Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ウェーベルンの作品
 昨日のチョン・キョンファのリサイタルで、とても印象に残った作品がある。アントン・ウェーベルン(1883〜1945)の「ヴァイオリンとピアノのための4つの小品」である。
 これは、キョンファがインタビューのときに語っていたことだが、200年以上前のベートーヴェンと現代の聴衆を結び付けるために、その中間に位置する作品としてプログラムに入れたという。
 1910年に作曲された作品で、まず、ゆったりとしたテンポの静けさあふれる第1曲で始まる。ヴァイオリンは弱音が主体で、耳をこらさないと聴こえないほどの静謐な響きが全編を支配している。これに瞑想的なピアノが加わる。ここではヴァイオリンは弱音器を用いている。
 第2曲は、急速なテンポで、幅広い強弱変化が特徴。かなり攻撃的な音楽となる。
 第3曲は、再びヴァイオリンが弱音器を用い、やわらかな響きと浮遊感のある高音を奏で、ピアノとの音の融合を目指す。
 第4曲は、ウェーベルンらしい新たな試みに満ちた音楽がヴァイオリンの特殊性あふれる響きと、変化に富んだピアノで奏され、短い曲想のなかで多くのことを雄弁に語る。
 キョンファは、この作品に対し、「各曲には永遠、闘い、諦念、勇気という感情が込められ、それらがベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタにも共通項を見出すことができる」と話していた。
 ウェーベルンの作品を評して、シェーンベルクはこういったという。
「たったひとつの動きだけが描かれた小説、ひと呼吸のなかで表された悦び」。
 わずか数小節だけの作品が、キョンファの研ぎ澄まされた音とケヴィン・ケナーの抑制された音により、不思議な小宇宙を描き出すように響き渡った。
 私は室内楽がとても好きで、特に奏者が類まれなる集中力を発揮し、聴き手も奏者とともに呼吸するような緊迫感に富む瞬間がたまらないのだが、キョンファのウェーベルンは、まさにそうした貴重な数分間を生み出した。
 次回、彼女にインタビューをする機会があったら、ぜひこのウェーベルンの作品に関してより深い話を聞いてみたいと思う。
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