Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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辻井伸行 シドニー・リサイタル
 今回、シドニー空港(正式名称はキングスフォード・スミス空港)に着いたとき、まず目に入ったのは、シドニー交響楽団の垂れ幕だった。
「ああ、オーケストラが出迎えてくれる。いよいよ、これから取材が始まるんだワ」と思ったものだ。



 辻井伸行のリサイタルが行われたのは5月22日。シティ・リサイタルホールで19時開演だった。
 プログラムは、前半がJ.S.バッハの「イタリア協奏曲」、モーツァルトのピアノ・ソナタ第17番。後半がベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番「月光」と第23番「熱情」。2016年12月からスタートした日本ツアーの曲目で、ヨーロッパでも演奏し、今回のシドニー公演がこのプログラムの最終公演にあたる。
 20日の夜に聴いた、シドニー交響楽団とのショパンのピアノ協奏曲第2番の演奏も同様だったが、この土地の聴衆は反応が非常にストレート。1曲終わるごとに盛大な拍手が送られ、「ブラボー」の声もかかる。
 しかし、後半のベートーヴェンが終了したときは、ホール全体が地響きでも起こしたかのような怒涛の喝采に包まれた。
 日本では感動のあまり足を踏み鳴らすことはほとんどないが、シドニーの人たちは拍手と同時に靴音を一斉に響かせる。そのすごいこと。
 辻井さんは、そのストレートな感情表現を受けて、アンコールを4曲も演奏した。1曲目は、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」の第2楽章。2曲目は、リストの「ラ・カンパネラ」。ここでもうボルテージが最高になり、拍手はより大きくなる。
 そして3曲目が登場。辻井さんは、あたかも自作を演奏するように静かに旋律を奏で始めたが、すぐにオーストラリアの第2国歌とも呼ばれる「ワルツィング・マチルダ」の主題が登場。会場を埋め尽くした聴衆は「ギャーッ」と声を上げ、会場は騒然となった。
 彼は主題を生かしながら、親しみやすい旋律を幾重にも変容させ、即興的に「ワルツィング・マチルダ」を奏でた。
「ああ、私はオーストラリアで演奏を聴いているんだ」
 この瞬間、そんな実感が心の底から湧いてきた。
 こうなると、熱く燃え上がった聴衆の熱気は、冷めることがない。
 辻井さんは、4曲目にショパンの「革命エチュード」をすさまじいアップテンポで弾き、最後はピアノのふたを閉じて、「これでおしまい」という合図を送った。
 なんと熱く深く、印象的なリサイタルだったことか。これまで、辻井さんから海外の聴衆の反応のすごさを何度も聞いていたが、実際に自分が客席に身を置いて味わう臨場感はことばにできないほどの衝撃だった。
 終演後、辻井さんに「すごいわねえ、この雰囲気は。私も興奮して、一緒にブラボーって叫んじゃったワ」というと、「ええっ、本当ですか、うれしいなあ。今日のお客さんたちはものすごく喜んでくれたので、ぼくもそれに応えて4曲も弾いちゃいましたよ」といって笑っていた。
 翌日のインタビューでは、両日のコンサートで感じたこと、アンコールの選び方、シドニーでの演奏で4曲について新たに感じたことなどを聞いた。
 今日の写真は、シティ・リサイタルホールの外観。開演前のステージ。そしてすべての演奏が終わり、鮮やかな花束を受け取った辻井さん。

 
 






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