Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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クリスティアン・ゲルハーヘルの3日間
 ああ、なんて幸せなんだろう。こんなにすばらしいバリトンは、久しぶりに聴いた。
 多くの人は、男性の声楽家の場合、テノールが大好きだという。でも、私は昔からバリトンのファンである。
 今日は、いまもっとも勢いのあるドイツのバリトン、クリスティアン・ゲルハーヘルのリサイタルを聴きに王子ホールに出かけた。
 今回は8日と10日の王子ホールでのリサイタルが組まれており、オール・シューマン・プログラム。今日は前半が「ミルテの花」作品25より7曲と「リーダークライス」作品39全12曲、後半が「ライオンの花嫁」と「12の詩」作品35全12曲。
 以前からゲルハーヘルの声に魅了され、いつもナマを聴くのを楽しみにしている。王子ホールは、すぐそばでうたっているのを聴くことができるため、臨場感にあふれ、声のこまやかな変化まで耳にすることができる。
 正統派の歌唱法で、詩を大切に、さまざまな表情を駆使しながら、シューマンの文学的で知的で情感あふれる作風をひとつずつストーリーをもたせながらうたい込んでいく。
 聴き進むほどに感動が胸のなかに広がり、美しくやわらかな高音では涙がこぼれそうになり、語りかけるような中音域ではうっとりと夢見心地になり、さらに迫力のある低音では音符のひとつひとつが胸に突き刺さってくるようだった。
 シューマンのリートはこれまで何人もの歌手で聴いてきたが、ゲルハーヘルのひたむきな歌唱は、聴き手にも集中力を要求するもので、目と耳が離せない。1曲終わるごとに、私もしばし息継ぎをし、次の曲に備える感覚に陥った。
 とりわけ「リーダークラウス」がすばらしかった。アイヒェンドルフの詩に曲がつけられたこの歌曲集は、自然への賛美が綴られ、そのなかに深い悲しみやひそやかな繊細さ、星の明るさやものうい気配、春の喜びなど多彩な表情が顔を出す。
 シューマンのロマンあふれる旋律は、次々に表情を変化させ、ピアノのこまやかな音との融合を見せ、聴き手をあたかもドイツの深い森へといざなう。
 ゲルハーヘルの変容していく歌声にピタリと寄り添うのが、盟友のピアニスト、ゲロルト・フーバー。リートの伴奏はとても難しいが、長年ともに演奏してきたふたりだけに、あうんの呼吸だ。
 実は、明日ゲルハーヘルにインタビューする予定である。あまりにも心に響く歌声を聴いたからか、インタビューに胸高鳴る思いだ。こういうことは珍しい。
 そして10日には、再び王子ホールでシューマン・プログラムの第2夜を聴く予定。今日はなかなか寝付けそうもないから、これからゲルハーヘルのCDを聴こうと思っている。
 ああ、まだ彼の声の余韻がからだ全体を覆い、シューマンの音の世界から抜け出せない。
 あまりボーッとした顔をしてインタビューにいくのはまずいから、明日はちゃんと仕事の顔に戻さないと(笑)。
 今日の写真はプログラムの表紙。最近の写真はみんな凛とした表情ばかりだが、私が最初に彼の写真を見たときは、パパゲーノのようなコミカルな顔をしていた。その後、ヴォルフラムをうたい、つい先ごろマーラーの歌曲集の録音で世界的な評価を得た。う〜ん、聞きたいことが山積みだ…。

| アーティスト・クローズアップ | 23:39 | - | -
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