Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ジャン=マルク・ルイサダ
 今日は、次号の「音楽の友」の表紙を飾るフランスのピアニスト、ジャン=マルク・ルイサダの巻頭インタビューの原稿を書いた。
 ルイサダは、1985年のショパン・コンクールの入賞者。コンクール直後、当時彼が住んでいたブーローニュの森の近くの自宅に取材に行き、以来何度もインタビューを行ってきた。
 もちろん、ずっと演奏も聴き続けている。
 ルイサダは、最近教える仕事も多く、いまは演奏活動と後進の指導の割合が半々になっているそうだ。
 記事にはその教えかた、いまの若いピアニストたちの音楽に対する姿勢、先生としてのありかた、そしてピアニストとしての心構えなど、彼が雄弁に語ってくれたことを綴った。
 実は、最初に自宅を訪れたときに、ルイサダは興味深い写真を見せてくれた。彼はショパン・コンクールに2度挑戦し、2度目に入賞を果たしたわけだが、1980年に受けたときの写真を見せてくれたのである。
 私はそれを見た途端、大声をたてて笑いころげてしまった。
 そこには、いまのルイサダとはまったく異なった顔をした彼がいたからだ。短髪をなでつけ、黒ぶちのメガネをかけ、ふつうのスーツにネクタイを締めた、およそピアニストらしからぬ風貌の若い男性が写っていた。
「ええーっ、これ本当にあなた?」
 私は驚きの声を上げながら、しかも笑いながら聞いた。
「そうなんだよ、さえないだろう。昔はこんなダサい格好をしていたんだよ」
 没個性のルイサダは、演奏も個性が感じられず、落選したと考えた。そこで5年間かけて徹底的に自分を磨き、演奏を立て直し、再度の挑戦で入賞にこぎつけたというわけだ。
 しかし、その後、私が彼に会うごとにこの写真の話を持ち出すため、ルイサダは「もう、いい加減に忘れてよ。わざわざ日本から取材にきてくれたから、とっておきの写真を見せてあげたんだよ。あれは、本来は秘密にしておきたいものなんだ。いいね、もうあれはなかったことにして」
 へっへっへ、そうはいかないもんね。私の脳裏には鮮明にあの顔が焼きついているんだから。また、しばらくしたら、かまっちゃおうっと(笑)。
 今回のインタビューは、もちろん大真面目な内容。新譜の「主よ、人の望みの喜びよ、トルコ行進曲&月光ソナタ」(ソニー)の話も含み、ピアニストにとって感性を磨くことがいかに大切かという話題に終始した。
 彼は11月24日に紀尾井ホールでリサイタルを開く。プログラムは、ショパンの作品の間にドビュッシーをはさむというスタイル。
「私は演奏会も録音も、伝統的な作品でプログラムを構成することを好む。アンコールピースのような小品を並べることはしたくない。厳格な作品が好きなんだよ」
 彼は音楽のみならず、芸術全般に関心があり、話題は次々に広がっていく。
「人間、好奇心を持ち続けることが大切だと思うよ」
 ルイサダは音楽家以外の友人も多い。そうした交流のなかで、感性を磨いているのだろう。
 でも、あのまだ洗練されていない若いときのルイサダ、本当に印象深い。あっ、またもやこの話題になっちゃった。また、にらまれるな(笑)。
 今日の写真はインタビュー時の1枚。ハイハイ、いまはすっごく洗練されていますよ。

| 親しき友との語らい | 21:55 | - | -
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