Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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東京・春・音楽祭
 今日は久しぶりにコンサートに出かけた。「東京・春・音楽祭」の「工藤すみれ チェロ・リサイタル」である。
 これは東京文化会館小ホールで午前11時開演というものだったが、ほぼ満席で、現代作品が多いにもかかわらず、聴衆は本当に熱心に聴き入っていた。
 工藤すみれは2002年に創設された「斎藤秀雄メモリアル基金賞」の2005年の受賞者。2001年から2006年までアヴァロン弦楽四重奏団のチェリストとして欧米で活躍。2003年ニューヨークを拠点とする現代音楽グループcounter inductionの一員となり、2006年からはニューヨーク・フィルハーモニックのチェリストを務めている。
 こうしたさまざまな活動が彼女の音楽を成熟させ、テクニックと表現力と音楽性を磨き上げたのだろう。今日の演奏はいずれの作品も自信に満ち、自分の歌を明確に歌いあげていた。
 とりわけ印象に残ったのは最後に演奏されたバーバーのチェロ・ソナタ ハ短調 作品6で、ピアニストの中野翔太との音の対話が実に雄弁だった。息の長い旋律を両者が互いの音を注意深く聴きながら和し、しかもしっかりと自己を主張していく。
 第1楽章はロマン主義的ななかにも重厚さを見せ、第3楽章は情熱的でアグレッシヴ。間にはさまれた第2楽章は、瞑想的な空気をただよわせながら美しい緩徐楽章をゆったりと聴かせる。
 この第2楽章の中間部には16世紀のイタリアの速い3拍子の舞曲サルタレロが顔をのぞかせるが、この部分が今日の白眉だった。実に生き生きと、躍動感にあふれ、工藤すみれのいまの心身の充実を表していたからである。
「東京・春・音楽祭」は3月18日に開幕したが、今回は東日本大震災の直後だっただけに、中止となったコンサートが多かった。私は3月26日の演奏会の「ショパンとプレイエル」と題した原稿をプログラムに寄せたが、このコンサートも中止と決まった。
 今後この音楽祭は、チャリティコンサートがいくつか組まれている。
 そのなかで、久しぶりに聴く若きチェリスト工藤すみれのみずみずしい演奏は、非常に心に響いた。彼女は1999年と2000年にフィリップスからCDをリリースしているが、そのときの演奏よりなおいっそう主張が強くなった。アメリカで積み上げたものが、大きく花開いた感じだ。彼女の演奏をぜひニューヨークで聴きたい、そんな思いを新たにした。 

 
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