Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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庄司紗矢香&メナヘム・プレスラー
 なんと感動的な一夜だったことだろう。
 今夜は、サントリーホールに庄司紗矢香とメナヘム・プレスラーのデュオ・リサイタルを聴きにいった。
 私はアーティストがステージに登場したときからその音楽は始まっていると思うが、今日もふたりが姿を現したときから、すでにすばらしいコンサートになることが予測できた。
 庄司紗矢香はウエストのうしろ側にバラがついた美しいサーモンピンクのドレスをまとい、ゆったりとした足取りのプレスラーとにこやかに登場。
 プログラムは、モーツァルトの「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ変ロ長調K.454」からスタート。プレスラーの音量はけっして大きくないため、庄司紗矢香も音を抑制し、静けさに満ちたおだやかなモーツァルトとなった。
 次いでシューベルトの「ヴァイオリンとピアノのための二重奏曲イ長調作品162」が演奏され、幻想的でかろやかで歌心あふれる作風をふたりは相手の音に注意深く耳を傾けながら、二重奏を楽しんでいるように演奏。とりわけ第4楽章のピアノとヴァイオリンの音の対話が密度濃く、テンポの速い部分の呼吸がピタリと合っていた。
 後半は、シューベルトの「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番ニ長調作品137-1」。今日はふたりの音をひとつもらさず聴こうとする熱心な聴衆がホールを埋め尽くしたためか、このシューベルトも歌謡的な主題を耳を研ぎ澄まして聴いている感じで、奏者と聴衆の間に一体感が生まれた。
 最後は、ブラームスの「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番ト長調《雨の歌》」。この作品では、庄司紗矢香もプレスラーも自由闊達な演奏となり、哀愁や憧憬に満ちた旋律をのびやかにうたい上げ、ブラームスの傑作をこの上なく美しく、情感豊かに奏でた。
 その余韻が残るなか、アンコールが始まった。
 最初はドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」。ふたりは1曲終わると手を取り合い、寄り添って舞台袖へと歩みを進めるのだが、このアンコールが終わったとき、プレスラーが庄司のドレスの裾を踏んでしまい、ふたりでおっとっと。ここでホール中が笑いに包まれた。
 でも、それが一変して涙に変わったのは、プレスラーがアンコールにショパンの「ノクターン第20番嬰ハ短調」を弾き始めてから。あまりの美しさ、静謐で陰影に富み、表情豊かで心にじわじわと沁み込んでくるピアノに、ホール全体が涙に暮れたような雰囲気に包まれた。
 私も、もうダメだ、こりゃ、あかん、涙腺がゆるんでたまらん、と思って、ハンカチをごそごそ探した。
 すると、ふたりはブラームスの「愛のワルツ作品39-15」をかろやかに弾き始めた。
 うん、これでひと息つけるゾ。なんて素敵なデュオなんだろう。
 そう思ってホッとしていたら、庄司紗矢香がまた目でプレスラーに合図を送り、彼がピアノを弾き始めた。
 ショパンの「マズルカ作品17-4」である。ああっ、ダメだ〜。今度こそ、ハンカチ、ハンカチ…。
 こうして感動的な一夜は幕を閉じた。
 帰路に着く間もずっとプレスラーのショパンが頭から離れず、いまだ余韻に浸っている。
 明日の午後は、いよいよ待ちに待ったプレスラーのインタビューだ。さて、どんな話が出るだろうか。まず、会った途端、今日感銘を受けたことを口走りそうだ。
 あまりにも深い感動を受けたため、今夜は脳が覚醒し、眠れそうもない。
 
| クラシックを愛す | 23:16 | - | -
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