Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ルネ・パーペ
 昨夕はトッパンホールにルネ・パーペのリート・リサイタルを聴きに行った。
 パーペはドレスデン出身のバス歌手。欧米のオペラハウスから引っ張りだこの人気と実力を誇り、いまやバスとして不動の地位を築いている。
 その彼が同じくドレスデン出身のピアニスト、カミロ・ラディケと組んでリートを歌うという。始まる前から期待は募るばかり。
 ステージに登場したパーペの、なんと立派なことか。燕尾服というのはこういう体格の人がもっとも似合うと思わせる威風堂々たる体躯。肩幅が広く、胸板が厚く、足が長く、姿勢がいい。歩幅は広く、カッツカッツと自信に満ちた表情で中央まで進む。まるで舞踏会に現れた王族のような雰囲気。
 前半はシューベルトの「音楽に寄す」「夕映えの中で」「ミューズの子」などから始める。艶やかでのびのあるダイナミックな低音で歌われるシューベルトは、いつも聴いているやわらかで抒情的な歌とは一線を画す重量感あふれるもの。
 特に印象的だったのは「野ばら」。初々しくさわやかな野ばらではなく、荒野に咲く野ばらで、雨にも風にも負けずにすっくと咲いている野生の花。パーペの歌を聴き、この作品の奥深さを思い知らされた。
 次いで登場したのはシューマンの「詩人の恋」。これまで何度この作品を聴いてきただろうか。だが、これもまた新たな発見があった。
 パーペはハイネの詩の奥に潜む物語を浮き彫りにし、音楽との融合を極め尽くし、あたかもひとり芝居のように16曲の異なった音の世界を作り上げていった。
 後半はヴォルフの「ミケランジェロの3つの詩」とムソルグスキーの「死の歌と踊り」。いずれもバスのための重要な作品。声の調子が上がってきたパーペは、さらに表情豊かに、作曲家の意図した思いに近づくよう集中力を高め、鬼気迫るような歌唱を聴かせた。ひとり芝居がひとりオペラに変貌したようで、別世界にいざなわれる思いを抱いた。
 オペラでは、グルネマンツやザラストロ、マルケ王などの役で圧倒的な存在感を示しているルネ・パーペ。その彼のリート・リサイタルは、聴き慣れた作品に新たな光を当てるものだった。1日たってもその深い感動は胸の奥にずっといすわっている。
 今夜はアンドラーシュ・シフのベートーヴェンを聴きに行く。ピアノ・ソナタ第30番、第31番、第32番という重量級のプログラムだ。またもや、新たな発見に心が高揚しそうだ。
この2つの公演は、次号のモーストリー・クラシックのコンサート評を書くことになっている。
 
 
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