Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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リスト ピアノ・ソナタ ロ短調 
 2010年のショパン、シューマンの生誕200年に次いで、今年はリスト生誕200年のメモリアル・イヤーだ。世界中のピアニストがリストの作品を取り上げ、コンサートや録音でもリストが多く登場している。
 なかでも、人気の高いのがピアノ・ソナタ ロ短調。これは小川典子がキャリアの節目には必ず弾き、ついさきごろエレーヌ・グリモーがすばらしい録音を登場させた。ハンガリーの血を引く新進気鋭の金子三勇士もデビューCDで取り上げ、及川浩治も今秋のリスト・リサイタルで演奏する。
さらに今月、グルジア出身のライジングスター、カティア・ブニアティシヴィリが「リスト・アルバム」(ソニー)のなかで、このソナタの内面に迫るすさまじいまでの迫力と集中力、暗い情熱に富んだ演奏を聴かせている。
 ピアニストをとりこにするこのソナタ、リストのさまざまな要素が組み込まれ、表情豊かで、濃密で、聴き手を別世界に運んでいくような単一楽章の作品だ。今回はこのロ短調ソナタをざっと解説してみたい。

 
 フランツ・リスト(1811〜1886)のピアノ作品のひとつの頂点をなすこのソナタは、1851年にシューベルトの「さすらい人幻想曲」をピアノと管弦楽用に編曲した後、この作品に刺激を受けて編み出された。
 1852年から翌年にかけて作曲され、1857年にベルリンで初演されたが、当時のブラームス派とワーグナー派の対立に巻き込まれ、物議を醸し出す結果となった。初演者のハンス・フォン・ビューローと作品を酷評したウィーンの批評家ハンスリックの間で論争が起きたのである。
 しかし、ロシアのピアニスト、アントン・ルビンシュテインはひとつの主題が全体を統一していることを指摘し、ワーグナーは美しく壮大で気高い作品と評している。
 曲は緩徐楽章的な要素を挟み込んだ変則的なソナタ形式による長大な単一楽章で書かれ、第1部の呈示部では荘重で活発な第1主題が登場し、重々しい第2主題へと受け継がれる。
 第2部の展開部では、それらが熱情的な性格を帯び、トリルに導かれたカデンツァが反復され、激しさを増していく。やがて叙情的なレチタティーヴォが奏され、夢見るような新たな主題が登場する。
 第3部の再現部は、通常の再現部とは趣を異とし、第1主題がすべて半音で現れ、フガート風に展開されるなどユニークな特色を持つ。最後は狂乱を忘れたように静かに幕を閉じる。

 リストは超絶技巧ばかりクローズアップされるが、実は非常に表情豊かでヒューマンな感情が作品に投影されている。多くの女性を愛し、波乱万丈の人生を送り、各地を旅してその印象を曲に投影させ、弟子を育て、同時代の音楽家、芸術家をカリスマ性で惹きつけた。
 今年はぜひそんなリストの作品が内包する多面性を堪能し、音楽から豊かな歌心を聴きとりたい。各地の音楽家がリストを積極的に取り上げているから、チャンス到来だ。
 
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