Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ジュリアン・ブリーム
 インタビュー・アーカイヴの第8回は、イギリスの名ギタリスト、ジュリアン・ブリーム(1933〜)の登場。アンドレス・セゴビアに師事し、欧米で広く活躍、1959年にジュリアン・ブリーム・コンソートを創設した。
 世界的な名声を確立した偉大なギタリストなのに、とても気さくでユーモアたっぷり。イギリス人らしく紅茶に目がなく、私も紅茶党なので、インタビュー後はその話で盛り上がってしまった。

[FMfan 1996年2月26日〜3月10日号 No.6]

音楽はことばで表現することが不可能なものを
表現可能にしてくれます


 ギターとリュートの世界で確固たる地位を築き、数々の録音を残しているブリームが、昨年38年ぶりに録音したJ.S.バッハの「シャコンヌ」をリリース。12月の来日公演でもバッハをはじめ、多彩なレパートリーを披露し、滋味豊かなギターの音色を堪能させてくれた。

バッハの音楽は偉大です

――いつもブリームさんはプログラムを広範囲の作曲家の作品で組まれていますね。
「私はバロックから現代作品まで、あらゆる時代のものを弾いていきたいんです。それも1回のステージでね。いつも新しい作品に挑戦していきたいし、その姿勢を崩したくない。繰り返し同じ作品を演奏するのは好まないんです。でも、最近はずっと以前に勉強した曲を再び取り上げ、そこにいまの自分を反映させることを試みるようになりました。
 今回プログラムに入れたポンセの『ギターのための5つの小品』は、実は40年以上前に勉強した作品なのです。音楽はことばで表現することが不可能なものを表現可能にしてくれますが、このポンセを再び弾くことにより、私のなかで長い間培ってきた“経験”が音楽という形になって現れてくるように思います」
――それで再びバッハの録音を?
「ええ、1957年の録音ではまだ自分のいいたいことの半分しか表現できませんでしたから。いまようやくバッハのこれらの作品の8割が理解できたかなという感じです。
 ここまでくるのに38年という歳月が必要だったわけです。それだけバッハの音楽は偉大なんです。『シャコンヌ』を完璧に演奏するには、私の人生のすべてと、もう半分くらいの人生を要します」

バッハとは年齢を重ねるごとに見方が変わってくる作曲家です

――今回は『無伴奏チェロ組曲』の編曲を聴かせていただきましたが、これらのアレンジでもっとも大変な部分はどこでしょう。
「音の出しかたの違いということでしょうね。チェロは弓を使いますから、音がどちらかというと水平な感じです。それにくらべ、ギターの音は垂直。これはバッハの舞踊的な要素を演奏するのには適していますが、流麗な音を出すことには適していません。
 ですから私は編曲する際、いかにしたら音がスムーズに流れるか、この点に留意しました。バッハというのは、年齢を重ねるごとに見方が変わってくる作曲家です。経験が深くなればなるほど、各曲の特徴と真の魅力が理解でき、その各々の違いに焦点を合わせて集中して演奏できるようになります。演奏というものが一種の哲学となって私の心のなかに存在し、演奏行為が自分の存在を示すものとなっていく。
 もちろんほかの作曲家にもそれはいえますが、こうした感覚をもっとも強く抱かせてくれるのが、ほかならぬバッハなのです」
――そこにいたるまでには、どんな勉強をしていったらいいのでしょうか。
「まず、お金にあまりこだわらないことでしょうね(笑)。もちろんある程度のお金は人生にとって必要ですよ。でも、自分が本当にしたいことができるある程度のお金があれば、それ以上は必要ないというのが私の持論です。
 金銭にこだわり出すと、コンサートをもっと多く入れなくちゃとか、録音しなくちゃとか、スケジュールに振り回されるようになるでしょ。そうすると“考える”という時間が失われてしまう。ギターを弾いていなくても、頭のなかで常に音楽に関したことを考えるということは非常に大切なことなんです。
 私は昔から大きな邸宅やヨットやクルマにはまったく興味がありませんでした。静かにものを考え、庭いじりでもちょっとする。そこからシンプルな人生が生まれます。シンプルな人生を送ることにより、集中力も増してくる。そして日々バッハと対峙するというわけです」

スペイン音楽はスペインの風土を知らなければ弾けません

――スペイン音楽の場合は、また違った意味合いの勉強を要するでしょうね。
「スペイン音楽は、これはもうひとこと。スペインの風土を知らなければ弾けません。楽譜をいくら見ていてもダメ。スペインに行ってそこの文化に触れることです。歴史、伝統、建築、人々の様子など、あらゆることに実際に触れる。あの国がさまざまな異文化の混合によって成り立っているということを肌で感じることです。
 そのなかで人々か何を一番大切に考えているか。それが理解できたら、音楽もより深いところで理解できるかもしれません。スペインの魂を理解することが大切。
 どこの国の音楽にもいえることですが、その国の魂に少しでも近づけたら、音楽も肉付き豊かなものになるのではないでしょうか」

 今日の写真はその記事の一部。写真撮影のときは、ギターをケースから大事そうに出し、実際に弾いてみせてくれた。その響きのなんと人間味豊かだったことか…。



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