Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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コリン・デイヴィス
 このたびの東日本大震災で亡くなった方々のご冥福を祈り、遺族の方々、被災者のみなさまに心よりお見舞い申し上げます。
 いまは、こうした月並みなことばを並べることしかできない自分が歯がゆいですが、自分に何ができるか、何をすべきかをじっくり考え、行動に移したいと考えています。いまは自分の役割を精一杯果たすしかないと思っています。


 さて、長い間お休みしていたブログを再開することにした。「インタビュー・アーカイヴ」の第3回は指揮者のコリン・デイヴィスの登場。彼は1980年にイギリス音楽界における貢献により、ナイト(Sir)の称号を受けている。

[FMレコパル 1991年8月19日〜9月1日号 No.18]

物語のなかへと誘う、大きく包み込まれるような演奏
 


「魔弾の射手」の序曲は、これから始まるボヘミアの森を舞台とした愛の物語に、有無をいわせず引き込んでしまう強い引力を持った曲である。
 これをデイヴィスはゆったりとしたテンポで、各楽器を存分に鳴らしながら徐々に聴き手を物語のなかに誘導していく。
 この序曲を聴いただけでもデイヴィスらしさが十分に感じられる。彼は決してオーケストラにも歌手にもせわしない演奏を要求しない。
 前作の「サムソンとデリラ」もそうだったが、ここでも各アリアがのびのびとおおらかに歌われているのは、きっとデイヴィスのタクトがあくまでもゆったりと大きく包み込むように振られているからだろう。
 実際に会って話をしてみると、なおさらその感を強くした。
「若いころは私だってずいぶん目茶苦茶なことをしましたよ。クレージーなほど働きましたしね。年間ものすごい数のコンサートをこなしてきました。でも、もう64歳です。野心や金銭欲なんかまったくありません。音楽だけです。いまは働かないほうが調子がいいんです(笑)」
 もちろん、現在もスケジュールはいっぱいである。だが、年に4カ月間は家族とともに過ごし、一度のツアーも3週間以内にしぼっているという。
「日本は単身赴任者が50万人もいるんですってね。私にはとても信じられません。指揮者というのは常に多くの人を相手に仕事をしているため、エネルギーの消耗がはげしいんです。それを補給し、常に自分を新鮮に保つために、私にとって家族との生活は欠かせないものなのです」
 デイヴィスはじっくり読書をしたり、物を考えたりする時間が音楽家にとっては一番必要だと語った。
 若いころにオーケストラを次々と振り歩いていたときは、本当に音楽を感じ、心から楽しむ気持ちにはなれなかったと。
 この話を聞いてからデイヴィスの演奏に耳を傾けると、現在の彼の心情が痛いほどよく伝わってくる。

「大好きなウナギを、まとめて食べに行くかな」

「魔弾の射手」はドイツ民謡の精神を生かした真にドイツ的なオペラだといわれる。ウェーバーが音楽監督の地位にあったドレスデン・シュターツカペレは、443年という長い歴史と伝統を誇る名門オーケストラ。
 響きはあくまでも漆黒色をした深いドイツの森を連想させる渋い味わいを持っている。特に金管楽器がすばらしく、ここでの演奏も管のまろやかな深い響きに耳を奪われる。
 デイヴィスがこのオーケストラに初めて出会ったのは1980年のことだが、そのときはいわば両者とも恋に落ちたという状態だった。
「このオーケストラは1997年に創立450年を迎え、それを記念して世界中を演奏旅行する計画が立てられていて、ぜひ私にも参加をといわれていますが、まあそのときまで生きていられたらね、と答えてあります」
 ところで、デイヴィスといえばベルリオーズの権威者である。だが、本人はそういわれるのを好まない。
「だいたいね、ベルリオーズをエキセントリックでグロテスクなロマン派の化け物だといった、何か特別扱いする人が多すぎて困るよ。ベルリオーズは他の作曲家となんら変わることはないのに、美しい作品が多いし…」
 デイヴィスがベルリオーズを初めて聴いたのは22歳のとき。オラトリオ「キリストの幼時」の第2部だった。このときに鮮烈な印象を受け、以来ベルリオーズに傾倒していく。
 初めて「幻想交響曲」を振ったのは30歳のときだ。
 彼はしきりに自分の年の話をする。そしてついに「日本で生活すると食生活がいいから長生きできるんだってね。私はウナギに目がないんだが、ロンドンでは高くてなかなか食べられない。日本にまとめて食べに行くかな」といい出した。
 今後は巨匠的な重々しく歩む演奏に、少々脂っこさが加わるかもしれない。

 今日の写真はそのときの雑誌の一部。サー・コリン・デイヴィスは現在83歳。まだまだ元気に指揮活動を展開している。好物のウナギをたくさん召しあがっているからだろうか…。

| インタビュー・アーカイヴ | 17:52 | - | -
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