Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ニコライ・デミジェンコ
 すみだトリフォニーホールで「ロシア・ピアニズムの継承者たち」というシリーズが行われている。その第3回はニコライ・デミジェンコの登場だ。
 デミジェンコは、ロシア・ピアニズムの特徴である楽器を豊かに大きな音量で鳴らすという奏法からかけ離れた希有なピアニスト。その音色は芳しいほどに美しくやわらかく、弱音の見事さに心が魅了される。
 彼はロシアで勉強している時代、先生たちが大音量で楽器を鳴らすという教授法を押しつけようとするのに反発する特異な存在だったという。
 CDやDVDで演奏に触れると、ロシア・ピアニズムとは、こうした特徴もあるのかと目からウロコ…。
 デミジェンコの奏法は完璧なる脱力ができ、からだのどこにも余分な力が入っていない。手首はしなやか、絶妙のペダルを駆使し、かろやかに歌うように奏でられていく。決して鍵盤をたたかず、すべるように鍵盤の上を指が移動していくのである。しかも、打鍵は深く、音は説得力がある。
 今回の来日では、6月4日(土)にリサイタルを行い、シューマンの「ウィーンの謝肉祭の道化」「謝肉祭」を前半に、後半はリストの「ピアノ・ソナタ ロ短調」「伝説」を演奏。さらに5日(日)にはヴァシリス・クリストプロス指揮新日本フィルとの共演で、ショパンのピアノ協奏曲第1番とラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏する。
 ニコライ・デミジェンコは1955年生まれのウクライナ系ロシア人。モスクワ音楽院でドミトリー・バシキーロフに師事している。1976年のモントリオール国際ピアノ・コンクール、1978年のチャイコフスキー国際コンクールにおいて入賞を果たし、1991年にイギリスにわたり、以後この地をメインとして演奏活動を行い、ユーディ・メニューイン音楽学校で教鞭も執る。
 私は、ロシア・ピアニズムというと以前タチアナ・ニコライエワから聞いた話を思い出す。彼女は、この奏法はモスクワ音楽院の伝統的な教育方法が支えていると考えていた。
「モスクワ音楽院には、大きく分けて4つの流派があります。それら偉大なピアニストたちから各々の教育を受け継いだピアニストたちが、今度は次世代のピアニストたちにそれを手渡していくんです。こうして歴史は作られ、伝統が守られていく。すばらしいことでしょう」
 その4つの流派とは、ゲンリヒ・ネイガウス、アレクサンドル・ゴリデンヴェーイゼル、コンスタンティーン・イグムーノフ、サムイル・フェインベルクである。それぞれ個性も解釈も奏法もまったく異なるが、ピアニストとして、教育者として、歴史に名を残す業績を上げた人ばかりだ。
 デミジェンコの恩師のバシキーロフはゴリデンヴェーイゼルの弟子だったから、デミジェンコはゴリデンヴェーイゼルの孫弟子にあたる。こうしてモスクワ音楽院の歴史、ロシア・ピアニズムの伝統は受け継がれていくわけだ。
 悠久のピアニズムを俯瞰することができる今回のシリーズ、デミジェンコの美しい弱音から、ぜひロシア奏法を探求し、たっぷりとそのすばらしさを堪能したい。
 来日時にはデミジェンコにインタビューをする予定が入っているから、いまから楽しみだ。幅広くいろんなことを聞きたいと思っている。
 テニス・ファンの私は、最初に彼の名を耳にしたときに「えっ、ニコライ・ダビデンコ?」と思ってしまった(笑)。似た名前の人っているものですね。いまはもちろんまちがえませんよ。
 
 
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