Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ヴァレリー・アファナシエフ
 今日は、トッパンホールでヴァレリー・アファナシエフのリサイタルがあった。プログラムは前半がJ.S.バッハの「平均律クラヴィーア曲集」第1巻より3曲とヴァレンティン・シルヴェストロフの「オーラル・ミュージック」、後半はシルヴェストロフの「サンクトゥス/ベネディクトゥス」とバッハの「平均律クラヴィーア曲集」第2巻より6曲という構成。
 アファナシエフというと、極端に遅いテンポ、個性的な解釈、強靭なタッチなどが特徴といわれているが、今日の演奏は実に自然で躍動感に満ち、全編に音楽する喜びがあふれていた。
 先日インタビューしたときにも感じたことだが、彼はいま真の自由と開放感と前向きな精神に満ちているようで、それはバッハの音楽の外に向かって放たれる自由な意志を伴う演奏にも現れていた。
 以前、アファナシエフの演奏はひたすら内省的で自己の内面と対話するような様相を呈していたが、今夜の演奏はそれらと一線を画していた。
 それが証拠に、なんとサイン会までしたのである。本当に珍しいことだ。それも、ひとりひとりのファンににこやかに対応し、話を聞き、それにていねいに答え、ずっと笑顔を絶やさなかった。
 アファナシエフのなかで何かが大きく変容している。インタビューでも話が止まらず、時間がきても、もっと話したいという表情をしていたし…。
 バッハの「平均律」では、指をまっすぐに手をひらひらさせながら演奏する奏法はまったく変わらず、強靭な打鍵と絶妙の間の取り方が印象に残った。さらにクリアなアーティキュレーション、フレーズのつなげ方、内声の響かせ方、ペダルの使用、プレリュードとフーガの対比、分散和音の流れなどに特有のこだわりが宿っていた。
 もっとも印象的なのは、各曲の最後の音をずっとペダルで伸ばし、すっと足を外して消音したかと思うと、一気に次の曲へと入り込んでいく奏法。これにより、最後の音から次なる作品への音の架け橋が可能になり、聴き手は前の作品の余韻を意識しながら、次なる作品との関連性に気づくことになる。
 今日の写真は、終演後のサイン会でのアファナシエフ。こんな楽しそうな彼の表情は、初めて見たような気がする。
 でも、本来のアファナシエフは、ものすごくシャイな性格だ。それがステージには如実に現れ、アンコールのショパンのマズルカ第47番イ短調作品68-2を弾いた後の照れくさそうな表情に出ていた。おじぎもそこそこに、さっとステージをあとにするのである。
 実は、そんな態度が、私はすごく好きなのである。人間性が強く感じられるから。今日の公演評は、次号の「モーストリー・クラシック」に書くことになっている。


 
 
| クラシックを愛す | 23:58 | - | -
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