Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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スティーヴン・オズボーン
 今年1月18日、スコットランド生まれのピアニスト、スティーヴン・オズボーンの来日リサイタルをトッパンホールに聴きに行った。
 彼は実に幅広いレパートリーの持ち主。今回はラフマニノフ、ラヴェル、ドビュッシーを組み合わせた凝ったプログラムを組み、真の実力派を印象づけたが、もっとも心に響いたのはラヴェルの「鏡」だった。
 オズボーンは、その前にラヴェルの「ピアノ独奏作品全集」(東京エムプラス)の録音を完成させたばかり。ラヴェル好きの私は繰り返し、これを聴いていたが、ナマ演奏ではまた異なった新たな魅力に出合うことができた。
 彼は録音では「高雅にして感傷的なワルツ」を管弦楽版と照らし合わせ、和音を付け加えるなどして演奏、独自性と即興性を見せている。
 リサイタルではアンコールでジャズも演奏、聴衆を沸かせた。
 今回はインタビューも行ったが、そのときにオズボーンはひとりひとりの作曲家にとことん入れ込むタイプゆえ、全集を録音することになるのだと語った。
 このインタビューは「音楽の友」の4月号に掲載されている。
「子ども時代から練習は嫌いでしたが、編曲や即興は大好きでした。いまでも、ピアノであれこれ遊んでいるのが好きなんですよ」
 こういってシャイな笑顔を見せるオズボーンは、スコットランド人の気質に関してこう語った。
「スコットランド人というのは、知り合うまでに時間がかかる人が多い。すぐには心を開かないからです。深く相手を知るまでは、変なことをいって相手を傷つけたらどうしようと考えるわけです。でも、いったん心を許すと、長年つきあうようになります。私も決してあけっぴろげの性格ではないのですが、親友は何人かいますよ」
 その親友のひとりが、ピアニストのポール・ルイス。デュオでもよく組んでいる。彼らの今回の来日はちょうど重なり、ふたりで浅草に行こうといっていたそうだが、なかなか実現しなかった。
「ポールはシューベルト・チクルスの記者発表などで忙しく、時間がないというんですよ。あんなに浅草に行きたいっていっていたのに」
 この話をポール・ルイスに会ったときにしたら、彼はこう反論した。
「えっ、スティーヴンはそんなこといってるの。彼のほうがリサイタルの練習で時間がないっていったんだよ。まったくなあ」
 まあ、これは親友ならではのやりとりなのでしょう。
 オズボーンのスコットランド人気質に関しては、私が「テニスのアンディ・マレーもそうよね」などといったものだから、ここからテニス談義になってしまった。オズボーンは結構お茶目で、マレーが試合に勝ったときに両腕を高く掲げるポーズまでまねした。
 あら、スコットランド人はなかなか心を開かないんじゃなかったっけ…。
 彼の話で興味深かったのは、以前2日間パリに滞在し、メシアンの作品をメシアン夫人であるイヴォンヌ・ロリオから学んだときのこと。
 レッスンはすさまじくシビアで、1日6時間に及んだという。とりわけフィンガリングをきびしく直され、親指の使いかたが大切だといわれたそうだ。親指は決して揺れてはならないと。
「ロリオ夫人はこういったんです。絶対なる神のような音楽に揺れがあってはなりませんと。リズムの大切さ、その微妙さ、均等にリズムを刻むことやほんのちょっとしたズレも注意されました。長時間のレッスンでも、決して情熱を失わないその気持ちにとても感銘を受けました」
 スティーヴン・オズボーンは、1991年のクララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールの優勝者。このコンクールの覇者はみなじっくりと大成していく。
 またすぐにでも来日してほしいという思いを抱いた。
 今日の写真はインタビュー時のオズボーン。「ブログ用の写真撮ってもいい?」と聞いたら、にこやかに話していた表情が一変、真面目そのものの顔になった。やはりスコットランド人はシャイなのかなあ。

| アーティスト・クローズアップ | 21:51 | - | -
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