーエフと長い間話しているのを待って、インタビューを行った。
 このインタビューは、音楽事務所ジャパン・アーツの依頼によるマスターインタビューで、これからいろんな媒体に書き分けをすることになっている。
 マスレーエフは、コンクール優勝の実感がまだ湧かないそうだが、その重圧は十分に感じているようだった。
「できる限り、優勝したことは考えないようにしています。歴代の偉大な優勝者のことを考えると、頭がパニックになりそうなので」
 こういって、実際に顔を手で覆い、頭を抱えていた。
 彼は1988年生まれ。モスクワ音楽院で学び、現在はイタリアのコモ湖国際ピアノアカデミーでインターンとして研鑽を積んでいる。
 来年、日本公演が予定されているが、まだ詳細は未定。だが、演奏したい作品や、もしも録音のオファーが入ったときに弾きたい作品など、あらゆることを私が次々に聞くため、シャイで寡黙な彼はそれでも一生懸命ことばを尽くして話してくれた。
 今日の写真は、インタビュー後のワンショット。最初に撮った1枚は、楽屋の照明がきつかったため、本人いわく「いやだー、ゾンビみたい」ということで、すぐに撮り直した。こっちは、うまく照明が当たっていたため、「うん、大丈夫」とOKが出た。
 ロシア人特有の大音量で勝負するパワー全開のピアニストではなく、柔軟性に富んだ叙情的な音楽が持ち味。来年のコンサートが楽しみだ。また、詳細が発表され次第、すぐに情報をお伝えしま〜す。

| 情報・特急便 | 22:35 | - | -
アルテミス・カルテット
 先ごろ、アルテミス・カルテットのヴィオラ奏者、フリーデマン・ヴァイグルの訃報が届き、大きなショックを受けている。
 アルテミス・カルテットには昨年インタビューしたばかりで、そのときにヴァイグルはとても元気だったからだ。
 このインタビュー時の様子は、2014年5月26日のブログに書いている。その写真の右端のロングヘアの男性がヴァイグルだ。とても知的で物静かで、笑顔のステキな人だった。
 アルテミス・カルテットの新譜は、ブラームスの弦楽四重奏曲第1番&第3番(ワーナー)。9月16日リリース予定だが、ヴァイグルの突然の死去により、海外のリリースが延期されることも考えられ、それにより日本の発売も遅れることが予想される。
 このブラームスは、アルテミス・カルテットならではの精緻なアンサンブル、情熱的で深々とした音色に仕上がっており、聴きごたえ十分。次号の「intoxicate」で演奏に関しての記事を書く予定になっている。だが、これがヴァイグルの最後の録音となり、追悼盤になってしまうとは、本当に信じられない思いでいっぱいだ。
 昨年インタビューしたときには、2012年8月に第1ヴァイオリンがラトヴィア出身のヴィネタ・サレイカに変わり、これから心機一転、新たな船出をすると4人が熱く語っていたのに、なんということだろう。
 この演奏を聴きながら、私はつい内声に耳を集中しがちになる。ヴィオラの音を無意識のうちに探してしまうのである。
 

 
| 情報・特急便 | 22:52 | - | -
川畠成道
 ヴァイオリニストの川畠成道とは、もうずいぶん長いおつきあいになる。
 2000年9月24日に初めてロサンゼルス公演を行ったときは現地に取材に行き、その熱いステージをいろんなところで紹介したものだ。
 その後も、ライナーノーツを担当したり、さまざまなインタビューをするなど、親交を深めてきた。
 そんな彼が、初めての無伴奏作品アルバムを録音した。題して「無伴奏の世界/川畠成道」(ビクター 8月19日リリース)。
 今日は久しぶりにインタビューをし、新譜のことから近況、来年の予定まで、いろんな話を聞いた。
 このアルバムは、パガニーニ、ミルシテイン、エルンストらの作品に加え、新垣隆の書下ろしである新作「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」が収録されている。ふたりは桐朋学園大学で学んだ友人同士で、川畠が1歳下。学生時代はよく一緒に演奏したり、新垣の作品を演奏したりしていた。
 昨年2月、新垣隆の問題が明るみに出たときは、本当に驚いたという。その後、本来の作曲家としての仕事で立ち直ってもらいたいと考えた川畠は、新垣に無伴奏作品を委嘱した。それが今回の作品である。
 今日は、その作品が生まれる経緯、新垣との密度濃い話し合い、初演のぎりぎりのタイミングに出来上がってきた新作、壮絶な練習の日々、昨年9月13日の初演時のことなど、あらゆることを聞いた。このインタビューは、来週木曜日アップのヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」で紹介するつもりである。
 いつ会っても、どこで会っても、川畠成道は真摯で前向きで、自分の目指す方向をしっかり見据えている。現代作品というのは、初演が終わると、その後他の人に弾いてもらえず、作品が埋没してしまうことが多い。川畠はこの無伴奏作品がそういう運命をたどることなく、いろんなヴァイオリニストに弾いてもらえるよう、そしてひとりでも多くの人に聴いてもらえるよう、作曲家とふたりで尽力していきたいと熱心に語った。そのためにはCDだけではなく、楽譜出版も望んでいるという。
 いまは11カ月の男の子がいるため、とても忙しいそうだが、「でも、ぼくは何もやっていないんですよ」と笑っていた。
 今年の夏は、アルバムのリリースに関していろんな行事が盛りだくさん。秋にはコンサートも組まれ、約30分におよぶ新垣隆の無伴奏作品がステージを彩る。
 今日の写真は、真面目な表情の川畠成道。「もう、デビューから15年経ったんですよ」というのを聞き、改めて月日の経つ早さを思い知った。
 彼に会うと、いつも私の脳裏には、あのロス公演のなんともいえない高揚した会場の空気が蘇ってくる。


 
 
| 情報・特急便 | 22:34 | - | -
モディリアーニ弦楽四重奏団
 カルテットの大好きな私が、いま注目しているのが、フランスの若き精鋭集団、モディリアーニ弦楽四重奏団である。
 初めて彼らのナマの演奏に触れたのは、2007年ナントで開催されたラ・フォル・ジュルネのコンサート。鮮烈な響き、みずみずしいアンサンブル、いかにも仲のよさそうな4人が奏でる演奏は、もっと聴きたいという強い欲求をもたらすものだった。
 彼らにインタビューもし、それぞれが個性的な性格ながら、学生時代の延長のように和気あいあいとした雰囲気に、限りない未来を感じたものだ。
 その後、何度か日本を訪れたが、今年は11月に来日し、21日(土)に神奈川県立音楽堂でコンサートが行われることになった(15時開演)。そのチラシに文を綴ることになり、改めて彼らのことをいろいろ調べ、インタビューのときの様子を思い出し、コメントを寄せた。
 今回のプログラムは、モーツァルトの弦楽四重奏曲第15番、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第1番、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」。
 メンバーはフィリップ・ベルナール(ヴァイオリン)、ロイック・リョー(ヴァイオリン)、ローラン・マルフェング(ヴィオラ)、フランソワ・キエフェル(チェロ)。2003年に結成されたこのカルテット、今年ですでに12年目を迎える。この間、世界各地で幅広い演奏活動を展開し、2014年にはエヴィアン音楽祭の音楽監督に就任した。
 今年もエヴィアン音楽祭は7月8日から14日まで開催され、ゲストにはマキシム・ヴェンゲーロフ、エマーソン弦楽四重奏団、ジェラール・コセ、マーラー・チェンバー・オーケストラ、ファジル・サイ、ゴーティエ・カピュソン、庄司紗矢香というそうそうたる名前が挙げられている。
 モディリアーニ弦楽四重奏団はドヴォルザーク、モーツァルトの弦楽四重奏曲を演奏することになっているが、シェーンベルクの「浄夜」ではエマーソン弦楽四重奏団と共演するというカルテット・ファンには願ってもない予定が組まれている。この夏、フランスに旅行する方、ぜひエヴィアンに足を伸ばしてみてくださいな。
 モディリアーニ弦楽四重奏団はこの音楽祭のあとも各地の音楽祭にひっぱりだこの人気で、休む暇もないほど熱い夏となりそうだ。彼らは今年4月、カーネギー・ホールで大成功を収め、すぐに次のシーズンの再訪を求められた。
 そうした勢いのまま、彼らは11月に来日する。今日の写真はそのチラシ。




 
 
| 情報・特急便 | 22:43 | - | -
キリル・ペトレンコ
 2018年のサー・サイモン・ラトルの退任に対し、次期首席指揮者・音楽監督の選任にあたっていたベルリン・フィルが、6月22日に楽員投票によりキリル・ペトレンコを選出したと発表した。
 ペトレンコは1972年、ロシアのオムスク生まれ。父はヴァイオリニストで、母は音楽学の講師という音楽一家に育つ。1990年、一家はオーストリアに移り、ペトレンコはウィーン音楽大学などで研鑽を積み、マイニンゲン歌劇場、ベルリン・コーミッシェ・オーパーなどの音楽監督を歴任。2013年、バイエルン州立歌劇場の音楽監督に就任した。
 ベルリン・フィルは5月に投票を実施していたが、楽員の意見が割れて結論に達することはできなかった。そこで1年以内に再投票を行うと発表していたが、6月22日の段階でペトレンコに決まった。
 ペトレンコは日本人にはまだなじみが薄く、その音楽性や人間性はあまり知られていない。ただし、ヨーロッパでは天才肌として知られ、2013年からはバイロイト音楽祭の新演出「ニーベルングの指輪」の指揮も担当している。
 ラトルが退任するのが2018年だから、これから3年間、ペトレンコの演奏に注目が集まるのではないだろうか。録音も行われるに違いない。
 思えば、ラトルがベルリン・フィルのシェフに就任した2年後の2004年、フィルハーモニーに取材に行き、いろんな話を聞いた。
「このオーケストラは猛獣のような集団で、強くて大きくて才能豊かで、ひとりひとりがとてつもない意志と力をもっている。毎朝、リハーサルにくるたびに、猛獣がいるところの扉を開けるような怖さがあるんだ。一気に100人が私に飛びかかってくるわけだからね」
 ラトルは当時、オーケストラをこんなことばで評していた。やがて両者は互いのよさを存分に理解し、いまや一体となった演奏を聴かせているが、ベルリン・フィルとはそんなすごい集団なのである。
 さて、キリル・ペトレンコに世界の目が集まっているわけだが、ぜひナマの演奏を聴いてみたいと多くの人が願っているに違いない。ミュンヘンに出かける人も多いんじゃないかな。
 今日の写真は、2004年にラトルにインタビューしたときのワンショット。ふだんはジーンズにシャツというラフなマエストロ。人柄もとても気さくで、サーとか、マエストロと呼ばれることを好まず、「サイモンと呼んで」と笑っていた。

| 情報・特急便 | 22:09 | - | -
SOL3 MIO(ソレ・ミオ)
ニュージーランドはラグビーが強い。私が大好きなオールブラックスは、ニュージーランド代表チームで、たくましく男っぽく、どこかユーモラスでもある。
 ニュージーランドは、1850年代に入植した英国人がラグビーを持ち込み、マオリ、サモア、フィジー、トンガといった南太平洋の島々のさまざまな人種がこれに融合し、彼らの高い身体能力とすばらしい運動能力が混じり合ってラグビーの基礎が築かれたようだ。
 なんでも、ニュージーランドでは、ラグビーは「ブラッド・スポーツ」と称され、祖先から次世代へと次々に受け継がれ、家族のなかに根付いていくといわれる。
 オールブラックスは世界的な強豪チームとして知られ、ユニフォームはまさに黒一色で、国際試合の前にはハカと呼ばれる民族舞踏を披露する。これはマオリの戦士が戦いの前に手を叩き足を踏み鳴らして自分の力を誇示し、相手を威嚇することに由来しているそうで、とても素朴でユニークなダンスである。
 そのニュージーランドから、SOL3 MIO(ソレ・ミオ)というヴォーカル・トリオが出現した。ペネとアミタイ・パティの兄弟と、いとこのモーゼス・マッケイによるトリオで、2013年に発売したデビュー・アルバムがニュージーランドで最速売上記録を樹立。発売から5カ月で、その年にニュージーランドでもっとも売れたアルバムというヒットを成し遂げた。
 その「オー・ソレ・ミオ〜癒しのオーシャン・ヴォイス」(ユニバーサル 6月24日発売)がついに日本上陸。オープニングは彼らの代名詞ともいえる「オー・ソレ・ミオ」で、これが実に陽気で楽しく、ついリズムに乗ってからだを動かしたくなる極上の音楽。パティ兄弟がテノールで、モーゼスがバリトンである。
 プログラムは、「マイ・ウェイ」「マリア」「オー・ホーリー・ナイト」から「誰も寝てはならぬ」まで多彩な選曲。日本盤ボーナス・トラックとして「あったかいんだからあ🎵」が入っている。
 これは、ぜひナマのステージを聴いてみたい。あったかくて陽気で、心から楽しめるステージになるのではないだろうか。
 これを聴くと、私にはオールブラックスの野性的なプレーが浮かんでくる。ニュージーランドは一度も行ったことがないが、ぜひ訪ねてみたい土地である。なぜか、自分の血が騒ぐのだ(笑)。
 今日の写真は、ジャケット写真。この「オー・ソレ・ミオ」を聴くと、ふだん聴き慣れたイタリア人のうたう地中海的な曲想とはまったく趣の異なる雰囲気が生まれ、まさに南太平洋のが空気がただよう。梅雨の季節に、ひと吹きの南国の風が吹き込んでくる感じだ。

| 情報・特急便 | 22:47 | - | -
ジョシュ・グローバン
 クラシックを専門としていると、他の洋楽の新譜を聴く機会はほとんどない。しかし、そのアーティストがクラシックに興味をもっていたり、ジャンルを問わずに演奏している人の場合は、インタビューなどの話が持ちかけられることがある。
 1981年ロサンゼルス生まれのシンガー、ジョシュ・グローバンもそんなひとりだ。彼は、1999年アンドレア・ボチェッリの代役としてセリーヌ・ディオンと共演。2001年には映画「A.I.」の曲をララ・ファビアンとデュエット。サラ・ブライトマンの全米ツアーの前座を務めたことも話題を呼ぶ。同年「ジョシュ・グローバン」でCDデビュー(ワーナー)を果たした。
 彼にインタビューをしたのは、2002年のことだった。この冬、冬季オリンピックの閉会式でシャルロット・チャーチとデュオを披露したり、テレビの人気番組「アリーmyラブ」に出演したりと幅広い活躍を続けていた。
 子どものころはミュージカルスターを夢に見、その後ジャズに傾倒し、やがてクラシックの歌唱法と演技の勉強を行ったのだという。
「ジャンルは問わないんだ。いい歌がうたえればいい。デビューCDにもいろんなジャンルの曲を入れたんだけど、特にこだわったのは歌詞。歌詞から何かメッセージが伝わってくる、そういう曲を集めた。1年半もかけて練ったんだよ」
 こう語るジョシュは、とてもフランクで自然体でナイスガイだった。
 名プロデューサー、デヴィッド・フォスターに見出されたジョシュは、バッハからモリコーネまで幅広い曲を録音。そののびやかな美声によるCDが、各地でヒットチャートを上昇中という時期だった。
 趣味はピアノとドラムを演奏することだそうで、すべての生活が音楽に密着していると語り、「演技も好きだよ」と付け加えた。
 そんなジョシュが古今の傑作ミュージカルをカヴァー。6枚目のオリジナル・アルバムにして、初めてのミュージカル名曲集「ステージズ」(ワーナー)をリリースした。33歳になったジョシュの歌声は、のびやかさは以前と変わらないが、表現力と存在感が増し、貫禄すら感じさせる。
 収録曲は、「チャーリーとチョコレート工場」「レ・ミゼラブル」「回転木馬」「オペラ座の怪人」「オズの魔法使い」などから15曲。ライナーのなかで、彼は選曲に関し、「このアルバムで伝えたいことは何か。自問しながら、共感できる歌詞、ヴォーカル的に独自性が発揮できる可能性、さらにミュージカルという非現実の世界を離れても、社会や人生に対する有意義なメッセージが内包されているか。この3つをポイントに、最終的に15曲に決まった」と語っている。
 久しぶりに聴くジョシュ・グローバンの歌はもちろん、彼の考えもまた変わらぬものが感じられ、チャンスがあれば本人に会って、また話を聞きたくなった。
 今日の写真は「ステージズ」のジャケット。ひげをはやしたせいか、かなり大人びて、男らしくなったよね。以前は、まだ学生のような雰囲気だったけど。




 
| 情報・特急便 | 22:59 | - | -
第15回チャイコフスキー国際コンクール
 いよいよ今日から第15回チャイコフスキー国際コンクールが始まる。6月15日から7月4日まで、ピアノとヴァイオリン部門がモスクワで、チェロと声楽部門がサンクトペテルブルクで行われる。
 一昨日はヴァイオリン部門、昨日はピアノ部門の第1次予選参加者の名前が発表され、ピアノは35名、ヴァイオリンは23名が第1次予選に参加することになった。
 各々の部門に日本人がひとりずつ選ばれているが、ここまでの審査のなかで、すでに内外ともに多くの実力者が姿を消してしまった。なんというきびしさだろうか。
 これから毎日チャイコフスキー・コンクールのサイトを見るたびに、一喜一憂しそうだ。
 今年もまた、各部門の審査員に現役のトップクラスの演奏家の名前がずらりと並び、この名を見ただけで同コンクールに対するロシア側の気合の入れ方がわかる。
 さて、もうすぐ現地では開会式が行われる。
 今回はどんなドラマが展開され、どんなスターが誕生するのだろうか。私の友人のKさんが、もうすぐコンクールを聴くために出発する。お土産話を聞くのがとても楽しみだ。 
 
 
 
 
| 情報・特急便 | 22:50 | - | -
第9回浜松国際ピアノコンクール
 今年はビッグな国際コンクールが重なる年だが、11月21日から12月8日まで、第9回浜松国際ピアノコンクールが開催される。
 今年は前回の288人を大幅に上回る42カ国1地域から449人の応募があり、5月21日から27日まで5人の審査員によるDVD審査が行われ、第1次予選に参加する21カ国1地域87名の出場者が決定した。
 今日はその記者会見が行われ、87人の詳細が発表された。それによると、平均年齢24.1歳、最年少17歳、最年長29歳、男性66人、女性21人、日本国籍20人、外国籍67人となっている。
 審査委員長は海老彰子、審査員はマルタ・アルゲリッチ、セルゲイ・ババヤン、ジェイ・ゴットリープ、ハン・ドンイル、アンジェイ・ヤシンスキ、マティアス・キルシュネライト、リ・ジエン、パーヴェル・ネルセシアン、アンヌ・ケフェレック、植田克己というメンバー。
 今日は実行委員会長の鈴木康友浜松市長、運営委員長の一柳慧、審査委員長の海老彰子が会見に出席し、コンクールの応募状況、予備審査の結果、第2次予選で演奏される三輪眞弘と山根明季子の新曲のことなどを報告、発表した。
 2014年12月、浜松市はユネスコ創造都市ネットワーク音楽分野にアジア初加盟し、コンクール開催時の12月4日から6日まで、世界創造都市フォーラムin浜松を開催するという。
 なお、先日亡くなった音楽写真家・木之下晃さんが半世紀にわたり撮影した巨匠ピアニストたちの写真が、アクトシティ浜松市民ロビーに10月15日から12月8日まで展示されるそうだが、これは生前木之下さんが選定した写真で、彼が企画した最後の作品展となるという。
 実は、今回のコンクールの公式講評(旧名称はオブザーバー)を依頼され、コンクールを聴いて報告書に原稿を寄せることになった。男性の音楽評論家4人と私がこの任に当たる。
 まだ、いずれのラウンドを聴くことができるか判明していないが、希望は第3次予選と本選を聴きたいと思っている。
 前回も前々回もお誘いをいただいたのに、単行本の最終校正や女性誌の特集の執筆などが重なり、聴きに行くことがかなわなかった。今年はぜひ、スケジュールを空けて、しっかり聴きたい。
 今日の写真は、記者会見後のワンショット。左から海老さん、鈴木さん、一柳さん。
 12月6日の本選2日目の演奏後、審査発表に次いで表彰式が行われる。いかなるスターが誕生するか、その瞬間が待ち遠しい。


 
| 情報・特急便 | 22:33 | - | -
辻井伸行
 つい先ごろ、辻井伸行のマネージャーから連絡が入った。32日間に渡るアメリカ、カナダ、ヨーロッパ公演を無事に終え、帰国したという報告である。
 今回の海外ツアーでは、やはり5月16日と17日にウィーンのムジークフェラインで行われたウィーン・デビューが際立つ。
 これは今秋から佐渡裕が音楽監督に就任するウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団との共演で、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を演奏したもの。2日間ともステージ奥に補助席が用意され、さらに立見席も満杯の大盛況だったという。
 演奏は大成功を博し、辻井伸行はアンコールに初日はラフマニノフの「パガニーニ狂詩曲」第18変奏を自身のアレンジで披露し、2日目はリストの「ラ・カンパネラ」を演奏した。
 私はこのウィーン・デビューが決まったときから、ぜひ現地に赴いて実際の演奏を聴きたいと願ったが、それもかなわず、陰ながら成功を祈っていた。
 こうした海外公演を経験するたびに、彼はひとまわり大きくなっていく。今回も、各地でさまざまな経験をし、演奏が肉厚になったに違いない。
 このウィーン・デビューの様子は、BSフジが収録している。今秋までに放映されるそうだから、また放映日が決まったらすぐに情報を流しますね。

 
| 情報・特急便 | 23:19 | - | -
ワシントン・ナショナル・ギャラリー展
「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2015」のメイン会場である東京国際フォーラムのすぐそばに、三菱一号館美術館がある。
 ここでは、現在ワシントン・ナショナル・ギャラリー展が開催され(5月24日まで)、アメリカ合衆国が誇る印象派コレクションが来日している。
 ラ・フォル・ジュルネの開催時は、連日とても混んでいて、音楽と美術の両面で芸術を楽しむ人が多い。
 ルノワール、マネ、モネ、ドガ、セザンヌ、ゴーガン、ボナール、ヴュイヤール、ブーダン、スーラ、ルドン、ピサロ、ロートレックらの作品が展示されているが、ゴッホの初期の作品もあり、とても興味深かった。
 このゴッホの作品は、1883年ころに描かれた「オランダの花壇」と題されたもので、整然とした花壇が並ぶ構図。色ごとに分けられて植えられているチューリップの花壇を描いたもので、不思議な静けさがただよっている。
 私はゴッホの初期の作品では、「ジャガイモを食べる人々」がもっとも好きな絵だが、これはその2年前の作である。
 やはり絵は実物を見ると、そのすばらしさに感動する。
 今日の写真は、絵画展のポスターやチラシになっているルノワールの「猫を抱く女性」。ルノワールでは、「アンリオ夫人」もとても美しい絵だった。

| 情報・特急便 | 22:00 | - | -
国際コンクール
 今年は5年に1度のショパン国際ピアノ・コンクールと4年に1度のチャイコフスキー国際コンクールという、2つのビッグな国際コンクールの重なる年だ。
 チャイコフスキー・コンクールに参加する人の名前はすでに現地のサイトで発表されているが、今日はショパン・コンクールの予備予選を通過した人の名前が発表された。
 ショパン・コンクールは今年の応募がとても多く、2014年12月1日に書類が締め切られた段階で450名のエントリーを数え、まずDVD選考が実施された。
 この段階で160名となり、予備予選が行われたわけである。今日の発表で84名が通過し、第1次予選に参加することができる。
 チャイコフスキー・コンクールは6月15日から7月4日までモスクワ(ピアノ、ヴァイオリン部門)とサンクトペテルブルク(チェロ、声楽部門)で、ショパン・コンクールは10月3日から20日までワルシャワで開催される予定だ。
 私のよく知っている若きピアニストの名前もあり、いよいよ近づいてきたなあと、胸が高鳴る思いがする。
 最近は、仕事で知り合いに会うと、必ず聞かれる。
「伊熊さん、チャイコフスキー・コンクールとかショパン・コンクールは聴きに行くんですか」
 どうやら、私は両コンクールの取材に行くという顔をしているらしい。だが、実際はまだ何も決めていない。
 コンクールの取材は昔から数多く行ってきたが、時間と経費がたくさん必要だ。現在はフリーランスゆえ、どこかから依頼がない場合は、すべて自費になり、とても大変である。
 というわけで、大金持ちではない私は、思案に暮れている。
 取材に行くにしても行かないにしても、経過と結果は大いに気になる。現在はネットの発達により、リアルタイムで演奏を聴くことができるようになった。
 さて、今年はいかなるスターが誕生するだろうか。
 各国の参加者の名前を見ながら、あれこれ想像している。
 

 
 
| 情報・特急便 | 22:28 | - | -
ダニエル・バレンボイム指揮シュターツカペレ・ベルリン
 毎年、1月から2月ころにかけて開催される東芝グランドコンサートが、2016年に35周年を迎える。
 このコンサートのプログラム原稿のインタビュー・ページを担当しているため、今回はいち早く来年の情報が届いた。
 節目となる35周年記念コンサートは、ダニエル・バレンボイム指揮シュターツカペレ・ベルリン(ベルリン国立歌劇場管弦楽団)が来日することになった。
 このオーケストラは、1742年にプロイセン王立宮廷楽団を母体として誕生。R.シュトラウスやカラヤンらが音楽監督を務め、ドイツ名門歌劇場のオーケストラとして知られる。バレンボイムは1992年より音楽監督を務めている。
 2016年の日本公演(1月31日〜2月25日、全国16公演)では、日本のコンサート史上これまでいずれの外来オーケストラも行っていないブルックナーの交響曲ツィクルス(第1番〜第9番)を東京で実施。加えてバレンボイムの弾き振りによるモーツァルトのピアノ協奏曲も予定されている。
 なお、2月の公演のいくつかは、ダーヴィド・アフカムが指揮を担当する。
 バレンボイムといえば、一昨年、「家庭画報」のウィーン・フィル特集のときに、ベルリンまで飛んでオペラの上演前にインタビューをしたことを思い出す。ものすごくタイトなスケジュールだったが、ひとつずつの質問に対して、とても理論的に効率よく、的を得た答えを戻してくれた。
 通常、オペラの本番前にインタビューが設定されることはない。このときは、こちらが本番前だからと気を遣っていたのに、当のご本人は涼しい顔。もちろん、手早く終わらせたいという気持ちは見えていたが、それでも日本からきたということで、いろいろと逆に気配りをしてくれた。
 バレンボイムは、以前もインタビューをしたことがあるが、何でも猛スピードでこなす名人だ。睡眠時間も極端に短いそうで、ピアノの練習も指揮活動の間にうまく組み合わせ、両立は問題ないとのこと。
 来春は、ブルックナーとモーツァルトという、まったく異なる曲想の作品をバレンボイムならではの切り替えの速さでこなし、充実したコンサートを聴かせてくれるに違いない。
 彼は最近、アルゲリッチともピアノ・デュオを行い、絶賛されている。いまはピアノを弾くことがたまらなく楽しいようだ。
 疲れを知らないエネルギッシュなバレンボイム、どんな指揮と弾き振りを聴かせてくれるだろうか。
「私はいつも演奏を心から楽しんでいますよ」。こう最後に語ったマエストロのことばが忘れられない。
 
| 情報・特急便 | 23:13 | - | -
阪田知樹
 1月末、初めてのインタビューですっかり意気投合してしまった若きピアニスト、阪田知樹に、またまたインタビューする機会が巡ってきた。今度は「CDジャーナル」のインタビューである。
 彼は4月24日に「スペイン狂詩曲〜阪田知樹デビュー!」と題したアルバムをリリースする(オクタヴィア・レコード)。今回のインタビューでは、その新譜のことを中心に話を聞いた。
 プログラムは、リストの「スペイン狂詩曲」、スクリャービンの「2つの詩曲」、ドビュッシーの「映像第興検廖▲轡腑僖鵑離團▲痢Ε愁淵紳3番、ラフマニノフの「ここは素晴らしい場所〜12の歌より」(阪田知樹編)という構成である。
 以前も話に出たスクリャービンのこと、デビューCDだからこその選曲へのこだわり、ショパンのピアノ・ソナタ第3番への深い思い入れなど、さまざまなことをことばを尽くして話してくれた。
 インタビューというのは不思議なもので、最初のときから波長が合い、話が無限に広がっていく人がいる。阪田知樹も、すでに2度目でこのタイプだ。
 5月5日には浜離宮朝日ホールでリサイタルが行われる予定。新譜に収録されている作品もプログラムに組まれている。
 さらに8月27日には、大阪のザ・シンフォニーホールで「ショパンとスクリャービン」と題したリサイタルが予定されている。
 2013年のヴァン・クライバーン国際コンクールにおいて、19歳で最年少ファイナリストとなった阪田知樹は、現在22歳。留学先のドイツと日本を往復し、精力的な演奏活動を展開している。
 今日の写真はインタビュー後のワンショット。ユーモアたっぷりに「コンサートのチラシ、もっていようかな」といい、このポーズになった。

| 情報・特急便 | 22:47 | - | -
キット・アームストロング
 先日インタビューした若きピアニスト、キット・アームストロングからメールが届いた。
 彼は2013年2月、ベルギーに近いフランスにあるÉglise Sainte-Thérèseというほとんど使われていなかった教会を購入し、ここで演奏会を行っている。
 この教会を修復し、コンサートで使えるようにし、若いアーティストに演奏の場を提供しているのだという。
 その教会で6月26日から28日までコンサートが行われるそうで、28日のコンサートに招待したいという内容のメールだった。
 もちろん、のどから手が出るほど行きたいが、旅費の問題も時間の問題もあり、聴きに行くことは難しい。
 大変残念だけど、今回はちょっと無理という返事を送った。
 今回わかったことだが、キットはふだんまったくぜいたくをしない。すべてを教会につぎ込み、自身の協会を設立し、このコンサートの収益もその協会に回して将来の音楽イヴェントで活用したいようだ。
 この教会の話に私がとても興味を示したため、キットは聴きにきてほしいと思ったようだが、なんといってもフランスだからねえ、そうそう簡単に行くわけにはいかない。
 でも、彼はとてつもない才能の持ち主でありながら、それに甘んじることなく視野を広くもち、社会性も備えている。
 この教会の話題になったとき、私がオルガンを設置して音楽祭を開催したいのかと尋ねたら、それがのちのちの夢だと語っていた。
 今年23歳。若きキットは、ぐんぐん才能を伸ばし、夢を次々に実現していくに違いない。陰ながら応援したい。
 
 
 
| 情報・特急便 | 22:39 | - | -
奥村愛
 先日、ヴァイオリニストの奥村愛にインタビューをするため、音楽事務所にいった。
 彼女に会うのは久しぶりで、先ずは雑談などをし、それから5月30日に紀尾井ホールで行われるリサイタルの話へと移った。
 このリサイタルは、奥村愛が綴る「一日」と名付けられ、今回のプログラムは朝から夜まで一日を俯瞰した内容だという。
 ピアノは藤井一興で、初共演だそうだ。
 このインタビューは、次号の「音楽の友」に書く予定になっている。
 奥村愛と話していると、のんびり、ゆったりペースに私もだんだん染まってくる感じ。「なんでもスローなんですよ」と笑うが、それが彼女のふんわかした温かい雰囲気を作り出す根源的な要素となっている。
 焦らず、気負わず、気取らず、常にマイペース。こういう人は、「一日」の使い方もゆったりしているんだろうな。
 いつも「私、写真を撮られるの、すごく苦手なんです」といっているが、ブログ用にさっとワンショットだけ撮らせてもらった。
 このインタビューは、リサイタルのプログラムだけではなく、チェリストの弟さんのこと、父親から譲り受けた楽器のこと、室内楽の共演者のこと、藤井一興に学生時代に室内楽のレッスンを受けたときのことなど多岐にわたった。
 今日の写真はその貴重な一枚。いつ会っても、ホント美しいよねえ。


 
| 情報・特急便 | 22:58 | - | -
NCAC音楽大学
 来年年5月、長野市の新たな文化芸術の拠点となる長野市芸術館がオープンする。ここは英語表記でいうとNagano City Arts Centerとなり、略してNACAと呼ばれる。
 今年は開館のプレイヤーにあたり、開館記念プレイベントとしてNACA音楽大学(NACA music college)と題した講座が開講することになった。
「音楽のわかる大人になろう! 講座」というキャッチフレーズのもと、ダイジェスト版としてこの5月から2カ月ごとに11月まで4つの講座が開かれる予定だ。
 講師は4人で、5月31日「ベートーヴェン入門」〜「運命」の聴き比べをもとに〜 柴田克彦氏(音楽ライター、音楽評論家、「編集工房Beethoven」代表)、7月18日「バレエ音楽はこうして書かれる」〜舞踊音楽の歴史とともに〜 加藤昌則氏(作曲家、ピアニスト)、11月15日「クラシックとは何か」〜クラシックとポピュラーはいつから分かれたのか〜 吉成順氏(国立音楽大学教授、音楽社会史)、そして私は9月19日に「ピアニスト山本貴志とコンクールの覇者たち」〜ベテランから注目の新人まで〜と題した講座で講師を務めることになっている。
 この4つの講座に通して参加すると、4時限目が終わるころには「音楽のわかる大人」になっているに違いないというコンセプトである。
 1回券は500円、4回セット券は1800円で、会場はホクト文化ホール(長野県県民文化会館)小ホール。全席自由で、定員各回100名となっている。
 担当の方から、私が講師を務める9月には、もう長野市芸術館の外観は出来上がっているかもしれないと聞き、とても楽しみになった。
 時間は毎回14時開講で、5月、9月、11月が60分、7月は90分である。
 来年からいよいよこのNCAC音楽大学は本格的に始まり、また新たなシリーズがお目見えするようだ。
 4人の講師とも、音楽について楽しくおもしろく、また内容の濃い講座にしようと考えている。ぜひ、一度入学してみてくださいな。
 今日の写真は出来上がったばかりのパンフレット。地元のデザイナーが色彩感豊かな楽しいデザインにしてくれたそうで、とても温かく親密的な仕上がりになっている。さあ、私も頑張らなくっちゃ。




  
 
| 情報・特急便 | 20:03 | - | -
第17回別府アルゲリッチ音楽祭
 昨日は、東京駅のすぐそばにある日本生命の会議室で、第17回別府アルゲリッチ音楽祭の記者会見が行われた。
 今年は5月9日から18日まで開催され、アルゲリッチ、ミッシャ・マイスキー、サーシャ・マイスキー、高関健指揮紀尾井シンフォニエッタほか実力派の演奏家が多彩なプログラムを披露する。
 1995年のプレコンサートから20年を迎える今年は、アルゲリッチ芸術振興財団の名誉理事、椎木正和氏から贈られた「しいきアルゲリッチハウス」と命名されたホールが完成。これは150人規模のサロンで、クオリティの高い演奏会が予定され、教育プロジェクトもスタートする。サロンにはアルゲリッチの愛称である「マルティータ」と名付けられたハンブルク・スタインウェイのピアノが設置され、5月15日に竣工する予定だ。
 しいきアルゲリッチハウスは未来への道を見つめ、100年後の人々へも音楽の喜びを運ぶことをモットーに、子どもたちの未来を見据えたプロジェクトやデビューコンサートシリーズも企画されている。
 なお、5月18日の音楽祭の最終日には、「〜子どもたちの未来を応援〜日本生命presentsピノキオコンサート支援チャリティin東京 アルゲリッチがつなぐもの〜未来への道」と名付けられたコンサートが東京オペラシティコンサートホールで開催されることになっている。
 記者会見には、ピアニストでアルゲリッチ芸術振興財団副理事長の伊藤京子、日本生命のコンサートの担当者が出席、音楽祭の概要と、しいきアルゲリッチハウスの内容などの説明が行われた。
 私は何度か取材に訪れたことがあるが、音楽祭の担当者の方々も関係者も、ボランティアの人たちも非常に熱心で、アルゲリッチはそうした人々に囲まれて、ここではとてもリラックスしたいい表情をしている。
 もちろん、演奏はすばらしく、いろんな人とのアンサンブルを心から楽しんでいるようだ。
 今年は、完成をとても楽しみにしているという自身の名を冠したハウスでの演奏に、アルゲリッチのすべてが注がれるに違いない。
今日の写真は記者会見の様子。右が伊藤京子、左が日本生命の担当者。



| 情報・特急便 | 23:03 | - | -
第20回宮崎国際音楽祭
 アイザック・スターンが音楽祭の初代音楽監督を務め、亡くなるまでの6年間で音楽祭の礎を築いたことで知られる宮崎国際音楽祭が、20回という記念を年を迎える。
 メモリアルイヤーの今年は、4月29日から5月17日までの19日間、メディキット県民センターを中心にさまざまな会場で開催される。
 今日は、銀座の三笠会館で記者発表が行われ、総監督の青木賢児、音楽監督の徳永二男、宮崎県東京事務所長の桑山秀彦、宮崎県立芸術劇場館長の佐藤寿美の各氏が概要説明と質疑応答を行った。
 今年はピンカス・ズーカーマン、ジュリアン・ラクリン、ボリス・ベルキン、サーシャ・マイスキー、ミッシャ・マイスキー、アマンダ・フォーサイス、アンジェラ・チェン、リリー・マイスキー、シューイン・リーという外国人演奏家に加え、諏訪内晶子、三浦文彰、広上淳一、横山幸雄、仲道郁代、上原彩子、吉野直子、高木綾子、漆原朝子、漆原啓子、野平一郎、福井敬をはじめとする日本人演奏家も参加し、豪華な顔ぶれとなっている。
 メインプログラムは、日本人作曲家の現代音楽の室内楽や各アーティストによるアンサンブル、精鋭たちの集まりによる宮崎国際音楽祭管弦楽団によるオーケストラ演奏、演奏会形式によるオペラ、教育プログラムなどが組まれ、スペシャルコンサートも多数用意されている。
 今日は、青木総監督が20周年を機に退任されるとのことで、アイザック・スターンとの思い出、彼にまつわるエピソードなどが紹介された。
 これまで一度も取材に訪れたことはなかったが、今年はいずれの日かスケジュールを見て、足を運ぼうと思う。
 今日の写真は「春咲いてハミング」というキャッチとハミングバードが描かれたチラシ。まさに春爛漫の南国で花開く音楽祭となりそうだ。


 
| 情報・特急便 | 23:43 | - | -
トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団
 いよいよ今週末からトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の日本ツアーが始まる。
 2月20日から3月2日まで、大阪、東京、広島、福岡、金沢、名古屋、仙台、川崎の順で8公演が組まれている。
 この東芝グランドコンサートは毎年プログラムの原稿を書いているため、今日はいち早くプログラムが送られてきた。
 今回は、ソリストのルノー・カプソンと、ユリアンナ・アヴデーエワのインタビュー記事を担当している。
 ただし、カプソンの出演は2月21日のサントリーホールゆえ、聴きにいくことができない。この日は、先日も書いたように、九州の日田に講演にいくことになっているからだ。ああ、本当に残念。カプソンのサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番は、すごく聴きたいのに…。
 アヴデーエワは、3月2日のミューザ川崎シンフォニーホールだから、聴くことができる。こちらはショパンのピアノ協奏曲第1番である。
 トゥールーズは、1998年6月に取材で訪れたことがあるが、とてもおだやかな美しい町で、レンガ造りの建物の色が統一された、「ばら色の町」と呼ばれるにふさわしいところだった。
 あれからオーケストラの響きはどのように変化しだたろうか。私が訪れたときは、名指揮者の誉れ高いミシェル・プラッソンが首席指揮者の任にあり(現在は名誉指揮者)、オーケストラがぐんぐんと実力を伸ばしている時代だった。2008年にはトゥガン・ソヒエフが音楽監督に就任し、楽員もかなり若返り、いまやフランスを代表するオーケストラのひとつといわれるまでになった。
 ソヒエフは、1977年ロシア連邦北オセチア共和国生まれ。いま、若手指揮者のなかでもっとも注目されるひとりで、2012年からベルリン・ドイツ交響楽団の首席指揮者、2014年からモスクワ・ボリショイ劇場の音楽監督・首席指揮者も務めているという超多忙な身。
 今回の演目は、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、ムソルグスキーの「展覧会の絵」、リムスキー=コルサコフの「シェヘラザード」など、想像力を喚起する物語性豊かな作品が組まれている。
 今日の写真は、できあがったばかりのプログラムの表紙。さあ、各地にフランスの歌心あふれるオーケストラの音色が響く。ソヒエフの手腕が思いっきり発揮されるに違いない。


 
| 情報・特急便 | 23:13 | - | -
メルビッシュ湖上音楽祭ジャパン・ツアー2015
 今日は、オーストリア大使館の大使公邸で、「メルビッシュ湖上音楽祭ジャパン・ツアー2015」のプレス発表会が行われた。
 この世界最大級の野外オペレッタ・フェスティヴァルとして名高いメルビッシュ湖上音楽祭は、1957年にオーストリアのブルゲンラント州に位置する世界遺産ノイジードル湖上で開始され、約60年に渡り、門外不出の音楽祭といわれてきた。毎夏20万人もの観客が世界各地から集まり、湖に浮かぶ5000屬箸い広大な舞台で繰り広げられるオペレッタに酔いしれる。
 創設当初は沼地や草原のような場所で行われ、歌手もオーケストラのメンバーも蚊に悩まされたそうだが、徐々に規模が大きくなり、整備され、現在は7000席を有し、照明や音響設備も整い、衣装も華やか。レストランやカフェも充実するようになった。
 2012年に350名の候補者から選出された、ダグマー・シェレンベルガーが総裁に就任し、ようやく長年の交渉が実って日本公演が可能になったという。
 日本公演は9月3日(愛知県芸術劇場大ホール)、9月5日(ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ大ホール)、9月6日(グランシップ 静岡県コンベンションアーツセンター これはまだ予定)、9月8日(アクロス福岡シンフォニーホール)、9月10日、11日(河口湖ステラシアター)で開催される。
 演目は、J.シュトラウスの「こうもり」。
 今日は演出を手掛け、「こうもり」のフロッシュもうたうことになっているゲアハルト・エルンストが記者会見にも駆けつけ、日本公演への抱負、演出の内容、音楽祭の魅力などを雄弁に語った。
 この人は歌手ならではのトークで、演出について話していると、突然「ここはこういう感じで」とうたい出す。その声の肉厚でよく通ること。それも一度だけではなく、何度も歌声が飛び出した。
 体躯堂々、明朗で、まさにオペレッタの舞台にピッタリ。
 なお、今年の7月9日から8月22日にかけて開催されるメルビッシュ湖上音楽祭の演目は、J.シュトラウスの「ヴェネツィアの一夜」。
 会見を聞いているうちに、現地に取材に行きたくなってしまった。真夏の湖で聴くオペレッタ、きっと心に深く刻まれる思い出深い演奏になるに違いない。
 今日の写真は記者発表の様子。右からペーター・シュトーラー(オーストリア大使館文化担当公使)、松田暁子(ドイツ語通訳)、ゲアハルト・エルンスト(演出家、俳優)、原源郎(プロアルテムジケ代表取締役社長)。



 もう1枚は、ゲアハルト・エルンスト。近くで会うと、迫力十分。話し声も胸の奥から出てくる感じで、身体全体が共鳴していた。もっとうたってもらいたかったな(笑)。



 
 
| 情報・特急便 | 22:22 | - | -
アルド・チッコリーニ
 イタリア出身で、現在はフランス国籍のピアニスト、アルド・チッコリーニが、2月1日パリ郊外のアニエール=シュル=セーヌの自宅で亡くなった。享年89。
 日本の音楽事務所が伝えるところによると、ここ数週間、体調を崩して入院していたものの、退院して自宅に戻ったところで帰らぬ人となったそうだ。
 最後の来日公演は昨年の6月で、そのときの様子は6月18日のブログに綴った。
 今年は90歳を記念し、日本と日本の聴衆を深く愛していた彼は、11 月から12 月にかけて記念公演を行うことになっていた。
 実は、昨年インタビューを申し込んであったのだが、スケジュールの関係で行うことができず、今年は実現可能になる予定だった。本当に残念だ。
 チッコリーニは80歳を超えてなお精力的に舞台に立ち、エネルギーあふれる演奏を聴かせてくれた。そして、録音も数多く残されている。
 いまはそれを反芻し、すばらしい演奏を思い出すことしかできない。同時代に生きていてよかった、と心から思わせてくれるピアニストだった。
 今日の写真は、私の大好きなチッコリーニのアルバムの1枚のジャケット(キングインターナショナル)。モーツァルトの幻想曲、ピアノ・ソナタ第14番、第12番とクレメンティのピアノ・ソナタが入っている。チッコリーニはこの解説書のなかでこう語っている。
「私は何かを演奏するのに、急ぎすぎることはありません。自分をそこに見いだす時間が必要なのです」
 ゆったりと円熟したピアニズムで披露するモーツァルトとクレメンティが、そのことばの真意を表現している。


 
| 情報・特急便 | 19:49 | - | -
チョン・キョンファ
 昨夜遅く、ソウル出張から戻った。
 チョン・キョンファはこれまで演奏は聴いたことがあるが、取材などを行う機会はなく、今回は初めてのインタビューとなった。
 演奏から抱いたイメージとはまったく異なり、初めて会ったのにとても親密的な感じで接してくれた。話も子ども時代のことから母親のこと、兄弟姉妹のこと、恩師たちのこととその教え、指の故障で演奏できなかったときのこと、教えることについて、いまチャリティに意義を見出していること、ソウルとニューヨークでの生活、若いヴァイオリニストについてなど、実に多岐にわたる話を聞くことができた。
 彼女はひとつの質問に対し、思いっきり自身の考えを熱く語る。その口調は、全体的には物静かで思慮深く、ことばを選びながらじっくりと話しているのだが、ある人がこんなことをいったというようなときは、急にテンションが上がって声高になったり、一気に口調が変わったりする。
 まるでヴァイオリンの演奏のようにその声は変幻自在で、役者のよう。笑顔になったり、真剣な表情になったり、またあるときは怒ったり、心を吐露したり、長時間におよぶインタビューの間、すべてをさらけ出すような話ぶりだった。
 このインタビューは、ソウルのGANA ART CENTERという現代アートを展示している美術館の一室で行われたのだが、インタビュー後にみんなでチョン・キョンファを囲んでランチをいただいた。
 そのときも、いまの韓国の文化的な状況、教えている学生たちの様子などを雄弁に語り、日本の若い音楽家の状況にも興味津々の様子だった。
 彼女はいま、「演奏することがもっとも大切で、他のことは二の次」と明言していた。指の故障が癒え、ステージに立つことがたまらなく楽しいのだという。スケジュールはびっしりで、超多忙とのこと。
 このインタビューは、今回の日本ツアーの公演ホールの冊子、プログラム、新聞、雑誌、WEBなどに書き分けることになっている。
 日本公演は4月15日から26日の間に全国6カ所で行われ、東京文化会館、愛知県芸術劇場、ザ・シンフォニーホール、アクロス福岡、相模原市民会館、サントリーホールで開催される。
 プログラムは2種類が用意され、Aプロはベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番「春」、同第7番、ウェーベルンの4つの小品、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」。Bプロはフォーレのヴァイオリン・ソナタ第1番、グリーグのヴァイオリン・ソナタ第3番、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ「クロイツェル」が予定されている。
 これらの曲目に関してもいろんなことを聞き、そのつど思い出話も盛り込まれた。なお、共演するピアニストは、前回2013年、15年ぶりに来日したときと同様ケヴィン・ケナーである。
 私はケナーがショパン国際ピアノ・コンクールを受けたときから聴いているため、彼の話でも盛り上がった。
 これからいろんな媒体に記事を書いていくことになるが、本当に実り多きインタビューだった。韓国料理もおいしかったし、食材もたくさん買ってしまった(笑)。順次、紹介していきます。
 今日の写真は、インタビュー中のチョン・キョンファ。この部屋にはリンゴの絵があって、それがお気に入りのようだった。彼女が座っているのも、実はアートのひとつ。「すわっちゃって、いいのかしら」といいながら、ちゃっかり腰かけてポーズ。お茶目なひとこまも。





 
 
| 情報・特急便 | 23:09 | - | -
寺下真理子
 ヴァイオリニストの寺下真理子は、自分のあるべき姿、やるべきこと、方向性などを確固たる思いで見つめ、邁進している人である。
 先日、インタビューで会った彼女は、いまのクラシック界でひとりの若手ヴァイオリニストがいかにしたらみんなに理解してもらえるか、演奏を聴いてもらえるかを真剣に模索していて、そうした気持ちを率直に話してくれた。
 2月4日には新譜「AVE MARIA」(キングレコード)がリリースされるため、その話を聞くつもりだったが、彼女の生き方に非常に興味をもったため、自然にそちらの方向に話題が広がり、本音を聞くことができた。
 このアルバムは、クラシックからミュージカル、映画音楽、自作まで含めたジャンルを超えた作品を演奏したもの。流麗で温かな音色が特徴である。インタビューは、次号の「intoxicate」に書くことになっている。
 パッと会うと、いまどきのおしゃれで美形でキュートな若手アーティストだと思うのだが、話しているとまったくイメージが変わる。自身が「ちょっと変わっている」というように、人と群れることが苦手で、自分自身をしっかりもっている人と話すのが好きだそうだ。これからどういう生き方をしていきたいか、という話に花が咲き、こんなに若いのにそうしたことをじっくり考えていることに驚かされた。
 私も本来、人と群れるのは好きではないため、よく心情が理解できた。でも、日本では、とかく人と群れる方が生き方として楽なのだと思う。私もこれまでそういう面では自分の性格とつきあうのに苦労したため、彼女の性格や悩みがひとごととは思えなかった。
 でも、インタビュー記事では、音楽にフォーカスしたことを書くつもりである。そこに人間性を示す意味で、ちょっとキャラクターを加えたいと思う。音楽は、その人の生き方がそのまま演奏に反映されるからである。
 今日の写真は、インタビュー後の1枚。やっぱり写真では、かわいらしさがクローズアップされるわねえ。超個性派なんだけど(笑)。


 
| 情報・特急便 | 22:36 | - | -
阪田知樹
 若き才能に触れる取材は、本当に楽しい。
 今日は、ハノーファーに留学している21歳のピアニスト、阪田知樹にインタビューするため、銀座のヤマハを訪れた。
 初めて会ったにもかかわらずとても話やすくて、昨秋から始まったドイツでの生活、演奏会のための日本との往復、各地でのコンサートの様子、いま師事している先生たちとのこと、ヴァン・クライバーン・コンクールのこと、古い録音のことなど内容は多岐にわたり、話が弾んだ。
 このインタビューは3月公開のヤマハのWEB「ピアニスト・ラウンジ」に書くことになっている。彼は現在、このサイトにエッセイを綴っており、それがとても自然体で楽しい文章。ぜひ、クリックしてみてくださいな。
 とりわけ私が驚いたのは、昔の録音をたくさん聴いていること。多分にマニアックな話になったが、それがまた話が弾む要因で、ヤマハのサイト関係者の人たちもふたりの話に大笑いしていた。
「阪田さんと伊熊さんの話のテンポ、すごいですよねえ。昔からの知り合いみたい。終わってほしくないくらい楽しい!」
 こういわれるほど、リズムがよかったようだ。
 彼は長身でスリム。舞台映えするタイプですゾ。
 ぜひ、今後とも長く応援していきたいピアニストである。次はぜひ、ナマの演奏をじっくり聴いてみたい。
 いろんな話を聞いたので、それを読みやすいようにまとめるつもりだ。
 今日の写真はピアノの前での2枚。「笑顔はあまり得意じゃなくて…」なんて、カメラマンにいっていたけど、そりゃ冗談でしょう。私との話のときは、ず〜っと笑いっぱなしだったじゃない(笑)。
 インタビューではスクリャービンの話に花が咲いたので、ぜひともそれを聴きたいな。




 
 
| 情報・特急便 | 22:24 | - | -
ヴォーチェス8
 イギリスは、合唱の盛んな国である。
 教会の聖歌隊をはじめ、大学の仲間が集まって合唱団を結成したり、ア・カペラのグループも多い。
 そんなイギリスの8人の若手歌手によって結成されたヴォーチェス8(VOCES8)は、いまもっとも話題を集めているア・カペラ・グループ。古典的な宗教作品からポップス、ジャズまで幅広いレパートリーをもち、国際的な活動を展開している。
 2003年にウェストミンスター寺院聖歌隊出身者たちで結成され、その後少しずつメンバーが変わったものの、当初の合唱を楽しむ気持ち、聴き手とその楽しさを分かち合う気持ちに変わりはない。
 今日は、来日中のヴォーチェス8のメンバーふたりにインタビューを行った。
 話を聞いたのは、ポール・スミス(バリトン)と、バーナビー・スミス(カウンター・テノール)の兄弟。2歳上の兄ポールがグルーブのリーダー的存在で、さまざまな交渉や実務をこなし、弟のバーナビーが芸術監督として音楽面での責任を担っている。
 結成時からのメンバーは4人で、あとのメンバーはシビアなオーディションによって選抜されたそうだ。
 このインタビューは、ヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に書くことにしている。
 ふたりともとても人なつこい性格で、どんな質問にもことばを尽くして丁寧に答えてくれる。それも常に笑顔を絶やさず、相手の目をまっすぐに見て話す。
 彼らの新譜は「夕べの祈り〜奇蹟のア・カペラ」(ユニバーサル)と題したアルバムで、さまざまな時代の曲が収録されている。
 メンバーは、ソプラノふたり、カウンターテノールふたり、テノールふたり、バリトンとバスがひとりずつという構成。
 来週の23日には、14時から東京オペラシティコンサートホールでクリスマス・コンサートが開かれる。ここでは、クリスマスに因んだ幅広い曲がプログラムに組まれている。
 彼らは、2005年にイタリアのゴリツィア国際合唱コンクールで優勝した実力派。いまやコンサート活動と教育活動の2本を柱に、大活躍。イギリスの最前線をいくア・カペラ・グルーブに成長した。
 CDを聴くと日常の煩雑なことから解き放たれ、一気に別世界へと運ばれる感じを抱くが、きっとナマを聴いたらもっと強烈な印象で、魂が浄化するような気分になりそうだ。いまからすっごく楽しみ…。
 今日の写真は、インタビュー後のふたり。左が兄のポール、右が弟のバーナビー。顔はあまり似ていないけど、声の質感は同じものがある。よく電話で兄弟をまちがえるという話があるけど、そんな感じ。
 コンサートの日は、ぜひメンバー全員の写真を撮りたいな。


 
  
| 情報・特急便 | 22:03 | - | -
アリーナ・イブラギモヴァ
 ロシア出身で、10歳でイギリスに移ったヴァイオリニストのアリーナ・イブラギモヴァは、2005年に初来日以来、何度も日本で演奏し、人気の高いアーティストである。
 これまで、J.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリン・バルティータ全曲リサイタル」、ピアニストのセドリック・ティベルギアンとのベートーヴェンの「ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会」、イザイの「無伴奏ヴァイオリン全曲リサイタル」など、意欲的なプログラムを披露してきた。
 その彼女が、盟友のセドリック・ティベルギアンと組んで、モーツァルトの「ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会」を開くことになった。
 すでにロンドンのウィグモア・ホールでは第1回が行われたが、東京・王子ホールでは、2015年10月1日、2日、3日にプログラム1〜3を、2016年3月24日、25日にプログラム4、5を演奏する予定だ。
 今日はその話を聞きに、宿泊先のホテルに出向いた。
 もっとも大変だったのは、ソナタ全曲の配分だったそうで、いずれの回もほぼ同じ時間内で収めるようにしなければならず、しかも曲の内容や調性、全体の流れを考慮しなければならない。丸2日間ずっと考え、パズルのように作品をあてはめ、5回の選曲を決めたそうだ。
 アリーナは、キアロスクーロ・カルテットという弦楽四重奏団でも第1ヴァイオリンを務め、このカルテットもまた高い評価を得ている。マネージャーのMさんによると、このカルテットも2016年に来日が予定されているという。
 今日のインタビューは、「日経新聞」とヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に書くことにしている。
 モーツァルトのヴァイオリン・ソナタについはもちろんのこと、セドリックとの相性のよさ、メニューインの教え、両親のこと、使用楽器のこと、カルテットでのガット弦での演奏、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタについてなど、幅広い話を聞くことができた。
 趣味を聞いたら、お料理が好きで、インド料理が得意とのこと。スパイシーな味が好みなのだそうだ。
 アリーナの演奏は情熱的で推進力に満ちているが、柔軟性に富み、聴き手を温かく包み込むヒューマンな味わいも備えている。
 来年から始まるモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏、「自分にとって大切な新たな試み」と語っていたが、本当に楽しみである。
 今日の写真はインタビューを終えて、チャーミングな笑顔を見せるアリーナ。ほとんどノーメイクでラフな普段着なのにこの愛らしさ、男性ファンが多いのも、わかるよねえ(笑)。


 
 
| 情報・特急便 | 22:01 | - | -
「第九」の映画
 今年は、映画の監修をする年のようだ。
 夏に「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」の監修の仕事をしたのだが、今度はサラエボで行われたベートーヴェンの「第九」のドキュメンタリー映画の監修をすることになった。
 まだ詳細は発表できないが、かなり内容の濃いものになりそうだ。
 今日は、その打ち合わせで、NHKに出かけた。NHKのラジオの仕事をしている知人のMさんが、映画のナレーションを担当することになっており、彼からこの仕事の紹介があったためである。
 映画のプロデューサーのGさんは初対面だったが、初めからさまざまな話に花が咲き、映画のこと、ロケ先でのこと、コンサートの様子、演奏者たちの裏話など、多くの話を聞くことができた。
 私の仕事は1月に入ってから始まるようで、その前に出来上がった映像を見せてもらえるようだ。
 今年は、ベートーヴェンに関する仕事が多い。何か、連鎖を感じる。
 NHKのMさんとも、先日ある記者会見で偶然会い、いろんな話をしているなかで、「家庭画報」の話が出た。彼は去年も「家庭画報」のウィーン・フィル特集を購入してくれた。
 今年も雑誌を読んでくれ、映画のプロデューサーのGさんにも薦めてくれたそうだ。そしてこの映画監修の仕事につながった。
「何か、偶然が重なっているよねえ」
 Mさんもそういっていたが、私も偶然が重なったことに正直いって驚いている。実は、サラエボのコンサートの指揮者(日本人)に、私がインタビューをしていることも偶然だった。
 なんとも不思議な縁である。
 また、近々、映画の内容が決まったら、詳細を発表します。
  
| 情報・特急便 | 22:23 | - | -
ルノー・カプソン
 今日は、夕方からフジテレビに出向き、来年2月20日から3月2日まで全国8箇所で行われる「東芝グランドコンサート2015」のソリストにひとり、ヴァイオリンのルノー・カプソンに電話インタビューを行った。
 これはプログラムと「モーストリー・クラシック」のためのインタビューで、演奏旅行でドイツに滞在しているルノーに、フランス語の通訳Fさんを介して行われた。
 ルノー・カプソンはカピュソンとも表記される。1976年フランス生まれの実力派で、私はその官能的で幻想的な美音にほれ込んでいる。
 これまでナントや東京で何度かインタビューをしているが、いつもゆったりとことばを選んで話し、いつも夢見るような表情をしている。
 ところが、今日は電話インタビューということで、お互いの顔が見えないため、彼は私のいつもながらの早口の質問と通訳のFさんのテンポのいい訳に押されたのか、いつもとは打って変わって雄弁でどんどんしゃべる。
 ときおり咳をしたり、鼻をブーッとかむ音などが聞こえてきたが、しゃべっているときは元気な声だ。
 今回の日本公演のサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番について、共演者のトゥガン・ソヒエフ指揮トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団について、使用している楽器について、これまで共演した指揮者について、これからの予定など、さまざまなことを話してくれた。
 ついさきごろリリースされた「フランク、グリーグ、ドヴォルザーク ヴァイオリンとピアノのための作品集」(ワーナー)のライナーを書いたため、その共演者であるピアノのカティア・ブニアティシヴィリについても話を聞いた。もう1枚、いま抱えているライナーノーツのマルタ・アルゲリッチ、ミッシャ・マイスキーとの共演による2002年、2003年のルガーノ音楽祭のライヴ(ワーナー、再発売)の話も聞くことができた。
 今日は、その場に居合わせた全員が納得するような密度濃い内容のインタビューとなり、ルノーの演奏に対する期待が高まった。
 この記事は、今月中に入稿し、担当者みんなが晴れやかな気持ちでお正月を迎えられるようにしなければならない。というわけで、私が急がなくっちゃね(笑)。
 インタビューが終わって、ルノーは「インタビューしてくれてありがとう」などといっていたが、きっと早口でガンガンいろんなことをしゃべらされて、さぞ疲れたに違いない。だって、いつもはホント、ゆったりペースだもんね。
 来日したら、こちらこそ、「インタビュー、ありがとう」といわなくては。
 サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番は、彼にとってとても大切な意味をもつコンチェルトだということがわかった。それを来春、日本公演でたっぷりと披露する。
 特有の美音に包まれた、熟成した演奏が待ち遠しい。
 
 
 
| 情報・特急便 | 22:24 | - | -
練木繁夫&海老彰子
 昨年インタビューしたピアニストの練木繁夫と海老彰子の記事が、ヤマハのWEB「ピアニスト・ラウンジ」にアップされた。
 おふたりとも、とてもいい雰囲気でインタビューさせていただくことができ、かなり長い記事を書くことができた。
 練木繁夫はアメリカ、海老彰子はフランスでの生活が長い。それぞれ多くの音楽家との交流を通して、音楽家として成長してきたという。
 その話を綴り、貴重な思い出話にも触れている。
 ぜひ、一度サイトに寄ってみてくださいな。
 
| 情報・特急便 | 17:16 | - | -
田中彩子
 コロラトゥーラという声域は、鳥の鳴き声や天使の歌声などを連想させ、人間業とは思えないその高音に、聴き惚れてしまう。
 22歳でベルン州立歌劇場の「フィガロの結婚」でソリスト・デビューを飾り、以来ヨーロッパを中心にオペラとコンサートの両面で活躍している田中彩子は、そんなコロラトゥーラのなかでも特に高い声を得意とするハイコロラトゥーラだ。
 そんな彼女が、「華麗なるコロラトゥーラ」(エイベックス)と題したデビュー・アルバムをリリースした。
 ここにはモーツァルトの「魔笛」より「夜の女王」、ドリーブの「ラクメ」より「鐘の歌」、オッフェンバックの「ホフマン物語」より「生垣に小鳥たちが」をはじめとする超高音を要するアリアがずらりと勢ぞろい。
 ただし、彼女の歌声はすこぶる自然で聴きやすく、作品の内奥へとすんなりといざなわれていく。気負いも気取りもまったくなく、天性の高音が朗々と響きわたる感じだ。
 そのアルバムに関してインタビューを行った。
 実際に話してみると、ヨーロッパのオペラ界で生きていく大変さを背負い、日々さまざまなものと戦っている芯の強さを感じさせる人だった。
 これまでウィーンを中心に活動をしてきたが、オペラの世界で日本人が活動していくのは容易なことではない。彼女自身「私は王道を歩いてきたわけではなく、雑草のような存在ですから」と、こともなげにいう。
 そのたくましさ、根性の強さが、なんとも小気味よい。からだが大きく、声量もすごい人たちのなかにあって、自分の個性、役割、立場、居場所というものをきちんとわきまえている。
 いろんな話を聞くうちに、自然に応援したくなってきた。このインタビューは、「CDジャーナル」に書くことになっている。
 彼女はデビューCDを記念し、3月18日に紀尾井ホールでリサイタルを開く。
「日本の方たちの前でうたう方が緊張するんですよね」
 海外生活の長い田中彩子は、もう外国の聴衆の前でうたうことに慣れていて、そのシビアでストレートな反応にも対処できる。だが、まだ日本の聴衆の前でうたうのは、「怖い」そうだ。
 でも、きっと大丈夫。彼女だったら、歌声そのもので聴き手を即座に魅了してしまうに違いない。なにしろ、みんなが驚嘆するほどの超高音を楽々と自然に出し、役になりきってしまうのだから…。
 私がさらにびっくりしたのは、その食事。2013年の南米公演で絶賛されたのだが、そのときにお肉のおいしさにハマり、以前からお肉大好き人間だったのに拍車がかかり、いまや肉類がないとダメだそうだ。
「牛肉です。塩コショーだけでさっと焼いて、もりもり食べる。これを食べないと、声が出ませんね」
 おおっ、すばらしい。こういう日本人がいたか。彼女の快進撃は、肉食にあったのね(笑)。 
 実は、このインタビューの間、8歳上のお兄さんが付き添っていて、実は彼がマネージャーを引き受けているのだそうだ。彼はほかにも仕事をもっているのだが、ほかならぬ妹のこと、ひと肌脱いだようだ。
 今日の写真は、最初の1枚がインタビュー後の田中彩子。その後、オフレコでいろいろ話しているときに、お兄さんが「私の写真は?」とジョークでいったのを聞き、「それじゃ、一緒に写しちゃいましょう」といってパチリ。これまでマネージャーが私のブログに登場したことはないため、第1号となった。
 田中家は、上のお兄さんも留学し、みんな海外で教育を受けているため、裕福な家系だと思われがちだが、けっしてそうではなく、両親は「大学4年間だけ」という約束で送金。卒業したら、ピタリと送金は止まったそうだ。
「ですから、それから必死で自立するためにうたうところを探しました」
 いやあ、実にいい話を聞きました。これで田中彩子は、強く生きる力が身についたのだろうと納得。ますますたくましくなってね〜。





 
| 情報・特急便 | 22:58 | - | -
「家庭画報」新年号
 今日は「家庭画報」の2015年1月号の発売日である。
 雑誌が出来上がってみると、あの出張の日々やタイトなスケジュールの入稿、その後の校正などが嘘のようで、もうずいぶん前のことのような気がする。
 原稿というのは不思議なもので、それに集中しているときは、他のことは何も考えられない。
 特に、こういう大きな特集を抱えていると、その間、他のことはまったくできないから、ほとんどトランス状態になる。
 でも、校了になって手が離れると、スーッと頭のなかから消えていき、他の原稿へと目が向いていく。要は、ストンと切り替えられるのである。
 そして、いよいよその雑誌が出来上がって目の前に現れると、またあの大変だった日々が鮮やかに蘇ってくる。
 雑誌がひとりでも多くの人の目に触れることができればいいな、クラシックに興味をもつ人が少しでも多くいるといいな、と願うばかりだ。
 これまでいろんな特集を書いてきた。だが、今回のベートーヴェンは、特別な思いが胸の奥に宿る。ベートーヴェンは私が幼いころから、もっとも愛する作曲家だから。その足跡をたどり、改めて作品のすばらしさ、人生の過酷さ、意志の強さを感じさせられた。
 これからは、ベートーヴェンの記事を書くたびに、この取材で訪れたときのことを思い出すに違いない。そして、ベートーヴェンに対する愛がより深くなった自分に気づく。
 今日の写真は「家庭画報」新年号の表紙。ベートーヴェンのCD付きです。


 
| 情報・特急便 | 09:43 | - | -
ジャン=フィリップ・コラール 
 アーティストに会うと、意外な素顔がわかることがあって新鮮な驚きを抱く。
 ジャン=フィリップ・コラールも、そのひとり。
 インタビューでは新録音のショパンの「24の前奏曲、ピアノ・ソナタ第2番」(キングインターナショナル)に関して雄弁に話してくれたが、なぜこんなにも長くショパンを録音しなかったかについて、ことばを尽くして語った。
 そのなかで、コラールの性格が垣間見えたのである。
 彼はパリ音楽院時代、だれもがショパンを弾くことに対し、ある種の反発感を抱いたのだという。友人たちが弾くショパンも、自分の考えとは異なるものだった。当時は、音楽院の課題としてショパンが取り上げられたが、どうしても好きになれなかったのだそうだ。
 この話を聞いて、若さゆえの反抗心なのかなと思ったら、それはいまでも続いている自分本来の性格なのだという。納得のいかないことはできない。自分が本当に弾きたいと思わなければ演奏しないという。
 だが、最近になってこれまでショパンの音楽の一面しか見ていなかったことに気づき、楽譜と真摯に向き合うようになった。そしてショパンの性格があまりにも自分に似ていることに驚いたのだという。
「私はとても内向的で、何でもすぐには行動に移せず、考え込んでしまうタイプ。外に出ているよりも、家にいることを好み、社交的ではない。だれとでもすぐに打ち解けることはできず、限られた人との交流だけで満足する。楽譜から読み取るショパンの性格は、とても私が共感できるもの。それがわかったとき、ショパンの作品に親近感が湧き、より深く読み込もうと思ったのです」
 コラールは、演奏中も派手な動きをしたり、余分なことはいっさいしない。ただ、ひたすらピアノと対峙し、作品のよさを伝えようとする。
 このインタビューは、次号の「intoxicate」に掲載予定である。ショパンの話題のみならず、さまざまな作品とのかかわり、音楽に対する自身の思考、演奏家であることの意義、室内楽の喜び、自分の性格との付き合い方、ルバートの在り方など、多くのことを記事に盛り込みたいと思う。
 アーティストは旅から旅の生活である。それが一時期苦痛になったこともあるそうだ。「なにしろ、家にいるのが好きなので」。こういって笑うコラールは、家庭を大切にするタイプのようだ。
 彼はがっしりとした体躯で、手も大きく、指も長い。先日のブログでショパンを弾くときに男性的で凛とした演奏をすると書いたが、ステージに登場する姿も実にカッコいい。シックでおしゃれで風格がある。
 フランスには、こうした洒脱なピアニストが多い。年齢を重ねるごとに、よりいい味を醸し出すようになる。要は、大人の熟成した雰囲気を漂わせるようになるのである。
 またすぐにでも来日してほしいピアニストだ。
 今日の写真は、インタビュー後のワンショット。目がおだやかな笑みをたたえている。




 
 
| 情報・特急便 | 22:14 | - | -
紀尾井ホール開館20周年
 1995年に開館した紀尾井ホールが20周年を迎え、記者会見が行われた。
 まず、ふだん私たちクラシック音楽の関係者があまり出入りすることのない、5階にある邦楽専用ホールを見学し、250席のホール内部と檜造りのステージ、和室の楽屋などを案内していただいた。
 次いで新日鉄住金副社長の佐久間総一郎氏と同文化財団常務理事の町田龍一氏が、企業メセナ活動としてこれまで20年間のホールの運営、活動内容を報告。さらに新日鉄住金コンサート、新日鉄住金音楽賞、紀尾井シンフォニエッタ東京(レジデント・オーケストラ)、邦楽主催公演などについて現在までの流れと今後の予定が発表された。
 紀尾井ホールには何度も出演し、すっかりおなじみとなったアーティストが何人かいるが、2006年東北地方公演の同行も含み18回出演のチェリスト、マリオ・ブルネロと、2005年ドレスデン音楽祭後、特別企画で12回出演のピアニスト、ペーター・レーゼルによる、お祝いのビデオメッセージも紹介された。
 引き続きレセプションが行われ、ここで邦楽とクラシックのミニコンサートが開かれた。
 最初は邦楽の演奏で、松崎晟山(尺八)と新福かな(箏)による宮城道雄の「春の海」。続いてクラシックでは、紀尾井シンフォニエッタの若きふたり、森岡聡(ヴァイオリン)と伊藤慧(ヴィオラ)によるモーツァルトの「ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏ト長調K.423」より第1楽章が演奏された。
 紀尾井ホールは、800席という中規模の客席数ゆえ、ピアノや室内楽などに適している。音響もすばらしく、いずれの席でも聴きやすい。
 2015年もライナー・ホーネック、マキシミリアン・ホルヌング、トレヴァー・ピノック、セミョーン・ビシュコフ、アナ・チュマチェンコ、ラルス・フォークト、クリスティアン・テツラフ、ジャニーヌ・ヤンセン、ジャンルカ・カシオーリら若き世代からベテランまで国際舞台で活躍するさまざまなアーティストのコンサートが組まれている。
 こうした来年のスケジュールをながめていると、本当に今年も残り少なくなったのだなあと感じ、なんだか気ばかり焦ってしまう。
 今年もあと1カ月半しかない。なんとか有意義に過ごさなくちゃ、と追い立てられる気持ちになるのは、私だけでしょうか…。
 今日の写真はレセプションでの演奏風景。とても近い距離で聴くことができたため、各々の楽器の音色がじかに伝わってきた。




 
| 情報・特急便 | 22:10 | - | -
テレビ収録
 今日は、ピアニストの辻井伸行の番組で、彼の音楽的なこと、演奏に関して話すため、テレビ収録にでかけた。
 2015年1月1日のBS朝日の番組で、以前からシリーズで放映されている「奇跡のピアニスト」である。放映時間は夜の9時から11時。
 辻井伸行が最近演奏に取り組んでいるショパンのバラード第4番、ラヴェルの「夜のガスパール」、そして今後さまざまなオーケストラと共演予定のラフマニノフのピアノ協奏曲第3番に関して、プロデューサーからの質問に対してひとつずつ答えていくというスタイルだった。
 辻井伸行が演奏しているこれらの作品は、いずれも難曲といわれ、各々の作曲家の最高傑作のひとつとされる。
 それらを彼は完璧に自分の音楽として奏でている。それについても、私自身の意見を聞かれた。
 テレビは、いつもかなり多くのことを話しても、放映されるとほんの2〜3分ということが多い。今回はどうかな(笑)。
 今日の写真は、番組のスタッフの方たち。プロデューサーのHさん(右)は、辻井伸行を10歳のころからずっと追っているそうだ。そういう長いスタンスで番組を制作している人というのは、強い信念がある。
 私もひとりのアーティストをデビュー当初からずっと取材し続ける場合が多いが、今日はHさんの姿勢を学ばなくては、と改めて思った。
 お正月番組なので、家でゆっくりしている人はぜひ見てくださいね。きっと辻井さんの難曲に挑む果敢な姿勢が見られると思いますから。


 
| 情報・特急便 | 18:11 | - | -
ユリアンナ・アヴデーエワ
 今日は、ユリアンナ・アヴデーエワにインタビューをするために、スタインウェイ・ジャパンに出かけた。
 アヴデーエワの演奏はショパン・コンクールのときから聴いており、その後何度かインタビューを行っているため、今日も話がいろいろと盛り上がり、内容の濃いインタビューとなった。
 これは2015年2月20日から3月2日まで全国で行われる「東芝グランドコンサート2015」のプログラムのためのインタビューで、今回はトゥガン・ソヒエフ指揮トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の来日が決まっている。
 アヴデーエワはそのツアーのソリストのひとりで、得意とするショパンのピアノ協奏曲第1番を演奏する。
 インタビューでは、このコンチェルトとの出合いから内容、解釈などへと広がり、リヒテル、フー・ツォン、バシュキーロフまでさまざまなアーティストの話が飛び出し、これからJ.S.バッハを弾いていきたいという夢まで語ってくれた。
 なんでも、フォルテピアノのアンドレアス・シュタイアーの演奏に魅了されているそうだ。
 今回のもうひとりのソリストは、私の大好きなヴァイオリニスト、ルノー・カピュソン。彼のインタビューは来日がないため、電話インタビューになりそうだ。曲目はサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲。これこそ、ルノーの美音が存分に堪能できることになりそうだ。
 今日の写真は、インタビュー中のアヴデーエワ。写真撮影のためにヘアメイクが入っていたため、とても美しかった。もともと目鼻立ちのはっきりした人だから、メイクも映える。でも彼女、声はすごく低くて、はっきりしゃべるし、いつもパンツスーツ。ハンサムウーマンっていうところかな…。
 ショパン・コンクールでもすべての作品でナショナル・エディションを使用していたけど、今回のコンチェルトでも当然のことながらナショナル・エディションで演奏するそうだ。


 
 
| 情報・特急便 | 21:45 | - | -
クリストファー・ホグウッド
 イギリスの指揮者、鍵盤楽器奏者であり、音楽学者でもあったクリストファー・ホグウッドが9月24日に亡くなった。享年73。
 ホグウッドは音楽もすばらしかったが、人間的にもとても魅力的な人だった。
 以前、インタビューをしたときの様子を「インタビュー・アーカイヴ」に綴っている。2011年7月23日の分である。
 ぜひ、読んでほしいと思う。
 もう一度会いたい、演奏を聴きたい、そんな思いでいっぱいだ。
| 情報・特急便 | 21:42 | - | -
ザ・フィルハーモニクス
 ウィーン・フィルのメンバーは超タフな人ばかり。昨夜のコンサート終了後、夜中までレセプションに加わり、今日は12時から中学・高校生を対象とした学校単位で参加する「青少年プログラム」で演奏。
 そして、午後1時過ぎから「ザ・フィルハーモニクス」の3人のメンバーは、新聞や雑誌のインタビューを受けた。その後、彼らは夜の本番が控えている。
 私のインタビューは午後2時から。
「ザ・フィルハーモニクス」については、2014年6月20日に東京芸術劇場で行われたコンサートのことをブログでも綴ったが、メチャクチャ楽しい音楽で、ウィーン・フィルのメンバーら7人による演奏は、世界の聴衆をみな笑顔にしている。
 今日は、そのメンバーのなかのティロ・フェヒナー(ヴィオラ)、エーデン・ラーツ(コントラバス)、ダニエル・オッテンザマー(クラリネット)がインタビューに応じてくれた。
 このアンサンブルは、クラシックをもとに各地の民謡、民俗音楽、ジャズ、ポップス、タンゴまで幅広くレパートリーに入れ、さまざまな編曲によって耳慣れた作品に新たな光を当てている。
 彼らは日本でしゃぶしゃぶを食べながら「何かおもしろいことができないだろうか」と話したのがきっかけで、メンバー結成となったという。
「すごく仲良く見えるって? そんなことはないよ。いつもは喧嘩しながら、いいたいことをいいあって、意見をバチバチだしあって、全員が本音で話すからすさまじいよ」
「でも、喧嘩する方がいいんだよ。みんなそれぞれいたいことをしっかりいうし、やるべきことはきっちりやる。プロだからね」
「どんなに意見が食い違ったときでも、いざ本番が始まってしまえば、ステージではどんどん音楽がよくなって、ステージで問題解決となるんだ」
 ひとつの質問をすると、3人が我先にとワーッという感じで話し出す。それが演奏を連想させ、まさに声のアンサンブル。
 マーラーの交響曲でシリアスな演奏をずっとしていて、さあ、ザ・フィルハーモニクスのリハーサルだとなると、全員が解放的で情熱的で自由な雰囲気になり、顔つきが一変するのだそうだ。
 7人は各々ものすごく個性が強い。その個性がぶつかりあい、切磋琢磨し、ひとつのアンサンブルとして超絶技巧をものともしない、嬉々とした音楽を生み出す。
 彼らは2015年10月から11月にかけて、再来日が予定されている。そのためのプログラムを練りに練っているそうで、その前には新譜がリリースされることも決まっているという。
「でも、まだ録音については詳しく話せないんだよ。本当はライヴ収録を希望しているんだけど、ちょっと難しくて、おそらくスタジオではなくコンサートホールでレコ―ディンクすることになりそう。来秋の日本公演のときには新譜を携えてきたいんだけどね」
 演奏もノリノリだけど、インタビューでの会話もノリノリ。すごく疲れているみたいだったけど、そこはプロ。ジョークばかりいっていて、それに合わせてまた次のジョークが飛び出す。ここだけの話、なあんていうのもつい口からポロリ。大丈夫かなあ、なんだか疲れすぎて、いっちゃってるみたい(笑)。
 日本公演の直後はポーランド公演が控えているそうで、ザルツブルク音楽祭からずっと休みなしで突っ走っているとか。ホント、タフな人たちだ。
「来年の演奏、楽しみにしててね。バクハツするからサ」
 いやあ、まいりました。すごいパワー…。
 今日の写真はインタビュー中のショットと、インタビュー後の1枚。写真を撮っている間も、他の人をつっついたり、ジョークで悪口をいったり、かまったり…。なんだか、大きな子どものようだ。きっと、7人が集まったらすごいことになるんだろうな。ちょっと怖いけど、次は7人一緒のインタビューをしてみたいと、無謀なことを考えた。 
 写真の左からダニエル・オッテンザマー、エーデン・ラーツ、ティロ・フェヒナー。






 
| 情報・特急便 | 23:14 | - | -
アルゲリッチの映画のコメント
 この夏、大きな仕事のひとつとして、映画「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」の字幕監修ほかを担当したのだが、配給会社からの依頼で、映画のチラシにコメントを寄せた。
 この推薦コメントは、各界の著名人27人が映画の見どころ、魅力などを短い文章で表現しているものだが、そのなかから8人のコメントが9月19日の朝日新聞の夕刊の広告欄に掲載された。
 私もそのなかに選ばれている。あとの人はみんなセレブばかり。ヒャーッという感じだ(笑)。いいのかなあ、なんか場違いな感じがするけど…。
 この映画に関しては、何度かブログでも書いたように、映画監督を務めた、アルゲリッチの末娘であるステファニーにインタビューをし、その記事は現在発売中の「フィガロ・ジャポン」に掲載されている。
 さらに「intoxicate」に映画紹介を書き、今月最終木曜日夕刊の「日経新聞」にも原稿を寄せている。
 さまざまな形で映画に関わってきたが、これでひと段落した感じだ。
 今日の写真は「朝日新聞」の広告とチラシのコメント。9月27日(土)からBunkamuraル・シネマでロードショーが始まり、順次各地での公開が続く。
 さて、映画を見た人は、どんな感想を抱くだろうか。いろんな人の反応が楽しみだ。




 
| 情報・特急便 | 22:11 | - | -
マエストロ!
 先日、映画「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」の字幕監修ほかを担当し、映画の仕事に本格的にかかわる経験をしたばかりだが、今度は「マエストロ!」という映画に関して書くことになった。
 試写を見て、次号の「intoxicate」に原稿を寄せる仕事である。
 この映画は、さそうあきらの漫画アクション「マエストロ」原作、小林聖太郎監督、奥寺佐渡子脚本によるもので、不況で解散を余儀なくされた元名門オーケストラの楽員たちと、若手コンサートマスターの香坂、アマチュアフルート奏者のあまねたちが、謎の指揮者・天道に導かれて音楽性と人間性が次第に変わっていくというヒューマンドラマ。最後は感動的な演奏シーンが盛り込まれ、クラシックのすばらしさに改めて目覚めることになる。
 香坂には松坂桃李、天道には西田敏行が扮し、彼らはヴァイオリンと指揮を習得、見事な演奏シーンの演技を見せている。
 さらにアマチュアのフルート奏者としてシンガーソングライターのmiwaが登場、映画初出演を果たしている。
 ストーリーは、オーケストラ解散後、再就職もできず、「負け組」といわれるオーケストラの楽員たちが、謎の指揮者・天道の呼びかけで集まり、わけのわからないままコンサートに向けてリハーサルを続けていくというもの。オーケストラのメンバーひとりひとりの人間模様が描かれ、ときに衝突し、またあるときは支え合い、「自分には音楽しかない」という気持ちを固めていく様子がさまざまなエピソードを含めながら展開していく。
 天道には人にいえない秘密があり、それが最後に明かされる。
 演奏される作品は、ベートーヴェンの「運命」とシューベルトの「未完成」という2大交響曲。最初はまったく合わずにばらばらな演奏が、天道の破天荒な指揮により次第に融合していき、最後はコンサートシーンでクライマックスを築く。
「マエストロ!」は、2015年1月31日公開予定。演技派俳優たちが実際のオーケストラの楽員たちに混じって演奏シーンを盛り上げ、自然な奏法を見せる。さすが、役者である。
 指揮の指導などは佐渡裕が担当し、エンディングテーマは辻井伸行が演奏している。ひとりでも多くの人が、クラシックのすばらしさに目覚めてくれたらいいな、と映画を見ながら思った。
 今日の写真はそのチラシ。オーケストラはひとりひとりの個性あふれる人間の集まりなのだということを、改めて思い知らされる。

| 情報・特急便 | 22:48 | - | -
TFC55
 今日は、雅楽奏者の東儀秀樹、ヴァイオリニストの古澤巌、アコーディオニストのcobaの3人が結成したユニット「TFC55」の新譜発表のコンベンションがユニバーサルで開かれた。
 その記者会見のMCを担当し、「55歳のやんちゃな大人3人」のユニット結成のきっかけ、エピソード、新譜の話、ツアーのことなどを聞いた。
 全員が55歳というのは偶然で、それをユニット名に入れたそうだ。「ゴーゴー」と発音する。
 楽器の違いからくる個性の違いが明らかで、3人とも好奇心旺盛。その出会いは、東儀秀樹がそれぞれの人と共演したことから始まった。
 東儀秀樹と古澤巌はすでに10年以上のつきあいで、ここにcobaが加わり、さらに音楽がバージョンアップ。新譜の録音にこぎつけた。
 彼らはいまツアーの真っ最中だが、2014年は日本とスイスの国交樹立150年にあたるため、10月下旬にはジュネーブとベルンでもコンサートが行われる予定。とてもユニークな楽器の組み合わせに、スイスの人たちも驚きを隠せないのではないだろうか。
 3人ともスイス公演を非常に楽しみにしていて、日本から世界に向けて発信する「TFC55」の音楽に対し、絶対的な自信を見せていた。
 この3人、話を聞けば聞くほど個性が際立ち、各々の方向性の多様さに驚かされる。だが、その個性の違いが絶妙のハーモニーを生み、ナマの演奏を聴かせてもらったが、心が高揚するようなスリリングで熱いパッションを感じさせるものだった。
 東儀秀樹には何度かインタビューを行ったことがあり、古澤巌は昔からよく会っている。ただし、cobaには今回初めて会った。
 ところが、会った途端に意気投合。話が弾み、イタリアン・レストランをもっているという彼のお店も教えてもらい、お料理の話で盛り上がってしまった。
 彼ら3人は、まさにプロフェッショナル。演奏もさることながら、音楽に対する思いが生半可ではない。自信に満ち、自分の目指す方向がしっかり見えているという人たちだ。
 でも、MCが終わってから3人にインタビューをしたら、おもしろい話が出るわ出るわ、笑いが止まらなかった。このインタビューはヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に書こうと思っている。作曲や編曲にまつわる話、各人の役割、相手をリスペクトしている様子、3つの楽器が合うのではなく、3人だから合うという話まで、多彩なことを綴りたいと思っている。
 今日の写真は、記者会見の前のリハーサルの様子と、本番を終えた3人。服装もばらばらだけど、各人のこだわりがそこに感じられる。ホント、ユニークなユニットだよねえ。



| 情報・特急便 | 23:04 | - | -
松田華音
 6歳でロシアに渡り、グネーシン音楽学校で学んできた若きピアニスト、松田華音が11月5日にCDデビューを果たす(ユニバーサル)。
 今日は彼女に会うため、レコード会社に出かけた。
 まず、華音(かのん)という名の由来を聞き、ロシアでの勉強の内容に触れ、母親との二人三脚で慣れない土地で暮らす大変さを聞いた。
 だが、子どもだったからか語学の習得も早く、ロシア料理もおいしいといい、楽しく勉強してきたとあっさり。でも、聞き進むうちに、ロシアでの12年間は、ひとつのドラマがあると感じた。
 松田華音はとても礼儀正しく、美しい日本語を話し、音楽のことになると一気に口がなめらかになる。
「でも、日本語は幼稚園のレヴェルなんです」 
 こう謙遜するが、まったく問題はない。きっと母親の熱心な教育が功を奏したのだろう。そのお母さんも、とても自然体だ。
 現在18歳。今秋からモスクワ音楽院に日本人としては初のロシア政府特別奨学生として入学することになっている。
 実は、彼女のデビュー録音のライナーノーツを書くことになった。今日、話を聞いたことを含めつつ、綴りたいと思う。
 プログラムはベートーヴェンの「ワルトシュタイン」、ショパンのバラード第1番と「英雄ポロネーズ」、リスト/シューマンの「献呈」、ラフマニノフの「音の絵」より第6、5、9番。スクリャービンの練習曲とワルツ1曲ずつ、そして最後に名前に因んでパッヘルベルの「カノン」が収録される。
 いつも思うことだが、新たな若い才能に出会うのは本当に楽しみであり、その船出にあたるデビューCDのライナーノーツを書くことは無上の喜びである。
 これからじっくりと収録されたばかりの音源を聴き、いい文が書けるよう最大限の努力をしたいと思う。
 この録音は、つい先ごろ軽井沢の大賀ホールで録音されたという。私は先日このホールを訪れたばかりゆえ、そのホールの話で盛り上がった。
 今日の写真はインタビュー後の松田華音。本当はもっとリラックスして笑顔になると、とてもキュートなんだけど、ちょっと緊張しちゃったみたい(笑)。柔和な表情の持ち主だけど、目力が強い。これが人をひきつける大きな要因かも。
 2015年1月15日には、紀尾井ホールでリサイタルが予定され、今回収録した作品を中心にプログラムが組まれている。強いメッセージを備えた演奏は、ロシアでの研鑽の賜物。大きくはばたいてほしいと願う。

| 情報・特急便 | 21:34 | - | -
樫本大進&エリック・ル・サージュ
 以前から仲のいい、樫本大進とエリック・ル・サージュが日本でデュオ・リサイタル行うことになった。
 プログラムは、フォーレのヴァイオリン・ソナタ第1番、プーランクのヴァイオリン・ソナタ、フォーレのロマンス、フランクのヴァイオリン・ソナタである。
 2015年の1月10日から22日までの間に、全国で11公演が組まれている。
 このチラシの原稿も書いたのだが、音楽事務所のジャパン・アーツのホームページに、先日行ったル・サージュのインタビューが掲載されている。
 ル・サージュと大進との出会い、大進の演奏に対すること、今回のデュオへの思いなどを綴っているので、ぜひ読んでくださいね。
 今日の写真は、その来日公演のチラシ。上質なフレンチ・プログラムが堪能できそうだ。



 
 
| 情報・特急便 | 23:54 | - | -
中村紘子
 中村紘子がデビュー55周年を迎えるという。
 その記念アルバムとして、モーツァルトのピアノ協奏曲第24番&第26番「戴冠式」、そしてショパンの「マズルカ集」を9月17日のリリースする(ドリーミュージック)。
 コンチェルトは山田和樹指揮横浜シンフォニエッタとの共演で、第26番のカデンツァは新垣隆の作曲によるものである。
 今日はその話を聞くために、ご自宅に伺い、インタビューを行った。このインタビューは次号の「レコード芸術」に掲載される予定である。
 彼女と話をしていると、いつも新譜のCDやコンサートの話題から徐々に広がっていき、いつのまにか仕事から離れた話になってしまう。
 今日も、いろんな話題に飛んでいってしまったから、編集担当のKさんはひやひやしたに違いない。カメラマンも、キメのショットを撮らなくてはならないから、時間を気にしていた。
 だが、中村紘子と私はおしゃべりの真っ最中。みなさん、すみませんでした。もっと私が軌道修正をすればよかったのにね(笑)。
 でも、雑談のなかからおもしろい話が飛び出してくることもあるので、こういう場合は、あまり仕事ばかりの話に偏らない方がいいと思うんですよ。
 ただし、原稿を書く段階になると、新譜の話を拾い集め、エッセンスを取り出して書かなくてはならない。これはこれで大変だ。まあ、自業自得か。
 でも、デビュー55周年とは、すばらしいことだ。
「私、1歳でデビューしたので…」
 開口一番、インタビューは彼女らしいジョークで始まった。それからこれまでのいろんな思い出やエピソードを聞いているうちに、次第に話が逸れていってしまったわけだ。
 9月6日から12月19日までは、記念のリサイタルやトーク&コンサートが全国16都市で展開される。超多忙な秋となりそうだ。
 今日の写真は、インタビュー後の1枚。いつも人なつこいワンちゃんと中村紘子を一緒に撮りたかったのに、このときだけどこかにいってしまった。インタビューのときはずっと私のそばにいたのに、残念…。

| 情報・特急便 | 23:28 | - | -
アルゲリッチ 私こそ、音楽!
 以前から取り組んでいた、アルゲリッチの3女ステファニーが監督を務めた映画「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」の字幕監修の仕事がついに完了した。
 これは以前のブログにも書いたように、ステファニーのインタビュー記事、日本語の字幕監修、アルゲリッチについての原稿、曲目表記や音楽関係のチェックなど、さまざまな仕事が含まれている。
 そのマスコミ向けの資料が出来上がり、送られてきた。
 実は、このなかにアルゲリッチに関しての私の記事が掲載されているのだが、この記事が一般向けのプログラムに転載されることになった。
 少しでも多くの人に読んでいただけたら幸いである。
 この映画は、9月27日(土)、Bunkamuraル・シネマほかで全国ロードショーの予定だ。
 これまで音楽に関する映画の仕事は、いつも原稿を書くこと、監督にインタビューをすることなどだった。
 今回、監修という仕事に初めて携わり、実に多種多様な内容を伴うものだということを知った。
 映画というのは、チームで作り上げるものだが、それを放映する日本側の仕事もまた、チームプレーである。
 今日の写真は映画のマスコミ用資料の表紙と、内部のアルゲリッチに関して書いた私の記事が掲載されているページ。
 明日は、ステファニーのインタビュー記事、「フィガロ・ジャポン」の原稿締め切り日である。
 アルゲリッチのプライベートな面に肉薄したこの映画、実の娘だから描写できた面が多く、家族とは何かを考えさせる。






 
 
 
 
| 情報・特急便 | 22:18 | - | -
カルロ・ベルゴンツィ
「世紀のヴェルディ・テノール」と称されたイタリアのカルロ・ベルゴンツィが、25日ミラノの病院で亡くなった。享年90。
 日本にも多くのファンがいるベルゴンツィ、何度か来日公演も行い、75歳
を超えてもなお舞台で活躍した。
 彼の名は、2011年9月5日に急死したテノール、サルヴァトーレ・リチートラとのインタビューのなかで何度も登場したことで、記憶に残っている。
 リチートラは最初の先生の指導法が合わず、コンクールに7回も落ち、その先生にバリトンに転向した方がいいとまでいわれ、6年間就いた先生と離れる決心をする。
 その後、ベルゴンツィに師事することになり、彼のもとで本来の声質を磨き、ミラノ・スカラ座でのデビューにつながることになった。
 そのときの様子を、リチートラはこう語っていた。
「ベルゴンツィのもとでは2年間レッスンを受けました。彼が私にいったのは、いままで練習したことはすべて忘れ、習い始める前に戻りなさい、ということでした。ベルゴンツィは、私に自分の自然な声で自由にうたい、人のまねをするのではなく、自分のもっている個性、声質で勝負するのが一番だといってくれたのです。その教えは、いまも忠実に守っています」
 こう語っていたリチートラだが、恩師よりも先に神のもとに旅立ってしまった。
 ベルゴンツィの訃報を聞き、リチートラのことがまた鮮明に蘇ってきた。イタリアのテノールは、いつまでも聴き手の心に残る印象的な声をもっている。ベルゴンツィには、残念ながらインタビューをする機会がなかった。だが、幸いなことに、彼は多くの録音を残してくれた。それらを聴きながら、「世紀のテノール」を偲びたい。
   
| 情報・特急便 | 22:27 | - | -
秋の来日ピアニスト
 連日、猛暑が続いているなか、すでに秋のシーズンの来日プログラムやチラシ、情報記事などの原稿依頼が相次いでいる。
 今秋もまた、実力派のピアニストの来日が多い。
 マレイ・ペライア、フレディ・ケンプ、ダン・タイ・ソン、ティル・フェルナー、ユンディ・リ、ミシェル・ダルベルト、ピエール=ロラン・エマール、ボリス・ベレゾフスキー、ユリアンナ・アヴデーエワ、チョ・ソンジン、クリスチャン・ツィメルマン、ネルソン・フレイレ、ジャン=マルク・ルイサダをはじめとする多くのピアニストが予定されている。
 それぞれ弾き振りを行ったり、珍しい作品を組んだり、著名なオーケストラとのソリストとしての来日公演だったり、個性的なプログラムが組まれている。
 まだまだ暑い日が続くというのに、もう仕事は秋の気配。先取りというのは、頭とからだがついていかないものですなあ(笑)。
 とはいえ、各地からすばらしいピアニストが次々に来日してくれるのは、本当にうれしい。夏バテしないように、秋口に調子が悪くならないように、万全の体調で新たなシーズンを迎えたいものだ。
 そのためには、この時期、しっかり食べることと睡眠をきちんととること。このふたつさえクリアできれば、私は大丈夫。
 みなさ〜ん、くれぐれも体調管理に気をつけて、猛暑を乗り切ってくださいね。秋には、すばらしいコンサートがたくさん待っていますよ。
 
| 情報・特急便 | 22:23 | - | -
岡本誠司
 国際コンクールで日本人が優勝するというニュースは、いつ聞いても胸が高鳴る思いがする。
 今日は、ライプツィヒで開催されているヨハン・セバスティアン・バッハ国際コンクールのヴァイオリン部門で、東京芸術大学2年生の岡本誠司(20歳)が第1位を獲得したという朗報が飛び込んできた。
 バッハ・コンクールは1950年に創設された歴史あるコンクールで、ヴァイオリン部門における日本人の第1位は初めてのことになる。
 同コンクールを主催するライプツィヒ・バッハ資料財団によると、岡本誠司はオランダ人とオーストリア人とともにファイナルに進んでいたという。
 映像を見るとバロック期の奏法で、とてもリラックスして演奏しているように思える。
 本人のコメントも紹介され、やわらかな笑顔を見せながら喜びを語っている様子が映し出されている。
 バッハを得意とする若手ヴァイオリニストの出現は、クラシック界に大きな喜びと希望をもたらすのではないだろうか。
 ぜひ、ご本人に話を聞いてみたいと思っている。もちろん、演奏もじっくり聴いてみたい。
 
| 情報・特急便 | 22:29 | - | -
清水和音
 最近、地方の音楽ホールのプログラムやコンサートの先取りインタビューなどの原稿が相次いでいる。
 さきごろ、大阪のザ・シンフォニーホールの秋のコンサートに出演するピアニスト、清水和音のインタビューを行った。
 場所は、彼が教授を務めている東京音楽大学で、私の母校だ。
 久しぶりに目白から音大まで歩いて行き、かなり増築されて立派になったホールや校舎、練習室などを見て、しばし感慨に浸った。
 清水和音には、何度も話を聞いているが、いつも歯に衣着せぬストレートな語り口が痛快だ。
 今回は10月9日にザ・シンフォニーホールで行われるピアノ・リサイタルに関して話を聞くことになっていた。
 このリサイタルでは彼が選んだヤマハのピアノ、CFXが初めて使用されることになっている。清水和音はヤマハの新作ピアノが完成するごとに試弾しており、そのつど辛口批評を行ってきたとか。それは、もっといい楽器ができる、もっと上を目指してほしいという彼特有のことばで、一見すると毒舌のように思えるが、実のところ製作者や関係者への温かい心配りが秘められている。
 そんな清水和音も、今回のCFXの完成には「正直いって驚いたよ。すごくいい楽器ができたので」と、率直な感想を述べる。
 リサイタルではそのピアノに合わせて、ショパン、ラヴェル、スクリャービン、リストなどの名曲をプログラムに組み、ピアノ音楽の楽しさを披露する。
 ザ・シンフォニーホールは、「残響2秒」という音響のよさを誇り、音に大きく包まれる感じがするという。清水和音も、ステージ上で、自分の音がとても聴きやすいといっていた。
 ぜひ一度、このホールで演奏を聴いてみたいと願っているが、いまだ実現していない。
 今回のインタビューは、ホールの冊子、「シンフォニア」VOL.4(7月10日発行)に掲載される予定である。
 写真は、東京音楽大学の斬新なデザインの吹き抜けの場所に立つ清水和音。こんなすばらしい建物、私の時代にはなかった。この上がホールになっていて、奥は学生食堂になっている。
 こういうところにくると、時の流れの速さに驚き、自分のなかに流れた年月も感じ、人生を考えさせられますなあ(笑)。


 
| 情報・特急便 | 23:07 | - | -
第9回浜松国際ピアノコンクール
 国際コンクールは、毎年開催されるものや隔年で行われるものももちろんあるが、大きなコンクールになると、3〜5年に一度というケースが多い。 
 先日、2015年11月21日から12月8日まで行われる第9回浜松国際ピアノコンクールの記者発表が行われたが、同コンクールは3年に一度のペースで開催されている。
 前回の優勝者は、ロシア出身のイリヤ・ラシュコフスキーだ。
 第9回のコンクールの申し込み受け付けは、2015年2月1日〜4月15日。応募資格は1985年1月1日以降に出生した者(30歳以下)となっており、下限なしとのこと。
 2015年5月に予備審査が行われ、申込者全員分のDVDを視聴する。そして第1次から第3次予選、本選へと進み、12月6日に表彰式が行われることになっている。
 今回から予備審査にベートーヴェンのソナタ、ショパン、リスト、ドビュッシー、ラフマニノフ他の練習曲が選ばれ、予選から練習曲は外されている。
 第1次予選では、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンのソナタのいずれかを選ぶことになり、ここでソナタ全楽章を演奏することになった。
 さらに第2次予選にはふたりの日本人作曲家による新作品のうち、いずれか1曲を演奏するなど、新たな面が加わっている。
 第3次予選は室内楽の演奏で、本選がオーケストラとのコンチェルトとなる。
 審査委員も発表になり、審査委員長は前回と同じく海老彰子。審査委員は、マルタ・アルゲリッチ(アルゼンチン)、セルゲイ・ババヤン(アルメニア)、ジェイ・ゴットリープ(アメリカ)、アンジェイ・ヤシンスキ(ポーランド)、カン・チュンモ(韓国)、マティアス・キルシュネライト(ドイツ)、リ・ジアン(中国/アメリカ)、パーヴェル・ネルセシアン(ロシア)、アンヌ・ケフェレック(フランス)、植田克己という11名で構成されている。
 なお、運営委員長は作曲家の一柳慧で、日本人作曲作品の作曲家は、三輪眞弘、山根明季子。
 記者発表には実行委員会長の鈴木康友浜松市長、運営委員長の一柳慧、審査委員長の海老彰子が出席し、次回のコンクールの概要と新機軸などの発表が行われた。
 来年は、チャイコフスキー国際コンクール、ショパン国際ピアノ・コンクールなど世界的に権威のあるピアノ・コンクールが重なる年で、参加者はいずれのコンクールを受けるか頭を悩ますことになる。なお、エリーザベト王妃国際コンクールの2015年は、ヴァイオリン部門となる。
 さて、浜松国際ピアノコンクールには、どんな若い才能が集まるのだろうか、興味は尽きない。
 前回は、コンクールのオブザーバーの依頼を受けていたのに、単行本の最終校正が重なり、結局参加することができなかった。来年は、聴きにいくことができるといいのだが…。
 今日の写真は左から海老審査委員長、鈴木実行委員会長、一柳運営委員長。


 
| 情報・特急便 | 22:33 | - | -
柳澤寿男
 コソボ紛争後、コソボフィルハーモニー交響楽団の首席指揮者に就任し、また、バルカン半島(特に旧ユーゴスラヴィア)の民族共栄を願ってバルカン室内管弦楽団を設立して音楽監督を務める指揮者がいる。
 その名は、柳澤寿男。
 最初はトロンボーンを演奏していたが、1996年にウィーンでウィーン・フィルを指揮する小澤征爾の演奏を聴き、指揮者になりたいと決意。以後、佐渡裕や大野和士に弟子入りし、2000年東京国際音楽コンクール指揮部門で第2位入賞を果たした。
 以来、内外のオーケストラを振ってきたが、縁あって2005年マケドニア旧ユーゴスラヴィア国立歌劇場の首席指揮者に就任。その後、コソボフィルをはじめ、セルビア国立放送交響楽団、ベオグラード国立歌劇場、ベオグラード・シンフォニエッタ、セルビア南部のニーシュ交響楽団などを指揮している。
 今日は、マエストロの自宅に取材に伺い、指揮者になったきっかけ、さまざまな人との出会い、戦禍での演奏活動、バルカン室内管弦楽団と進めている「世界平和コンサートへの道」の歩みなど、いろんな話を聞いた。
 このインタビューは、次号の「音楽の友」に掲載される予定である。
「私はインタビューされるのが苦手で…」
 最初はこんなことばから始まったが、いざ質問が始まると、流れるような口調で自身のこれまでの歩みを語ってくれた。
 なかでも、旧ユーゴを中心とする地域での音楽活動の話には熱がこもり、時間がいくらあってもたりないほどだった。
 柳澤寿男の活動は、これまでテレビやラジオ、雑誌、映画などで数多く取り上げられてきたが、音楽専門誌のインタビューは初めてだという。
 こうした地域では、まだまだ多くの問題を抱えていて、実際の指揮活動は困難を極めるようだが、彼はオーケストラのクウォリティを少しでも向上させたいと熱弁をふるった。
 7月5日には、ボスニア=ヘルツェゴビナ共和国のサラエボ国立劇場でバルカン室内管弦楽団のサラエボ公演を行い、ベートーヴェンの「第九}を演奏するため、もうすぐ日本を発つそうだ。
 同地では、民族の違い、宗教の違い、出身地の違いなどを超え、音楽でひとつになろうとみんなが尽力しているという。日本人の指揮者がその旗手となっているとは、なんとすばらしいことだろう。
 バルカン室内管弦楽団とは録音も行い、ショスタコーヴィチの「室内交響曲〜ファシズムと戦争の犠牲者に捧ぐ ハ短調 作品110a」、バルトークの「ルーマニア民族舞踊曲」、ベチリ(コソボの作曲家)の「スピリット・オブ・トラディションよりインパクト・サヴァイバル・ダンス」を収録した「戦場のタクト」と題したアルバムが8月6日ースされる予定だ(キングレコード)。
 今日は撮影込みで1時間の予定が2時間を超え、充実したひとときを過ごすことができた。同行したカメラマンのIさんもマエストロとは親しく、サラエボには何度も足を運んでいるそうで、話に花が咲いた。ふたりはワールドカップのボスニア=ヘルツェゴビナを応援し、ぜひいい結果を出してほしいと願っているため、テレビ観戦にも力が入るという。
 私の役目は、密度濃い内容をわかりやすく端的に、しかもマエストロの熱い思いをしっかり伝える文章を書くこと。こういうインタビューは、身が引き締まる思いだ。
 今日の写真は、インタビュー後の彼の表情。室内にはさまざまな人との交流を示す写真がたくさん飾られていた。


 
 
| 情報・特急便 | 22:43 | - | -
レ・ヴァン・フランセ
「フランスの風」という名の木管アンサンブル、レ・ヴァン・フランセが10月に来日し、全国で8公演を行う。
 クラリネットのポール・メイエが中心となり、国際的に活躍するフルートのエマニュエル・パユ、オーボエのフランソワ・ルルー、ホルンのラドヴァン・ヴラトコヴィチ、バスーン(バソン)のジルベール・オダン、そしてピアノのエリック・ル・サージュという10年来の友人たちが集まって結成されたこのグループ、来日のたびに根強いファンを魅了し、また新たなファンをも獲得している。
 今日は、ピアノのル・サージュに会い、結成から現在にいたるまでの彼らの経緯とアンサンブルの活躍、各人の魅力までさまざまな面を聞いた。
 ル・サージュとメイエは17歳ころにコンクールの場で知り合い、すぐに意気投合してともに演奏するようになったという。
 その後、いろんな楽器のメンバーが自然に集まり、木管アンサンブルとして演奏するようになった。
 そうこうするうちにグループの名前を考えようということになり、メイエがレ・ヴァン・フランセと命名。みんなが賛成し、以後この名の下で活動するようになったそうだ。
 プログラムを決めるのはさほど難しくはないが、全員のスケジュールを調整するのが至難の業で、いつもメールをやりとりして次なるコンサートを決めているという。
 このインタビューは、招聘元のジャパン・アーツのマスター・インタビューで、音楽事務所のホームページやその他の媒体に書き分けることになる。
 ル・サージュには、昨年の紀尾井ホールのリサイタルの前に話を聞いているため、今回は間を置かずに会うことになった。そのため、彼の語りも結構スムーズで、レ・ヴァン・フランセのメンバーの人柄や音楽性など、あらゆることを聞くことができた。
「昨日、日本に着いたばかりだから、まだ時差ボケで」といい、水をたくさん飲みながら、しっかり質問に答えてくれた。
 エリック・ル・サージュのリサイタルは、明日ヤマハホールで行われる。プログラムはベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番、シューマンの幻想曲、シューベルトのピアノ・ソナタ第21番。
 次なる録音は、ベートーヴェンの最後の3つのピアノ・ソナタで、本人いわく「一生に一度、世界最高峰の山に登頂するような気分」だそうだ。
 各楽器とも、真の実力者が集まったレ・ヴァン・フランセ。10月のコンサートが待ち遠しい。
 今日の写真は、インタビュー後のル・サージュ。メガネをかけてインタビューに応じていたが、「メガネ、はずした方がいいよね」と、このポーズ。誠実でおだやかで、人柄のいい彼の表情がそのまま撮れた感じ…。

| 情報・特急便 | 23:55 | - | -
ミロシュ
 ギタリストのミロシュには、来日のたびに話を聞いているが、常に新たな地平を拓いていく姿勢を見せてくれる。
 これまでリリースした2枚のアルバムは、クラシック・ギタリストとしては異例の26万枚という売り上げを世界で記録。7月16日にはいよいよロドリーゴの「アランフェス協奏曲」がリリースされる(ユニバーサル)。
 今回のアルバムは、いま破竹の勢いで指揮界を上り詰めているヤニック=ネゼ・セガンと、ロンドン・フィルとの共演。
 ミロシュは、「アランフェス協奏曲」を録音することが可能になった場合、絶対に自身が希望する指揮者とオーケストラと共演したかったのだという。
「ヤニックの演奏は、メトロポリタン歌劇場のライヴビューイングの《カルメン》を見て、スペイン作品の表現にものすごく感動を覚えたんだ。それで、ぜひ共演をと望んだわけ。ロンドン・フィルは、ぼくが初めてメジャーなオーケストラと共演した記念のオケ。そのとき、ぼくはすごく緊張していたんだけど、彼らのすばらしいサポートでいい演奏をすることができた。だから、このオーケストラ以外は考えられなかった」
 新譜は、ロドリーゴとファリャの作品が選ばれ、国内盤のみボーナストラックにタレガの「アルハンブラの想い出」が収録されている。まさに、スペイン作品の粋を集めたディスクとなっている。
 実は、今回の来日は、初めて映画音楽に参加することになり、その録音が行われたため。映画は、日本が世界に誇るアニメーション会社「スタジオジブリ」の最新作「思い出のマーニー」。音楽を作曲した村松崇継氏が自身の作品に合うギタリストを探していて、ミロシュのデビュー盤の「アルハンブラの想い出」を聴いて感銘を受けたからだという。
 その収録のために急きょ来日したミロシュは、翌日インタビューに応じてくれた。
「村松氏、読売交響楽団と9曲を録音したんだけど、とても楽しかった。《アルハンブラの想い出》は、デビュー録音とは、また違った演奏になっていると思うよ。特にトレモロの部分がね」
 今年の後半は、欧米各地のメジャーなオーケストラと共演し、「アランフェス協奏曲」を演奏する予定だという。
 彼は12月に来日し、全国ツアーを行う予定。私の大好きなスペイン作品がたっぷり披露されそうだ。
 このインタビューは、「日経新聞」とヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に書くことにしている。
 今日の写真は、インタビュー後のリラックスした表情のミロシュ。ご本人がこの写真をとても気に入ってくれ、「いつもいい写真撮るねえ」とお世辞(?)をいってくれた。
 お世辞といえば、この日、私は黒の夏用のワンピースとジャケットを着ていったのだが、ミロシュは、私が部屋に入っていった途端、「ウワーッ、今日の洋服すごく素敵。いつもおしゃれだよねえ。すごく似合っているよ、とてもエレガントで」とこっちが照れるくらいほめてくれた。
 彼はいつも黒一色の格好をしているから、きっと黒い洋服が好きなのだろう。でも、真顔でほめてくれたから、単純な私はすぐに本気にして、今年の夏はこの洋服をずっと着ることにした(笑)。


 
| 情報・特急便 | 22:29 | - | -
工藤セシリア
 今日は、若き才能との出会いがあった。
 国際的な活動を展開しているフルーティスト、工藤重典を父にもつピアニスト、工藤セシリアに初めて会い、インタビューをしたのである。
 彼女は祖母がピアニスト、母がフルーティストという音楽一家に生まれ、ずっとフランスで暮らしている。セシリアはクリスチャンネームで、本名は工藤セシリア祐意(ゆい)。
 4歳でピアノを始め、これまで多くのコンクールで好成績を残しているが、「もう、コンクールを受けるのはやめました」とのこと。
 現在は、パリ・エコール・ノルマル音楽院でリュドミラ・ベルリンスカヤに師事し、今年6月に学生生活は一応終了するそうだ。
 そんな彼女が、7月16日(水)にヤマハホールでリサイタルを開く。大好きだというデュティユーの「プレリュード第3番《対比の戯れ》」からスタートし、モーツァルトのピアノ・ソナタ第14番、ショパンのスケルツォ第3番が前半のプログラム。後半はドビュッシー・プログラムとなり、「子供の領分」全曲、「映像第1集」より「水の反映」「ラモーをたたえて」「運動」、「前奏曲集」より「亜麻色の髪の乙女」「霧」「花火」が組まれている。
 今回は、初レコーディングも行われ、「オマージュ・ア・ドビュッシー」と題したCDがリリースされる予定だ(ソニー・ミュージックダイレクト&ミューズエンターテインメント)。
 インタビューでは、子ども時代のこと、両親のこと、パリでの生活、ピアニストとしての今後の抱負、ドビュッシーへの思いなど、さまざまなことを話してくれた。
 このインタビューは、ヤマハのWEB「ピアニスト・ラウンジ《明日を担うピアニスト達》」「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」の両方に書くことになっている。
 工藤セシリアは、子どものころから鉛筆で絵を描くことが好きで、いつもスケッチブックを持ち歩いていたそうだ。デッサンを見せてもらったら、とてもユニークで素敵な絵だったため、「ピアニスト・ラウンジ」で1枚紹介させてもらうことになった。
 ちなみに、CDにもこれからどんな絵がいいか考え、掲載する予定だという。
 演奏を聴かせてもらったが、とても若々しくエネルギッシュで、前向きな気持ちがあふれたピアニズムだった。
「私、バーンと派手な曲が好きなんですよ」
 こういって笑う彼女は、これからはラフマニノフなど、ロシア作品をレパートリーにしていきたいという。
 今日の写真は、惚れ込んでいるというヤマハCFXでの演奏を終えた後のワンショット。リサイタルでもこの楽器を使い、思いっきり自然に、自分のもてる最高の演奏をしたいと意気込む。


 

 
 
| 情報・特急便 | 22:20 | - | -
アルゲリッチ 私こそ、音楽!
 現在最高のピアニストのひとりといわれるマルタ・アルゲリッチ。その3女で、同じくピアニストのスティーヴン・コヴァセヴィッチを父にもつステファニー・アルゲリッチが監督を務めた、音楽ドキュメンタリー映画「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」が2014年秋、Bunkamuraル・シネマ他で公開されることになった。
 その映画の日本版の監修を務めることになった。
 すでに試写を見て、字幕をはじめとするあらゆる資料をもとに、特に音楽面でのチェックをする準備にとりかかっている。
 映画の監修という仕事は初めてゆえ、何から始めたらいいのかわからないが、ひとつひとつ時間をかけて確実にこなしていくしかない。
 先日、来日中のステファニーにインタビューし、さまざまな角度からの質問を試みた。
 とてもチャーミングな人で、いずれの質問にもことばを慎重に選び、じっくりと答えてくれた。
 このインタビューは、「フィガロ・ジャポン」の9月20日発売の号に掲載されることになっている。
 ステファニーは、映画は音楽ファンのみならず、一般の人々に見てもらいたいと思って制作したという。
 親との確執があったり、家族関係に問題を抱えている人など、幅広い人たちに向けた映画を作りたかったと。
 ステファニー自身、幼いころから有名なピアニストの子どもとして、大変な人生を送ってきた。それがいま、自分が母親になったことで、超多忙なピアニストである母を理解することができるようになったのだという。
 アルゲリッチ、コヴァセヴィッチ、そしてふたりの姉も映画に理解を示してくれ、家族としてひとつのハードルをクリアしたようだ。
 この映画は、素顔のアルゲリッチが数多く登場。娘ならではの視点で描かれ、ふだん見ることのできないアルゲリッチの日常が全編にちりばめられている。もちろん、彼女の音楽やこれまでの歩みなども盛り込まれている。
 今日の写真は、インタビュー時のステファニー。彼女はカメラをもっていて、インタビューの間ずっと私の顔を撮影していた。
 う〜ん、やめてくれともいえないし、まいったなあ。監督業だから、人を撮るのが好きなのかしら。
 彼女は映画会社の人から私が監修の仕事をすると聞いて、にっこりと笑顔を向けてくれた。そうです、その仕事をきちんとしなくちゃね。


 
 
 
| 情報・特急便 | 21:59 | - | -
ミハイル・プレトニョフ
 3月末に招聘元の音楽事務所で、仕事仲間の音楽評論家3人でミハイル・プレトニョフのピアニストとしての復活コンサートに関する座談会を行い、すでにそれはブログにも綴った。
 そのチラシができあがり、音楽事務所から送られてきた。
 チラシの裏面に3人の座談会が掲載されているが、なにしろ文字数に限りがある。というわけで、音楽事務所ジャパン・アーツのホームページには、全文が掲載されることになった。
 寺西さんと青澤さんとは、この文の何倍も語り合い、当初決められていた時間を大幅にオーバーするほど話がはずんだ。
 その熱い語りを読んでいただけたらと思う。
 今日の写真は、日本公演のチラシの表。ピアニスト活動休止宣言から7年半、プレトニョフがついにこの5月、新たなピアニストとしての姿を見せます!!


 
| 情報・特急便 | 22:33 | - | -
銀座Hanako物語
 1989年、ピアノ専門誌の編集から独立した私は、ある鬼編集長と知り合った。当時、マガジンハウスの「Hanako」で辣腕をふるっていた椎根和氏である。
 椎根さんは一見コワモテで近寄りがたい雰囲気だったが、とても寛大で、一度信頼した人には大きな心をもって仕事を任せ、思いっきり自由に仕事をさせるという精神の持ち主だった。
 私も知り合った当初は、何をいわれるかと緊張しっぱなしだったが、次第に信頼してくれるのがわかり、その好意に報いるために懸命にいい企画を考え、実践し、少しでもクラシックを好きになってくれる人が増えればという願いから、文字通り不眠不休で「Hanako」の仕事にかかわった。
 最初に出会った日に、椎根さんから海外取材のページをオファーされた。とてつもないページ数で、準備期間もへったくれもない。
 ただ、「おもしろそうな企画だから、やってください。どうぞ自由に。すぐにとりかかって」といわれた。
 ウヒャーッと心のなかで叫び、自分で出した企画ながら、「ど、ど、どうしよう」と内心真っ青。それからというもの、何をどうしたのか、いまでもはっきり思い出せないくらいテンションだけが上がり、たけりくるったように仕事をした。
 そのうちに連載をやってくれといわれ、10年以上、毎週クラシックのコラムを書き続けた。その間も、何度も海外取材が巡ってきた。
 私は当時、独立したばかりでさまざまな人間関係のトラブルに見舞われ、仕事も試行錯誤の連続で、気の休まる日がなく、心身が疲弊していた。あまりにストレスがたまり、夜中に盲腸かとまちがうほどの腹痛にあえいだこともある。
 そんなとき、いつも私の悩みを聞いてくれ、そっと会社を抜け出して食事に連れて行ってくれたのが椎根さんだ。
 彼は長々と私のグチを聞くタイプではない。ちょっと聞いて「ほらっ、うまいモンを食いに行くゾ」と、連れ出してくれるだけ。それがどんなに私のなぐさめになったことか。
 独立してから、本当にいろんなことがあり、ここまでくるのに山あり谷ありの谷ばかり記憶に残っている。でも、椎根さんのような、メンターがいてくれたおかげで、ここまで進んでこられた。
 先日出版した「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」の本も、椎根さんがプロデューサーをしてくれたおかげで世に出たのである。
 その椎根さんが編集長をしていた時代のあれこれを綴った「銀座Hanako物語」(紀伊国屋書店)が出版された。私もほんの少し登場している。パヴァロッティの取材に関するエピソードだ。
 この本を読んだ途端、「Hanako」時代がまざまざと蘇ってきた。ものすごく大変だったけど、とてつもなくおもしろかった。
 この雑誌で、一般誌に記事を書く大変さを学んだ。専門語はほとんど使えない。キャッチコピーやタイトルなどを、ズバリと文字数を合わせて考えなくてはならない。クラシックをわかりやすく、しかも質を落とすことなく、端的に綴らなくてはならない。本当にたくさんのことを学んだ。
 まだ最初のころはメールがなく、フロッピーをもって夜中にタクシーを飛ばし、マガジンハウスに何度駆け付けたことか。特集記事を任されたときは、日常生活の基本的なこともできないほど時間がなく、ほとんどトランス状態になったものだ。
 でも、クラシックの特集号が売れたときの喜びは、なにものにも代えがたい幸せな気持ちと達成感に満たされた。
 すべて椎根さんのおかげである。
 今日の写真はその単行本の表紙。創刊からの5年半を、椎根編集長が生き生きと綴っている。


 
| 情報・特急便 | 22:58 | - | -
ヴァシリー・ペトレンコのラフマニノフ
 昨日紹介したロシア出身の指揮者、ヴァシリー・ペトレンコの新譜は、ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したラフマニノフの歌劇「アレコ」からの舞曲集と、交響曲第2番(ワーナー)だ。
 ワーナーの表記では、ワシリー・ペトレンコとなっている。
 首席指揮者を務めるロイヤル・リヴァプール・フィルと録音したこのアルバムは、10代後半にサンクトペテルブルクのムソルグスキー記念歌劇場(1994年から97年にかけて常任指揮者を務めた)で鍛えた底力が遺憾なく発揮され、作品の内奥へとぐんぐん聴き手を引き込んでいく。
 彼の演奏は、的確なテンポ、スケールの大きさ、ダイナミズム、躍動するリズム、みずみずしい表現など個性あふれ、無限の可能性を感じさせる。
 昨日オスロ・フィルのナマ演奏を聴いたときにも強く感じたことだが、この録音でもロイヤル・リヴァプール・フィルの各セクションごとの音色が非常に明瞭で、自信にあふれ、リハーサルでみっちりペトレンコと音楽を築き上げてきた様子が音から伝わってくる。
 ペトレンコは、ここでは得意とするロシア作品を水を得た魚のように生き生きと、自然に、流れるような音の運びで表現。ラフマニノフの疾走するリズムも、香り高い主題も、舞曲のテンポも、対位法の表現も、いずれもペトレンコの明快な意志に貫かれている。
 それゆえ、全編が立体的な演奏となって、聴き手の耳をそばだてる。
 今後、どんな作品がレコーディングされるのだろうか。そしてオスロ・フィルとの録音も聴いてみたい。
 今日の写真はラフマニノフの新譜のジャケット。この表情、ちょっとニヤッとしているけど、実際はもっと若々しくて素敵ですよ。ヘアスタイルも特徴があり、真ん中あたりの髪がツンツン立っている感じ。
 以前、サッカー選手がよくそういう髪型をしていたけど、クラシックの音楽家では初めてじゃないかなあ。もしも、次回インタビューの機会があったら、髪型ほめちゃおうかな(笑)。


 
 
 
| 情報・特急便 | 17:48 | - | -
ピアニストの原稿
 ここしばらく、来日した人、これから来日が予定されている人など、ピアニストの原稿が相次いでいる。
 3月にはマリア・ジョアン・ピリスが来日し、待望のリサイタルが16年ぶりに実現するわけだが、このプログラムの原稿を書いた。
 今回、彼女はシューベルトの「4つの即興曲」作品90とピアノ・ソナタ第21番を演奏し、その間にドビュッシーの「ピアノのために」をはさむという選曲。ピリスのシューベルトは多くのピアノ・ファンが、いまもっとも聴きたいと思っている作品ではないだろうか(3月7日サントリーホール、11日横浜みなとみらいホール)。
 3月には、ウラディーミル・アシュケナージが息子のヴォフカ・アシュケナージとのピアノ・デュオのために来日する。アシュケナージには以前インタビューをしたため、それを「レコード芸術」に書いた(3月6日東京文化会館、3月10日サントリーホール)。
 さらにもうひとり、3月に来日するヤン・リシエツキのリサイタル用のプログラム原稿も締め切りが迫っている。彼は今回オール・ショパン・プロで真価を発揮。ポーランドの血をひく彼がどんなショパンを2時間楽しませてくれるか、期待が募る。
 ちょっと先になるが、6月に行われるコンサートのチラシ原稿も書いた。ひとつは、5月末から6月にかけて各地で開催されるウィーン・カンマー・オーケストラの原稿である。指揮者はオーストリア出身のシュテファン・ヴラダー。私は彼が指揮を始める以前に何度か取材をしたことがあるため、いまや指揮者として活躍しているとは、驚きだった。ヴラダーは、ステージに登場する姿がとても美しい。ひざを曲げずにスッと歩みを進める。きっと指揮姿もカッコいいんだろうな。
 今回のソリストを務めるのが、牛田智大。得意とするショパンのピアノ協奏曲第2番を演奏する。牛田智大にとって、海外のオーケストラと共演するのは、これが初めてのことだ。ヴラダーはピアノを知り尽くしているから、密度濃いコミュニケーションが生まれるに違いない。
 もうひとつのチラシは、6月24日にすみだトリフォニーホールで行われる、アリス=紗良・オットとフランチェスコ・トリスターノのデュオ・リサイタルの原稿。このふたり、親友と呼ぶような仲のよさで、来日間近に新譜もリリースされる予定。プログラムはストラヴィンスキー、ラヴェルで、録音ではトリスターノの新作も収録されている。
 明日は、先日インタビューを行って大感激したエリソ・ヴィルサラーゼの締め切りもある。とまあ、こんな感じで、ピアニストの原稿が重なっている。
 今日の写真はウィーン・カンマー・オーケストラとアリス&フランチェスコのチラシ。明日からは月末入稿が控え、2月は短いからすぐに3月になってしまう。体力つけて、頑張らなくっちゃ。


 
| 情報・特急便 | 18:23 | - | -
JUNKU 連続トークセッションが近づく
 12月17日に行われる「JUNKU 連続トークセッション」がいよいよ近づいてきた。
 今日は場所の確認のため、ジュンク堂書店池袋本店に出かけたところ、入口には告知の看板が用意され、9階の書籍売り場には「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」の棚のところに、やはり告知のポップが貼られていた。
 ああ、こんなにも一生懸命トークショウ&サイン会のお知らせをしてくれるのかと、しばしその前で感慨にふけってしまった。
 明日は、対談相手の椎根さんと内容の打ち合わせをすることになっている。
 そして明後日は、19時30分からなので、その1時間前には現地入りし、最終的な打ち合わせをする予定である。
 これまで、「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」などでは、何度か講演を行ってきたが、いつもぶっつけ本番。もちろん、私は準備をしていったが、リハーサル的なものはまったくなかった。
 今回は、やはり対談ということと、出版社の方たちや書店の方たちが全員で動いてくれるため、私も入念な準備をしなくてはならない。
 今日の写真は、入口の看板(一番上)と本の売り場の告知ポップ。
 でも、こんなところで写真を撮っている姿を見られたら、ちょっと恥ずかしいよね。というわけで、さっと撮って、さっと立ち去りました(笑)。



| 情報・特急便 | 21:50 | - | -
UTAU DAIKU
 今日は、オーストリア大使館で、「東日本大震災復興支援プログラム UTAU DAIKU Wien」の記者会見が開かれた(主催 一般社団法人世界音楽合唱チャリティー協会 03-3505-1055)。
 これは音楽交流を通して、日本とオーストリアの友好を深めることを目指した新しいプロジェクトで、第1回はウィーン少年合唱団と南相馬市の少女合唱団(MJCアンサンブル)がウィーン楽友協会で再演を果たすというものである。
 実は、ウィーン少年合唱団は昨年の来日時に、過密スケジュールの合間を縫って、復興支援の一環としてMJCアンサンブルと共演した。今度はそのお礼と感謝の気持ちを届けるために、MJCアンサンブルが初めてウィーン公演を行うことになったという次第だ。
 日時は2014年3月5日、演目はベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」。シュテファン・ヴラダー指揮ウィーンカンマーオーケストラ、コーラス・ヴィエネンシス、マーラ・マシュタリール(ソプラノ)、小山由美(メゾ・ソプラノ)、ヘルベルト・リッパート(テノール)、甲斐栄次郎(バリトン)の出演が予定されている。
 すでに、この復興支援の「第九」に賛同した合唱ファン300人が参加を希望しており、実際に楽友協会でうたうのだという。日本では、年末になると各地で「第九」をうたう人々が多く見られるが、今回はあまりにも希望が多かったため、50人増やして350人の枠を設けているそうだ。
 なお、事前に合同リハーサルも行われるという。
 このコンサートの入場料のほとんどが日本大震災遺児等支援義捐金として、東北各地の被災地に寄付される。
 今回は、ウィーン少年合唱団が「第九」をうたうということが、もっとも大きなニュースとなっている。というのは、合唱団の500年を超す歴史のなかで、初めて「第九」をうたう記念すべきコンサートになるからである。
 私も長年、ウィーン少年合唱団の取材やインタビューは行っているが、「第九」をこれまでうたったことがないとは、思いもしなかった。その意味で、これはウィーン少年合唱団にとっても、歴史の新たな1ページを刻むことにもなる。
 今日の写真は記者会見の模様と、その後のレセプションの席に並べられていたオーストリア名物の美味なるケーキの数々。もちろん、ウィーンならではのおいしいコーヒーもありましたよ(笑)。




 
| 情報・特急便 | 23:33 | - | -
家庭画報 新年号
 今日は、9月末から10月初旬にかけてウィーンとベルリンに出張した記事が掲載された「家庭画報」の2014年新年号が発売された。
 カラー27ページ特集の「ウィーン・フィル 祝いの旋律」である。
 こうして見ると、すさまじいスケジュールだった取材のひとつひとつが、はやなつかしく思い出される。
 いろんな人たちに取材をしているが、ページ数や文字数の関係で、詳しく書けないこともあった。取材やインタビューで得た情報は、これから随時ブログで紹介していこうと思う。
 なんはともあれ、ようやく形になった。
 付録のウィーン・フィルのCDも、すぐに組み立てた。これももっといろんな曲を入れたかったが、なにしろ収録時間は限られている。そのなかで最良の方法を取り、ウィーン・フィルの魅力があますところなく伝わるように関係者一同で努力をした。
 これもまた、ゆっくり耳を傾けたいと思う。
 今日の写真は「家庭画報」の新年号の表紙と付録のCD。ながめていると、なんとも感慨深いですなあ。



| 情報・特急便 | 23:17 | - | -
JUNKU 連続トークセッション
「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」(芸術新聞社)の刊行を記念して、ジュンク堂書店 池袋本店でトークショウ&サイン会を行うことになった。
 先日もその情報をお知らせしたが、パンフレットが送られてきたため、もう一度ご紹介したいと思う。
 以下はそのパンフレットの内容である。

「おいしいクラシックを聴くと、人生が豊かになります!!」

 伊熊よし子&椎根和 2013年12月17日(火)19:30〜

 世界の著名音楽家との長年の交流で、その音楽性と人間性に魅了されてきた著者が、アーティストのイメージに合わせて料理を創作しました。ヨーヨー・マといえば酢豚、アルゲリッチだったらビーフシチュー、マリア・カラスならムサカ…、総勢50名の巨匠音楽家がレシピになりました。
「これまでライヴや録音でさまざまな演奏を聴き、取材やインタビューでアーティストと料理が結びつくようになった。演奏から受けた印象、本人に会って話を聞いたときの感想などが混然一体となり、ひとつのレシピが浮かんできたのである」(本書より)と語るクラシック音楽のエバンジェリスト・伊熊よし子に、雑誌「popeye」「Hanako」「Oleve」「日刊ゲンダイ」など多くの媒体の編集を通じて、時代を切り裂き、時代に陰影をつけてきた伝説の編集者・椎根和が、迫ります。

当日はトークイベント終了後、4F喫茶イベント会場にてサイン会を行います。
サインご希望の方はイベントの時間までに1Fレジにて書籍をご購入頂き、ご持参ください。
イベントを行う4Fフロアでは書籍のご購入・お会計はできません。
サインは原則的にお1人様1冊までとさせて頂きます。
入場料1000円(ドリンクつき)
電話予約承ります。 ジュンク堂書店 池袋本店 TEL5956-6111 FAX5956-6100

 
 というわけで、椎根さんとトークを行うことになった。彼は私の本のなかの「カラヤン」のところが一番印象的だったとのことで、そのことを何度も話題にしてくれる。きっと、トークショウでもカラヤンのこどか話題になるに違いない。
 そして椎根さんはパヴァロッティがお好きなのだが、今回は本に登場してこないため、非常に残念そう。もしも、次の機会があったら、ぜひパヴァロッティを入れたいと思う。さて、そのときはどんなレシピになるだろうか…。
 それでは、年末の忙しい時期の夜の時間帯ですが、お時間が許す方はぜひいらしてくださいね。楽しい会になるよう、頑張ります!
| 情報・特急便 | 21:54 | - | -
エマニュエル・パユ
 フルーティストのエマニュエル・パユには何度かインタビューをしているが、いつもひとつの質問に対して真摯に、一生懸命ことばを尽くして話してくれる。
 今日は「家庭画報」のカルチャーページのインタビューで、宿泊先のホテルに出向いた。
 つい先ごろ、彼は「アラウンド・ザ・ワールド」(ワーナー)と題するアルバムをリリースした。これはパリ音楽院時代からの長いつきあいのギタリスト、クリスティアン・リヴェとの共演で、パユがこれまでの人生のなかでさまざまな土地に暮らし、そこで出合った曲や触発された曲、なつかしい思い出がある曲などが収録されている。
 パユは、いまようやくこうした作品の数々を録音する時期が到来したと感じたそうだ。
「ものすごくたくさんの候補曲があったんだけど、絞りに絞って約80分の1枚のCDに詰め込んだ。ここで吹いているひとつひとつの曲が自分にとって大切な人生の思い出であり、イマジネーションを歓喜されるものであり、宝物のような存在なんだ」
 ここではバルトークからラヴィ・シャンカール、ヘンデル、細川俊夫、ピアソラまで幅広い作品を網羅。聴き手もともに旅をしているような感覚を抱く。
 パユは、ベルリン・フィルでの演奏とソロ、室内楽、コンチェルトと多彩な活動をしていて、「ジャンルを超えてあらゆる音楽を演奏したい。ただし、いい音楽だけを選んでね。枠を決めたくないんだよ」と語った。
 これからのスケジュールを聞くと、コンチェルトの初演が複数あり、さまざまな仲間との室内楽がびっしり組まれ、その間にレコーディングも何枚か入っている。
「本当に時間に追われているよ。予定表を見るのが恐怖なんだ。そうそう、その合間にベルリン・フィルでも演奏しているしね(笑)」
 こうジョークを飛ばす。
 来年早々再び来日し、2014年2月25日から28日まで、「ベルリン・バロック・ゾリステンwithエマニュエル・パユ」のコンサートを行う。ここではテレマン、J.S.バッハ、C.Ph.E.バッハなどの作品がプログラムに組まれている。
「いま使っている新しいフルートがエレガントですばらしい響きなので、バロック音楽にとても合うんだ。ベルリン・バロック・ゾリステンは最近メンバーがかなり変わり、若いメンバーが増えた。また新たな方向性をもつ音楽を聴いてもらえると思うよ」
 パユは天才的なフルーティストとして知られるが、インタビュー後の写真撮影のときに、楽器をカメラマンに向けてバーンと撃つような仕草をした。
 そのときにインタビューに立ち会った人たちと私が「ウワーッ、007みたい!」と話していたら、急に007のテーマ曲をいくつか吹き出した。
 何でもすぐに吹けてしまうのはわかっていたが、私たちの雑談に耳を傾け、すぐそれに反応する才能にはホント、脱帽…。
 今日の写真はインタビュー後の1枚と、パユの黄金のフルート。
「昔からワーカホリックでさあ、休みがないんだよね」
 そりゃそうでしょう、スケジュールを聞いて唖然としたもの。でも、年末年始には家族全員(大人数)でスキーに出かけるそうだ。少しは休めるみたいね、うん、安心しました(笑)。
 さて、また新譜の「アラウンド・ザ・ワールド」を聴いて、心の旅をしようかな。




 
| 情報・特急便 | 22:09 | - | -
与儀巧
 今日は沖縄出身のテノール、与儀巧にインタビューするため、紀尾井ホールに出かけた。
 初めて会う人にインタビューする場合、最初はその人の活動を聞いたり、コンサートや録音の作品にまつわることを話題にしたり、プロフィール的な話から始め、徐々に内面に触れていくようにしている。
 しかし、今日は最初から話が非常にスムーズに進み、話のテンポがよく、いろんな質問に対して明るく自然体で気持ちよく答えてくれるため、話題は「これ、オフレコね」というところまで進んでしまった。
 今日のインタビューはヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に書く予定にしている。
 今回は紀尾井ホールの「明日への扉」というシリーズのコンサート(12月2日(月)19時開演)に関して話を聞くことがメインだった。
 沖縄出身の作曲家、宮良長包の歌曲が5曲オープニングに登場する。この作曲家の歌曲は彼が幼いころから親しんできたものも含まれ、作曲家を敬愛している身としては、ぜひともこのコンサートでうたいたかったのだという。
 宮良長包は山田耕作の弟子で、その恩師の曲が前半の最後に組まれている。
 後半はボローニャ留学時代に学んだり、日本でも勉強していたイタリア歌曲、ペルシコの作品と、イタリア・オペラ・アリアが予定されている。
 今回はピアノが声楽家との共演が多く、歌手に絶大なる信頼を置かれている瀧田亮子が担当。私は以前、彼女の演奏に触れているため、このピアニストの大切さも話題となった。
 与儀巧の声は、のびやかで青空にスコーンと抜けていくような爽快感と、からだの奥から湧き出てくるような熱い情熱と、聴き手を元気にさせてくれるような活力に満ちている。
 ただし、本人は「暗い歌が好きなんですよ」という。どうにもならない愛や失恋、実らぬ恋に涙するような歌がたまらなく好きなのだそうだ。
 でも、そういう曲ばかりプログラムに組むと、聴衆が寝てしまったり、雰囲気が暗くなるため、さまざまな工夫を凝らしたのだという。
 これから「第九」で忙しく、NHKのお正月番組にも出演が決まり、多忙な日々が待っているようだ。
 あまりにも話が合い、インタビューが終わってからも電車のなかでずっと話を続け、本当に楽しい時間を過ごすことができた。なんだか、初対面とは思えないほどで、ずっと前から知り合いのよう…。
 12月2日のコンサート、ぜひ成功させてほしい!!
与儀さん、頑張ってくださいね、エールを送っていますから。
 今日の写真はインタビュー後のリラックスした表情。暗い曲が好みというけど、性格はこの笑顔のようにめっちゃ明るいよねえ。歌手はステージに出てくるだけでその性格がわかるような人がいるけど、与儀巧はどんな感じかな。すごく楽しみだ。
 11月28日にはWEBの記事がアップされる予定だから、ぜひ寄ってくださいね。作品に関しても、たくさん書きま〜す。



| 情報・特急便 | 23:13 | - | -
単行本のトークショウ&サイン会
 先日お知らせした、「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」の本のトークショウ&サイン会のチラシができあがった。
 ジュンク堂池袋本店のホームページでも掲載されているそうで、いよいよ募集が始まった。
 こうして実際に告知記事が掲載されると、いやが上にも緊張感が増してきますなあ(笑)。
 まずはチラシを見てくださいな。ひとりでも多くの人が足を運んでくれ、願わくばクラシックを好きになってほしい、そう願っています。
 拡大して見てくださいね。

| 情報・特急便 | 21:27 | - | -
ブッフビンダーの「皇帝」
 もうすぐルドルフ・ブッフビンダーが来日する。今回はウィーン・フィルとの共演で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲を弾き振りするプログラムが組まれているが、11月13日に「サントリーホール&ウィーン・フィル 青少年プログラム」にも出演することになっている。
 これは高校生を対象とするもので、12時から13時までの1時間。プログラムはベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」の1曲で、ブッフビンダーが弾き振りを披露する。
 そのプログラムの曲目解説をわかりやすく書いてほしいと依頼され、ふだんの原稿とは多少異なった形で仕上げた。
 これを聴くことができる高校生は幸せだ。最高の作品を現代の最高の音楽家たちの演奏で聴くことができるからだ。
 きっとこれまでクラシックにあまり興味をもたなかった人たちが、これを機に耳を傾けてくれるようになるかもしれない。
 若い心と耳は柔軟性に富むから、本物に触れて深い感動を得るのではないだろうか。
 こうした原稿は、ふだんのものとは違い、神経を遣う。少しでもベートーヴェンを知ってほしい、「皇帝」の魅力に触れてほしいと願い、知恵を絞ったつもりである。
 私も今回は通常のコンサートのほうの「皇帝」を聴きにいくつもりだ。ブッフビンダーの第2楽章は、涙がこぼれるほど美しい。私はこの緩徐楽章が、ベートーヴェンの作品のなかでもっとも好きである。
 さて、どんな感動が味わえるだろうか。ひたすら待ち遠しい。

 
| 情報・特急便 | 23:07 | - | -
アレッシオ・バックス
 3連休の初日、12日に中村紘子さんのご自宅でアレッシオ・バックスを囲むパーティが開かれた。
 私もお招きを受けて伺ったのだが、当日は45人ほどの招待客が集まり、非常ににぎやかな会となった。
 アレッシオ・バックスは1977年イタリアのバーリ生まれ。1997年に浜松国際ピアノ・コンクール、2000年にリーズ国際ピアノ・コンクールで優勝の栄冠に輝き、以後、国際舞台で幅広く活躍。現在はニューヨークを拠点に活発な演奏活動を行っている。
 もっとも尊敬する作曲家はラフマニノフだそうで、この夜もラフマニノフの作品を2曲披露してくれた。
 アレッシオ・バックスはやさしいまなざしのナイーブな表情をもつ人で、演奏も難曲を鮮やかにこなす技巧と、繊細さと大胆さを併せ持つ表現力が特徴である。
 実はこの日、演奏をごく間近でじっくりと聴かせてもらったのだが、タッチがとてもやわらかく、情感豊かな音色が美しく、ペダリングも絶妙だった。
 中村紘子さんは浜松国際ピアノ・コンクールの審査委員長をされていたとき以来、バックスの将来性を見越して応援し続けている。今回も、ぜひもっと広く彼の演奏を知ってほしいと、このパーティを計画された。
 若いピアニストにとって、こうしたバックアップは非常に力になる。彼はクラシック界のさまざまな人たちに紹介され、ひとりずつじっくりと対話していたが、私もぜひ次回はインタビューをしたいと申し出た。
「ええ、ぜひ。ぼくのほうこそお願いします」
 謙虚で人なつこい笑顔がとても印象に残った。
 中村さんによれば、この9月にはシカゴ交響楽団とサミュエル・パーパーのピアノ協奏曲を演奏し、新聞評で絶賛されたという。
 夫人のルシル・チョンもピアニストで、浜松のコンクールで知り合ったそうだ。彼女も国際コンクールの覇者で、ときおりふたりでデュオ・コンサートも開くという。
 最近のスケジュールをいただいたのだが、欧米でのコンサートがびっしり。ぜひ、日本でも各地でのツアーを行ってほしい。
 今日の写真はあいさつをしている中村さんとバックス。もう1枚は当日、中村さんが履いていた靴。うしろに音符が書いてあるユニークなハイヒールで、特注品かと思ったのだが、かなり前にホテルのショップで見つけたとか。まさに音楽家が履いてくれるのを待っていたような靴ですよね(笑)。



| 情報・特急便 | 16:52 | - | -
辻井伸行 ベルリン・コンサート
 ベルリンではタクシーではなく、みんなで地下鉄やパスに乗って移動したため、いろんな発見があった。
 ひとつ、私たちが日本人として大きな誇りを抱いたのが、地下鉄の駅に辻井伸行のカンマームジークザールでのコンサートのポスターが貼ってあったことである。
 早速、写真に収めた。
「辻井さん、頑張っているなあ」
 何度も取材でお会いしている身としては、うれしい限りだ。
 彼はこれまでもベルリンで演奏しているが、私はまだ海外での演奏は一度も聴いたことがない。
 先日、アシュケナージのインタビューの際、辻井伸行との共演について聞くと、「とても素直で、才能がある」と語っていた。
 ぜひ、機会があったら海外で演奏を聴いてみたいと思う。海外の聴衆にまじって聴く演奏は、また格別だろうから。
 今日の写真はそんな貴重な1枚。これも、タクシー移動だったら、けっして目にすることはなかっただろうから、取材班に感謝、感謝。
 辻井さん、コンサート頑張ってください。いつか聴きにいきますからね。


 
| 情報・特急便 | 23:01 | - | -
KAJIMOTOのHPに感謝
 今日、音楽事務所のKAJIMOTOのホームページに、「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」の紹介が掲載された。
 先週から私がよく存じ上げている広報のかたたちから連絡があり、本を読んでとてもわくわくしているので、ぜひ自社のHPで紹介したいといわれた。本当に感謝、感謝。率直な意見を聞かせてくれ、うれしい限りである。
 そして本日、「アップしましたよ」と連絡があった。
 早速見てみると、すごく生き生きとした文で紹介してくれ、何度も繰り返して読んでしまった。
 みなさん、ぜひKAJIMOTOのHPに寄ってくださいな。
 さて、これはすぐに出版社の芸術新聞社の担当者のWさんに連絡をしなくては。きっと喜んでくれるに違いない。
 いろんな人がいろんな形で読んでくれ、さまざまな意見を聞かせてくれる。まだこれからだろうが、どこかに紹介されるごとにうれしさが募る。
 ひとりでも多くの人に音楽とお料理を楽しんでほしいと願っているからだ。
 というわけで、締め切りが重なって頭がパンク状態、気持ちも平常ではなくなっているところへ、本当にうれしいお知らせをいただき、心が和んだ。
 さあ、これで力をもらったから、もう少し頑張って原稿を仕上げようかな。
 
 
| 情報・特急便 | 22:19 | - | -
単行本のサイン会
 昨日、「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」の出版社、芸術新聞社のA社長から、11月か12月に書店でトークショーとサイン会を行いたいのですが、という連絡をいただいた。
 もちろん、なんでもしますよ(笑)。
 トークは任せてください。なんといっても、マシンガントークといわれていますから。
 というわけで、これからスケジュールの調整に入ることになった。
 プロモーション活動というのは、いろんな種類がある。今年の「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」の公式本を書いたときも、この音楽祭でさまざまな講演やサイン会や対談などを行った。
 それらはすべてぶっつけ本番である。それゆえ、自分なりに入念な準備をし、いざ本番となったら、メモなど見ないで一気に話さなくてはならない。
 もっとも必要なのは、集中力と暗記力。それに時間を常に頭に置いて、うまく配分しなくてはならないことだ。
 聴いてくれる人が飽きてしまったり、眠くなったりしては大変だから。
 今回は、もしも場所があったら、単行本に登場したアーティストのCDを流そうかな。それにより、参加してくれる人が音楽へとより近づいてくれるかもしれないから。
 なあんて、まだ詳細も決まらないのに、もう具体的なことを考えてしまった。
 本当は、この本に登場しているアーティストの全CDをかけながら、トークも交え、どこかでイヴェントを行いたいくらいだ。でも、そのときは何かつまめる物を作ってきてくれ、といわれそうだな(笑)。
 本当は、こっちのほうが大変かも知れない…。
| 情報・特急便 | 11:43 | - | -
アイ・ラブ・ルプー
 音楽事務所KAJIMOTOのホームページでは、10月のラドゥ・ルプー来日に寄せて、「アイ・ラブ・ルプー」と題した記事を掲載している。
 これはアーティストや音楽ジャーナリスト、音楽評論家が何人か参加しているもので、ルプーをこよなく愛す人たちが彼に対する熱い思いを綴っているものである。
 私も参加させていただき、第13回目に登場することになり、その記事が今日アップされた。
 クラウディオ・アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団はアバドの体調不良で来日中止となったため、ルプーのコンチェルトを聴くことはできなくなったが、リサイタルではシューマンの「子供の情景」「色とりどりの小品」、シューベルトのピアノ・ソナタ第20番が予定されている。
 本当にルプーの演奏は、心にしみじみと響いてくる。こういうピアノは、なんと表現したらいいのだろうか。ことばが見つからないほどだ。
 昨年聴いた演奏は、いまでもすべてが記憶に残り、鮮明な思い出として蘇ってくる。
 今秋もまた、深い感動を与えてくれるに違いない。
 引っ越しであわただしい毎日を過ごしている間に、季節はすっかり変わり、夜など肌寒く、秋風が感じられるようになった。
 いよいよクラシック・シーズンの始まりである。今年はベテラン・ピアニストの来日が目白押し。聴き逃せないアーティストがたくさんやってくる。
 なかでもルプーは特別だ。KAJIMOTOのHP、時間があったら寄ってくださいね。
 
| 情報・特急便 | 22:07 | - | -
クラシックはおいしい アーティスト・レシピ
 今日は、「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」(芸術新聞社 2400円+税)がついにできあがり、担当のWさんが届けてくださった。
 淡いグリーンで、とてもシンプルな表紙のデザイン。なんと、金の文字が使われている。
 Wさんとカフェでいろいろ話しているうちに、昨年からの本の進行の話題となり、「ようやくできた」と、ふたりで思い出話に花が咲いてしまった。
 というのは、昨年の初夏にお話をいただいたのだが、そのころは「ラ・フォル・ジュルネ」の単行本を抱えていて、その後、牛田くんの本が入り、両方とも待ったなしの状態だったため、「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」は、ずっと待っていてくれたのである。
 それにしても、私の撮ったお料理の写真がこんなにきれいに出るとは思わなかった。プロのカメラマンではないため、照明器具をもっていない。それゆえ、いつも自然光で撮っていた。
 ということは、お料理は夜作るのではなく、日が明るいうちに作らなければならない。これが結構大変だった。
 でも、できあがってみると、なんとか見られる形になっていて安心した。
 これは類書がないため、営業の方たちが悩んでいるそうで、お料理のコーナーに入れたらいいのか、クラシックのコーナーに入れたらいいのか、判断しかねるそうだ。
 そうなんです、こういう企画は初めての試みなので、類書はないんですよ。でも、Wさんは、やはりクラシックのコーナーでしょう、といっていた。
 本の帯のうしろには、取り上げたアーティスト50人の名前がずらりと紹介されている。こう見ると、壮観だ。
 ただし、50人と決められていたため、今回は涙をのんで割愛したアーティストが何人かいる。そういう人たちのレシピもいつか紹介できるといいなあ。
 今日の写真は、その表紙。ねっ、シンプルでしょ。早いところでは、9月13日に書店に並ぶそうです。
 さて、どんな感想がくるかな。怖いような、待ちどおしいような…。

| 情報・特急便 | 22:24 | - | -
転居
 こんなにバタバタとしている夏も珍しい。
 仕事に加えて、急きょ引っ越しをすることになり、今日は膨大な数の人にメールで転居のお知らせを送った。
 すると、いろんな人から返信が届いた。
 以前は、ハガキを出していたのだが、いまはメールのほうが早いし、記録が残るから忘れられることもない。便利になったものだ。
 久しぶりにメールを送ってくれる人もいて、近況を知らせてくれるため、なんだか暑中見舞いを出しているような気分になった。
 というわけで、連日、仕事の資料やCDの整理に追われている。これがハンパではない。いまの家は収納が多いため、とんでもなく荷物が増えてしまった。
 それを分別し、ごみ収集の曜日に合わせて整理していく。もう腰は痛いわ、手はボロボロになるわ、からだ全体が汚れるわ、いいことはない。
 でも、いまじゃなきゃできない、と自分にいいきかせてごみの山と格闘している。
 引っ越しは9月7日。もう秒読みになってきた。ウワー、時間がないゾ。
 こういうときは、あまり深く考えず、目の前のことに集中するしかない。そして、物を捨てることにためらいは厳禁だ。いまは「断捨離」ということばがはやっているが、まさに私の毎日はこのことばがピッタリ。
 もちろん、引っ越し屋さんにおまかせコースで頼むのだが、それにしてもやることは多い。私の仕事って、こんなにも資料や音源が必要なんだと、もうあきれるしかない。
 いやいや、考えまい。悩んでいても始まらない。さ〜て、また整理するゾ〜(笑)。
| 情報・特急便 | 22:02 | - | -
ラドゥ・ルプー来日
 昨年久しぶりに来日公演を行ったラドゥ・ルプーの演奏は、心に深く響くものだった。私が聴いたのは、オール・シューベルト・プロ。昨年の「音楽の友」のコンサート・ベストテンの第1位にしたリサイタルだ。
 そのルプーが、今年もまた来日することになった。10月12日から21日までの間にリサイタルとコンチェルトを披露する。
 今回のプログラムは、シューマンの「子供の情景」と「色とりどりの小品」、シューベルトのピアノ・ソナタ第20番という興味深い選曲。そしてクラウディオ・アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団との共演で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番が予定されている。
 なんと充実した秋になることだろうか。
 先日、音楽事務所の担当の方から「アイ・ラヴ・ルプー」の記事を依頼され、今日はその原稿を入稿した。
 私はぜひアーティストレシピにルプーを加えたいのだが、なにしろ彼はインタビューをいっさい行わない。録音もやめたそうで、ナマの演奏を聴く以外、ルプーの音楽に触れる機会はない。
 だが、私の気持ちを察してくれ、担当者が今回は「ぜひ、楽屋にいらしてください」といってくれた。
 そこで少しでも会うことができれば、その印象でアーティストレシピが考えられるかもしれない。うーん、演奏もさることながら、これは楽しみになってきたゾ。ルプーは「神様のような演奏」をする人だから、きっと近寄りがたいだろうな。でも、そのオーラを感じ取りたい。
 今日の原稿は、KAJIMOTOのホームページに掲載される予定になっている。
 今秋は、ベテランのピアニストが相次いで来日。ピアノ好きにはたまらないシーズンとなりそうだ。
 そうだ、その記事も書く予定があったっけ。もうすぐ9月。本当にすばらしいシーズン到来となりそう。
 
| 情報・特急便 | 21:59 | - | -
宮川彬良心deバレエ
 私の親しくしている友人のUさんが、「宮川彬良による舞台音楽と歌の世界 宮川彬良心deバレエ」と題した公演をプロデュースしている。
 これは9月8日にティアラこうとう大ホールで開催(15時開演)されるもので、長年にわたって宮川彬良が練ってきた企画である。
 彼は最初の仕事がバレエ教室のピアノ伴奏だったこともあり、このジャンルには精通している。やがて東京ディズニーランドのショーの音楽や、さまざまなホールの舞台やバレエ制作の音楽を担当するなど多彩な活動を展開し、現在はテレビでもその才能を発揮し、多くのファンの心をつかんでいる。
 今回の公演では、ヒット曲となった「マツケンサンバ供廚覆匹皹藾佞気譟歌手の米良美一も参加する。アンサンブルのメンバーも、息の合った人たちばかり。
 舞台では10歳くらいのバレエを踊る子が登場し、「音楽あり」「音楽なし」の聴きくらべ、見くらべを行うなど、多彩な内容が組まれている。
 今日の写真はそのチラシの表と裏。友人のUさんは、「ぜひ、多くの人に公演の楽しさを味わってほしい。演奏は最高です!!」と熱く語っている。
 日曜日の午後の時間なので、お時間のある人はぜひ、足を運んでくださいな。




| 情報・特急便 | 22:12 | - | -
週刊新潮
「週刊新潮」の7月4日号が編集部から送られてきた。
 実は、このなかの「週刊新潮 掲示板」のコーナーに私の記事が掲載されているのである。
 この欄には、以前も一度参加させていただいたことがある。いま、自分が何か探している物とか、読者のかたたちに呼びかけて情報を募るという内容で、以前はクラシックの間口を広げるために日々いろんなことを考えています、何かいい方法はないですかと呼びかけた。
 すると、編集部宛てに多数のかたたちから手紙が届き、それが私のほうに返送されてきた。もちろん、返事はすべてお出しした。
 今回もまた声をかけていただいたので、いま取り組んでいる「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」の本のことを話したら、「それでいきましょう」ということになった。
 というわけで、今日送っていただいた雑誌にはそれが出ている。
 でも、まだ原稿はアップしていないし、夏の出版予定だから時期尚早かもしれない。
 これからしばらく待っていると、読者のかたたちからいろんな情報が寄せられてくるかもしれない、楽しみだワ。
 単行本の担当者にこの話をしたら、「えーっ、早く出さないとダメですねえ」といわれてしまった。そうか、やっぱり時期尚早だったんだ(笑)。
 今日の写真はその雑誌の一部。自分で自分にハッパをかけてしまった気分…。 

| 情報・特急便 | 23:02 | - | -
ルドルフ・ブッフビンダー、内田光子のコンサート
 今年の11月12日と13日、サントリーホールでルドルフ・ブッフビンダーが弾き振りを行い、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏を行う。オーケストラはウィーン・フィル。
 さらに11月3日、7日には同ホールで内田光子がリサイタルを行う。
 いま、その両者に関して、サントリーホールの情報誌「Enjoy!」の記事を書いているところである。
 ブッフビンダーは、以前インタビューをしたときに、ベートーヴェンのコンチェルトの話を聞くことができたので、それを交えて原稿を書こうと思っている。
 内田光子のインタビューは、もうかなり前のことになるが、今回のプログラムで取り上げるモーツァルト、シューマン、シューベルトの話を彼女が熱っぽく語ってくれたため、それをメインに据えた原稿にしようと考えている。
 秋は、このように大物アーティストの来日が相次ぐ。まだ夏前なので、かなり先のことのように思えるが、原稿に関してはもう秋の公演の依頼が多い。
 こうして、どんどん時間に追われ、あっというまに月日がたってしまうのである。
 クラシックのコンサートの場合、チケット発売が早いため、常にそれに合わせた時期に原稿を書くことになる。
 でも、ブッフビンダーも内田光子のコンサートも本当に楽しみだ。
 先日は、この内田光子のリサイタルが札幌のKitaraであるため、そこでの原稿(CDレビュー)も入稿した。
 もう6月だ。いろいろと押せ押せで、あわただしい毎日だが、今週はテニスのグランドスラム、フレンチ・オープン(ローランギャロス)の真っただ中。ロジャー・フェデラーはベスト8に進み、昨日の勝利でマッチ900勝を記録した。
 というわけで、仕事をしていても気が気ではない。
 そうこうするうちに、ウィンブルドンが始まってしまう。
 ワーッ、いつ仕事をすればいいんだ。テニスはライヴで見ないとつまらないし、なんといっても長時間の試合が多い。ビデオを撮っておいても全部は見られないし、はて困ったゾ(笑)。
 まあ、なんとか折り合いをつけますか。
 
 
| 情報・特急便 | 21:42 | - | -
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 講演
 いよいよゴールデンウィークに突入だ。
 でも、私は原稿に追いまくられ、まったく休日の感覚はなし。
 今日は、「CDジャーナルweb」に「ラ・フォル・ジュルネ」の記事がアップされた。題して「憧れのスペイン〜パリで花開いたスペイン音楽」。
 今回、ナントに出張したライター仲間が交代で執筆している記事で、私の出番は最終回の第4回目。お時間があるときに、ぜひ寄ってくださいね。
 それからもうひとつ、「ラ・フォル・ジュルネ」の初日の5月3日(金・祝)の14時30分から15時30分までの1時間、ホールD1(コクトー)で講演を行う。
 以前にも書いたが、テーマは「天才はスペインから生まれ、芸術家はフランスで磨かれる」。実は、これは単行本を書いたときに、私が最初に提案したタイトル。でも、出版社とPR会社のかたたちの意向により、私の名前を記したタイトルになってしまった。
 今回は、本来のタイトルに合わせて講演を行おうと思っている。
 東京国際フォーラムのホールD1は、JRの有楽町駅からフォーラムに入ってすぐ左手にある、一番便利な場所。その1階なので、わかりやすいと思う。
 入場は無料で、有料公演のチケットの半券が1枚でもあればOK。ぜひ、聴きにきてくださいね。
 というわけで、まだまだそれ以前にやらなくてはならないことが山積みだが、時間はどんどん過ぎていく。
 焦らず、騒がず、自然体でと思いながら、やっぱり気は焦るんだよね。牛田くんの単行本、新譜のライナーノーツ、「家庭画報」の特集と、三つ巴じゃ。
 なんとか、体力と気力を充実させて頑張らなくっちゃ…。
| 情報・特急便 | 22:39 | - | -
NHK ラジオ深夜便
 今日は、NHKの「ラジオ深夜便」の「ないとエッセー」に出演するため、NHKに行った。
 これは「暮らしの潤いに音楽を〜私のおいしいクラシック案内」と題されたコーナーで、約10分間のトークを4回収録するというもの。
 事前に3000字の原稿を4本担当のディレクター、村島章惠さんに提出し、今日はそれをもとにひとり語りの形で収録が行われた。
 ただし、いつもの早口が災いし、「もっとゆっくり話してください。夜の番組ですから、ゆったりとしたテンポでお願いします」と再三再四いわれ、いつもの3倍ほどテンポを落として話した。
 でも、どうしても途中で早く話してしまいがちになる。それを極力抑え、「ゆっくりゆっくり」と自分にいいきかせ、なんとかテンポを守ることができた。
 内容は「ラ・フォル・ジュルネ」に関したことで、ナントとパリで取材したアーティストの紹介などを含め、インタビューした内容なども盛り込んだ。
 放送は、NHKラジオ第1の4月22日(月)から25日(木)の夜11時20分から0時までの間。お時間のある人は、ぜひ聴いてくださいね。
 今日の写真はディレクターの村島さん。
 村島さん、大変お世話になりました。早口ですみません。なにしろ、「マシンガントーク」といわれているものですから(笑)。
 
| 情報・特急便 | 22:35 | - | -
現代音楽入門プログラム
 5月3日から始まる「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013」には、フランスの現代音楽の精鋭集団アンサンブル・アンテルコンタンポランが参加する。
 ピエール・ブーレーズが創設した31人の凄腕のグループで、彼らの来日は18年ぶり。
 そんな彼らが、いま内外で大きな話題となっている作曲家、藤倉大の「Fifth Station」の日本初演を行う。
 これは、「音楽の冒険スペシャル《Fifth Station》を体感!」と題した無料コンサートで、前夜祭の5月2日に開催される(19時から19時45分まで、東京国際フォーラムのホールD7)。
 現代音楽入門プログラムとして開かれるこの貴重なコンサート、ユース特別プログラムとなっていて、事前申込制。「ラ・フォル・ジュルネ」のHPで受け付け中だ(4月22日19時まで。高校生以上25歳以下200名。1回の応募で2名まで入場できる) 
 アンサンブル・アンテルコンタンポランのパリでのインタビューの様子は、今週11日アップのヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に書いた。ぜひクリックしてみてくださいな。
 25歳以上のかたはこの無料コンサートには入れないため、5月3日からのコンサートをお楽しみに。
 当日、取材陣は年齢不問とのことだが、若い人ばかりがいるところに行くのも、なんだか気が引けるよねえ、どうしようかなあと、内心ブツブツ(笑)。
 
 
| 情報・特急便 | 22:34 | - | -
ユッセン兄弟
 いつも感じていることだが、新たなアーティストのデビューCDのライナーノーツを執筆することは、特別な意義をもつ。
 今回は、オランダのルーカスとアルトゥールという10代のピアニストのドイツ・グラモフォンにおけるデビュー・アルバムとセカンド・アルバムのライナーを書くことができた。
「月光〜ユッセン兄弟デビュー」と、「シューベルト:即興曲集」という2枚同時リリース(4月24日)で、すでにオランダではデビュー・アルバムは2010年4月に発売され、わずか1日でゴールド・ディスク(1万枚)達成、同年12月にはプラチナ・ディスクに認定されている。
 さらにセカンド・アルバムのシューベルトは2011年9月にリリースされ、こちらもゴールで・ディスクに認定されている人気ピアニストである。彼らはこれらのアルバムに、各々のソロ演奏と、4手の演奏を収録している。
 ルーカスは1993年、アルトゥールは1996年生まれ。ふたりとも5歳でピアノをはじめ、幼いころからさまざまな場で演奏し、ベアトリックス女王の記念祝賀会でも演奏、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とも共演している。
 彼らは2005年からマリア・ジョアン・ピリスの指導を受け、現在も機会あるごとに彼女からレッスンを受けている。
 ルーカスとアルトゥールは、ピリスが2007年12月にブラジルで行ったマスタークラスに参加し、この模様がNHKのドキュメンタリーとして放映されたから、それを記憶している人もいるのではないだろうか。
 あの番組に出ていた金髪の少年ふたりが、ユッセン兄弟である。
 彼らはいまや19歳と16歳に成長、ルーカスはアメリカに留学し、アルトゥールはオランダで学んでいる。彼らの父親はオーケストラのティンパニ奏者で、母親はフルーティストで教育にも携わっている。
 そんな彼らが初めてプロモーションのために来日し、今日はオランダ大使館で演奏とレセプションが催され、その後インタビューを行った。
 録音で聴くとルーカスはおだやかで知的で繊細、アルトゥールはみずみずしく情感豊かでリズムが際立つ感じがしたが、実際のソロ演奏はもっと躍動感に満ち、4手の演奏も情熱的でリズミカルだった。
 インタビューでは終始にこやかに、ことばを尽くして一生懸命ひとつひとつの質問にていねいに答えてくれ、昨夕来日したばかりで疲れているはずなのに、とても好感がもてた。
 このインタビューは今月28日の「日経新聞」の夕刊と、他のいろんなところに書き分けしていきたいと思っている。
 なお、5月には来日公演が予定され、5日(東京・朝日浜離宮ホール)、6日(広島・三原市芸術文化センター)、9日(神奈川フィリアホール)、11日(埼玉所沢市民文化センター)が組まれている。 問ユーラシック(03-3481-8788)
 今日の写真はオランダ大使館での演奏を終えたふたりと、インタビュー後のショット。
 淡いブルーのシャツが兄のルーカス、濃いブルーのシャツが弟のアルトゥール。ロック・ミュージシャンのようで、もちろんそうした音楽も大好きだそうだ。そしてテニスも好きで、よくふたりで本気で試合をするとか。ピアノに関してライヴァル意識はまったくもっていないそうだが、テニスだけは相手に負けたくないと意気込む。
 なんでも、ロジャー・フェデラーとラファエル・ナダルの両方を応援しているという。「まったくプレースタイルが違うふたりを応援しているって、ちょっと珍しいでしょ」と笑っていた。
 これからいかようにも変化しうる、未知数の魅力を備えたルーカスとアルトゥール。また、デビュー当初から聴き続けていく楽しみなアーティストが出現した。







 
 
| 情報・特急便 | 22:38 | - | -
有馬雄太さんのフィルム
 ナントの「エルムンド」の撮影でお世話になったフランス在住のディレクター、有馬雄太さんが、個人的なプロジェクトとして1本の掌編フィルムを制作された。
 題して「Fukushima,Bourgogne,J.S.Bach」。
 本来はフランス人に観てもらいたいと思って作ったそうだが、やはり日本人にも観てほしいと考え、日本語での補足字幕をつけたという。
 全体が明と暗、歓喜と苦悩、光と影、静謐と躍動など、さまざまなコントラストが際立ち、そこにバッハの音楽がはさみこまれている。
 まるで救済の音楽のようでもあり、また癒しの音色でもあり、祈りの空気をも感じさせる。
 やはり音楽の力は偉大だ。
 LINKSの「有馬雄太フィルム」をクリックしてください。
 ぜひ、観てね。



 
| 情報・特急便 | 22:12 | - | -
連携企画 アート×ミュージック セミナー
 昨日は、東京・丸の内の三菱一号館美術館で開かれている「奇跡のクラーク・コレクション――ルノワールとフランス絵画の傑作」(5月26日まで)と、5月の連休に開催される「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」の連携企画として、3月29日に東京国際フォーラムのホールD7で行われる「フランス絵画と音楽をより深く楽しむためのセミナー」の打ち合わせに出かけた。
 これは三菱一号館美術館館長の高橋明也さんと、LFJクラシックアンバサダーの私が対談の形でセミナーを行うもので、各々のトークと両者のトークセッションのふたつで構成される形である。
 時間は19時開演で、20時30分終了という予定が組まれている。
 高橋館長には初めてお目にかかったが、いろんな絵画のお話やフランス印象派の画家たち、その時代背景、文化にまつわることまでお聞きし、とても貴重な時間をすごすことができた。
 私のトークのなかでは、音楽を随所に盛り込むことになり、これから関連したCDとDVDを探そうと思っている。
 会場は220名が入れるそうで、これから一般の人々への募集が始まる。それぞれのホームページで詳細が発表されるとのこと。
 参加費は無料である。
 私は絵も大好きなので、この企画はとても有意義であり、私自身学ぶところも多い。高橋館長のお話を少し聞いただけで、無性に美術館に足を運びたくなってきた。まだクラーク・コレクションを見ていないが、できる限り早くゆっくりと鑑賞したいと思っている。
 さて、その前に私の役目として、話の内容に合う音楽探しをしなくては…。セミナーに参加してくれる人たちが大いに満足してくれるよう、いい選曲をしなくてはならない。
 でも、いつもながら膨大な音源があるため、そのなかから目指すCDとDVDを見つけ出すのは時間と根気がいる作業になりそう。
 これは週末の大仕事になりそうだ、やれやれ(笑)。少しでもいい仕事をしたいと思ったら、その準備は大変な労力がいるものなのね。
| 情報・特急便 | 23:03 | - | -
「伊熊よし子のおいしい音楽案内 パリに魅せられ、グラナダに酔う」の電子書籍発売
 昨年12月に出版した「伊熊よし子のおいしい音楽案内 パリに魅せられ、グラナダに酔う」(PHP新書)の電子書籍が発売された。
 いち早く購入した友人に見せてもらったところ、とても見やすい。
 文字の大きさも変えられ、改行も画面に合わせて最適な位置に自動変更され、操作は簡単、いつでもどこでもアクセスできる。
 写真も大きなサイズで見ることができ、感動してしまった。
 すごい時代になったものだ。なあんて、時代遅れなこといっているよ、と笑われそうだ。
 私のこれまで出版した単行本では初めての経験ゆえ、なんだかとても不思議な感覚にとらわれた。
 自分の書いた本がこんな形で読まれるなんて、本当にびっくり。
 電子書籍のファンの友人は、重い本を何冊も持ち歩くことなく、ノートPCやタブレット、スマートフォンなどで気軽に読むことができ、暗いところでもOK、やめられないそうだ。
 私の本は599円から600円という価格がつけられている。通常の紙による本よりも安いから、それもお得感があるのかも。
 なにはともあれ、初めての電子書籍、感慨深いです(笑)。
 
| 情報・特急便 | 20:41 | - | -
ダン・タイ・ソンのテレビ出演
 ダン・タイ・ソンは子ども時代、ベトナム戦争のために疎開し、その地で苦労しながら音楽とのかかわりを続けたことで知られる。
 以前書いた私の本「ショパンに愛されたピアニスト ダン・タイ・ソン物語」でも戦禍の様子はこまかく綴ったが、彼はこの時期のことをいまでも強烈に覚えているという。
 そんな彼が、NHKのBS1「TOMORROW beyond3.11」に出演することになった。題して「ダン・タイ・ソン〜ピアノは人生〜」。
 これは、日本と縁の深い外国の人々が東日本大震災後の日本を旅し、復興に向けて歩み始めた日本の姿を世界に伝えるドキュメンタリー・紀行番組である。
 2月19日(火)の午後2時からの放送で、ダン・タイ・ソンは福島県の相馬市と福島市を訪れ、ベトナム戦争中における自身の人生を振り返る。
 そして、被災地から避難した子どもたちのために開設された福島市のピアノ教室を訪ね、子どもたちに音楽を通してメッセージを送るという内容になっている。
 ぜひ、見てくださいね。
 
| 情報・特急便 | 21:47 | - | -
エル・ムンド 海外リポート
 ナントで撮影した「ラ・フォル・ジュルネ」のテレビ放映の日時が決まった。
 NHKのBS1「地球テレビ エル・ムンド」で、2月21日23時からである。このなかの海外リポートの7〜8分枠である。
 でも、同日撮ってもらったアーティストへのインタビュー中の写真が送られてきたが、これがとんでもなく疲れた顔をしている。
 うわあ、どうしよう。
 テレビもきっと、疲労と時差ですさまじい顔をしているのではないだろうか。といっても、もうどうすることもできない。トホホ…。
 みなさん、私の表情は完全に無視して、ナントの「ラ・フォル・ジュルネ」の様子に集中してくださいね。
 あああ、ユーウツ。
 だから旅先での撮影は嫌なんだよね、とブツブツ。
 でも、今回の取材にご一緒した音楽ジャーナリストの片桐卓也さんが、たまたま私たちが撮影していた道路の向こう側を通りかかり、「おっ、やってるやってる」というので、1枚パチリと撮ってくれた。
 これは貴重な写真で、早速送っていただいたので、これを掲載しちゃいます。
 今回はずっと一緒にいたため、3人のクルーとすっかり仲よくなってしまい、彼らの写真を今度は私がパチリ。
 向かって右からディレクターの有馬雄太さん、中央が音声のジェレミ・ブリゴさん、左がカメラの渡辺兼三さん。
 有馬さんはフランス在住のディレクターで、音楽のみならずさまざまな分野の仕事を行っているそうだ。とても真摯でおだやかで人あたりがよく、仕事熱心な人である。
 ブリゴさんはマイクの袋のなかやジャケットのなかにバナナやリンゴを隠しもっているという、とってもユニークな存在。写真でも渡辺さんの肩のところにバナナが見えるでしょう。笑ってしまいます。
 渡辺さんはお父さんが日本人でお母さんがフランス人。バイリンガルで、優しい目をしたナイスガイ。私が日本語で名前を書いてと頼んだら、すぐに書いてくれたけど、「最近、漢字を書くことがなかったから、ひどい字になっちゃった」と苦笑い。書き順は滅茶苦茶だといっていた。
 こんな3人の息はぴったり。彼らのハードな仕事ぶりが、21日には見ることができる。
 有馬さん、ブリゴさん、渡辺さん、大変お世話になりました。今後も、いい仕事をしてくださいね。





 
| 情報・特急便 | 22:40 | - | -
LFJ2013記者発表に参加
 明日14時から東京国際フォーラムで行われる「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013」の記者発表会で、7分間スピーチをすることになった。
 主催者や関係者に混じってアンバサダーとしてゲスト出演し、ナントで体験した音楽祭の様子や感想を伝え、東京公演への期待を促すというものである。
 今日はその準備としてさまざまな資料を読んで頭にたたき込み、ナントでインタビューしたアーティストの話を思い出し、東京公演のこまかいプログラムを読み込んだ。
「ラ・フォル・ジュルネ」のプログラムは、何年たっても速く読み込むコツがつかめない。まず、タイムテーブルとアーティストと曲目のすべてを読み、並行して行われているコンサートの詳細をつかみ、どれとどれが重なっているか、どれを優先すべきかをチェックしていく。
 ナントでも、これを毎日つかむのが大変で、取材やインタビューなどが入ると、聴きたいものを逃してしまうということが多々あった。
 明日は、なんとか効率よく多くのアーティストの様子を伝え、東京公演に大いなる期待を抱いてもらえるよう、さまざまな内容で話を進めたいと思う。
 着ていく洋服を用意し、資料もそろえ、いろんな準備をしたが、一番肝心な疲れた顔をしていてはいけないので、睡眠はたっぷりとった。
 さて、記者発表会はどうなるだろうか。
 いつもながらのぶっつけ本番で、なんとか乗り切ろう(笑)。
| 情報・特急便 | 22:30 | - | -
ナント情報スタート
 昨夜、無事にナントとパリ出張から戻った。
 いやあ、今回は朝から晩までずっとコンサートとインタビュー、取材が続き、疲労困憊。さすがにまいりました。
 とはいえ、情報はたくさん仕入れ、さまざまな人に会い、新たな発見も盛りだくさん。目いっぱい走り続けた1週間だった。
 ナントはずっと雨模様で、ある日は風がものすごく強く、傘はまったく役に立たないほど。みんなずぶぬれになりながら「ラ・フォル・ジュルネ」の会場であるシテ・デ・コングレにやってきたが、だれひとり不満げな顔をしていないのが印象的だった。やっぱりお祭り気分で楽しんでいるのね。
 ナントでの「ラ・フォル・ジュルネ」はもうすっかり年中行事として定着していて、人口30万人弱なのに、チケットは15万枚も売れている。しかも、10万枚は即日完売だったとか。これにはびっくり。
 着いたその日の午後から「ラ・フォル・ジュルネ」に行き、ずっと1日中ここにいっぱなし。ランチもディナーも内部のアーティストラウンジで音楽家や関係者にまじって食べ、外で食べたランチは1回、ディナーも最終日だけだった。
 さて、1日目のスケジュールはすさまじいものがある。
 31日の1時半に羽田を出発して、31日の朝6時20分にパリに着き、3時間ほど待ってナントに着いたのは10時40分。それからホテルに行ったが、まだチェックインができないということで、みんなで名物のクッキーLUの工場跡地をリニューアルしたレストランに行ってランチをいただいた。
 それから自由行動。私はPR会社のHさんと新聞社のUさんと一緒に旧市街の町散歩へと出かけた。この日しかそれができないからだ。
 本当はナント美術館で絵をじっくり見たかったのだが、改装中でダメだとわかった。それゆえ、教会に行ったり、お土産を買ったり、町のあちこちをまわってまずは足慣らし。
 その後、チェックインをしてホテルに荷物を置き、いざ会場へ。
 2007年に初めて来たときも感じだが、ナントはフランス人が「住みたい町」のひとつに挙げているほど人気の高いところ。おだやかな雰囲気で自然に恵まれ、海も近く、人々の歩みはゆったりとしている。トラムやバスが走っているが、徒歩で十分にまわれる広さもいいのかも。
 今日の写真は、名物の塩キャラメルやクッキー、キャンディなど、いろんなお菓子を美しくディスプレイしていたお店の外観と、試食をガンガン勧めてくれたオーナーと、スイーツの棚。このオーナーは、自分がブログに登場するとわかり、大喜び。「もっと食べて」と、また甘いものを勧められてしまった。
 それからホテルの窓から撮った外の風景。私の部屋は最上階の5階のお城が見渡せる部屋で、時間の流れが止まったような静けさに包まれていた。
 お料理の写真は、ランチの2皿。牛肉の煮込みと、さまざまなお肉の乗ったサラダ。このサラダのドレッシングが気になり、ナントに住んでいるNさんに聞いたところ、イチゴやペリー類を入れたワインビネガーを使っているそうで、ナントではこれが結構多いそうだ。
 このちょっと甘めのビネガーがお肉の匂い消しの役目を果たし、オリーブオイルと混じるといい感じの味わいになる。このビネガー、あとで探しました。
 明日からは「ラ・フォル・ジュルネ」のレポートで〜す。











| 情報・特急便 | 23:22 | - | -
来日中止が相次ぐ
 つい先ごろ、胃腸炎のため、ラン・ランの来日コンサートが中止となったばかりだが、今日はブレハッチがインフルエンザにかかってしまったため、2月初旬の来日公演が中止と発表された。
 今年は各地でさまざまな病気が蔓延し、多くの人が大変な目に遭っているが、アーティストも例外ではない。
 彼らは世界各地を飛び歩いているため、病気になる率も高いのだろう。
 ブレハッチはいま懸命に治療し、後半の来日公演が可能になるよう努めているそうだが、高熱が続いているというから事態は予断を許さない。
 早く治ってくれるのをひたすら願うばかりだ。ラファウ、がんばって!!
 でも、私は出張のため、これら多くのコンサートを聴くことができず、アンスネスの前半の演奏会も聴き逃してしまう。ブレハッチもアンスネスも大好きなピアニストだから、本当はすごく聴きたい。
 もちろん、ナントでたくさんのコンサートを聴くことができるのだから、そちらを楽しむことに頭を切り替えなくちゃ。
 というわけで、今日は出張前のすべての原稿を入稿し、取材やインタビューなどの準備にかかっている。
 お天気を調べたら、ナントもパリもずっと雨模様のようだ。ホールは問題ないのだが、どうしても雨が続くと周辺取材の足がにぶる。
 私は「晴れ女」といわれ、ほとんど毎日雨が降るというノルウェーにいったときも、真っ青に晴れた。
 フィヨルドの奥にいったときは、ホテルのオーナーから「ずっといてくれ」と懇願されたほどだ(笑)。
 海外出張で雨に降られたことはほとんどないが、さて、ナントとパリはいかに…。
 それでも雨に備えた格好もプラスし、トランクの中身をもう一度検討し、資料を読み直している。
 明日は和食を目いっぱい食べようかな。そして深夜にはもう空港に向かわなくてはならない。体調管理に気をつけなくちゃ。
 
 
| 情報・特急便 | 22:32 | - | -
ナントの「ラ・フォル・ジュルネ」
 出張前に、東京国際フォーラムの担当者からナントの「ラ・フォル・ジュルネ」の情報が続々と届いている。
 第19回を迎える今年のテーマは、1860年から現在までのフランスとスペインの音楽で、ビゼーからブーレーズまでさまざまな作曲家の作品が取り上げられる。
 とりわけ、1870年代から1940年までのフランス音楽史の「黄金期」にスポットライトがあてられていて、フランス・オペラの復活、フランクとその楽派、20世紀初頭の革新者―ドビュッシーとラヴェル、パリで活躍したスペインの作曲家たち、狂乱の年―サティと6人組、1930年以降の音楽というカテゴリーで多くの作曲家の作品が組まれている。
 これらの作品が東京と同様に朝から晩まで演奏されるわけだが、複雑なプログラムを隅から隅までながめ、時間と曲目、演奏者を考慮し、どれを聴くかを決めなければならない。
 さらに、取材やインタビューもいくつか実践したい。
 私が現地に着くのは1月31日のお昼過ぎ。当日は14時くらいからコンサートが組まれているから、そこからすぐに聴きにいくか、あるいは疲れていたらちょっとずらすかは自由、ということになっている。
 さて、こればかりは行ってみなければわからない。体調はどうか、時差ボケ、気温差には対応できるか、その場で判断することになる。
 海外出張というのは、「いいねえ」とか「楽しそうだねえ」などといわれることが多いが、実際はものすごくハードワーク。自分で自由に何でも判断できるわけではないため、どうしても無理に無理を重ねることになる。
 私は時差に強いほうではないため、いつも着いた当初は結構ツライ。前にも書いたが、乗り物も好きではなく、飛行機は特に苦手だ。
 でも、海に囲まれた土地に住んでいる以上、飛行機での移動は避けられない。嫌いだ嫌いだと思っていると、もっと辛くなるので、腹をくくるしかない。
 さて、前向きな気持ちに切り替えて、ナントでのプログラムを検討するとしましょうか。楽しい楽しい出張、と思わなくちゃね(笑)。
 
| 情報・特急便 | 23:12 | - | -
SACDのリリース
 最近、古い録音の名盤がすばらしい音質に変貌し、新たなリリースが相次いで登場している。
 オリジナルのアナログ・マスターからハイブリッド盤SACDリリースのためにリマスタリングされたものがそれに該当し、各社からさまざまな名盤が数多く発売されている。
 たとえば、アレクシス・ワイセンベルクのピアノ、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮による1970年代の録音(EMI)が、見事な音質になって蘇った。 
 1枚は1970年にパリで録音されたチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番で、オーケストラはパリ管弦楽団。ワイセンベルクの鋭く切り込んでいく明快なタッチのピアノと、パリ管の抒情的な音色を生かしながら繊細さとスケールの大きさを併せ持つカラヤンの指揮が見事にマッチし、チャイコフスキーの美しい旋律美が浮き彫りになっている。
 もう1枚はラフマニノフのピアノ協奏曲第2番で、ワイセンベルクとカラヤンのコンビは変わらず、オーケストラがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団となっている。まさに黄金のトリオとも呼べる豪華な布陣だ。こちらは1972年にベルリンで録音されている。
 当時はワイセンベルクもカラヤンも絶頂期。すさまじいまでの熱気と迫力と躍動感あふれる演奏が輝かしく生命力あふれる響きとなって伝わり、古い録音だということを忘れさせる。
 チャイコフスキーはふつうのCDプレーヤーでも再生可能となっているが、ラフマニノフのほうはSACD対応のプレーヤー専用ディスクとなっている。
 オーディオ機器の発達はめざましいものがあり、新しいものを手に入れてもまたすぐに新たな機材が開発されるため、ついていけない感じだ。
 先日、単行本のプロモーションで新聞社のインタビューを受けたとき、ひとりの記者が「私、こんな古いテレコを使っているんですよ」といってDATを見せてくれた。
 そういえば、DATってあったっけ。なんだかとてもなつかしい気持ちがして、まじまじと見てしまった。
 本当に次は何が出てくるのだろうかと、気が気ではない。
 ようやくSACD対応のプレーヤーを手に入れたから、しばらくはこれでいい音質のものを聴くことができるものの、またいつのまにかこれも古くなるのだろうか。やっぱり、ついていけないな、お金もついていかないし(笑)。
 今日の写真はワイセンベルクとカラヤンのSACD。いまのうちにたくさん聴いておこうっと。

| 情報・特急便 | 22:54 | - | -
ラファウ・ブレハッチ
 私の大好きなピアニスト、ラファウ・ブレハッチが2月に来日する。
 これを記念し、来日記念盤としてビクターが2005年のショパン国際ピアノ・コンクールのライヴを2枚リリースしていたのをまとめ、2枚組として再発売することになった。
 そのライナーノーツのコンチェルトのほうは以前書いていたのだが、2枚組にまとめるにあたり、ソロ演奏の曲目解説を加筆することになり、昨年11月に書いて送った。
 それがいよいよ来日直前の1月30日にリリースされることになり、今日視聴盤「ショパン名演集」が届いた。
 すぐに聴いてみたところ、あの印象的なコンクールの臨場感が伝わり、感動を新たにした。いつ聴いても、ブレハッチの演奏は心に響く。
 先日の単行本のなかでもショパンの項で彼のコンクール時のことに触れたが、本当に2005年のショパン・コンクールは忘れがたい印象を残している。
 もう何度もこのコンクールのときのブレハッチの記事を書いたため、どうしても似た内容になってしまう。いかんなあ、読者に「またか」と思われてしまうから…。
 ブレハッチにはその後インタビューを続け、いろんな話を聞いているものの、もっと新しい話題を集めなくてはならない。
 さて、今回はインタビューの機会が訪れるだろうか。コンサートの最初のほうはナントに出かけているため聴くことができないし、後半に勝負してみようか。
 さて、またCDを聴き直そうかな。ホント、どうして飽きないんだろう、われながら不思議…。
 今日の写真は再発売になったCDのジャケット。このころと、風貌がまったく変わらないのもいいよね。


 
| 情報・特急便 | 22:02 | - | -
ヴェルディ&ワーグナー生誕200年
 2013年は、ヴェルディとワーグナーというオペラ界の2大巨匠の生誕200年のメモリアルイヤーにあたる年。
 すでに各地のオペラハウスや音楽祭、コンサートホールでは、来年に向けてふたりのさまざまな作品を上演する予定が組まれている。
 日本でも、大物歌手の来日などが目白押し。オペラファンは財布のひもとにらめっこの日々がつづくのではないだろうか。
 私が大きな期待を寄せているのが、「東京・春・音楽祭―東京のオペラの森2013―」のワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」(演奏会形式、4月4日、7日 東京文化会館15時開演)。
 選りすぐりのメンバーが組まれているが、とりわけ注目はヴァルターを歌うクラウス・フロリアン・フォークトだ。
 今年の来日時にインタビューしたときに、「次はヴァルターを歌うよ」といわれ、キャッホーと飛びあがりたい気持ちになった。
 来年は1年間、ヴェルディとワーグナーに明け暮れそう。
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」といえば、1988年のバイエルン国立歌劇場の来日公演は忘れがたい想い出として脳裏に刻まれている。11月13日にNHKホールで行われた公演の指揮は、ヴォルフガング・サバリッシュ。歌手陣がすばらしく、ベルント・ヴァイクル(ハンス・ザックス)、クルト・モル(ポーグナー)、ルネ・コロ(ヴァルター)、ペーター・シュライヤー(ダーヴィット)、ルチア・ポップ(エヴァ)、そしてベックメッサーは私のもっとも好きな歌手、ヘルマン・プライという豪華な布陣だった。
 この公演は何年たっても色褪せない強烈な印象を残し、これまで多くのオペラを観てきたが、私のベスト3に入るひとつとなっている。
 これを観てから、私はニュルンベルクという町に興味をもち、ドイツに出張したおりにニュルンベルクに回り、町をあちこち散策したほどだ。
 さて、来年のフォークトのヴァルターはどんな演奏になるだろうか。いまから胸が高鳴る思い…。
 
 
 
| 情報・特急便 | 22:10 | - | -
単行本の発売
 今日は、「伊熊よし子のおいしい音楽案内 パリに魅せられ、グラナダに酔う」(PHP新書)の単行本が発売された。
 ところが、セラフィット洗足の仲間のHさんがメールをくださり、「大井町の書店にいったけど、みつからなかった」と書いてあったため、発売が延期になったのかと内心ドキドキ。
 実は、当初、出版社の担当者から14日発売と聞き、その後16日といわれ、最終的に15日に決まったといわれたため、みんなに15日と伝えてしまったのである。
 Hさんは雨の日に本を探しにいってくれたのかと思うと、すごく悪くて、メールであやまりまくり。
 今日は出版社が休みのため、確認することもできない。
 ああ、どうしよう、悪いことをしてしまったと悔やんでいたら、またもやメールが入って、渋谷の書店で手に入れたとのこと。
 ああ、ホッと安心。
 これまでも単行本の発売当日はいろんなことがあったけど、今日もハラハラドキドキした。Hさんのメールには「サインくださいねー」と書いてあった。
 もちろん、サインでもなんでもしますよ(笑)。ありがとうございました!!
 
| 情報・特急便 | 21:42 | - | -
新編 ピアノ&ピアニスト
 10月中旬にフーフーいって原稿を入稿した、「新編 ピアノ&ピアニスト」(音楽之友社)のムックの見本誌が送られてきた。
 複数の執筆者によって書かれた本で、世界のピアニスト、日本のピアニスト、作品、ピアノの歴史などが網羅されている。
 私も何人かを担当したが、自分の好きなアーティストが必ずしも割り当てられているわけではなく、これまで書いてきた人が中心になっている。
 本音をいえば、私がデビュー以来ずっと聴き続けてきた人や、長年インタビューをしてきた人を担当したいのだが、各々の執筆者がそれをいい出したら収拾がつかなくなってしまうのだろう。
 何年に一度か新しくなるこのムック本、そのつど少しずつピアニストの人選が変化する。長年続けて書いていると、その変遷がわかって興味深い。
 とりわけ、新人の動向に目が離せなくなる。また次回は新たな才能が数多く登場するんだろうな。
 今日の写真は届いたばかりのムックの表紙。うーん、この人選もまた興味深いものがある。担当者はさぞ頭を悩ませたんでしょうね。

| 情報・特急便 | 22:52 | - | -
牛田智大
 先日も紹介した「リヒテンシュタイン展」の特別番組が、明日10月13日(土)11:00〜11:54 BS-TBSで放映される。タイトルは「華麗なる侯爵家の秘宝〜500年に渡る奇跡の物語〜」。再放送は11月4日(日)16:00〜16:54。
 この展覧会の公式テーマ曲を作曲・演奏しているピアニストの牛田智大が今夏リヒテンシュタインを訪れ、番組では「なぜ小国・リヒテンシュタインが、3万点もの美術品を所有しているのか」という謎を解き明かすというナビゲーター役を担っている。
 これまで日本ではあまり知られることのなかったリヒテンシュタイン。この展覧会を機に国のことを知り、訪れたいと思う人が増えるのではないだろうか。
 牛田くんの演奏も収録されているというから、楽しみだ。
 見られない人は、ぜひビデオをセットして!!
 
 
| 情報・特急便 | 21:13 | - | -
ウィーン少年合唱団
 ウィーン少年合唱団が、いまテレビCMで美しい声を披露している。
 三井住友海上火災保険株式会社の自動車保険のCMで、安全運転アプリ「スマ保」を紹介するものだ。
 イメージキャラクターを務める堀北真希さんとのコラボレーションで、歌っているのはヨハン・シュトラウス2世の「トリッチ・トラッチ・ポルカ」をもとにした「スマ保の唄」。
 今年来日したブルックナー組が歌っているもので、「スマ保、スマ保」と歌い上げているところが聴いていると癖になってしまい、いつしか自分でも歌っていることに気づく。
 ウィーン少年合唱団は来春から夏にかけての来日も決まり、次はモーツァルト組がやってくる。
 このCMで、また人気が高まりそうだ。ぜひ、CMご覧あそばせー。癖になりますゾ(笑)。
| 情報・特急便 | 22:59 | - | -
ヤン・リシエツキ
 毎年この時期になると、翌年の春に開催される「東芝グランドコンサート」のプログラム用のインタビューが行われる。
 来年は1月から2月にかけてヤニック・ネゼ=セガン指揮ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団が予定され、ソリストはヴァイオリンの庄司紗矢香とピアノのヤン・リシエツキが参加する。
 今日はそのリシエツキのインタビューに行った。
 リシエツキは1995年ポーランド人の両親のもと、カナダに生まれた。わずか9歳でオーケストラと共演、2011年に15歳の若さでドイツ・グラモフォンと専属契約を結んだ。
 彼の演奏は以前も聴いているが、若々しいエネルギーに満ちあふれたポジティブな音楽作りが特徴。とても知的で、確固たる構成を持つ思慮深いピアノを奏でる。
 今日は「東芝グランドコンサート」のプログラムと「モーストリー・クラシック」に書く記事のためのインタビューだったため、来春コンサートで演奏するベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番についての話がメーンとなったが、各楽章について、ベートーヴェンの作品の解釈について、指揮者やオーケストラとの音の対話についてなど、雄弁に語ってくれた。
 なかでも印象的だったのは、冒頭の5小節のピアノ・ソロで出る部分の話。これはとても抒情的で静謐で美しい旋律に彩られている。それをリシエツキはこんなことばで表現した。
「この5小節がこのコンチェルトのすべてを表しているように思える。だから、どう演奏するか、十分に見極めないといけない」
 彼は幼いころから数学を得意とし、学校では飛び級をし、ピアノもとてつもない速さで上達した。
 新譜はモーツァルトのピアノ協奏曲だが、ショパンも得意とし、ポーランドにはしばしば招かれている。
 長身でブロンドの巻き毛がキュート、スター性がある。知性派で知られるものの、素顔はとてもいたずら好きで茶目っ気たっぷり。明日は14時にオペラシティコンサートホールでリサイタルがある。
 次の録音はショパンのエチュードになるそうだが、その作品10のほうを明日演奏する。若き逸材はどんな演奏を聴かせてくれるだろうか。
 今日はこのインタビューが終わってからオペラシティにベン・キムのリサイタルを聴きに行った。
 こちらは繊細で情感あふれ、弱音の美しさが際立つピアニズムの持ち主。久しぶりにゆっくりピアノを聴くことができ、みずみずしい音色に心が癒される思いがした。
 今日の写真はインタビュー後のリシエツキ。ピアノのある部屋だったため、ショパンの「革命エチュード」をわざと大音響でガンガン弾き、みんなが驚くのを見て大喜びしていた。

| 情報・特急便 | 22:32 | - | -
ベン・キム
 今日は、2006年のミュンヘン国際音楽コンクールで優勝し、一気に世界の舞台へと飛翔したベン・キムのインタビューに行った。これは「レコード芸術」のインタビューだが、記事の掲載は数カ月先になりそうだ。
 彼には以前にも話を聞いたことがあり、再会を喜び合った。いつも真面目でひたむきで感じのいいナイスガイだが、今回も質問に対してことばを尽くし、真摯に答えてくれた。
 ベン・キムは韓国人の両親のもと、1983年アメリカに生まれた。レオン・フライシャーに師事し、3度目のメジャー・コンクールの挑戦で栄冠に輝いた。
 ショパン、ドビュッシーを得意とし、新譜はショパンの「24の前奏曲、4つの即興曲」(ユニバーサル)がリリースされたばかり。ここではみずみずしく勢いに富むショパンを聴かせ、才能を遺憾なく発揮している。
 10月5日には東京オペラシティコンサートホールでリサイタルがあり、J.S.バッハ、ベートーヴェン、ショパン、ドビュッシーを予定している。
 ペン・キムは、両親が韓国からアメリカに移住して大変な苦労をしたその背中を見て育ったためか、地に足が着いた生きかたをしている。現在はベルリンでさらに研鑽を重ね、一歩一歩実力派ピアニストとしての道を歩んでいる。
「ドビュッシーがすごく好きなんだけど、今年のメモリアルイヤーはみんなが演奏したり録音するから、ちょっと静まるまで待っているんだ」と笑う。
 ただし、「12のエチュード」の数曲を来日公演では披露する。
 今日の写真はインタビュー後のひとこま。すごく足が長くてスリム。気取ったところがまったくなく、自然体で感じがいい。
ショパンの新譜も自然なルパートが印象的なてらいのないもので、ショパンのはかなさ、ほの暗さ、初々しさを表現する反面、祖国に対する強い思いなどを力強く表現している。
 リサイタルが楽しみだ。


 
 
| 情報・特急便 | 21:47 | - | -
ユンディ・リ
 9月末から10月にかけて日本ツアーを予定していたユンディ・リの公演が中止となった。尖閣諸島問題を受け、中国政府から訪日を見合わせるようにと行政指導があり、ユンディが来日中止を決意したという。
 彼は今回30歳の記念公演になること、ベートーヴェンのピアノ・ソナタに挑戦することなどから、非常に力を入れていた。
 以前にもブログで紹介したが、先日の来日時に「シグネチャー」のインタビューを行い、7月号が出たばかり。
 そのときは「ショパン・コンクールから12年、成長した面を聴いてください」と意欲を示していた。
 それだけに、彼自身もとても残念だとのコメントが音楽事務所に届いている。今回はサントリーホールだけでも3回コンサートが予定されていた。私もデビュー以来ずっと演奏を聴き続け、そのつどインタビューも行ってきたため、演奏を聴くことができず本当に残念だ。
 近いうちにぜひ今回のプログラムで実現してほしいと願う。
 ユンディは、「ベートーヴェンは偉大です。ピアノ・ソナタは各々異なった世界が含まれていますから、それをひとつずつ解きほぐしていくのがたまらなく楽しい。まだ時間は十分にありますから、ベートーヴェンにはゆっくりと歩み寄っていきますよ」と笑顔を見せながら語っていた。
 そのベートーヴェン、いつ聴くことができるだろうか。待ち遠しい。
 今日の写真は「シグネチャー」の雑誌の一部。真面目なユンディの真面目な表情。


| 情報・特急便 | 22:55 | - | -
真夏のパリへ
 今日から8月。いつも思うけど、月日が経つのは本当に早い。
 いま書いている単行本の調べ物のために、12日から1週間パリにいくことにした。
 やはりオリンピックの時期は飛行機が取れず、終わってからも結構混んでいる。夏休みの時期だから、みんなヨーロッパに羽を伸ばしにいくんだろうな。
 私は集中していくべきところだけ効率よく回り、1週間フル回転で動き回りたいと思っている。
 でも、いつもパリにいくとあっちのお店、こっちのお店とついつい買い物三昧。今回もいきのトランクはガラガラ、帰りはいっぱいいっぱいになるような気がする。
 この前いったスペインでは、10日間ロストパゲージでひどい目に遭ったけど、なんとか乗り切ったから、今回も多少のアクシデントは目をつぶることができそう。
 まあ、いく前からあらぬ心配をしていても仕方がないから、いつも通り「なんとかなるさ」の精神でいこうっと(笑)。
 とにかく、出かける前にいま抱えている原稿のメドをつけ、気持ちを楽にして出発したい。そのためには、できる限りオリンピックは見ずに、仕事に集中しなくては…。
 といいながら、「ああ、今日もウィンブルドンは雨だわー。フェデラーは今日シングルスとダブルスの2試合があるのに、いったいいつ始まるのかしら」とネットをチェックしている私。いやいや、あかんなあ。
 以前にも書いたが、いまはピアニストの山本貴志の須坂市でのショパン・チクルスの第5回と第6回のプログラム原稿を書いている。これがもうすぐ終わりそうだから、その後は「モーストリー・クラシック」の連載と特集記事に取りかからなくてはならない。
 今回の特集は「ヴァイオリン協奏曲」。そこまでいったら、少し荷物でも作らなくちゃ。私はいつも海外出張のとき、荷物を作るのは前日なので、何かしら忘れ物をしてしまう。
 さて、今夜はテニスがなさそうだから、仕事に集中しようかな。でも、雨がいつ止むのか、気になるんだよねえ(笑)。
| 情報・特急便 | 20:53 | - | -
若い才能
 昨日はユニバーサルで、牛田智大のインタビューを行った。
 彼はいつ会ってもキュートな笑顔を絶やさず、ていねいなことばを使って一生懸命話してくれる。
 そのなかで、2010年のショパン国際ピアノ・コンクールの話になった。ずっと映像をチェックしていたそうで、なんでもニコライ・ホジャイノフとダニール・トリフォノフの演奏に惹かれたという。
 やはり若いピアニストのみずみずしい演奏に共感するのだろうか。
 私がコンクールを聴きにいった話をし、「次のショパン・コンクールはまだ16歳だから受けられなくて残念ね」というと、「すごく残念です。1歳たりないんですよね」と本当に残念そうな表情をした。
 オリンピックにもいえることだが、何年に1度行われるような大きな国際的な大会は、ちょうどそのときにピークがこないと参加できない。
 牛田くんはショパン・コンクールIN ASIAで連続優勝を飾っている。本当はワルシャワのあのステージで彼の演奏する雄姿を見たいのだが、こればかりは如何ともしがたい。
 でも、彼の才能はすばらしいから、きっといいチャンスにめぐり合うと確信している。
 そしていま、そのホジャイノフの日本でのデビューCDのライナーを書いている(ビクター)。彼もまた、ぐんぐん伸びていく若芽のような、天井知らずのような特別なものを秘めている。
 さて、もう一度ホジャイノフの音源を聴き、原稿に没頭するとしますか。
| 情報・特急便 | 00:30 | - | -
ミロシュ
 今日は、王子ホールにミロシュのデビュー・リサイタルを聴きにいった。
 以前、演奏を聴いたのはCDのプロモーション来日のときだったため、本格的な演奏は初めて聴くことになる。
 前半はソルの「グランソロ」からスタート。静謐な響きから徐々に快活な歌へと変化していく曲想を、ミロシュはからだのどこにも余分な力を入れない自然な奏法で淡々と紡いでいく。 
 次いでJ.S.バッハの「リュート組曲(パルティータ)」ハ短調BWV997より「前奏曲とフーガ」。随所にリュートを思わせる響きを登場させ、バッハの厳格ながら流麗な作風をのびやかに奏でた。
 曲の合間にはわかりやすい英語で作品の紹介をし、前半の最後はヴィラ=ロボスの「プレリュード第1番」「エチュード第11番」「ワルツ=ショーロ」「エチュード第12番」で締めくくった。
 ミロシュは、こうした民族色豊かな特徴あるリズムに彩られた作品になると、にわかに音がクリアになり、躍動感が増す。
 そして後半はミロシュがクラシックギターに開眼し、自身の道を見出すきっかけとなったアルベニスの「スペイン組曲」より「アストゥリアス」を披露。まさに思いの丈を示すかのように、印象的な旋律が感情豊かに演奏された。この作品はすでに世界各地で演奏しているのだろう。完全に自分の歌となっていた。
 これに同組曲の「グラナダ」「セビーリャ」と続け、いまスペインの本を書いている私は、大いにインスパイアされた。
 最後はミロシュが大好きだというドメニコーニの「コユンババ」。輝かしい才能をいかんなく発揮し、大喝采を受けた。
 そして、ここからがミロシュの人柄のよさを表すひとこまとなった。彼は聴衆とのコミュニケーションを取りながら、アンコールにタレガの「アルハンブラの思い出」を弾いたのである。
 ああ、なんとタイムリーな選曲。私はいまこれに関した原稿を書いている最中だ。目を閉じて聴き入っていると、次第にエネルギーが湧いてきた。
 ミロシュ、ありがとう。原稿の方向性が見えてきた感じがします。
 今日の写真は終演後、楽屋で扇子をもらって喜んでいるミロシュ。彼はアンコールの最後に「禁じられた遊び」もプレゼント。鍛え抜かれたテクニックと表現力に支えられたこの曲は、聴き手の心にしっとりと浸透してきて、名曲なんだと改めて思わせてくれた。
 こういう曲はなかなかナマで聴く機会がない。あまりにも有名なため、ギタリストは弾きにくいのだろう。でも、じっくり聴くと、やはりいい曲だ。
 今日のリサイタルはテレビが入っていたのだが、終演後にNHKのディレクターに偶然会い、彼から放映の情報を聞いた。
 実は、このディレクターは昨年のNHK音楽祭のFM番組でお世話になった人である。放映は9月14日(金)、NHKのBSプレミアム「クラシック倶楽部」、午前6時だそうだ。朝早すぎて見られない人は、ぜひ録画してね。10月以降にはFM放送の「ベスト・オブ・クラシック」で全曲を放送する予定だという。
 心に響く演奏、お楽しみに!!



 
| 情報・特急便 | 23:36 | - | -
第8回浜松国際ピアノコンクール
 今日はホテルオークラ東京で、11月10日から24日にかけてアクトシティ浜松で開催される、第8回浜松国際ピアノコンクールの記者発表が行われた。
 今回の応募総数は31カ国1地域から288名だったが、つい先ごろDVDによる音と映像のみの予備審査が行われ、19カ国1地域の96名が選出された。
 もっとも多いのは日本から参加する27名で、過去最多の参加となる。参加者全体の平均年齢を見てみると、22.88歳。最年少は15歳で、最年長は30歳だ。
 課題曲を見ると、第2次予選にコンクールのための新作、池辺晋一郎作曲による「ゆさぶれ、青い梢を」(ピアノのために)が含まれ、これは世界初演となる。さらに、第3次予選に初めて室内楽の課題が加わっている。モーツァルトのピアノ四重奏曲第1番、第2番をプロの弦楽器奏者と共演するという試みである。
 なお、本選のコンチェルトの指揮は、初めて井上道義が務める。
 このコンクールからはアレッシオ・バックス、アレクサンダー・ガブリリュク、上原彩子、イム・ドンヒョク、ラファウ・ブレハッチ、アレクサンダー・コブリン、アレクセイ・ゴルラッチ、チョ・ソンジンをはじめとするピアニストが巣立ち、彼らはその後大活躍をしている。
 そんな彼らに続くどんな才能が出現してくるのか、とても楽しみだ。実は、今回は海老彰子審査委員長からのオファーで、オブザーバーに就任することが決まった。それゆえ、第3次予選と本選を聴きに行く予定にしている。
 審査員には私のよく知っているダン・タイ・ソン、エヴァ・ポブウォツカが名を連ねている。コンクール後には彼らに話を聞くことができるかもしれない。
 11月なんてまだ先のことだと思っているけど、すぐにくるんだろうな。それまでにやらなくてはならないことが山積み。記者発表を聞きながら、私の頭のなかは、「本当に大丈夫だろうか。また直前に参加できなくなったらどうしよう」と、そんな心配がグルグル。3年前に一度オブザーバー就任が決まっていたが、直前にどうしても仕事の都合で参加できず、お断りした経緯があるからだ。でも、心配ばかりしていても始まらないよね。やるっきゃないんだから。
 今日の写真は記者発表時の1枚。左から運営委員長の海老澤敏氏、審査委員長の海老彰子氏、実行委員会会長の浜松市長、鈴木康友氏。


 
 
 
| 情報・特急便 | 23:13 | - | -
ルドルフ・ブッフビンダー
 2010年4月、東京オペラシティコンサートホールでルドルフ・ブッフビンダーの「オール・ベートーヴェン・プログラム」を聴いたときの感動は、いまだ胸の奥に熱いマグマのように燃えたぎっている。
 このときはピアノ・ソナタ第8番「悲愴」とほぼ同時期に書かれた愛らしい曲想をもつピアノ・ソナタ第10番からスタート。次いで第23番「熱情」、最後に第29番「ハンマークラヴィーア」が演奏された。
 いずれも精神性が高く、作曲家の魂に近づく一途な演奏だったが、ウィーン人らしい踊りと歌の要素が随所に顔をのぞかせ、堅苦しさや真面目一方の演奏とは一線を画した人間性あふれるピアニズムだった。
 そのブッフビンダーが、2010年から2011年にかけてドレスデンのゼンパーオーパーで行ったベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会のライヴ・レコーディングから、特に日本の音楽ファンのために選んだ4曲がリリースされた。「悲愴」「月光」「熱情」「告別」である。
 ここに聴くブッフビンダーの演奏は、2年前にリサイタルで聴いたときと同様の深い洞察力に富み、真摯で誠実で作曲家への敬愛の念を感じさせる。
 彼は今年6月、再び来日し、すみだトリフォニーホールで演奏する。6月16日はリサイタルで、ベートーヴェンの「悲愴」「熱情」、シューマンの「交響的練習曲」を。6月19日は協奏曲で、アルミンク指揮新日本フィルとの共演でブラームスのピアノ協奏曲第1番、第2番を演奏する予定。
 ブッフビンダーはこれまで日本では知名度が高いとはいいがたく、ヨーロッパの評価に後れを取っていたが、ようやくその真価が認められるようになった。
 彼は派手なことはいっさいせず、自分が表に出る演奏は決してしない。あくまでも作曲家の意図に寄り添う。前回の来日公演では、「ハンマークラヴィーア」の途中で弦が切れるアクシデントに見舞われた。だが、調整後、何事もなかったかのように、自然で美しい伽藍を思わせるような演奏を聴かせた。
 あの心に染み入るピアノをまた聴くことができると思うと、早く6月にならないかなあと思ってしまう。本当はもう5月が終わってしまうと思うと「なんと月日のたつのは早いことか」と焦る気持ちになるが、ブッフビンダーの演奏が目の前に迫っていることはうれしい限りだ。
 今日の写真は新譜の「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ名曲集」(ソニー)。これから各誌のCD評を書く時期だが、これは絶対に欠かせないな。
 それにしてもユニークなジャケット写真だ。よくテニスの選手が試合に勝った後にテレビの前のガラスにサインをすることがあるが、それと同じ。よく見ると、ピアノから音符が湧き出てくるような絵なんだよね。彼はアマチュア画家であると自負しているそうだが、このジャケット、それをリアルに表現している。こういうのって、ぜひ本物の絵を見たくなるよねえ(笑)。



  
 
| 情報・特急便 | 22:53 | - | -
ニコライ・ホジャイノフ
 先日インタビューした若手ピアニスト、ニコライ・ホジャイノフが3年に1度開催されているダブリン国際ピアノ・コンクールで優勝を果たした。
 彼は前にも書いたが、2010年のショパン国際ピアノ・コンクールで最年少ファイナリストとなった、未来への可能性を秘めた逸材。
 1992年ロシア極東ブラゴベシチェンスク生まれで、現在まだ19歳だ。
 だが、年齢にそぐわずとても落ち着いていて、あまり笑わないクールなタイプ。インタビューのときも冷めた感じの返事が多く、コンクールに対しても自身を客観的にとらえている様子だった。
 そのときに「もうすぐダブリンのコンクールを受けに行くよ」と語っていたが、つい先ごろ優勝の一報が入り、あのときの自信に満ちた表情が浮かんできた。
 ホジャイノフは、現在モスクワ音楽院でヴォスクレセンスキーに師事している。ヴォスクレセンスキーにも以前話を聞いたことがあるが、とても生徒思いで熱心な先生だと感じた。
 このインタビューのときに「ロシアを出て他の国に留学するとか、他の国に住んでみたいと思わない?」と聞いたところ、こんな返事が戻ってきた。
「モスクワ音楽院は世界最高峰の教育機関だと思うし、すばらしい教授陣がいる。だから他の国に行く必要性は感じない。ここで最高の勉強ができるのだから、これからもずっとここにいるよ」
 彼は今秋、来日リサイタルが予定されている。それに合わせて録音もリリースされる予定(ビクター)。ひとまわり大きくなったホジャイノフの演奏を聴くことができそうだ。
 彼のインタビューは、次号の「音楽の友」に掲載される予定である。
 今日の写真はインタビュー後の1枚。彼はすごくおしゃれで、カッコいいスーツでビシッと決めていた。実は、これにソフトフエルト製の中折帽子をかぶっている。でも、写真では髪の毛を見せたいからと、帽子は拒否。うーん、なんでもはっきり主張する人だ。この妥協のなさが、一途な演奏にも通じているのだと納得。



 
| 情報・特急便 | 21:30 | - | -
ルネ・マルタン
「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2012」が4月27日から5月5日まで東京・丸の内エリアで開催されている。
 今日は、この「熱狂の日」音楽祭のアーティスティック・ディレクターのルネ・マルタンにインタビューをし、さまざまな話を伺った。
 彼には以前から話を聞いているが、今日はまず今年のテーマである「サクル・リュス(ロシアの祭典)」の話題から入った。マルタンは常に頭のなかが音楽でいっぱい、次なるアイディアがどんどん湧いてきて、やりたいことが山積みという感じだが、今日もいかにロシア音楽がすばらしいか、奥が深いかという話題になり、話が止まらない。
 今回はなかなかふだん演奏を聴くことができない音楽家、ピアノのユーリ・ファヴォリンやエカテリーナ・デルジャヴィナ、合唱団のカペラ・サンクトペテルブルク、また珍しい作品、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番などがプログラムに組まれていることに話題が集中、「ぜひ、全部聴いてほしい」と目を輝かせた。
 この人と話をしていると、いつも「こんなに夢を抱いて生きているなんて、幸せだろうな」と感心させられる。特にピアノ音楽が好きだそうで、その面で私と意気投合。昔はケンプやリヒテルのコンサートのプロデュースをしていたそうで、とりわけリヒテルとは親しかったとか。
「リヒテルとは150回も一緒に仕事をしたんだよ」
 その人間的な一面を垣間見るようなエピソードが次々に現れ、私はつい「そういう話はリヒテルのファンのみならず音楽ファンがぜひ知りたいことなので、本を書いてください」といってしまった。
 マルタンはニヤリとし、「いつかね」とはぐらかしてしまった。
 2つほどリヒテルの素顔が見えるエピソードを聞いたが、本当にマルタンの胸のなかだけにとどめておくのはもったいない。私が聞き書きするから、来日するたびに少しずつ話して、といったところ、またもやニヤリとし、「こういうの、いっぱいあるんだよ」といった。
 うーん、もったいない。もっと聞きたい。みんなに知ってほしい。なんとかならないものだろうか。またマルタンに会うたびに、しつこく頼んでみようか。いつか根負けしてくれるかも(笑)。
 彼はフランスで「ラ・フォル・ジュルネ」を始めたのはもう17年前になるが、モーツァルトのピアノ協奏曲第9番「ジュノム」を多くの人々に絶対聴いてほしいと思って始めたのだそうだ。
「このコンチェルトを聴いたら、多くの人が人生が変わったと感じると思う。特に緩除楽章の美しさといったらない。こういうすばらしい作品を人々に聴いてほしいと思って、音楽祭を続けている。でも、何か壁にぶつかったり、悩みのあるときは、いつもJ.S.バッハの音楽を聴くことにしている。バッハは私の心の糧。その音楽は、私がどんな状況にあるときでも救ってくれる」
 そんなルネ・マルタンの目は、すでに来年のテーマに向かっているようだった。
 今日の写真は、雄弁ぶりを発揮してくれたマルタン。子どものころは貧しかったが、いまは15,000枚のCDをもつことができるようになったんだよ、と笑う。さて、音楽祭に通うとしましょうか。
 実は、もうひとついいことを聞いた。というのは、今回はフランスの華道家が来日し、会場の広場に3つの大きな花のモニュメントを飾るのだそうだ。それはストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」「ペトルーシュカ」「春の祭典」を花で描いたものになるという。今日はまだ製作中で写真は撮れなかったため、遠くから眺めてきたが、3日には撮影できそうだ。請うご期待!



| 情報・特急便 | 23:26 | - | -
レ・ヴァン・フランセ
 昨夜は、東京オペラシティコンサートホールに、レ・ヴァン・フランセのコンサートを聴きにいった。
「最強の6人による夢のアンサンブル」といわれるこのユニットのメンバーは、フルートのエマニュエル・パユ、オーボエのフランソワ・ルルー、クラリネットのポール・メイエ、ホルンのラドヴァン・ヴラトコヴィチ、バソンのジルベール・オダン、そしてピアノのエリック・ル・サージュ。
 メイエが中心となり、国際舞台で活躍する10年来の友人同士が集まった木管アンサンブルで、フランスの伝統に重きを置いている。
 プログラムはイベール、ニールセン、プーランク、ミヨーなどの作品をメンバー構成を少しずつ変えて演奏。まさしくいずれも名手ならではの上質なアンサンブルで、管楽器の奥深さを堪能することができた。
 今回は、レ・ヴァン・フランセから委嘱を受けて書かれたティエリー・ペク(1965〜)の六重奏曲が初演されたことも意義深かった。これは東洋の五音音階が用いられ、ピアノと5本の管楽器がそれぞれ幻想的で霊感に満ちた音楽を作り上げていくスタイル。作曲者が寄せたことばによれば、パリ島とジャワ島のガムランからインスパイアされたという。
 レ・ヴァン・フランセの新譜もリリースされたばかり。これは結成10周年記念作品で、「フランスの風〜ザ・ベスト・クインテット」(EMI)と名付けられている。
 以前、メイエとパユにはインタビューする機会があったが、ふたりとも超のつく練習魔。すでに名手として名をなしているのに、作品について質問すると、いかにそれを自分のなかに取り込むために膨大な練習を必要とするかを延々と語り続けた。
 そしてまだまだ上達することが必要であり、勉強し続けなくてはいけない、1回1回の演奏が真剣勝負だと異口同音に話していた。
 そんな彼らのステージはもちろん全身全霊を賭けたものだったが、やはり気の合う仲間同士のアンサンブルは音楽が喜びに満ちている。その心の高揚が聴き手にもひしひしと伝わってきた。
 パユは日本の居酒屋が大好き。お洒落なお店ではなく、庶民的なお店で和食のおつまみを楽しみながら日本酒をガンガン飲む。きっと、今回も終演後は6人で居酒屋に繰り出すんだろうな(笑)。
 今日の写真はコンサートのチラシ。最強メンバーの音楽は最高でした!!

 
 
| 情報・特急便 | 23:02 | - | -
東儀秀樹
 先日、篳篥(ひちりき)など雅楽に用いられる古典楽器からシンセサイザーまでさまざまな楽器を演奏する東儀秀樹に話を聞いた。
 実は、1998年に女性誌のインタビューで一度会ったことがあり、それ以来のインタビューとなった。
 いつも驚くのは、とても前向きな姿勢をもった人だということ。本人いわく楽観主義で、病気になったときや大けがをしたときも決して気落ちすることなく、いま何をするべきかを考えて果敢に行動していたそうだ。
 そんな彼が長年の夢だったCDのアメリカ・デビューを果たした。題して「TOGI/東儀秀樹」(ユニバーサル)。今年はCDデビュー15周年の記念の年だが、折しもワシントンの桜まつり100周年にあたり、この記念イヴェントで演奏することになったため、レコード会社がアメリカ・デビューを計画した。
「ぼくの演奏している古典楽器はグローバルな空気をもっているし、海外の人たちにも興味をもってもらえる。ずっと前から海外リリースを望んでいたんです」
 この桜まつりに合わせてリリースされた新譜は、これまでの代表作や思い出の詰まった曲をアレンジを変えたり共演者を変更したりして、東儀秀樹の歩みを俯瞰した形でプログラミングされている。
「でも、レコード会社の担当者から1曲は新曲がほしいといわれ、すぐに作り上げたのが冒頭の《Cosmic Thoughts 宇宙(そら)への想い》なんです」
 東儀秀樹の生み出す音の世界は、まさに宇宙的な広がりを感じさせる。そのなかに古典と現代が混在し、どこか懐かしい感じも抱かせる。これは日本人のみならず、海外の人も「なんとなくなつかしい響きだ」と感想をもらすそうだ。
 雅楽の伝統的な装束に身を包んで篳篥を演奏している姿は、いにしえの時代へと聴き手をいざなうものだが、実は彼は現代的な趣味をたくさんもっている。
 クルマも大好きで、イタリアのブレシアとローマを3日間で往復するという1600キロにおよぶラリーに参戦してから、日本でも自身でラリーを企画した。題して「ラリー日本」。これは日本の世界遺産を巡るラリーで、80台ほどが参加するという。昨年は東京、京都間で、世界遺産の地ではゆっくり鑑賞もする。伊勢神宮では正式参拝もしたそうだ。
「でも、道楽だと誤解される向きがありますが、決してそうではない。大人のゆとり、遊び心などを堪能するもので、ヨーロッパの成熟した大人たちの精神を日本でも体現したいと思って始めたんです。それに共感してくれた台湾やアメリカの人たちが自分たちの土地でも行いたいといってくれ、次第に世界に広がっています。クルマという文明の利器と、人が残した遺産とを一緒に楽しむ。日本再発見になります」
 自宅には世界各地で見つけたさまざまな楽器が飾られ、あたかも民族楽器博物館のよう。それらはちょっと演奏の仕方を教えてもらっただけで、ほとんど吹いたり弾いたりできてしまうという。
 時間が少しでもあると、次は何をしようかと好奇心の赴くまま、直感に従って行動するという彼。悩んだり迷ったりせず、何でもやってみるという姿勢が大事と力説する。
 本当に前向きな人である。「なんでも無理だと思ったら、その時点で終わり。とにかくやってみなくちゃ」ということばに背中を押される思いがした。
 このインタビューは来週木曜日アップのヤマハWEB「音楽ジャーナリストの眼」に掲載される予定である。
 今日の写真は、インタビュー後の東儀秀樹。各地から東儀家にやってきた多種多様な楽器の前で。爬虫類の皮や不思議な材料で作られた楽器もあるんですよ。ひとりでここにいたら、ちょっと怖いかも。でも、初めて見る物ばかりで、私は結構怖いもの見たさの興味津々。本当は、蛇皮の楽器、ちょっと触らせてほしかったな(笑)。

| 情報・特急便 | 21:45 | - | -
ドビュッシー 音楽と美術 印象派と象徴派のあいだで
 今日の夕方、ブリジストン美術館で7月14日から10月14日まで開催される、オルセー美術館・オランジュリー美術館共同企画による「ドビュッシー 音楽と美術 印象派と象徴派のあいだで」と題された展覧会の記者発表会が行われた。
 今年のドビュッシー生誕150年に因むもので、パリのオルセー美術館とオランジュリー美術館、東京のブリジストン美術館の所蔵作品を中心に約150点で構成される。
 同展は10項目で構成され、コンテンツは「ドビュッシーの生涯」「選ばれし乙女」「美術愛好家との交流」「アールヌーヴォーとジャポニスム」「古代への回帰」「劇場作品:ペレアスとメリザンド」「劇場作品:聖セバスティアンの殉教と遊戯」「音楽と文学」「自然--霊感の源泉:夜想曲、交響曲《海》、忘れられた小歌」「新しい芸術へ」となっている。
 いずれもドビュッシーの作品に連動した絵(モネ、ドガ、ルノワール、ドニ、マネ、カンディンスキーなど)が選ばれ、彼が同時代のジャンルを超えた芸術家との交流からさまざまな影響を受け、それらを創作活動に反映させていった様子が理解できるよう工夫が凝らされている。
 なお、現在は会場でどんな音楽を流すか、絵を見る人たちを妨げることなく音楽を使うには、どうしたらいいかを検討中だという。
 現在、パリではオランジュリー美術館で6月11日まで同様のドビュッシーにまつわる展覧会が開催されていて、大いににぎわっているそうだ。
 なお、7月16日には日経ホールでフランスのドビュッシー演奏家として評価の高いフランソワ・シャプランのリサイタルが行われる予定。これは2部構成で、後半の演奏会はショパン、フォーレ、ドビュッシーの作品がプログラムに組まれ、前半の第1部ではドビュッシー作品の魅力を音楽史家ジャン=ミシェル・ネクトゥー氏が「ドビュッシー、作品とその魅力」と題した講演を行う(14時開演)。
 今年はすでに雑誌などでもドビュッシーの特集が相次ぎ、録音も続々登場している。知られざる作品や演奏される機会に恵まれない作品も多く聴くことが可能になり、また、この展覧会のように異文化が交流していた時代の空気を感じ取ることもできる。
 こうした展覧会は知的欲求を促し、旅心を刺激し、新たなことに目を向けることで心を高揚させてくれる。
 今日の写真は展覧会のパンフレットの表紙。東京の暑い季節に、ひと吹きの涼風を吹き込んでくれそうだ。


 
 
| 情報・特急便 | 22:52 | - | -
牛田智大
 12歳のピアニスト牛田智大に関しては、1月に紹介したばかりだが、彼は今春中学生になった。
 そのデビュー・アルバム「愛の夢〜牛田智大デビュー」は聴き手をとても幸せな気分にしてくれるため、さまざまなところで紹介しているが、いま発売中の「クロワッサン」にも記事を書いた。
 いまは学校の合間を縫って、数多くのテレビ出演や取材に応じ、多忙を極めている牛田くん。きっと私が話を聞いたときと同様、どんな質問にもてきぱきと答え、迷いのないまっすぐな返事をして人々を驚かせているに違いない。
 そんな彼の本格的なデビュー公演が7月17日に東京オペラシティコンサートホールで行われることになった(19時開演)。
 プログラムは録音と連動し、リスト「愛の夢 第3番」、ショパン「小犬のワルツ」、ショパン「ノクターン第2番」、プーランク「即興曲第15番 エディット・ピアフを讃えて」ほかが組まれている。
 いまの日本を元気づけてくれ、明るい未来を感じさせてくれるすばらしい才能、牛田智大はそんな夢を与えてくれる存在である。
 
 
| 情報・特急便 | 22:14 | - | -
モーストリー・クラシック座談会
 今月20日発売の「モーストリー・クラシック」の特集は、「最新格付け! 世界のヴァイオリニスト」。
 前回のピアニスト格付けのときと同様、今回も評論家座談会が行われ、片桐卓也さん、渡辺和彦さんと私の3人で、事前に行われた音楽評論家やジャーナリスト50人の投票による「故人・現役を合わせた総合ランキング」と「現役のヴァイオリニスト」のベスト10の集計について話し合った。
 こういう座談会はいつもさまざまな方面に話題が逸れて行き、それがまた新たな話題を呼び、収拾がつかなくなることもしばしば。3人はそれぞれ好きなヴァイオリニストも異なり、その音楽性、人間性、表現力、技巧などに関しても一家言をもつため、次第に話は白熱し、予定時間を大幅にオーバーした。
 そして担当の編集者がテープをオフにしてからも、なお話は続き、一向に終わる気配がない。
 こういうのって、テープ起こしをして原稿をまとめる人が本当に気の毒だよね。しゃべっているほうは、興が乗ってガンガン話し続けているけど、原稿には関係のない話題が多い。
 私も対談や座談会の原稿をまとめる仕事をすることがあり、最近はその司会進行役を担う場合が多いため、話題が逸れるとすぐに元に戻すように軌道修正してしまう。だって、あとでまとめるの大変なんだもの(笑)。
 さて、20日発売の号はどんな感じに仕上がっているだろうか。この格付けという特集は人気が高いそうで、指揮者、ピアニスト、ヴァイオリニストが登場し、あとは声楽家を予定しているという。
 声楽家だったら、私が一番に挙げるのはやはりヘルマン・プライだ。プライ以外には考えられない。次はアルフレード・クラウスかな。現役で注目株はメゾソプラノのエリーナ・ガランチャだ。
 なあんて、ひとりで格付けしていても始まらないよね(笑)。また特集が組まれるのを楽しみにしていようっと。
  
 
  
| 情報・特急便 | 21:27 | - | -
魔弾の射手
 ウェーバーの歌劇「魔弾の射手」が映画となって登場した。2010年にスイスで製作されたイェンス・ノイペルト監督によるもので、音楽はダニエル・ハーディング指揮ロンドン交響楽団が担当している。
 これは歌手がすこぶる豪華な布陣。ユリアーネ・バンゼ、ミヒャエル・ケーニヒ、オラフ・ベーア、フランツ・グルントヘーバー、レグラ・ミューレマン、ミヒャエル・フォッレらが俳優さながらの演技を行い、すばらしい歌声を披露している。
 特に印象に残るのが、隠者を歌っているルネ・パーペ。出番は最後だけなのに、その存在感の強さといったら…。まさにトリで締めるという役割だ。
 このオペラのストーリーなど詳細は、今週アップのヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に詳しく書いている。興味のあるかたは、ぜひ立ち寄ってほしい。
 音楽映画というと、俳優が演技をして歌は吹き替えなどという場合があるが、「魔弾の射手」はオペラ歌手たちが役者を務めているから、実に自然な感じで、臨場感にあふれている。ドイツの深い森が舞台だが、その映像も美しい。
 しかし、なんといっても心に響くのは、ハーディング指揮によるロンドン交響楽団による重厚な演奏。これに歌手たちの熱唱が加わり、見るものを19世紀のドイツの深遠な森へといざなう。
 この映画は3月10日(土)より3週間限定で、ヒューマントラストシネマ有楽町(有楽町イトシア イトシアプラザ4F)で公開される。
 今日の写真は映画のプログラムの表紙。オペラ映画は、やはり大きなスクリーンで味わうに限りますね。インパクトの強さが違うし、音楽も大音響で聴くことができ、142分間本当に集中できるから。ウェーバーの音楽は、こうしてじっくりと味わうと、さまざまな面で新たな発見がある。
 映画が音楽の真髄へと導いてくれる、そんな思いを強くした。




  
 
| 情報・特急便 | 23:35 | - | -
杉谷昭子
 よく、音楽は恩師から弟子へ、そしてそのまた弟子へと受け継がれていくものだという話を聞くが、杉谷昭子の話を聞いてその思いを強くした。
 彼女はチリが生んだ巨匠、クラウディオ・アラウの日本人としては最後の弟子にあたる。アラウはリスト晩年の高弟、マルティン・クラウゼに師事しているから、杉谷昭子はリストの流れを汲むことになるわけだ。
 そんな彼女が「クラウディオ・アラウへのオマージュ Vol.1」と題したリサイタルを4月28日に浜離宮朝日ホールで行うことになった。
 先日インタビューしたときには、アラウのすばらしい人間性、精神性、音楽性をじっくりと語ってくれたが、実際に偉大なピアニストから教えを受けた人の話は説得力があり、アラウが少しだけ近い存在に思われるようになった。このインタビューは次号の「音楽の友」に掲載される予定になっている。
 杉谷昭子は、今回アラウの得意とした作品や彼女がレッスンを受けた作品を中心にプログラムを組み、リスト、クラウゼ、アラウ、杉谷昭子と受け継がれてきた奏法、表現、解釈、精神性をピアノに託す。
 彼女は「ピアノに向かうと人間性が変わる」という。本当はかわいい女、やさしい人間でありたいのに、ピアノと対峙した途端、内からのエネルギーが全開し、ものすごく熱い演奏を展開してしまうのだそうだ。
 ピアニストの多くがそうであるように、彼女もことばで自己表現するよりも、ピアノを弾いたほうが率直に自分を表現できるのかもしれない。
 杉谷昭子は37年間ドイツで暮らしたが、ドイツ語を理解するためにアラウから本を読むことを勧められたという。
「本は人生を豊かにしてくれます。さまざまな分野の本を読むようにしていますが、これもアラウ先生の教えです」
 こう語る彼女は、アラウがいつも書店に行くのにつきあわされ、抱えきれないほど多くの本を買う恩師を見てきたという。
 この話を聞いて、仕事部屋にまだ読んでいない本が山積みになっていることを思い出した。私もじっくり読書する時間を作らないと、いけないなあ。
 読みたい本はどんどん積み重なり、その横に各社から送られてきた山のような紙資料や音資料がさらに積み上げられ、そのひとつひとつに目を通していかないとならない。
 どうやって時間を作るか。これがいつも私の頭を悩ませ、自分のキャパシティの限界を知ることになり、いつしかストレスがたまっていく。
 でも、杉谷昭子の前向きな話を聞き、一歩一歩解決していかなくちゃ、という思いに駆られた。それにしてもこの資料の山、どうしたらいいんだろう。私ってこんなにも整理が下手だったんだっけ、と考え込んでしまう。
 今日の写真はインタビュー後の杉谷昭子のおだやかな表情。私に読書の大切さを教えてくれ、感謝しています。ただ、その前に整理整頓が…ムムム。


 
 
| 情報・特急便 | 21:55 | - | -
村治奏一
 先日、ギタリストの村治奏一に会い、彼のプロデュースによるコンサートの話を聞いた。
 これは5月15日に紀尾井ホールで行われる「新緑のギター〜バッハからピアソラへ〜」と題したコンサートで、前半は村治のソロ、後半は恩師の鈴木大介とのデュオが含まれ、ピアソラから始まり、ピアソラで幕を閉じるというプログラムである。
 ファリャ、タレルガ、J.S.バッハ、ヒナステラ、ラヴェルから西村朗の作品まで幅広い選曲となっている。
「17歳で渡米し、ボストン、ニューヨークと移り、いまはワシントンDCに住んでいるんですよ」
 久しぶりに会った村治奏一は30歳を目前にし、いまの自分を表現するためにこのコンサートをプロデュースしたと語った。師弟関係にある鈴木大介と共演できることをとても楽しみにしていると。
 鈴木大介は、以前はいろんな助言をしてくれたそうだが、最近はほとんど何もいわないとか。それだけ弟子を信頼しているということなのだろうか。あるいは、村治が大人になったという意味だろうか。
「これまで大介さんと一緒に演奏してはいるのですが、こうしたコンサートで共演するのは初めて。今回はふたりともフレタのギターを使うんですよ」
 フレタのギターはジョン・ウィリアムスやレオ・ブローウェル、エルネスト・ビテッティが使っていることでも知られる。
 イグナシオ・フレタは1897年スペイン生まれ。最初はヴァイオリンやチェロの製作をしていたようだが、20世紀最大のギタリストと称されるアンドレス・セゴビアの演奏を聴いて感銘を受け、ギター製作を始めたそうだ。セゴビアのために3台の楽器を製作しているという。
 1977年にイグナシオが亡くなった後は、父とともに製作を行っていたふたりの息子、フランシスコとガブリエルが引き継ぎ、現在はフランシスコも引退して弟のガブリエルとその息子たちが伝統を守っているようだ。
 そんなスペインの長き歴史と伝統を感じさせる名器で演奏されるこのコンサート、ギターが大好きな私は待ち遠しくてたまらない。
 ギタリストは通常、足台を用いて演奏するが、このインタビューのなかで、村治奏一はギターレストという足に置いてギターを支える支持具を見せてくれた。こうした道具はステージでは遠くてよく見えないが、間近で見ると、とても興味深い。
 このインタビュー記事は次号の「音楽の友」に掲載される予定だが、私があまりにもギターレストに興味を示したため、カメラマンがしっかり撮影。きっと雑誌にも載るのではないだろうか。
 村治奏一は今回のプログラムを考えるにあたり、自身のギターへの思いをギュッと凝縮したという。さぞ思いのこもった演奏が披露されるに違いない。
 今日の写真はインタビュー後の村治奏一と、私の目が集中したギターレストを使って演奏する彼。この支持具、おもしろいでしょう。足に置くところがヴァイオリンのf字孔になっているんですよ。ギターを作ったときに余った木材を使っているのだとか。いやー、いいもの見せてもらっちゃった。演奏がもっともっと楽しみになってきた(笑)。



| 情報・特急便 | 20:56 | - | -
北川曉子
 初期の教育の大切さを説くピアニストで教育者でもある北川曉子は、「ムジカノーヴァ」(今月発売号)のインタビューで非常に有意義な話をしてくれた。
 彼女は日本でL.コハンスキー教授に、ウィーンでR.ハウザー教授に師事している。その先生たちの教えが、東京芸術大学音楽学部教授として生徒を教える立場になったときにとても役立ったと述懐する。
「ピアノを教えるとき、曲の構造やどういう和声を用いているか、どういう形式で書かれているかということは教えられます。でも、どんなふうに弾いたらいいか、どんな気分で演奏すべきかということは教えるべきではないと思います。それは生徒ひとりひとりが自分で考えることだからです」
 よく、この曲はこういう景色が浮かんでくるようにとか、こんな気分になって弾くようにという教えがあるが、北川曉子は教師はそれをすべきではないと断言する。
 彼女は「日本人はリズムと和声に弱い」といわれることを考慮し、自身も学生時代に作曲家に就いて和声の勉強を徹底して行った。そして現在は、生徒たちにその大切さを説く。
 話を聞いていると、とてもきびしいレッスンが行われるように感じられるが、実質的で理論的で愛情深いレッスンはとても人気があり、生徒たちはみな楽しいと感じ、笑顔でレッスンにやってくるそうだ。
 そんな彼女は、これまでもベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏を2度行っているが、2011年12月から2012年6月にかけて(全7夜)、第3回目の全曲演奏会に取り組んでいる。
 3月16日(津田ホール 19時開演)の第4夜は、東京芸術大学音楽学部退任記念コンサートと銘打ち、長年の教授生活を退任する記念のリサイタルとなっている。
 プログラムはピアノ・ソナタ第10番、第22番、第29番「ハンマークラヴィーア」。
「ベートーヴェンのピアノ・ソナタはずっと身近にある存在。弾くたびに新たな発見があり、昔は偉大さばかりに目が向いていたけど、いまは人間ベートーヴェンの奥に潜むものに近づきたいと思っています。世界各地で研究が進むんでいるため、楽譜の読みかたも変わってきました。それを表現したい」
 北川曉子は好奇心旺盛でエネルギッシュで、豊かな探求心と前向きな精神の持ち主である。
 3月には教授職から離れるため、自由な時間ができる。「時間ができたら何をしたいですか」と聞くと、こんな答えが戻ってきた。
「以前少し弾いていたヴァイオリンをまたやりたいと思っているの。それから語学もまたいろいろ勉強したい。私は本の虫で、本がないとダメなタイプ。時間ができたら、読みたい本はたくさんあるのよ」
 こういう知的好奇心があふれんばかりの人と接すると、そのオーラに自然に包まれ、私もいろんなことに挑戦したくなる。生徒たちが笑顔でレッスン室に現れるのがわかるような気がした。
 今日の写真はインタビュー時のワンショット。そうそう、彼女が最後に語ったことばも印象的だった。
「人間は現状に満足してしまったら、それでおしまい。演奏もどうしたら聴いてくれる人に伝わるのだろうか、と常に疑問を感じ、否定形で物を考えないと。自己満足の演奏はだれも聴いてくれないから」



 
| 情報・特急便 | 23:28 | - | -
小山実稚恵
 小山実稚恵がアルバム・デビューを果たしたのは、1987年2月2日のことだった。ショパンのピアノ・ソナタ第3番をメインに据えた選曲だったが、あれから彼女は日本を代表するピアニストのひとりとして活躍、今年録音デビュー25周年を迎える。
「本当に早いですよねえ。なんだか、昔のアルバムのジャケット写真を見ると、恥ずかしくって…」
 ご自宅にインタビューに伺うと、彼女はいつもながらのおだやかな笑みを浮かべて、本当に恥ずかしそうに笑った。
 小山実稚恵は東北の出身ゆえ、震災以来「音楽の力を信じたい」「被災地に音楽を届けたい」という強い気持ちから被災地での演奏を続けている。
 そして25周年を記念した新譜も、幅広い人々が耳を傾け、音楽のすばらしさに触れることができるよう、ピアノの小宇宙のような作品を集め、大好きな16曲で構成した。
「ヴォカリーズ」と名付けられたアルバム(ソニー)は、初めての録音となるスカルラッティとシマノフスキが入っている。さらに彼女自身が北国の育ちゆえ、その空気の感触が自然に理解できるというロシア作品、さらに弾きながら胸がキューンとなってしまうというブラームス、これにリスト、ドビュッシー、シューマン、グラナドスなどが加わり、小品といえども聴きごたえたっぷりの作品がずらりと勢ぞろい。
 そして最後を飾るのは、J.S.バッハの「平均律クラヴィーア曲集」第1巻の第4番。これがフィナーレにふさわしい味わい深い演奏となっている。
「いま、私の思いの入る曲、心情を映し出す曲を選んだの」
 思えば、彼女がショパン国際ピアノ・コンクールで入賞した1985年から、私はピアノ雑誌の編集に携わるようになった。その意味で、彼女の成長は私自身の成長とも重なる感じがして、25周年と聞き、とても感慨深かった。
 このインタビューは次号の「intoxicate」に掲載される予定である。
 長年ひとりのアーティストの演奏を聴き続けるのは、いつも感じていることだが、そのアーティストの人生をたどることにつながり、意義深い。
 小山実稚恵の新譜を聴きながら、自分の仕事を振り返り、少しばかりノスタルジックな思いに駆られた。ふだんは過去を振り返らない主義だけど、今日はどうしたんだろう、これも音楽の力なのかもしれない。ちょっとおセンチ(笑)。
 今日の写真はインタビュー時の小山実稚恵。この横に愛する猫ちゃんがいる。写真には写らなかったけど。

| 情報・特急便 | 23:18 | - | -
牛田智大
 以前も書いたことだが、若手アーティストのデビューCDのライナーノーツを書くことは、無上の喜びである。
 今日は、3月14日にユニバーサルからCDデビューを果たす12歳のピアニスト、牛田智大(うしだともはる)のレコーディングを聴きにHAKUJU HALLを訪れた。
 彼は2011年10月に「題名のない音楽会」に出演した途端、大ブレイクとなった話題のピアニスト。そのデビューCDのライナーを書くことになり、録音を聴かせてもらうことになった次第だ。
 12歳と聞き、事前に資料や写真を見せてもらっていたのだが、ご本人に会ってびっくり。とても礼儀正しく、しっかりしていて、話しかたも大人っぼく、すでに一人前のアーティストの空気をただよわせている。
 演奏を何曲か聴かせてくれたが、いずれの作品も存分に弾き込んで、完全に自分の音楽になっている。
「でも、初めての録音だから、すごく緊張しちゃって…」 
 そりゃ、そうでしょう。でも、落ち着いて自分の持てる最高のものを表現している様子は、年齢を超えている。
 収録曲はリストの「愛の夢」、プーランクの「即興曲第15番(エディット・ピアフを讃えて)」、ヒナステラの「アルゼンチン舞曲集」、ショパンの「夜想曲第2番」など13曲。父親の仕事の関係で幼いころを上海で過ごしているため、1曲だけ中国の王建中の「彩雲追月」が入っている。
 すでに参加したコンクールのジュニア部門で優勝の栄冠に何度も輝いているという、実力の持ち主。
 レコーディングが終了した後に、またインタビューで会うことになっているから、そのときにいろんな話を聞こうと思っている。
 こういうみずみずしい才能が登場してくると、ピアノ界が活気づく。今日は若き新鋭から大きなエネルギーをもらった気がした。写真はレコーディングでの様子。大人顔負けのタフさで、いくら弾いても疲れないようだ。
「ピアノを弾いているときが一番幸せ」
 なるほどね。いくら弾いても疲れないのは、心からピアノが好きだからなのね。こういう才能はぜひ近い将来、世界の舞台へと大きく羽ばたいてほしいと願う。
 みんなで応援しましょうねー。すごくキュートで、会う人がみんなファンになってしまうような魅力を備えているので。

| 情報・特急便 | 23:39 | - | -
アドリアン・ユストゥス
 昨日は、日経新聞の「マンスリー・ミュージック・サロン」の連載ページの執筆者、編集者、担当者、関係者10人が一堂に会し、青山のタイ料理のレストランで新年会が行われた。
 ふだん全員が顔をそろえる機会はないため、お互いに再会を喜び、楽しいひとときとなった。
 それが深夜まで続き、帰宅すると、明日の朝までにひとつの原稿を急きょ書きあげてほしいとの連絡が入っていた。「えーっ、そんなの絶対無理」と、これはお断りすることにした。
 そして今日は午前中にメキシコ大使館に行き、黒沼ユリ子に師事している若きヴァイオリニスト、アドリアン・ユストゥスの記者会見に参加した。
 彼はメキシコ・シティー生まれで、現在はテル・アヴィヴ在住。数々の国際コンクールで優勝し、時代を担うヴァイオリニストとして期待されている。
 記者会見の前に少し話したら、とても感じがよく、「ぼくのメール・アドレスはこれだよ。いつでも連絡してね」と名刺を渡してくれた。
 記者会見では、1985年、14歳のときに「アカデミア・ユリコ・クロヌマ」の生徒として初来日し、すでに7回目の来日であること。初来日のときにヴァイオリニストになろうと決心したため、自分は日本で生まれたヴァイオリニストだと思っていること。今回のプログラムのパガニーニの「24のカプリース」は超絶技巧を前面に出すことなく、各々の作品に込められた作曲家の人間的な感情を表現したいこと。ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタでは、印象派の絵画を思わせるような、風景が浮かぶような演奏をしたいことなどを話した。
 ピアニストのラファエル・ゲーラはメキシコ出身で、アンサンブル・ピアニストとしての評価が高いが、日本のフェリス女学院大学に客員教授として招かれているため、日本語が堪能。
「日本語、お上手ですね」といったら、「いえいえ、まだまだです。日本語は世界一難しい言語だと思いますよ」という返事が戻ってきた(もちろん、日本語で)
 ゲーラは今回ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタでユストゥスと共演する。その作品に関しては、「これはドビュッシーの最晩年の作品。当時は戦争で敗戦の色が濃厚でしたが、ドビュッシーはフランス人としての誇りを作品に託し、新しい響きや和音を探求し、楽譜にはわざわざ名前の下にフランス人の作曲家であることを明記しました。その思いを汲み取って演奏したい」と語った。
 これから地方公演が始まり、東京公演は1月19日に紀尾井ホール(19時開演)で行われる。
 なお、昨年の日本の震災に深く心を痛めたメキシコの音楽家たちが、ホルヘ・コルドバ、黒沼ユリ子の呼びかけのもとに集まり、3月27日に国立芸術センターで9時間におよぶマラソン・コンサートを行った。これは無料コンサートだったが、会場では日本への義捐金の寄付が行われた。
 今日の写真は記者会見の様子(左から黒沼ユリ子、ユストゥス、大使、ゲーラ)と、演奏するアドリアン・ユストゥス。パガニーニを2曲演奏してくれた。使用楽器はグァルネリ・デル・ジェス、1744年製。コンサートが待ち遠しい!!





 
 
| 情報・特急便 | 22:21 | - | -
室井摩耶子
 今日は1月9日(火)の13時30分から15時まで朝日カルチャーセンターで行われる、「ピアニスト80年」と題した講座の打ち合わせに、ピアニストの室井摩耶子のご自宅を訪れた。
 彼女には何度も取材やインタビューなどで話を聞いているが、いつもさまざまな方面に話題が広がり、時間を忘れて話し込んでしまう。
 室井摩耶子は1921年4月18日生まれの90歳。6歳よりピアノを始め、東京音楽学校(現・東京芸大)を首席で卒業。1956年にはドイツ政府給費留学生としてベルリン音楽大学に留学。ハウザー、ロロフ、ケンプの各教授に師事した。
 レパートリーは幅広く、録音も数多いが、ベートーヴェン、シューベルト、バッハ、ブラームスを得意としている。
 そんな彼女は、1995年から「音楽を聴きたいって何なの?」と題したトークを交えたコンサートを開催するようになる。テレビやラジオの出演も多く、その話は子どもから大人まで、幅広い人気を誇っている。
 今回の朝日カルチャーセンターの講座も、私との対談の合間に何曲か弾いてもらうことになっているが、その作品についても打ち合わせをした。
 私がご自宅を訪れるたびに驚かされるのは、彼女は何でも自分で行うことである。人には頼らず、常に自分自身で動き、ひとりですべてをこなす。
 家事も、お庭の手入れも、パソコンの操作もすべて楽しみながら行う。
「私は何かやり出すと、とことんやってしまうのよ。ピアノを弾いている時間が長いし、音楽について考えたり調べることに時間がとられるから趣味にかける時間はないけど、いろんなことに興味はあるし、おいしい物を食べるのも大好きよ」
 このポジティブ精神、エネルギー、音楽に対する真摯な取り組みにはいつも頭が下がる思いだ。
 講座では、その人生と音楽に対するひたむきさと純粋さを紹介したいと思う。今日は昨年の震災に関してもじっくりと話し、こういう時期だからこそ音楽が果たす役割が大きいという思いで一致した。なんとか、有意義な90分にしたいと思う。
 今日の写真はピアノの前にすわる室井摩耶子。実は、いつも講座ではアーティストと私はピアノの脇のテーブルで話をするのだが、今回は彼女の希望でアーティストはピアノのいすにすわり、私はその横で話をするという形に決まった。
 これまでこういう形をとったことはないが、新たな年の新たなスタイル、きっと音楽家の部屋にみんなが招かれて話や演奏を聴くという、親密な空気が生まれるに違いない。


 
| 情報・特急便 | 21:18 | - | -
インゴルフ・ヴンダー来日
 アーティストのデビューCDのライナーノーツを書く仕事は、大きな責任を伴う。そのアーティストが初めて自身の録音を世に問うものであり、生涯の宝物となるCDにほかならないからだ。
 ただし、この仕事は責任と同時に非常に名誉なことでもある。ひとりの若きアーティストのスタートラインにともに立つことができ、喜びを共有できるからである。
 昨年も、いくつかのデビューCDのライナーを書く幸運に恵まれた。そのCDは私自身の宝物でもあり、仕事部屋のCD棚のなかでも特別な位置を占めている。
 これと同様に、コンサートのチラシの裏面にそのアーティストのことを紹介する原稿を書く仕事も責任が重い。
 この原稿は、そのアーティストの音楽性、人間性を紹介するわけで、それを読んだ人たちがぜひその演奏を聴きたいと思ってくれなければ意味がない。
 やたらにほめたり、持ち上げたりすることは避けたいし、そんな文章はだれも読みたいとは思わないだろう。これまでステージや録音で演奏を聴いてきたことを踏まえ、インタビューで会ったときの印象や話の内容、素顔などを織り交ぜながらその人をクローズアップしていく。それに今回のプログラムの聴きどころを加え、端的に魅力を紹介する。
 ただし、ほとんどの場合、文字数は800字くらいだ。このなかですべてをいいきるのは至難の業。いつも書き始めるとすぐにオーバーしてしまい、削り落して行く作業に時間がかかる。
 つい先ごろ、4月に来日して全国4カ所(いずみホール、びわ湖ホール、紀尾井ホール、フィリアホール)でリサイタルを行うオーストリアのインゴルフ・ヴンダーのチラシ原稿を書いた。
 彼についてはショパン・コンクールの様子やガラ・コンサートで来日したときの模様をブログにも綴ったが、本格的なリサイタルは初めてとなる。
 豊かに歌い、情感あふれるヴンダーのピアノ。それをようやくじっくり聴くことができる。プログラムは前半がモーツァルトのピアノ・ソナタ第13番とリストの超絶技巧練習曲集より「夕べの調べ」「マゼッパ」、後半がショパンのピアノ・ソナタ第3番と「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」。
 ショパン・コンクールで唯一スタンディングオベーションを巻き起こしたヴンダーの演奏は、あれからどう変貌しただろうか。
 私はチラシの原稿に「ヴンダーは特別な音を備えている」と書いた。彼の音は少し聴いただけで、その特有の響きで聴き手を魅了する。だれのまねでもない、ヴンダーならではの音。4月にはその音を再び聴くことができる。
 今日の写真はそのチラシ。グラモフォンのデビューCDのジャケット写真が使われている。

| 情報・特急便 | 22:40 | - | -
樫本大進&コンスタンチン・リフシッツ
 ベルリン・フィルの第1コンサートマスターを務める樫本大進と、盟友であるピアニストのコンスタンチン・リフシッツが2010年12月からスタートさせた「黄金のデュオ ベートーヴェン・シリーズ」の第2回が、2012年3月に開催される。
 今回は3月1日から13日まで全国7公演が予定され、ソナタ第2番、第6番、第7番、第8番が組まれている。
 大進にはこれまでさまざまな話を聞いているが、今回のデュオ・リサイタルに関しても、インタビューすることができた。
 その記事が、「ジャパン・アーツ」のホームページに今日アップされた。ここでは彼のシリーズに対する思い、リフシッツのこと、またベートーヴェンの作品に対する考えなどを語っている。
 ヴァイオリニストは、無伴奏作品以外は常にピアニストをはじめとする共演者を必要とする。多くのヴァイオリニストが、いつも自分と音楽性、人間性の両面でピタリと合うパートナーを探し続けている。
 大進は10年前にリフシッツと出会い、意気投合。いまやリフシッツのベルリンの家に泊まりながらリハーサルをするほど親しい。彼らは性格も演奏も非常に異なるが、音楽に対する考えが見事に一致。それが緊張感と創造性に富むデュオを生み出し、聴き手の心を刺激する。
 3月の演奏会というと、まだまだ先のことのように思えるが、あっというまに来るんだろうな。昨年同様、心が高揚するようなデュオが期待できそう。
 
 
| 情報・特急便 | 21:50 | - | -
イヴ・アンリ
「ムジカノーヴァ」で行っている連載インタビュー「ピアニスト探訪」には、世界各地でさまざまな後進の指導を行っている名教授が多数登場する。
 今月発売号はフランスのイヴ・アンリ。パリ国立高等音楽院、パリ国立地方音楽院の教授を務め、各地でマスタークラスを開き、ショパンを中心とする演奏活動も活発に展開しているピアニストである。
 彼は教えかたが非常にていねいで、個人の才能を的確に把握し、その人の個性を伸ばすことに長けているため、教えを請う人が後を絶たない。そのレッスンは非常に人気が高く、日本でも「アンリ先生に師事したい」と願う生徒はたくさんいる。
 このインタビューでもっとも興味深かったのは、「さまざまな時代、メーカー、仕様の楽器を弾いてみること」「自分の演奏を録音してみること」「偉大なピアニストの録音を聴いて耳を鍛えること」を彼が力説したこと。
 イヴ・アンリは役者のような風貌で、さまざまな表情を見せながら、説得力のある話を流れるように語っていく。
 こういう先生にレッスンを受ける生徒は幸せだ。きっと自分がピアノを弾いていることに、幸せと誇りと自信が持てるに違いない。
 このインタビューにはいつも「心に残る恩師の言葉」というコーナーがあるのだが、彼は迷わずアルド・チッコリーニの名を挙げ、演奏するときに作品に対するイメージを持つことの大切さを教えられたと語った。
 もう何年にもわたって来日し、多くの日本人を教えているアンリ。次なる来日を首を長くして待っている若きピアニストたちは多いのではないだろうか。
 今日の写真はインタビュー時の1枚。ねっ、笑顔も魅力的でしょ(笑)。



 
 
 
 
 
| 情報・特急便 | 21:31 | - | -
NHK音楽祭
 夏前からさまざまな形でかかわってきた「NHK音楽祭2011」が、今日のパーヴォ・ヤルヴィ指揮パリ管弦楽団、ピアノ:ダン・タイ・ソンのコンサートで最終日を迎えた。
 今日のプログラムはメシアンの「忘れられたささげもの」からスタート。次いでダン・タイ・ソンのソロによるシューマンのピアノ協奏曲。後半はストラヴィンスキーの「バレエ音楽《ペトルーシカ》。
 これは11月26日(土)の午後11時30分から翌午前3時30分まで、先日行われたシドニー交響楽団の演奏とともにBSプレミアムのプレミアムシアターで放送されることになっている。
 ダン・タイ・ソンのシューマンのコンチェルトは初めて聴いたが、特有の詩情あふれるタッチ、透明感に満ちた音色が全編にただよう演奏で、ヤルヴィ指揮パリ管との音の対話も濃密で、ダン・タイ・ソンのいまの心身の充実を見る思いがした。
 彼はショパンのマズルカの作品17の4はいつも特別な存在と語っているが、今夜のアンコールでもそっと弾き出し、広いNHKホール全体を静謐かつ繊細な空気で包み込んだ。
 明日はまた、横浜みなとみらいホールにヤルヴィ指揮パリ管を聴きに行く予定が入っている。今度はビゼー、ドビュッシー、ベルリオーズとフランス作品がズラリ。どんな演奏が生まれるだろうか。
ヤルヴィとパリ管は2010年秋からコンビを組んだばかりだが、今日のストラヴィンスキーを聴く限り、いわゆる両者の蜜月は上々のようだ。これまでヤルヴィはフランス作品をあまり手がけてこなかっただけに、パリ管というパートナーを得て新たな魅力が引き出されることに期待がかかる。
| 情報・特急便 | 23:46 | - | -
パスカル・ドゥヴァイヨン
 パスカル・ドゥヴァイヨンには何度かインタビューを行っている。6月6日のブログにも詳しく書いたが、彼はピアニストの村田理夏子と組んで、11月17日に東京文化会館小ホールで、リストの「ファウスト交響曲」をメインに据えたコンサートを行う。
 先ごろ、再びインタビューを行ったが、そのリストの作品に関する思い、幼いころからのピアノとのかかわり、自身の人生観などを語ってもらった。
 このインタビューは、ヤマハのWEB「ピアニスト・ラウンジ」に掲載されている。ここではドゥヴァイヨンの思いもよらぬ悩みや、それを乗り越えたときのことを聞き、それに深い感動を覚えたため、その詳細を綴っている。かなり長く書いているので、ぜひサイトをのぞいてみてほしい。
 今日の写真はそのインタビュー時のひとこま。ヤマハの読者のために色紙にサインをしているところ。



 
| 情報・特急便 | 22:36 | - | -
第5回仙台国際音楽コンクール
 今日は、2013年に行われる「第5回仙台国際音楽コンクール」の開催記者会見が開かれた。
 同コンクールは協奏曲を主体とした課題曲による、非常に特色のある内容を持つ。ヴァイオリンとピアノの2部門からなり、予選で独奏が課題となるほかは、セミファイナルもファイナルもすべてオーケストラとの共演。もちろん入賞者記念ガラコンサートもオーケストラとの共演が組まれている。
 本日の出席者は、奥山恵美子(仙台市長・仙台国際音楽コンクール組織委員会会長)、海老澤敏(運営委員長)、宗倫匡(ヴァイオリン部門審査委員長)、野島稔(ピアノ部門審査委員長)の各氏。
 まず、スケジュールが発表されたが、それによると出場申し込みが2012年1月から始まり、締切りは11月15日。予備審査が2013年1月に行われ、その結果発送が2月15日まで。そして課題曲変更期限は3月15日となっている。
 今回から予備審査は出場希望者から送られてきたDVDで行われることになり、この課題曲は現在検討中だそうだ。
 開催はヴァイオリン部門が5月25日から6月9日まで。ピアノ部門が6月16日から6月30日までとなっている。
 このコンクールは出場者に対するホスピタリティがすばらしいことで知られており、ホームステイやボランティア活動が盛んなことが大きな特色のひとつとなっている。それが3月11日の震災の影響でどう変化するかという質問が相次いだが、市民の協力はより一層強まり、みんながこういう時期だからこそコンクールを盛り上げていこうという気持ちで団結しているそうだ。
 これまで何度かこのコンクールの取材を行ってきたが、入賞者たちが異口同音に「すばらしいケアに感謝している」「多くの人たちが温かい気持ちで見守ってくれ、さまざまな支援をしてくれたため、音楽に集中できた」と語る。
 もう来年からコンクールに向かってスタートが切られるわけだが、ぜひ第5回もすばらしい才能を持ったヴァイオリニスト、ピアニストが誕生してほしい。
 審査委員長の宗氏と野島氏が語ったことだが、協奏曲を演奏すると、その音楽家の個性が明確に現れるという。オーケストラとの共演により、自分がどう弾きたいかというコンセプト、合わせものによる室内楽のセンス、独奏者としての説得力などがはっきり出てくるそうだ。それが審査の対象となり、個性豊かな音楽家が優勝の栄冠を手にすることになるわけだ。
 今日の写真は記者会見に参加した4氏。左から野島稔、海老澤敏、奥山恵美子、宗倫匡の各氏。


 
 
| 情報・特急便 | 23:06 | - | -
宮田大
 先日、21世紀のチェロ界を担うひとり、確固たる自分の音を持った宮田大に会い、話を聞くことができた。
 彼の名は、2009年のロストロポーヴィチ国際チェロ・コンクールで日本人として初優勝に輝いたことで、一躍広く知られるところとなった。
「実は、優勝者として名前が呼ばれたとき、第1位というフランス語ではなく、グランプリといわれたのでピンとこなかったんですよ」
 このことばのように、宮田大はとても率直な性格。コンクールでは最初はあまり納得のいく演奏ができなかったが、パリでパティシエをしている日本人の友人のケーキを食べに行ってから、思い新たに演奏できたという。
「そのオペラと名付けられたケーキがとても自然で押し付けがましくなく、心がこもった味だったため、自分もそういう演奏をしたいと目が覚めるような思いがしたのです」
 そして優勝に輝いたわけだが、以後もドイツで勉強を続け、より高い頂を目指して研鑽を積んでいる。彼が現在学んでいるのは、クロンベルク・アカデミー。この土地は裕福な人々が別荘を構える土地だそうで、豊かな自然に囲まれ、時間の流れがとてもゆったりとしているとか。
「のんびり散歩するのに適しています。物を静かに考えられるところがいいですね。家の前が教会なんですが、いつかそこで演奏してみたいと思っています」
 このインタビューは、来週木曜日にアップされるヤマハWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に掲載される予定になっている。
 彼はスポーツ大好き人間で、バレーボールなどの球技からスキューバダイビングまでさまざまなことに挑戦しているが、やはり指のケガなどを考慮して、最近は抑え気味だそうだ。
 子どものころになりたかったのはパイロット、獣医、海洋生物学者。でも、3歳から父親に就いて習ったチェロが生涯の職業となった。
「最初は遊びのような気持ちで弾いていました。やがて弾く喜びに目覚め、楽器から多彩な音を引き出すことが楽しくなりました。チェロに息を吹きかけて生命を与えるというか、命を蘇らせることがとても興味深い。毎日ぼくの感情が異なるように、チェロもそのときどきで違う音で答えてくれるんです。チェロは人間の声に近い音色を持っていて、豊かに歌うことができる。ぼくはひとりの音楽家として、チェロを通して歌いたいんです」
 そんな彼のデビューCD「宮田大First」(12月5日発売)も歌心あふれる作品が収録されている。その前に、10月31日から11月9日まで各地でリサイタルが組まれている。ピアノは録音でも共演者を務めているカナダ生まれで現在はアメリカ在住の柳谷良輔。とりわけR.シュトラウスのチェロ・ソナタが聴きものだ。
 今日の写真はインタビュー時の宮田大。女性の好みを聞くと、年上が好きで、目にチカラがあり、さりげなく気配りができる人に惹かれるとか。こんなこと、バラしてしまっていいのかな(笑)。
 もちろん、音楽的なこともたくさん聞いているから、ぜひヤマハのサイト、のぞいてみてくださいね。


 
| 情報・特急便 | 23:08 | - | -
内田光子
 今夜はサントリーホールのブルーローズ(小ホール)に、ツアー直前のスペシャルステージ特別企画「内田光子 シューベルトを語る」を聞きに行った。
 まず、ピアノを始めたきっかけ、子どものころのピアノとのかかわり、12歳でウィーンに移ってからの勉強の仕方などから話がスタート。やがてハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、メンデルスゾーンら作曲家の人生や作品の解釈などに移り、とりわけシューベルトに関してのとり組みかた、いかに彼の作品を愛しているかという話に時間が割かれた。
 内田光子は子どものころからシューベルトの雰囲気の暗い作品が好きだったそうだ。それを先生に弾かせてほしいと申し出たそうだが、「まだ早い」といって弾かせてもらえなかったとか。「私は変わっている子だったの」と本人が語っていたが、子ども時代にシューベルトのそうした深い内容を持つ作品に惹かれていたとは、やはり普通の子どもではなかったようだ。
 彼女はシューベルトの作品を語るとき、何度も「明るい作品でもその奥におそろしさが潜んでいる」「狂気の世界」「死に直面したおそろしさ」「死と手をつないでいる」ということばを繰り返した。そして31歳で夭逝したシューベルトが晩年に書いたピアノ・ソナタは非常に難しいといった。
 そんな彼女は10月28日と29日にハーゲン・クァルテットと室内楽を演奏する。そして11月4日と7日にはリサイタルを行う(すべてサントリーホール)。シューベルトのほかにはシューマンやベートーヴェン、ブラームスの作品が組まれている。
 内田光子は、昨日日本に着いたばかりで時差ボケがひどいといいながらも、2時間半近く話を続けた。最後には会場からの質問にも答え、ユーモアを交え、雄弁に語った。
「私はとにかくピアノが好きなの。ピアノに命を賭けているといってもいいくらい。その話をしたらとまらなくなるから、今日はここまでね」といって長時間に渡るトークに幕を下ろした。
 以前、インタビューをしたときも感じたことだが、好きなことに関してはいくらでも話せるというエネルギッシュな姿勢を見せる。そのエネルギーはもちろん演奏に集約している。コンサートが楽しみだ。
| 情報・特急便 | 22:38 | - | -
比石妃佐子
 先日、スペイン在住のピアニスト、比石妃佐子に電話インタビューを行った。
彼女はマリア・カナルス国際コンクールに参加したことがきっかけでスペイン作品に魅せられ、このときにガウディのサグラダ・ファミリア聖堂の主任彫刻家である外尾悦郎氏と知り合い、のちに結婚してバルセロナに住むようになった。
 スペイン好きの私は彼女の話を聞いているうちに、電話口の向こうからスペインの空気が流れてくるように感じ、いたく感動してしまった。このインタビューは、「CDジャーナル」の今月発売号に掲載されることになっている。
 比石妃佐子は、ドイツ、オーストリア、スイスなどで学んでいたときは王道をいくレパートリーを主体としていたが、やがてスペイン作品に集中するようになったそうだ。アリシア・デ・ラローチャのマスタークラスを受け、彼女からスペイン作品の奥に宿るさまざまな要素を伝授されたからである。
 そんな彼女は、グラナドスの「12のスペイン舞曲集」「ゴイエスカス」とアルベニスの「イベリア、スペイン組曲」を録音している。いずれも特有のリズムに彩られ、この土地特有の空気が全編にただよっている作品だが、それを彼女は鍛えられた技巧を駆使し、実際にその土地に身を置いている強みからか、生き生きと演奏している。
 以前ラローチャにインタビューしたときに彼女が語っていたが、スペイン作品は実際にその土地を知らなければ自然には弾けないという。土の香り、空の青さ、乾いた空気、哀愁ただようロマ地区の風情、浮き立つリズム、光と影のコントラスト、情熱的な人々の気質など、すべてが音楽に込められているからと。
 比石妃佐子もインタビューでそのことを熱く語っていた。
「イベリア」も「ゴイエスカス」もテクニック的にとても難しく、躍動するリズムや奥に秘められた感情を自然に表現するのは至難の技だと考え、演奏したくても躊躇するピアニストが多い。それゆえ、実際のリサイタルでは全曲を聴くことは稀である。
 私はもちろんこれらのスペイン作品には目がないから、ここに登場したCDはまさに宝物である。
 比石妃佐子は11月17日に浜離宮朝日ホールで、グラナドス、ファリャ、モンサルヴァチェというプログラムでリサイタルを行う。きっとホールはスペインの熱き空気で満たされるに違いない。
 彼女はこうした作品をひとりでも多くのピアニストが演奏できるよう、楽譜の解説を行ったり、さらなる研究を続けている。遠い日本から「フレー、フレー、頑張ってー」とエールを送りたくなるくらいだ。
 今日の写真は3枚のCD。以前、グラナダで購入した、この土地の名産である寄せ木細工のトレーの上に乗せてみた。ほら、どこからかスペインの風が吹いてくるでしょう(笑)。

| 情報・特急便 | 21:32 | - | -
関孝弘
 長年にわたり、イタリア作品を積極的に演奏会で取り上げ、音楽用語辞典や楽譜の研究・校訂でイタリアの音楽を日本にわかりやすく紹介してきたピアニストの関孝弘が、この7月にイタリア政府から「イタリア連帯の星勲章・コメンダトーレ賞」を授与された。
 それを記念し、11月26日には東京文化会館大ホールで特別コンサートが開催される(14時開演)。このコンサートではいま世界が注目するイタリア生まれのピアノ、ファツィオーリが使用され、イタリア作品が数多く演奏される予定だが、イタリア・ワインなどもふるまわれるという。まさにイタリア色満載のひとときとなりそうだ。
 この話を聞くため、先日ご自宅にインタビューに伺った。
 関孝弘は、10歳のときにナマを聴いたミケランジェリの演奏に魅了され、イタリアに行きたいと考えるようになり、のちにピアニストの留学先としては珍しいイタリアを選んだという。
 彼の話は、まるでイタリアの絵画や彫刻や建物を連想させる視覚的な雰囲気に満ち、雄弁でおおらかでひたむき。どこからかイタリアの風が吹き込んでくるような感覚を抱いた。
 このインタビューは今月発売の「ムジカノーヴァ」に掲載されることになっている。彼のイタリアに対する深い愛と、作品を紹介したいという熱意が感じられるから、ぜひご一読を。
 このときに奥さまが入れてくださったエスプレッソの美味なることといったら…。すぐに入れかたをお聞きしたら、イタリアのコーヒー豆を使ったエスプレッソにアイスクリームをトッピングするとか。私も早速まねして家で作ってみたら、もうやみつき(笑)。最近は、この飲みかたしかしないほど。
 夫人のラーゴ・マリアンジェラさんはイタリア人。彼女は膨大な資料を読み、必要な箇所にアンダーラインを引き、それを関孝弘がじっくりと研究し、書籍や楽譜に生かしていく。できあがった物はすべて二人三脚による成果だ。
 今日の写真は、そんな仲睦まじいおふたり。すごくいい感じに撮れているでしょう。私の自慢のツーショットになりそう。

 

 
 
| 情報・特急便 | 14:56 | - | -
ソン・ヨルム
 最近は、韓国の音楽家の台頭が著しい。多くの若き才能が世界の舞台へと飛翔している。
 第14回チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門で、ダニール・トリフォノフに次いで第2位を獲得したソン・ヨルムもそのひとり。彼女は2009年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールでも第2位入賞に輝き、第1位の辻井伸行とすっかり仲良くなったという。
 その辻井との共演によるコンサートのために来日した彼女に、インタビューを行った。これは「音楽の友」の次号に掲載される予定になっている。
「辻井さんはとってもチャーミングな人柄。演奏も好きだけど、彼の性格が大好きになってしまったの」
 にこやかな笑顔で語るソン・ヨルムも、とても素直で感じがいい。ストレートの黒髪が美しく、肌もすこぶるなめらか。演奏はアスリートを思わせるようなテンポの速さとリズミカルな動きが印象的。磨き抜かれたとてつもないテクニックに唖然とさせられるが、それは楽譜の読みの速さも影響しているようだ。
「私、子どものころから譜面を読むのが趣味だったのよ。いつも複数の楽譜を持っていて、サーっと読んでいく。これがすっごく楽しいのよ」
 譜読みを充分にしていれば、実際にピアノに向かったときに練習はとても少なくて済むそうだ。やはり天才肌なのだろうか。
 来日に合わせて新譜もリリースされ、2004年に録音した「ショパン:練習曲集」と2008年に録音した「ショパン:夜想曲集(弦楽伴奏版)」(ユニバーサル)の2枚を聴くことができる。
ここでも底力を発揮している。とりわけ、18歳のときに録音したショパンのエチュードがみずみずしく、抜群のテクニックが全編に息づき、輝かしい未来を予感させる。
「私、室内楽が大好きなの。ソロやコンチェルトももちろん数多く演奏しているけど、室内楽が一番楽しいし、自分らしい演奏ができる感じがする」
 今年の11月6日には、東京オペラシティコンサートホールでチャイコフスキー国際コンクール入賞記念リサイタルが開催されることになった。
 プログラムは同コンクールで話題を呼んだ作品が組まれ、バッハ、ドビュッシー、ショパン、カプースチン、リスト、シチェドリンが並ぶ。
 チャイコフスキー国際コンクールの模様はネット配信されたから多くの人が彼女の演奏に触れ、天空に駆け上がっていくようなピアニズムに驚きの声を上げたと思うが、いよいよ今秋そのライヴを聴くことができる。とても楽しみだ。
 今日の写真はインタビュー時のもの。上からのライトが強く、ちょっと顔に影ができてしまったのが残念。

| 情報・特急便 | 22:36 | - | -
アロンドラ・デ・ラ・パーラ
 昨日は、すばらしい女性指揮者と出会った。メキシコ人のアロンドラ・デ・ラ・パーラである。
 アロンドラは1980年ニューヨーク生まれ。2歳のときに両親とともにメキシコに移り住んだ。最初はピアノとチェロを習っていたが、13歳のときに指揮者になりたいと思い、各地で勉強を重ね、23歳でフィルハーモニック・オーケストラ・オブ・ジ・アメリカスを創設。以後、南北アメリカの若手演奏家や作曲家の紹介をこのオーケストラとともに行っている。
 今回の来日は9月13、14日にジャパン・ヴィルトゥオーゾ・シンフォニー・オーケストラを指揮するため(サントリーホール)。それに先駆け、インタビューに応じてくれた。このインタビューは次号の「フィガロ・ジャポン」に掲載される予定になっている。
 アロンドラは女優のような美貌と、音楽的な才能と、前向きな精神を持った人。その話は明快で率直で常に前進あるのみという姿勢を崩さない。
「子どものころから、こうと決めたら一直線に進む性格でした。指揮者になりたいと思い立ってからは、どんな困難にぶつかろうが、絶対にやり遂げようと努力を重ねました。いつも大きな壁が目の前に立ちはだかっていて、それはいまも変わらないけど、ひとつひとつ乗り越えていくしかないですよね」
 澄んだ美しい瞳をきらきらと輝かせながら、彼女は芯の強いところを見せる。そして男性の多い指揮者の世界に関しては。
「ステージに立って指揮を始めたら、男か女かということはいっさい関係ない」
 と、きっぱり。いやー、潔いですなあ。惚れ惚れしちゃいます(笑)。
 アロンドラは音楽に関しても、自らのオーケストラに関しても、その生い立ちに関しても、正直にストレートに話してくれる。こんなに美しいのに、それを鼻にかける雰囲気はまったくなし。とっても感じがいい。
「両親の存在なくしては、いまの私はないですね。母は教育者で、人生でもっとも大切なのは勤勉さだということを植え付けてくれ、小説家で映画関係の仕事もしている父は、どんどん夢を追いかけて進むことを教えてくれました」
 まさに、ふたりのDNAを受け継いでいるのだろう。彼女はひとつの作品を学ぶときも、とことん研究し、納得いくまで研鑽を重ね、膨大な時間をかけるという。新譜の「アロンドラ・デビュー!〜華麗なるメキシコ・オーケストラ作品集」(ソニー)の選曲も、ありとあらゆる手段を用いて作品を探し、楽譜を検討し、アーカイヴを巡り、さらにメキシコ文化の全体像をつかむような試みをしたそうだ。
「メキシコには偉大な文化、歴史、伝統があります。でも、世界中の人々はまだ表面的な面しか見てくれません。これから私はさまざまな土地で演奏を通してメキシコのすばらしさを伝えていくつもりです」
 現在、アロンドラはメキシコ観光省文化大使でもある。少し話を聞いただけで、メキシコの奥深さに触れる思いがし、こんなにも前向きで努力家で迷いのない生きかたをしている人がいるんだと気付かされ、メキシコの新たな面を発見することができた。きっと、各地で彼女に会った人はみな同様の思いを抱くに違いない。
 今日の写真はインタビュー後に撮ったもの。美しさと性格のよさと知性がすべてこの表情に表れていると思いませんか。ウーン、それにしても美しい…。




 
| 情報・特急便 | 20:55 | - | -
チャイコフスキー国際コンクール 優勝者ガラ・コンサート
 昨日は6月にモスクワとサンクトペテルブルクで行われた第14回チャイコフスキー国際コンクールの優勝者&入賞者が出演する、明日のコンサートのための記者会見が行われた(9月8日 午後7時開演 サントリーホール)。
 出席者はグランプリ、ピアノ部門第1位、聴衆賞のダニール・トリフォノフ(20歳、ロシア)、ヴァイオリン部門第2位(1位なし)、聴衆賞のセルゲイ・ドガージン(23歳、ロシア)、チェロ部門第1位、聴衆賞のナレク・アフナジャリャン(22歳、アルメニア)、声楽部門・女声第3位、聴衆賞のエレーナ・グーセワ(25歳、ロシア)の4人。
 ガラ・コンサートはオール・チャイコフスキー・プログラムで、歌劇「エフゲニー・オネーギン」より「手紙の場面」、ヴァイオリン協奏曲ニ長調、ロココの主題による変奏曲、ピアノ協奏曲第1番が演奏される。
 会見ではそれぞれが質問に答えてさまざまな返答を行ったが、全体的に非常に思慮深く視野が広く、バランスのとれた人間性の持ち主であることが判明した。
まず、エレーナ・グーセワから。
「2度目の来日です。日本が大好きですので、震災のことを考えて来日をやめようとはまったく思いませんでした。私は1年半前からようやく劇場で実際に歌えるようになり、いまは仕事が正しい形でプランニングされていくことを願っています。ステージで歌うことが大きな経験となり、学ぶ場でもあり、そこで個性を見つけ、自分らしさを付け加えていきたいと思っています。録音もたくさん聴きます。好きな作曲家はラフマニノフ、ウェーバー、J.S.バッハです」
 続いてナレク・アフナジャリャンは。
「昔からピアティゴルスキーを敬愛しています。ボストンでは彼の弟子に2年間学びました。シャフランもロストロポーヴィチも好きです。ロシア音楽全般を好みますが、特にプロコフィエフ、バッハ、ベートーヴェンの名を挙げたいです。アルメニアも1988年に大地震があり、何万人もの命が奪われました。ですから3月11日の日本の悲劇は他人ごととは思えません。自然災害のおそろしさにいま顔をそむけてどうするのかと考え、自分が力になれることはしようと思い、来日しました。今回は4回目の来日です。震災のときはアメリカにいたのですが、ぼくは日本の友人も多く、本当に心配しました。ぼくたちが公演を行うことで、日本は大丈夫だと世界に知らせることができればと思っています。今回のチャイコフスキー・コンクールはこれまでとは異なる運営がなされ、さまざまな面で大幅な変更がなされたため、非常に重要なコンクールとなりました。今後はあふれるコンサートのなかで迷子にならないよう、基盤をしっかり整えていきたいと思います」
 そしてダニール・トリフォノフは。
「日本人はとても勤勉だと思います。この1月にショパン・コンクールのガラ・コンサートで初来日し、それを強く感じました。この勤勉さは国の力となり、成功の素であり、復興の足がかりとなると思います。こうした時期にぼくも何か力になれればと思って来日しました。日本に行くことに対して、両親もサポートしてくれましたし。昔からソフロニツキー、シュナーベル、ラフマニノフらのピアニストに惹かれていますが、現在はアルゲリッチ、ペライア、ブーニンが好きです。ぼくはいま弾いている作曲家が好きになるタイプで、弾けば弾くほどその作品のすばらしさに魅せられていきます。ショパン、スクリャービン、バッハには特に魅了されています。いまはコンサートに追われる日々ですが、常に新しい作品にチャレンジしていきたい。チャイコフスキー・コンクールは、そのチャンスを与えてくれたと思います」
 最後にセルゲイ・ドガージンは。
「もっとも心惹かれているのはヴェンゲーロフです。明るい個性と限りない可能性を秘めているからです。最近は指揮活動が多いですが、ケガが治ってまたヴァイオリンを弾き始めたので、うれしく思っています。あと、オイストラフも大好きです。チャイコフスキー・コンクールはロシア人にとって特別なコンクールで、入賞するとたくさんのコンサートが約束されます。ぼくもここで一気にレパートリーが広がりました。日本の震災に関しては、ゲルギエフの姿勢をお手本にしたいと思います。彼はオセチアが大変な時期に慈善コンサートをしました。ぼくの両親はオーケストラの奏者ですが、何度も日本を訪れています。ふたりからいつも日本の文化、道徳のすばらしさを聞かされていました。ですから、初めて来日できてとてもうれしい。自分ができることは小さいかも知れませんが、世界はひとつだと思っていますし、自分にできることは何でもやるつもりです」
 とてもさわやかな記者会見だった。そして、自分の心の声をしっかりことばにできる能力と主張する力を備えていることに感動を覚えた。やはり、音楽家として若いときに頂点を目指して頑張る人は何かが違うのだと思い知らされた。
 明日のコンサートでは、そんな4人が今度は演奏で明確な自己表現をする。本当に楽しみだ。
 今日の写真は記者会見後のひとこま。左からドガージン、グーセワ、アフナジャリャン、トリフォノフ。シリアスな会見のあとだったから、ちょっと表情が堅いかな(笑)。

| 情報・特急便 | 14:45 | - | -
サルヴァトーレ・リチートラ
 昨日リチートラのことを書いたが、本日彼の訃報が届いた。5日、脳死と判定され、彼の家族が臓器提供に同意したそうだ。享年43。
 たくさんのすばらしい思い出を残してくれた。いまはショックで多くのことを語れないが、ある程度時間がたったら、リチートラのことを多くの人に知ってほしいため、彼のインタビュー記事を全文公開したいと思う。
 サルヴァトーレ、あなたの明るく情熱的な歌声と、おおらかな性格と、前向きな精神はいつまでも忘れません。ご冥福をお祈りします。
| 情報・特急便 | 10:41 | - | -
サルヴァトーレ・リチートラ
 8月28日、ボローニャ歌劇場の来日公演でヴェルディ「エルナーニ」のタイトルロールを歌う予定になっていたサルヴァトーレ・リチートラが事故に遭ったというニュースを、イタリアの報道機関が報じた。
 シチリアのラグーザ近郊でスクーターを運転中に起きた事故で、すぐにヘリコプターでカターニャの病院に運び込まれたそうだが、重傷だという。
 これを聞いて本当に驚き、非常に心配になった。リチートラには何度かインタビューをし、そのたびに明るい笑顔とおおらかな性格、ときには歌声も披露してくれたからだ。
 最初に出会ったころよりも、最近はひとまわりスリムになり、「ダイエットが成功したんだ」と喜んでいた。
 足の運動と肩と腕の筋肉をつける運動をミックスした方法を行ったことが功を奏したそうで、さらに食事療法をプラスして体重を26キロ落としたという。
 その食事療法を詳しく聞いたら、イタリア人らしからぬ食事をとっていることに驚いた。
「パスタ、ピッツァなどをやめ、寿司、さしみ、焼き魚、果物、野菜を中心にしたんだ」
 本当だろうか。よく耐えられるなあ。子どものころから食べていた物をやめるのは、大変な努力を要すると思うのだが…。
 彼は18、19歳のころ大きな声で歌っているのを母親が聴き、彼女が「声楽を習ったほうがいいんじゃない」と真剣にいってくれたため、レッスンに通うようになった。それから10年間必死で学び、プロの歌手を目指したが、ダメな場合を考えてそれまで勉強していたグラフィックデザイナーの資格を取ることも並行して行っていた。
「ぼくは7つのコンクールに落ちたんだよ。審査員には受け入れてもらえなかったんだ。もう歌手になるのはあきらめたほうがいいのかと、本当に悩んだ。でも、1998年にようやく劇場でデビューすることができ、それからは各地のオペラハウスから声をかけてもらえるようになった。コンクールに失敗したのは、自分の声に合う役を歌っていなかったから。重いタイプのアリアばかり勉強していたから。でも、カルロ・ベルゴンツィに師事することになり、それまでのことはすべて忘れなさい。自分の持っている自然な声で歌うようにといわれて、その教えに忠実に従うようにしたら、道が開けたんだ」
 以後、短期間で著名なオペラの主役をいくつも歌い、演技力も磨いていく。
「ぼくはこれまでいくつもの壁にぶつかってきた。そのつど、それを懸命によじのぼるようにしてきた。困難がふりかかってくるのが人生だと思う」
 リチートラはいつも全力投球。インタビューでも一生懸命に話してくれる。それはステージでも同じ。これでもかと声を張り上げる。
「そうなんだ、どんなに調子が悪いときでも目いっぱい声を張り上げる。手を抜くことができないタチなんだよね。こういう性格だから、失敗も多いよ。最近は行動する前に少しは考えるようになったけど、ついつい思い立ったらそのまま行動してしまう。少しは大人にならないとね」
 こういって高らかな笑い声をたてていたリチートラ。
 早く治って、また元気な声を聴かせてほしいとひたすら祈るばかりだ。
 今日の写真はインタビュー時のリチートラ。いい笑顔でしょ。


 
| 情報・特急便 | 22:16 | - | -
岡本知高
 岡本知高は、率直な人である。いつも話を聞くたびに、とても正直に心の内を語ってくれる。
 そんな彼が、神奈川県民ホールの「年末年越しスペシャル ファンタスティック・ガラコンサート2011」の「カンターレ・イタリア!  永遠のオペラ&バレエ」と題したコンサート(12月29日 15時30分開演)に出演することになった。
 これに先立ち、「神奈川芸術プレス」(9月号)のインタビューを行うことになり、久しぶりに岡本知高に会った。
 彼は小学校時代からずっと声が高かったこと、自然な声変わりで、ほとんど変声期らしいものを意識しなかったこと、子ども時代に病気で長期間入院したときのこと、最初はサックスを吹いていたが、やがてオペラに目覚め、ついに留学を決意したときのこと、女性の先生たちとのレッスンから近い将来の夢まで、忌憚なく話してくれた。
 岡本知高は男性でありながら、女声の音域を持つ「ソプラニスタ」と呼ばれる。話し声も結構高く、その声は本当に自然体。プロの歌手としてデビューしてから、ある朝目覚めたら急にバリトンに変わっていたら大変なので、医師に診てもらったという。
「そしたら、ちゃんと成人の声帯として成長しているので大丈夫といわれたんですよ。これを聞いて、本当にホッとしました(笑)」
 以後、オペラ、ミュージカル、日本の歌など幅広く歌い、特有の世界を作り出している。
 しかし、ここで悩みがひとつ。自分の声で歌う新しい曲ができたらと、作曲家に新曲を書いてほしいと依頼するのだが、彼のような声は世界的に見てもとても珍しいため、今後だれかが歌うことは期待できないため、作曲家は意欲を示さないのだそうだ。
 でも、カウンターテノールやメゾソプラノが歌う可能性もあるのだから、ぜひどなたか新曲を書いてほしい。岡本知高の声はそれだけ貴重なのだから。
 彼はとても優しい性格。それが証拠に、ベランダ菜園の雑草がかわいそうで抜くことができないのだという。
「生命の神秘を感じて、雑草といえどもないがしろにできない。この前、忘れていたころにトマトがひとつなったんですよ。もううれしくてね。でも、これもかわいそうで食べられない(笑)」
 年末歌う曲は、ヴェルディの「神よ、平和を与えたまえ〜運命の力」、F.サルトーリの「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」、A.L=ウェバーの「メモリー〜キャッツ」。
 最後に夢を聞いたら、プッチーニの「トゥーランドット」のトゥーランドット姫のアリアに挑戦したいとのこと。ブラヴォー! ぜひ、聴いてみたい。
 今日の写真はインタビューのときの温かな表情。175センチ、120キロの堂々たる体躯の持ち主だから、トゥーランドット姫を華麗な衣裳をつけて歌ったら、迫力あるだろうなあ(笑)。

| 情報・特急便 | 20:45 | - | -
ミハイル・ヴォスクレセンスキー
 ウクライナ出身のピアニスト、ミハイル・ヴォスクレセンスキーは、モスクワ音楽院でショパン・コンクール第1回の優勝者、レフ・オボーリンに師事した。
 彼はオボーリンのレッスンをいまでも鮮明に記憶しているという。
「彼はこまかいことをいう先生ではありませんでした。音楽家としての方向性を示してくれるという教えで、それが私の性格に非常に合ったのです」
 こういうレッスンは合わない生徒もいたようで、もっと基本的なことを習いたい人には向かなかったようだ。ただし、ヴォスクレセンスキーのような、すでに基礎を充分に習得している生徒にはとても有益で、いまや自身がモスクワ音楽院で教える立場になったときにも、その教えは生かされているという。
 オボーリンはショパンを得意としたことで知られるが、実はベートーヴェンのピアノ・ソナタも大切なレパートリーとし、全曲演奏をしたいと願っていた。だが、病気に倒れ、それがかなわなかった。
「ですから、私は恩師の代わりにぜひベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏を成し遂げたかったのです」
 ヴォスクレセンスキーは勉強を重ね、のちにこの偉業を達成し、高い評価を得た。彼はこのほかにも、スクリャービンのソナタ全曲演奏、ショパンの全作品演奏も成し遂げている。全曲を演奏することにより、その作曲家の全体像が俯瞰でき、作曲家の魂に近づけるのだそうだ。
 このインタビューは今月発売の「ムジカノーヴァ」で掲載される予定だ。
 ヴォスクレセンスキーは、とても誠実で温かい人柄。1995年から始まったスクリャービン・コンクールの審査委員長をずっと務めているが、つい先ごろチャイコフスキー・コンクールのピアノ部門の審査員も務めた。
「コンクールは参加者も大変ですが、審査員もまた大変です。新たな才能を見出すのは大いなる喜びですが、一度落ちたからといって、自暴自棄になる必要はありません。私のモットーは、『人の心から発生した音楽は、人の心に届く』。あせらず、じっくりと、人の心に届く音楽を奏でられるように自分を磨いていけばいいのです」
 このインタビューのときは風邪気味だそうで、「声が聞き取りにくいでしょう」とこちらを気遣ってくれたが、それでも一生懸命話をしてくれた。こういう先生に師事したピアニストは幸せだ。彼のレッスンはモスクワ音楽院でも桐朋学園でも根強い人気を誇るが、教えるだけでなく、積極的にステージにも立っている。
 12月7日には東京文化会館小ホールで、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番、第31番、第32番というプログラムでリサイタルを行う。インタビューでは、ベートーヴェンについて多くを語ってくれた。それを実際の音楽として聴くことができる。まだ先のことだが、リサイタルが待ち遠しい。
 今日の写真はインタビュー時のもの。「どれ、どんなふうに写っているのかな」と写真を何度も見て、チェックした。
「おでこが光りすぎていないかい?」
「顔色、悪いかなあ」
「ちょっと疲れているように見えない?」
 どんなことにも手を抜かない、熱心な姿勢がそこでも感じられた。

| 情報・特急便 | 22:28 | - | -
チロット音楽祭
 東京が猛暑に見舞われているなか、7月7日から10日まで「第3回 チロット音楽祭」の取材に出かけた。昨年も訪れたが、この時期の北海道帯広エリアに位置する幕別町は気温も湿度が低く快適、加えて食事が美味。しばし、心身が深呼吸をする感じにとらわれた。
「チロット」とは、アイヌ語で「鳥多き沼」または「鳥の下りる沼」を意味し、昔、幕別町内のある地域の名前をこのように呼んでいた。音楽祭はその名に由来している。
「チロット音楽祭」は町の教育委員会や新聞社、放送局などが一丸となって協力し、医療法人社団博愛会、萩原建設工業がスポンサーとして全面的にバックアップ。そのほか多くの賛助企業が地元活性化のために尽力している。
 第3回は音楽祭の顔ともいうべきアドバイザー/指揮者の宮本文昭とオーケストラMAP'S(Miyamoto Artist PartnerS)が中心。ここにソプラノの緑川まり、サクソフォーンの小串俊寿、チェンバロの曽根麻矢子、作曲家・舞台音楽家の宮川彬良、ヴァイオリンの森由利子、マリンバ・パーカッションの中村祐子、ズーラシアンブラスが加わり、多彩なプログラムが展開された。
 なお、地元演奏家の横山美里(ピアノ)、田中光俊(ギター)、野田美佳(マリンバ)、佐藤まさえ(ソプラノ)、角良子(ピアノ)、棚瀬麻実子(ソプラノ)、安川真実(ピアノ)も参加し、祝祭的でにぎやかな雰囲気となった。
 なお、アウトリーチとして学校や病院での演奏もあり、また中学校の吹奏楽部の指導、公開レッスンなども行われた。
 ここは緑豊かな大自然に囲まれたところ。メイン会場の幕別町百年記念ホールは、まるで広大な草原のなかに建っているような雰囲気を備え、地元の中学生による野外コンサートはこのホール前面に広がる広場で催されたが、プラスの音が真っ青な空に吸い込まれていくようだった。
 もっとも出番の多かったオーケストラMAP'Sは、無伴奏作品からさまざまな組み合わせによるアンサンブルまでこなし、ファイナルコンサートではヴィヴァルディの「四季」で結束力の強さを示した。
 このように多種多様なプログラムが組まれている「チロット音楽祭」。都会を抜け出し、しばし心身のリフレッシュを試みるのに最適。音楽とおいしい食事と清涼な空気。温泉あり、牧場あり、パークゴルフ(発祥の地)あり。地酒も野菜もお肉もお魚も豊富。特に私がハマったのは、おいしい長いもと濃厚な牛乳と珍しいワサビ。ウーン、身も心もまさにリフレッシュ…。
 今日の写真は、宮本文昭とオーケストラMAP'Sによる公開つぶやきリハーサル。宮本文昭と写真家の加納典明両氏のおどけたポーズ。白人(チロット)小学校で演奏する戸上眞理、松崎千鶴、三宅依子、大島亮(ピチカート・ポルカ)。中学校のブラスバンドを指導する小串俊寿。野外コンサート。すべてのスケジュール終了後、音楽家と関係者がホール裏手の庭で記念撮影。











| 情報・特急便 | 15:00 | - | -
清水和音
 ピアニストの清水和音が、1981年の本格デビューから今年で30周年を迎える。先日、インタビューでその話を伺ったが、彼は30年どころか、昔もいまもまったく変わらないストレートな語り口。
「口が悪いのはいまに始まったことじゃない。いつも本音。まわりくどいいいかたは好きじゃないし、いいたいこといって、自由に生きる。それが自分の生きかただからね」
 そうそう、この人はそれが持ち味。演奏もストレート。
「昔、子どものころにピアノがうまいだの類いまれなる才能があるだのと先生たちにいわれて、すごくいい気分でさ。そういわれたから、いまがあるんだよね。ほめられるって、うれしいことだからさ」
 この率直さ、迷いのなさ、変わらないですねえ。
 そんな彼が今日、東日本大震災復興支援の「チャリティーコンサートatカワイ表参道」に出演、4月から全9回行われたコンサートの最終奏者を務めた。「音楽の友」の次号の取材で聴きに出かけたが、清水和音はショパンの「ノクターン 作品55」と「バラード第4番」をじっくりと聴かせ、デビュー30周年の貫録を示した。
 この後もデビュー30周年の記念コンサートが目白押し。8月6日にはサントリーホールで「ラフマニノフのピアノ協奏曲全曲」というビッグなコンサートを行い、9月から10月にかけてはヤマハホールで小曽根真、川久保賜紀、森麻季らをゲストに迎える5日連続コンサートを予定している。
「何か大きなことやってくれっていわれて、ついこんな大変なプログラムを組んじゃってさ。最後まで弾けるのか心配だよ」
 こういって笑う清水和音は、まさに本音トークの達人。だからだろうか、東京音大では、生徒たちに慕われている。レッスンもきっとユニークで楽しいものなのだろう。
 今日の写真は「ピアノの本」(ヤマハ)7月号のインタビュー時のもの。音楽の話から大幅に脱線していき、好きなカメラやクルマやオーディオの話題でほとんどの時間がとられてしまった。
 インタビューの最中から「こりゃ、あとでまとめるの大変だなあ」と思ったが、清水和音のマイペース、好きな話は止まらない。まっ、いいか。これが彼の個性で、いつもながら突っ走っていくんだから。
 でも、記事はきちんとまとめましたよ。エッセンスを取り出して、あたかも自然にしゃべっているように書くの、得意だもんね(笑)。


 
| 情報・特急便 | 22:40 | - | -
田中カレン
 日本を代表する作曲家のひとりとして内外で多数の受賞歴のある田中カレンが、16年のパリ生活の後、アメリカに移ったのは2002年のこと。
 当初はカリフォルニア大学、ミシガン大学の客員教授を務めていたが、現在はカルアーツ(カリフォルニア芸術大学)で教鞭を執っている。
そんな彼女がピアノ曲集「Crystalline」のCDをノルウェーのレーベル2Lからリリースした。
 演奏はグリーグ演奏のスペシャリストとして知られるシグナ・バッケ。彼女はベルゲンのグリーグ音楽院の教授を務め、各地で演奏を行い、音楽祭にも出演している。
 このCDはシグナ・バッケのために書かれた「Water Dance」が含まれ、それが実に清涼な美しい響きを持つ自然体の演奏で、いつしかノルウェーの大自然のなかに紛れ込んだような思いを抱かせる。
 今回のCDは、田中カレンの作品の特質である響きの美しさ、ピュアな音楽性が全面に表れたもので、心が次第に癒されていく。
 もうひとつ、楽譜も出版された。地球へのオマージュとして、自然の力、環境への思い、未来への思いを託して作曲された「こどものためのピアノ曲集 《地球》」(カワイ出版)で、以前の《光のこどもたち》の続編となっている。
 これは絶滅に瀕した動物たちと環境をテーマに書かれた作品。安全でクリーンなエネルギーの開発と地球環境保護を願う意味合いも込められている。
 日本のみならず世界の多くの音楽家が日本の今後を真剣に考え、自分に何ができるかを問い、ひとつずつ行動に移している昨今。田中カレンのこれらの作品は、日々仕事の方向を考え、模索している私に、大きな力を与えてくれた。
 心に染み入る透明感あふれるピアノの音を聴きながら、少しずつ前に進もうと思っている。田中さん、ありがとう!!
 今日の写真はそのCDのジャケット。これだけでも美しいでしょう。





 
 
| 情報・特急便 | 22:42 | - | -
パスカル・ドゥヴァイヨン
 私は遠い祖先がスペイン人だと勝手に思い込んでまわりに笑われているが、「私は前世は日本人だったんだよ」などと真顔でいって笑いを誘っているのが、フランスのピアニスト、パスカル・ドゥヴァイヨン。
 彼は数々の国際コンクールで賞を得、独特のニュアンスと色彩感に彩られた演奏で高い人気を誇っている。現在はベルリン芸術大学教授、英国王立音楽院(ロイヤルアカデミー)客員教授、Music Alp クールシュヴェール夏期国際音楽アカデミーの芸術監督を務め、日本人の弟子も多い。
 そんなドゥヴァイヨンのもとには教えを請うピアニストが後を絶たない。だが、本人は子ども時代は練習嫌いで、反抗期も十分に経験したとか。だからこそ、弟子のさまざまな悩みが理解できるのかもしれない。このインタビューは「ムジカノーヴァ」の4月号に掲載されている。
 ドゥヴァイヨンは大変な和食党で、毎晩日本酒を欠かさないという。ピアニストの夫人、村田理夏子の手料理に舌鼓を打っているそうだ。
 ふたりはとても仲睦まじく、話術も呼吸がピッタリ。それもそのはず、ふたりはピアノ・デュオを組み、本格的な活動を展開している。
 つい先ごろ、リスト生誕200年を記念して「リストそして悪魔」(レグルス)と題した新譜をリリース、大作「ファウスト交響曲」の作曲者自身による2台ピアノ版を演奏している。
 これはすさまじいまでの超絶技巧を要する作品だが、彼らはまさに息を合わせ、作品の奥に潜むドラマを浮き彫りに、聴きごたえのあるデュオを披露している。
 なお、11月17日には東京文化会館小ホールで「村田理夏子、パスカル・ドゥヴァイヨン ピアノ・デュオ・リサイタル〜ファウスト交響曲CDリリースを記念して〜」と題したコンサートが行われる。
 プログラムはデュカスの「魔法使いの弟子」、リストの前奏曲、そしてリストの「ファウスト交響曲」が組まれている。
 ドゥヴァイヨンはライナーノーツにこう記している。
「リストは、ファウストとメフィストという2つの性格をはっきりと比較対照し、悪魔と人間はおそらくそれほどかけ離れていないもの…そして、単にそれは、まったく同じ実体の2つの顔なのではないか、ということを指示しているように感じられる」と綴っている。
 リスト・イヤーに登場した2台ピアノによる「ファウスト交響曲」。ふだんはあまり聴くことができないこうしたすばらしい作品を耳にすることができるのも、メモリアルイヤーならでは。リストの奥深さに開眼する思いを抱く演奏である。
 もうひとつ、ドゥヴァイヨンがピアノのテクニックについて書いた本が出版された。題して「ピアノと仲良くなれるテクニック講座」(音楽之友社)。ピアノに行き詰ったあなたに、ピアノ教師のあなたに、ピアノを一生の友としたいあなたに向けて、名教師ドゥヴァイヨンが紙上レッスンを行うという趣向だ。ドゥヴァイヨンが読者に親密的なことばで語りかけるように書かれており、基礎の大切さを自然な形てわかりやすく示唆し、あたかも彼のレッスンを受けているような感覚を抱かせる。
 もちろん、訳者は夫人の村田理夏子が担当。ここでも二人三脚のすばらしい仕事ぶりを発揮している。

 今日の写真はインタビュー時のおふたり。もうこの表情で、息の合ったリストが想像できるでしょ。

| 情報・特急便 | 23:42 | - | -
ニコライ・デミジェンコ
 すみだトリフォニーホールで「ロシア・ピアニズムの継承者たち」というシリーズが行われている。その第3回はニコライ・デミジェンコの登場だ。
 デミジェンコは、ロシア・ピアニズムの特徴である楽器を豊かに大きな音量で鳴らすという奏法からかけ離れた希有なピアニスト。その音色は芳しいほどに美しくやわらかく、弱音の見事さに心が魅了される。
 彼はロシアで勉強している時代、先生たちが大音量で楽器を鳴らすという教授法を押しつけようとするのに反発する特異な存在だったという。
 CDやDVDで演奏に触れると、ロシア・ピアニズムとは、こうした特徴もあるのかと目からウロコ…。
 デミジェンコの奏法は完璧なる脱力ができ、からだのどこにも余分な力が入っていない。手首はしなやか、絶妙のペダルを駆使し、かろやかに歌うように奏でられていく。決して鍵盤をたたかず、すべるように鍵盤の上を指が移動していくのである。しかも、打鍵は深く、音は説得力がある。
 今回の来日では、6月4日(土)にリサイタルを行い、シューマンの「ウィーンの謝肉祭の道化」「謝肉祭」を前半に、後半はリストの「ピアノ・ソナタ ロ短調」「伝説」を演奏。さらに5日(日)にはヴァシリス・クリストプロス指揮新日本フィルとの共演で、ショパンのピアノ協奏曲第1番とラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏する。
 ニコライ・デミジェンコは1955年生まれのウクライナ系ロシア人。モスクワ音楽院でドミトリー・バシキーロフに師事している。1976年のモントリオール国際ピアノ・コンクール、1978年のチャイコフスキー国際コンクールにおいて入賞を果たし、1991年にイギリスにわたり、以後この地をメインとして演奏活動を行い、ユーディ・メニューイン音楽学校で教鞭も執る。
 私は、ロシア・ピアニズムというと以前タチアナ・ニコライエワから聞いた話を思い出す。彼女は、この奏法はモスクワ音楽院の伝統的な教育方法が支えていると考えていた。
「モスクワ音楽院には、大きく分けて4つの流派があります。それら偉大なピアニストたちから各々の教育を受け継いだピアニストたちが、今度は次世代のピアニストたちにそれを手渡していくんです。こうして歴史は作られ、伝統が守られていく。すばらしいことでしょう」
 その4つの流派とは、ゲンリヒ・ネイガウス、アレクサンドル・ゴリデンヴェーイゼル、コンスタンティーン・イグムーノフ、サムイル・フェインベルクである。それぞれ個性も解釈も奏法もまったく異なるが、ピアニストとして、教育者として、歴史に名を残す業績を上げた人ばかりだ。
 デミジェンコの恩師のバシキーロフはゴリデンヴェーイゼルの弟子だったから、デミジェンコはゴリデンヴェーイゼルの孫弟子にあたる。こうしてモスクワ音楽院の歴史、ロシア・ピアニズムの伝統は受け継がれていくわけだ。
 悠久のピアニズムを俯瞰することができる今回のシリーズ、デミジェンコの美しい弱音から、ぜひロシア奏法を探求し、たっぷりとそのすばらしさを堪能したい。
 来日時にはデミジェンコにインタビューをする予定が入っているから、いまから楽しみだ。幅広くいろんなことを聞きたいと思っている。
 テニス・ファンの私は、最初に彼の名を耳にしたときに「えっ、ニコライ・ダビデンコ?」と思ってしまった(笑)。似た名前の人っているものですね。いまはもちろんまちがえませんよ。
 
 
| 情報・特急便 | 22:41 | - | -
マルタ・アルゲリッチ
 第13回「別府アルゲリッチ音楽祭」が5月8日から19日まで大分県の各地を舞台に開かれたが、今回は特にアルゲリッチの強い希望で開催が実行に移された。
 アルゲリッチは東日本大震災に非常に胸を痛めており、さまざまな支援を行っている。5月3日には昨年シューマンとショパンの生誕200年を記念した彼女のピアノ協奏曲のコンサート(すみだトリフォニーホール、アルミンク指揮新日本フィル)のライヴCD(KAJIMOTO)が急きょリリースされ、チャリティCDとして発売された。
 これは震災で被災した後、早期復旧した(株)オプトロムの仙台の工場でプレスされたものである。
 今回の「別府アルゲリッチ音楽祭」の公演もライヴ収録され、2011年秋以降に発売される予定となっている。もちろんこれも復興支援CDである。 
 その音楽祭の最終日にあたる、19日の「チェンバーオーケストラ・コンサート」を聴きに別府に出かけた。
 この夜は、ユーリー・バシュメット指揮モスクワ・ソロイスツ合奏団選抜メンバー&桐朋学園オーケストラとの共演により、アルゲリッチのソロでショパンのピアノ協奏曲第1番(弦楽合奏版)が演奏された。
 アルゲリッチの演奏するこのコンチェルトは何度か聴いているが、今回も冒頭から疾走するような情熱的で躍動感あふれるアルゲリッチならではのすばらしいショパンが会場を満たし、聴衆の心を釘付けに。
 ただし、この夜の白眉は緩徐楽章のポエティックで繊細な美に貫かれた情感あふれるピアニズム。炎のように舞い上がる第1楽章と第3楽章の間で美しい花を咲かせ、その芳醇な香りに酔ってしまいそうだった。
 コンサート終了後、6月5日のアルゲリッチの誕生日に先駆けて聴衆が「ハッピー・バースデイ」の合唱を始め、次第に大合唱となり、アルゲリッチは何度もステージに呼び出され、感極まった表情でおじぎを繰り返した。
 その後、アルゲリッチを囲んで音楽祭関係者の懇親会が深夜まで行われ、そこにも参加させていただいた。
 アルゲリッチはここでスピーチを行った。
「とてもとても深く、そして愛に満ちた美しいひとときを過ごすことができました。心からの感謝にたえません。私自身、みなさまとともにこの別府をミーティングポイントとする大きな輪のなかのひとりでいられることをこの上なく幸せに感じています。
 広瀬知事をはじめ、多くのサポーター、そしてスタッフのみなさん、さらには杉乃井ホテルのかたがたまで、ここで名前をすべてあげることはできませんが、すべてのかたがたに本当にThank Youといわせてください。この町のみなさんが私に示してくださる深い愛にも本当にありがとうと。
 参加した音楽家のみなさんも今宵新たなる美をここに加えてくれました。ありがとう。
 スペシャルな夜です。本当にスペシャルなひとときを過ごすことができました。ありがとう、心からありがとうといわせてください」
 その後、サプライズとして用意されたバースディケーキが運ばれてきたが、そのケーキの見事なことといったら。真っ白なイチゴのショートケーキの上に、マジパンでピアノとアルゲリッチ、両親、娘さんたちが飾られているのだ。アルゲリッチはこれをひと目見て、喜ぶよりもあまりのすごさに目を見張って呆然。その瞬間を撮ったのだが、今日の写真はちょっとピンボケ気味。ああ、残念…。
 ケーキも写したから、それも見てほしい。
 アルゲリッチのショパンの演奏は、いまだ脳裏に深く焼き付いている。いまは「マルタ・アルゲリッチ 子供と魔法」(オリヴィエ・ベラミー著 音楽之友社)の本も読んでいる最中。アルゲリッチに包まれている日々だ。



| 情報・特急便 | 23:10 | - | -
フランチェスコ・トリスターノ
 新しい才能の出現にはいつも心が高揚するような思い抱くが、ルクセンブルク出身のピアニスト、フランチェスコ・トリスターノの音楽との出合いも、胸がこの上なく高まるものだった。
 トリスターノは昨年2月、東京で2種類のプログラムを披露した。ひとつはJ.S.バッハ、ストラヴィンスキー、ハイドンに自作を加えた多様性に彩られたもので、もう一方はオール・バッハ・プロ。
 いずれも鍛え抜かれたテクニックとみずみずしい表現力を備え、聴き手の心の奥深く浸透してくる強烈なピアニズムで、これまで聴いたどのピアニストとも異なる特有の個性を発していた。
 彼はクラシックのみならず、現代作品からジャズ、テクノまでジャンルを超えて幅広く演奏する。しかも、それぞれのジャンルにおいて高い評価を受け、すばらしい共演者を得ている。
 そんなトリスターノがユニバーサル・クラシック&ジャズと契約し、グラモフォン・レーベルからメジャー・デビューすることになった。5月25日には「bachCage」と題したアルバムをリリースする。このライナーノーツを書いたため、いち早く音を聴かせてもらったが、まさにトリスターノらしい斬新で知的で革新性に満ちた演奏が全編を覆っている。
 選曲はバッハとジョン・ケージを組み合わせ、自作を2曲プラスした、まさに「フランチェスコの世界」を濃厚に描き出したもの。現代作品も自作も気負いなく自然に聴かせてしまうところが、この人の強みだ。
 そして6月には待望の再来日を果たす。6月7日(火)にはHakju Hallで、6月30日には津田ホールでコンサートが行われ、両日とも19時開演。
 今回のプログラムはCDとリンクした内容で、トリスターノの「いま」が存分に味わえることになっている。
 トリスターノは日本にきて一気に大ファンになってしまい、というより「ハマった」というべきか。ふつうの旅館で布団を敷いて寝たいといい、お寿司やてんぷらやすき焼きなどではなく、居酒屋の揚げ出し豆腐とゆず胡椒に舌鼓を打ち、町の銭湯に行っておおはしゃぎ。なんともディープな日本体験を楽しんだ。
 一見モデル体型で、186センチの長身のやせ型。フワフワの巻き毛に小顔。いかにもヨーロッパ人だけど、素顔はきさくで気負いも気どりもなく、すぐにその場になじんでしまうタイプ。日本人に囲まれていても、何の違和感も感じさせない、とても不思議な人である。
 それは幼いころから母親に連れられていろんなところを旅してまわったことが影響しているとか。6カ国語を話し、日本語もすぐにいくつか覚えてしまった。
 今回の東日本大震災に関しては、とても心を痛めていて、すぐにでも飛んできたい様子を見せている。「ぼくは大地が動こうが、放射能が降ってこようが、絶対日本に行って演奏する。被災地にも行きたい」といっている。
 なんていい人なんだろう。これこそ本物の日本好きだ。そんなフランチェスコの演奏、ぜひ聴いてみて。きっと心が通い合うと思うから。

 今日の写真は昨年のインタビューのときに撮った1枚。ちょっと横を向いているけど、これはカメラマンに「どっち向いたらいい?」と聞いているため。その自然な表情を私がパチリ。

| 情報・特急便 | 21:10 | - | -
ユリアンナ・アヴデーエワ
 昨年12月、NHK交響楽団との共演と、リサイタルのために来日したユリアンナ・アヴデーエワにインタビューを行った。
 10月にショパン・コンクールで演奏を聴いてから1カ月余りしかたっていない。その間、彼女の生活は激変したという。このインタビューはヤマハのWEB「ピアニスト・ラウンジ」の「明日を担うピアニスト達」に掲載されている。結構、長く書いたから、ぜひ読んでほしいな。アヴデーエワの音楽に対する一途な姿勢が理解できると思うので。
 このときは当然のことながら、ショパン・コンクールのときとはまったく異なるリラックスした表情をしていた。しかし、コンクール優勝の実感はいまだ湧いてこないと語っていた。
「あまりに生活が変わったことと、いつも多くの人に囲まれているため、じっくり物を考えることができないの。私はひとつのことを時間をかけてゆっくり考えていくタイプ。いまはレパートリーを広げなくてはいけないのに、時間的にも精神的にも余裕がない状態。これではいけないわね。もっと自分を見つめ、しっかり将来を見据えて生きかたを考えるようにしないと」
 コンクールのときもそうだったが、演奏も話しかたも落ち着いている。それはひとつのことに納得いくまで取り組む姿勢から生まれるようだ。
 その後、1月には入賞者たちと「第16回ショパン国際ピアノ・コンクール2010 入賞者ガラ・コンサート」に参加。再び、彼女の特徴である作品を完全に自分のものにした安定した演奏を聴かせた。
 そのときは地方公演もあり、さまざまな土地でいろんな食事をしたそうだが、もっとも気に入ったのは「日本そば」だそうだ。
「日本には何回か来ているけど、そばのおいしさは知らなかった。なんてすばらしい味なの。もうとりこになってしまったわ。ヘルシーな食べ物だと聞いたし、麺とつゆの絶妙のマッチときたら、たまらないわね。毎日食べても飽きないくらいだわ(笑)」
 彼女はとりわけ麺のおいしさを連呼するため、私はこう聞いてみた。
「うどんやラーメンは食べた? やっぱりおそばなの?」
「ダメダメ、ほかの物はまったく違うの。そばよ、そば!」
 大きな目を見開いて「SOBA、SOBA」と叫ばれると、おおっ、すごい迫力。ハイハイ、わかりました。そばね。日本が世界に誇る味だもんね。
 そんな彼女の「特報」が入ってきた。再来日&初リサイタルツアーが11月に行われることになったという、うれしいニュースだ。東京公演は11月5日、東京オペラシティコンサートホール、他の公演地は決定次第発表になる。
 きっと、さらに磨きのかかった演奏を聴かせてくれるに違いない。できることなら、ショパン以外も聴いてみたいのだが…。
 さて、今日の写真はヤマハのサイトの読者のために色紙にサインしているアヴデーエワ。下を向いていても美しいでしょう。


 
| 情報・特急便 | 22:44 | - | -
成田達輝
 ヴァイオリン界には次々に新星が現れているが、2010年秋にパリで開催されたロン=ティボー国際音楽コンクールで第2位に輝いた成田達輝18歳もそのひとりだ。
 彼は現在パリ13区立音楽院に在籍中。昨秋インタビューをしたときには、この2月にパリ音楽院の試験を受けるといっていたから、いまはその真っ最中かもしれない。このインタビューは「音楽の友」の2011年1月号に掲載されている。
 よくアーティストに趣味を聞くと、「音楽が趣味のようなものだから、特にないなあ。一日中、音楽と向き合っているし、ほかのことをする時間はとれない」という答えが戻ってくる。
 だが、成田達輝は違った。彼は子どものころからマジック(手品)や知恵の輪が好きで、本を読み漁ってマスターしたという。不思議なことが大好きで、学べば学ぶほどその世界にのめりこんでいくそうだ。
 これはもちろんヴァイオリンにもいえることで、練習ひと筋。「いまは学ぶことが楽しくてたまらない」と目を輝かせる。
 そんな彼の演奏は、3月23日にサントリーホールで開催される「ロン=ティボー国際音楽コンクール ガラ・コンサート」で聴くことができる。ここではシベリウスのヴァイオリン協奏曲ニ短調を演奏する予定だ。
 彼のヴァイオリンは、みずみずしくおおらかな音色と表現力が特徴。その奥に意志の強さと前向きな精神が宿る。目標に向かってひた走る若き俊英の迷いのない演奏は、聴き手を元気にさせてくれるものである。今日の写真は彼がちょっとおどけたポーズをした1枚。
 国際舞台で広く活躍するヴァイオリニストになってほしい。






 
| 情報・特急便 | 23:12 | - | -
インゴルフ・ヴンダー
 たったいま、ビッグニュースが飛び込んできた。2010年のショパン国際ピアノ・コンクールで第2位に輝き、コンチェルト賞と「幻想ポロネーズ」賞も受賞したピアニスト、インゴルフ・ヴンダーがドイツ・グラモフォンとレコーディング契約を結んだのである。
 ヴンダーは1985年9月8日、オーストリアのクラーゲンフルト生まれ。4歳からヴァイオリンを始め、数々の賞に輝いたが、本人いわく「どうしても自分の楽器とは思えなかった」という理由により、14歳でピアノに転向。猛練習の結果、わずか1年後にはさまざまなピアノ・ソナタが弾けるようになった。
 その5年後に、ショパン・コンクールを受けた。このときは本選に残れず、再度挑戦した昨年のコンクールで見事入賞の栄冠を手にしたのである。
 このコンクールを聴きに行った私は、「絶対にヴンダーが優勝する」と確信を持っていたが、残念ながら審査の結果は第2位。
 先日、来日したヴンダーにインタビューしたとき、「私はあなたが絶対に優勝すると思っていたのよ」とっいったら、ナイーブな目をした彼は恥ずかしそうに、でも、すごくうれしそうな表情をして「どうもありがとう」といっていた。このインタビュー記事は、「音楽の友」の今月発売号に掲載される予定。
 というわけで、ヴンダーのデビューCDはショパン・リサイタル・プロになりそうだ。もう待ち遠しくてたまらない。
 今日の写真は、来日中においしいお寿司を食べたそうで、「やっぱり、本場の寿司の味は違うね、最高だよ。ああ、毎日食べたいくらいだ」といっていたときの表情。目がまん丸だ。それほどお寿司にはまったのね。
 
| 情報・特急便 | 23:41 | - | -
チョ・ソンジン
 先週、韓国の若きピアニスト、チョ・ソンジンが来日し、ミニ・コンサートと懇親会を行った。
 チョ・ソンジンは現在16歳。2009年の浜松国際ピアノコンクールの最年少優勝者である。その記念演奏会が2010年7月に銀座ヤマハホールで開催され、聴きに行ったのだが、シューマンもショパンも非常にナチュラルな演奏で、解釈は古典的で伝統にのっとったものだった。
 もっとも強い印象を受けたのは、いずれの作品も完全に手の内に入っていること。それゆえ、作為的な面がまったく見えず、難度の高い箇所も楽々と弾き進めていく。
 そんな新たな才能を高く評価し、応援しているのが韓国出身の世界的な指揮者、チョン・ミョンフン。3月には「東芝グランドコンサート30周年記念コンサート」が開かれ、マエストロはチェコ・フィルハーモニー管弦楽団と日本各地を回る予定だが、このソリストにチョ・ソンジンが選ばれた。曲はチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番である。
 それに先立って来日したチョ・ソンジンは、ショパンとスクリャービンの作品を披露したが、昨年同様、自然で流麗なピアニズムを存分に聴かせた。
 その後、懇親会に移ったとき、私を含め女性3人が彼の肌の美しさを話題にし、大いに盛り上がった。
「ねえ、チョ・ソンジンの肌って、いわゆる赤ちゃん肌よね。ゆで卵みたいにツルリとして、押すとプルンと戻ってくる感じ」
「何を食べたら、あんなにきれいな肌になるのかしら」
「キムチじゃない。唐辛子のカプサイシンが効くんだと思う」
「じゃ、今夜から早速食べようかな」
「でも、数年後にはあの肌にヒゲが生えて、いわゆる男性の肌になってしまうのよね」
「ううん、大丈夫。そんなにヒゲは濃くならないと思う」
「ああ、ヒゲの生えた彼の顔、見たくないなあ」
「アッハッハ」
 最後のバカ笑いは私です。こんなに間近にすばらしい才能を持ったピアニストがいるというのに、私たちの話題ときたら…。困ったモンだ。
 でも、インタビューだけはちゃんと行った。その様子はヤマハのwebサイト「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に書いたので、ぜひそちらもクリックしてほしいな。
 というわけで、そのサイトには写真も掲載しているので、美しい肌をじっくり見てほしいと思う。いや、これはまちがい。ぜひ、チョ・ソンジンの美しい演奏を聴いてほしい(笑)。
| 情報・特急便 | 18:24 | - | -
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