Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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フランチェスコ・トリスターノ
 新しい才能の出現にはいつも心が高揚するような思い抱くが、ルクセンブルク出身のピアニスト、フランチェスコ・トリスターノの音楽との出合いも、胸がこの上なく高まるものだった。
 トリスターノは昨年2月、東京で2種類のプログラムを披露した。ひとつはJ.S.バッハ、ストラヴィンスキー、ハイドンに自作を加えた多様性に彩られたもので、もう一方はオール・バッハ・プロ。
 いずれも鍛え抜かれたテクニックとみずみずしい表現力を備え、聴き手の心の奥深く浸透してくる強烈なピアニズムで、これまで聴いたどのピアニストとも異なる特有の個性を発していた。
 彼はクラシックのみならず、現代作品からジャズ、テクノまでジャンルを超えて幅広く演奏する。しかも、それぞれのジャンルにおいて高い評価を受け、すばらしい共演者を得ている。
 そんなトリスターノがユニバーサル・クラシック&ジャズと契約し、グラモフォン・レーベルからメジャー・デビューすることになった。5月25日には「bachCage」と題したアルバムをリリースする。このライナーノーツを書いたため、いち早く音を聴かせてもらったが、まさにトリスターノらしい斬新で知的で革新性に満ちた演奏が全編を覆っている。
 選曲はバッハとジョン・ケージを組み合わせ、自作を2曲プラスした、まさに「フランチェスコの世界」を濃厚に描き出したもの。現代作品も自作も気負いなく自然に聴かせてしまうところが、この人の強みだ。
 そして6月には待望の再来日を果たす。6月7日(火)にはHakju Hallで、6月30日には津田ホールでコンサートが行われ、両日とも19時開演。
 今回のプログラムはCDとリンクした内容で、トリスターノの「いま」が存分に味わえることになっている。
 トリスターノは日本にきて一気に大ファンになってしまい、というより「ハマった」というべきか。ふつうの旅館で布団を敷いて寝たいといい、お寿司やてんぷらやすき焼きなどではなく、居酒屋の揚げ出し豆腐とゆず胡椒に舌鼓を打ち、町の銭湯に行っておおはしゃぎ。なんともディープな日本体験を楽しんだ。
 一見モデル体型で、186センチの長身のやせ型。フワフワの巻き毛に小顔。いかにもヨーロッパ人だけど、素顔はきさくで気負いも気どりもなく、すぐにその場になじんでしまうタイプ。日本人に囲まれていても、何の違和感も感じさせない、とても不思議な人である。
 それは幼いころから母親に連れられていろんなところを旅してまわったことが影響しているとか。6カ国語を話し、日本語もすぐにいくつか覚えてしまった。
 今回の東日本大震災に関しては、とても心を痛めていて、すぐにでも飛んできたい様子を見せている。「ぼくは大地が動こうが、放射能が降ってこようが、絶対日本に行って演奏する。被災地にも行きたい」といっている。
 なんていい人なんだろう。これこそ本物の日本好きだ。そんなフランチェスコの演奏、ぜひ聴いてみて。きっと心が通い合うと思うから。

 今日の写真は昨年のインタビューのときに撮った1枚。ちょっと横を向いているけど、これはカメラマンに「どっち向いたらいい?」と聞いているため。その自然な表情を私がパチリ。

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