Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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長富彩
 今年のリスト・イヤーには、内外のピアニストによるリストの録音が次々と登場してきてうれしい限りだ。
 昔からリストが大好きで、何を弾いても先生に「あなたの演奏は全部リストに聴こえる」といわれたピアニストの長富彩も、セカンドアルバムにオール・リストを選んだ。題して「リスト巡礼」(コロムビア)。
 彼女はリスト音楽院に留学し、バルトークやリストの大家として知られるジョルジュ・ナードルのもとで研鑽を積み、リストの演奏を深めてきた。
 ハンガリー、アメリカでの生活を経て帰国後、昨秋1912年製ヴィンテージ・スタインウェイ(ニューヨーク)を使用したアルバム「イスラメイ」でCDデビュー。以後、コンサートでもリストを多く演奏し、特に「ラ・カンパネラ」「愛の夢 第3番」はひらめきに満ちた創造性豊かな演奏として聴衆の心をつかんできた。
 そんな彼女が、待望のリストの録音でこの得意とする2曲がどうしてもうまく弾けず、録音中に大きな壁にぶつかったという。
 インタビューでは、その苦しみから抜け出すまでの心の葛藤を素直に吐露している。これは次号の「intoxicate」に掲載される予定である。
 長富彩は、「大胆さと繊細さが共存している演奏」と評されるが、まさにこのリスト・アルバムもリストの作品が持つこの両面に肉薄している。彼女いわく「私はいつもリストは本能で弾いています」。まさにこのことば通り、演奏は率直で自然でリストの心をストレートに表現したもの。
 大きな試練を経験したからこそ、そのピアニズムは聴き手の心にまっすぐに染み込んでくる。
 最初にインタビューしたとき、彼女はこんなことをいった。
「私、子どものころからキーシンが大好きで、彼のお嫁さんになるのが夢だったんです」
 これには大笑いしてしまった。こんなにも素直に心情を打ち明けてくれたことにも驚き、またそれをシラッとしていうところもユニークだ。
 彼女はアメリカ時代、経済的に非常に苦労し、精神的にたくましくなったという。いまもふんわりとおだやかで、会った人をみな優しく包んでしまうような雰囲気を持っているが、実はかなり芯の強い性格に思える。
 演奏を聴くと、その芯の強さが一目瞭然。リストはいずれの作品も、その奥に情熱的で劇的なドラマが潜んでいる。それが大好きだという彼女もまた、音でドラマを描き出す。
 ウクライナの作曲家、ニコライ・カプースチン(1937〜)が好きで、ぜひ彼の作品を演奏していきたいと語っているから、今後はカプースチンでさらなるドラマを描き出すかもしれない。
 今日の写真はインタビュー時の長富彩。この表情、ピアノに向かうと一変するんですよ(笑)。




 
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