Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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小林愛実
 今日は若きピアニスト、小林愛実のリサイタルを聴きに行った。
 これは4月3日にニューヨークのカーネギーホールでソロ・リサイタル・デビューを成功させた凱旋記念公演で、先日リリースされたばかりのセカンド・アルバム「熱情」(EMI)の収録曲がメイン・プログラム。
 彼女にはデビュー当初から話を聞き、演奏に接し、デビュー・アルバムとセカンド・アルバムのライナーノーツ、コンサート・プログラム、インタビュー記事などを書いてきた。いつも彼女は本音で語ってくれるため、記事も書きやすい。
 小林愛実は幼いころから数多くの賞に輝き、海外のステージも経験し、いまや次代を担うホープとして期待されている。だが、本人は才能におぼれることなく音楽を心から楽しみ、聴き手とのコミュニケーションを大切にする。
 素顔は明るくあっけらかんとし、食欲旺盛なごくふつうの15歳。しかし、ピアノに向かうとすさまじいまでの集中力を発揮し、作品の内奥へとひたすら迫っていく。
 そんな彼女が今日演奏したのは、シューマンの「子供の情景」とベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」が前半。シューマンでは物語を語るようにひとつひとつの曲を詩情豊かに歌い上げた。
 「悲愴」では最初のグラーヴェはゆったりと主題を奏でていったが、徐々にテンポが増していき、第3楽章は猛スピードで飛ばした。
「私、いつも本番ではテンポが速くなってしまう。先生に注意されるけど、止まらない。練習より遅くなることはいままで一度もないかも」
 こういって陽気な笑い声をたてるところが、いかにも彼女らしい。
 後半はCDには入っていないラヴェルの「ソナチネ」が演奏され、最後はベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番「熱情」で締めくくられた。
 やはり「熱情」も次第にアップテンポになっていき、プレストのコーダではあまりの速さにひとつひとつの音が空高く飛び上がっていくようだった。
 彼女が幼いころから師事している二宮裕子先生にお会いしたら、こんなことをいわれた。
「伊熊さん、あまりいい記事を書かないでね。もっときびしくいってやってください」
 でも、きびしくいうのは先生のお役目。私は若いアーティストはできる限り応援したいという考え。きっと、小林愛実も遠からずシビアな批評にさらされるときがくる。そのときにそれらとどう向き合うか、どう対処するかが今後の演奏活動に大きく影響するはずだ。
 終演後、「愛実さん、カーネギーホールの演奏はどうだった?」と聞くと、「ああ、伊熊さん、どうして聴きにきてくれなかったの。すごくよく弾けたのに…」と満面の笑顔。
 これこれ、この屈託のなさが一番の美質ではないだろうか。まわりが何をいおうが、どう評価されようが、自分がうまく弾けたと思ったらそれを素直に口に出す。彼女だったらシビアな批評が出ても、さらりとかわしてしまうような気がする。
 日本を元気にするエネルギッシュで前向きでおおらかな、小林愛実のピアニズムとキャラクター。
 今春、彼女は高校生になった。「高校はどお?」と聞いたら、「あまり授業が詰まっていなくて、結構自由時間があるの」とにんまり。
 ということは、練習がたっぷりできるわけね。ガンバレ、AIMI。

 今日の写真はリサイタルが終わってふだんの表情に戻った彼女。これが大好きなポーズだそうだ。

| アーティスト・クローズアップ | 22:46 | - | -
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