Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

ブログ

<< フランシスコ・デ・ゴヤ | main | ルネ・フレミング >>
アリス=紗良・オット
 アリス=紗良・オットはいつ会っても元気はつらつ、演奏も迷いがなく、自分の信じた道をひたすら邁進している。
 その潔さ、前向きな姿勢、性格のユニークさは強烈な個性となって、「アリス=紗良・オット」というピアニストを際立たせている。
 彼女は幼いころからいい出したら聞かない性格で、両親はたいそう子育てに苦労したそうだ。ドイツ人の父親と日本人の母親のもとミュンヘンに生まれた彼女は、3歳のころからピアノを習いたいといい続けた。まだ早いと考えていた両親は反対したが、あまりにも強いアリスの要求についに根負けし、ピアノのレッスンを始めさせてくれた。
 そんな彼女は5歳で「将来はピアニストになる」と決意、それを貫き通す。さまざまな国際コンクールで賞を受け、19歳のときに幼いころから憧れていたドイツ・グラモフォンと契約、2008年にリストの「超絶技巧練習曲」でCDデビューを果たした。
 以後、国際舞台で活躍、名だたる指揮者、オーケストラと共演を重ね、日本でも数多くステージに立っている。
 デビュー当初は日本語がまだそんなに得意ではなく、難しい部分になると母親に通訳してもらっていたが、いまではすっかり上達し、難しい慣用句も用い、ジョークも連発し、すっかりリラックスした様子でインタビューに応じるようになった。
 彼女は、会う人みんなを元気にさせるような不思議なエネルギーを発している。気どりがなく、素直で、自然体。
 子どものころはすさまじいいたずらばかりして両親を困らせたそうだが、いまはそのエネルギーがすべて音楽に向いている。
「でも、私は昔から自分のアイデンティティーはどこにあるのかと、いつも悩んでいました。完全なドイツ人でもなく、日本人でもない。中途半端な自分をもてあまし、自信が持てず、落ち込むことが多かったんです。自分の本当の居場所はどこだろうと、常に探し求めていました。でも、ピアノを弾いているときだけは、自分の存在を確信することができた。自分の居場所はここだと思えたのです。音楽がなかったら、私はきっとうまく成長できなかったと思います。いまの自分があるのは、音楽のおかげです」
 現在、アリスは超多忙な演奏活動のなかで自信あふれる演奏を行い、ドイツと日本のいい面を受け継いだことに誇りを持ち、明るい笑顔を見せる。
「私は辰年生まれのしし座で、じゃじゃ馬娘なんです。本来の性格は負けず嫌いの一本気。反対されればされるほど燃えるタイプで、本当にいい出したら一歩も引かない。レコード会社の人もマネージャーもそれを理解してくれ、自由にさせてくれますが、本当は困惑しているでしょうね(笑)」
 だが、大変な努力家で自分が主張したことの責任はきちんととる。練習魔でもあり、演奏できっちり成果を示す。
 これまで多くの雑誌で記事を書いてきたが、アリスの原稿を書くのは実に楽しい。自己主張が強いのに、妙に遠慮したり、ときどき気弱になったり、とても正直だから。それゆえ、原稿を書きながらついにんまりとしてしまうことがある。
 彼女の演奏はずっ聴き続けていきたい。そのつど、大きなステップを駆け上がるような成長を見せてくれるから…。

 今日の写真は昨年冬のインタビュー時のもの。記事は「音楽の友」の2010年12月発売号に掲載された。

| アーティスト・クローズアップ | 22:59 | - | -
CALENDAR
S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< March 2017 >>
CATEGORIES
ARCHIVES
LINKS
PROFILE