Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ヴィルデ・フラング
 昨夜はノルウェー王国大使館で、ノルウェー出身の若手ヴァイオリニスト、ヴィルデ・フラングの初来日プレミア・イベントが行われた。
 これに先立ち、彼女にインタビュー(次号の「intoxicate」に掲載予定)。新譜のシベリウスのヴァイオリン協奏曲(EMI)に関することや恩師のコリア・ブラッハー、アナ・チュマチェンコ、サポートしてくれるアンネ=ゾフィー・ムターや内田光子についてなど、さまざまな質問に実にていねいにじっくりと答えてくれ、その誠意ある態度にすっかり魅せられてしまった。
 イベントではインタビュアーも務めたが、ここでもフラングは会場である美しいホールに集まった人々を魅了するトークを行った。バルトークの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ(全曲)」の演奏も行い、のびやかで自然で、作品の内奥にひたすら迫る姿勢を見せ、実力を存分に発揮した。
 ノルウェー大使館の地下にあるホールは、とても思い出深いところ。2007年にグリーグの本を出したとき、大使館のみなさんが盛大な出版記念パーティを開いてくれた場所で、木造りの温かな雰囲気のホールである。
 このホールに響くフラングの弦の音は、ノルウェーの雄大な自然を思い起こすものだった。もちろんJ.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ」以来の傑作といわれるバルトークの作品であり、困難な技巧がちりばめられている。自由で多彩な変奏的手法も奏者にとっては表現が大変だが、フラングはそれを喜怒哀楽を表出する雄弁な語りのように響かせ、聴き手の心の奥深く浸透させた。
 彼女の演奏はスケールが大きく、ひとつひとつのフレーズがとても説得力がある。構成力も堅固だが、そのなかに自由な精神がみなぎるため、堅苦しくならない。とりわけ印象的だったのは、シャコンヌのテンポ。あたかも踊り出しそうな雰囲気で、これがノルウェーの民族舞踊を思い起こさせ、感慨深かった。
「バッハの無伴奏作品は大きな聖堂を造り上げていく感じ。でも、バルトークのこの作品は、自分の聖堂を造っていくように思えるの」
 フラングは会場からの曲に関する質問に対して、こう答えた。
 長身で色白で、キュートな目をしたヴィルデ・フラング。作為的なものがまったくない、自然な演奏とキャラクターは、ノルウェー人ならではの美質。きっとじわじわと人気が上がるに違いない。



 
 
 
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