Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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神尾真由子
 音楽家のなかには、インタビューを苦手とする人も多い。「自分の音楽は演奏で示しているのだから、言葉は必要ない」とはっきりいう人もいる。
 これまで多くのアーティストに話を聞いてきたが、そういう人にぶつかるとムラムラとジャーナリスト根性が頭をもたげてくる。口の重い人、気難しい人、話が進まない人に出会ったら、「よーしっ、頑張るゾ。絶対にしゃべらせるもんね」と内心ほくそえみながら、表面はなにくわぬ顔をして、あの手この手で多方面にわたる質問を試みる。
 もちろん、失敗談は山ほど。相手はアーティストだから、私にとってはリスペクトの対象。失礼にあたらぬよう、細心の注意を払いながら、なんとか話をしたいと思ってもらえる方向に話題を振っていく。
 2007年にチャイコフスキー国際コンクールのヴァイオリン部門で優勝を果たした神尾真由子も、非常に口の重い人である。ひとつの質問に対して、ひとことだけの返事という場合もある。
 しかし、2008年3月に彼女の留学先であるチューリヒでデビューCDをレコーディングしたとき取材に行き、録音にもずっと立ち会い、ジャケット写真の撮影も見学し、その後インタビューも行ってライナーノーツを書いたため、それからは少しずつ本音で話してくれるようになった。
 以後、ずっと演奏を聴き続けている。
 そんな彼女が世界中の人が待ち望んでいたチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲第1番(ソニー)をリリースしたのは、2010年10月のこと。それに先駆け、帰国した彼女に話を聞く機会があった。
「私はあまりしゃべらないほうだけど、なぜか周りにはおしゃべりな人、しつこい人が集まってくるの。ザハール・プロン先生もひっきりなしにしゃべっているし、同じところを何度も演奏させるしつこさがあるでしょう。今回チャイコフスキーの録音で指揮を担当してくれたマエストロ・トーマス・ザンデルリンクもこれまたしつこくて、オーケストラ・パートを何度も繰り返して演奏していた。私のソロに対しては、あまりしつこくなかったからよかったけど(笑)。このあと日本ツアーで共演するロシアのピアニスト、ミロスラフ・クルティシェフもとてつもなくしつこくて、プログラムには凝りまくる、作品はとことん調べる。それを滔々と説明してくれるんだけど、私はなんとかなるわよって感じ。とうしてみんなあんなにこだわるのかしらねえ」
音楽における「しつこさ」は、完璧主義の表れなのだろう。一方、神尾真由子はのんびり、おおらか、マイペース。ただし、本番には強い。ふだんはゆったりペースだが、いったんヴァイオリンを手にすると、集中力全開。音楽のなかに一気に没入していく。
 このインタビューの様子は「CDジャーナル」の2010年11月号に掲載された。このときもライナーノーツを書き、そのなかで彼女がチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲に出合ったときのことを綴った。
 満を持して登場したチャイコフスキーは、まさに長年弾き込んで完全に自分の音楽になっている安定感と説得力を備えた演奏。彼女のいつものちょっと怖そうな(みんなにいわれるそうだ。集中しているときは当然だが、緊迫感あふれる表情になる)顔をして演奏している様子が音から見えるようだ。
 そんな彼女の写真はインタビュー時の1枚。こんな表情、ちょっと珍しいでしょう。これ、すごくキュートな表情にとれたので、自慢の写真です。
 
| アーティスト・クローズアップ | 21:32 | - | -
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