Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ファン・エイク兄弟「ヘントの祭壇画」
 数年前の真冬、ベルギーのブリュッセルの北西55キロほどに位置するヘント(ゲント)に1枚の祭壇画を見に行った。
 ファン・エイク兄弟が描いた、フランドル絵画の最高傑作と称されるシント・バーフ大聖堂の祭壇画である。
 この冬はとてつもない寒さで、ブリュッセルから電車でヘントに向かう途中、窓の外に見える木々は樹氷の状態で、大聖堂のなかも凍るような寒さだった。頭の芯から足先までバリンバリンの感じ。次第に寒さも感じないほどに凍りついてしまった。
 そのなかで対峙した祭壇画は、生涯忘れられないだろうと思う印象深さ。観音開きになっていて、下段中央に「子羊の礼拝(神秘の子羊)」が描かれている。この子羊はキリストを表しているそうで、こちらをじっと見ている目が胸に鋭く突き刺さってくる。なんというリアルな表情だろうか。絵や写真では何度も目にしていたが、実際に見る子羊の表情は、しばらくその場を動けなくなるほどに強烈な光を放っていた。
 上段には聖母マリア、キリスト、アダムとイヴ、聖ヨハネが描かれ、裏側には「受胎告知」や預言者たちの絵が見られる。
 音声ガイドに従って1枚ずつ絵をたどっていくと、24枚の絵に描かれた登場人物248人が存在感をもって迫ってくる。
 極寒の大聖堂のなかで対面した、ファン・エイク兄弟による1432年完成の巨大な作品。自ら犠牲となる子羊の神秘的で荘厳な表情。金色の後光も美しく、とりまく天使たちの祈りの表情もやすらぎに満ちたものだった。その頭上には真っ白な鳩が描かれ、これは精霊を意味しているという。
 帰りに、大聖堂の出入り口にあるショップでミニチュアの祭壇画を購入した。これがとてもよくできていて、細部までていねいに描かれている。もちろん扉を閉じたときに見える外側の絵も忠実に再現されている。
 私はフランドル音楽も大好きで、以前チェンバロを弾いていたときにはずいぶん楽譜を集めたものだが、この祭壇画を見て、改めてフランドルの芸術の伝統と歴史の奥深さを思い知らされた。
 今日の写真はそのミニチュアの祭壇画。20数枚のパネルが見事なまでの調和を保ち、すべてが凛々しい表情を放っている。

| 麗しき旅の記憶 | 22:14 | - | -
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