Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ダニエル・ハーディング
 イギリスの若手を代表する指揮者、ダニエル・ハーディング(1975〜)とマーラー・チェンバー・オーケストラが、マーラーとブラームスのプログラムを携えて来日、すばらしく気合いのこもった演奏を披露した。
 ハーディングはパスカル・ドゥヴァイヨンと同様、「前世は日本人だった」と考えているという日本をこよなく愛する人。それゆえ来日を早々と表明し、今回もこの後は新日本フィルを振るなど、かなり長期間にわたり滞在している。
 実は、ハーディングは3月11日に新日本フィルに客演中の東京で東日本大震災を体験、その晩の定期演奏会を予定通り指揮し、すみだトリフォニーホールで一夜を明かしたという。
 一方、マーラー・チェンバー・オーケストラはメンバーの投票により日本公演を行うか否かを決めたが、数人を除きほぼ全員が賛成票を投じ、来日公演が可能となった。
 私は6月8日のブラームスの交響曲第3番、第1番の日を聴いたが、彼らの演奏はこれまで聴いたどの演奏よりもテンションが高く、心がこもったもので、とりわけ管楽器の美しさが際立っていた。
 ハーディングは東日本大震災の支援にも積極的で、休憩時間には義捐金の箱を持ってカフェに現れ、自ら支援を呼びかけた。
 この夜は日本公演の最終日にあたり、終演後にハーディングを囲んでの食事会があり、そこにもお招きいただいた。
 彼と、参加したオーケストラのメンバー数人はとても箸の使いかたがうまく、なんでもオーケストラの本拠地のあるベルリンの和食店に、しょっちゅうランチを食べに行っているそうだ。
 インタビュー・アーカイヴの第11回は、ハーディングの1999年の来日時のインタビュー。12年前になるが、彼は体型も顔の表情も、音楽に対する真摯で自然で情熱的な思いもまったく変わらない。食事会にはヨットパーカーを着てメガネをかけ、携帯を持ってフラリと登場。まだケンブリッジ大学に通っているような、そんなカジュアルな雰囲気をたたえていた。

[フィガロ・ジャポン 1999年1月5日〜1月20日号]

若き指揮者、ダニエル・ハーディングにインタビュー

 今回「ドン・ジョヴァンニ」でタクトを振るのは、クラウディオ・アバドやサイモン・ラトルに才能を見いだされた新鋭ハーディング。11歳のときにアバドの指揮姿を見て指揮者になろうと決心したという、若き逸材だ。
「アバドのエレガントな指揮、流れるような音楽の作りかた、美しい手の動きにすっかりまいってしまったんです。そのころワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』にハマっていたぼくは、レコード店にCDを買いに行ったんだけど、高くて買えなかった。そのときに店員さんが『ドン・ジョヴァンニ』を勧めてくれ、それがカルロ・マリア・ジュリーニの指揮だったんです。
 以後、このオペラにすっかり夢中になった。でも、アバドのアシスタントになれるなんて考えもしなかったし、『ドン・ジョヴァンニ』が振れるとも思わなかった。本当にラッキーです」
 ハーディングはアバドやラトルから、作品の細部まで追求する姿勢を学んだ。それはピーター・ブルックとの共同作業のなかでも生かされている。
「今回オーケストラも歌手もみんな35歳以下なんです。もちろんぼくも(笑)。みんな経験は浅いけど熱意はある。そこにブルックの経験がプラスされ、若さと経験との融合がなされています」
 ブルックとハーディングは長い時間をかけてこまかな点まで検討し、完璧な美を求めて作品を練り上げたという。
「既存の『ドン・ジョヴァンニ』ではなく、新しいオペラを作り出そうと思っています。舞台も歌手の動きもシンプルでモダンですが、音楽は伝統的な手法でいきたい。
 伝統を踏まえた上で近代的な面をプラスする。ドン・ジョヴァンニも自分たちに近い、人間的で感情豊かな人物としてとらえたいんです」
 流れるような美しい音楽で聴衆を酔わせたいと語るハーディング。もっとも敬愛する作曲家はブルックナーだそうで、神のような偉大な存在を感じさせる音楽、ピュアな魂を感じさせる音楽に目がないという。そのなかに潜む静けさを的確に表現できる指揮者になるのが夢だと。
 そう話すハーディングはまるで子どものような純な目をする。
「『ドン・ジョヴァンニ』も、天上の美しさを持つ旋律が多い。それを静かにじっくりと奏でられたら最高ですね」
 飾らずおごらず自然体の彼に期待!

 今日の写真はそのときの雑誌の一部。1995年にラトルに代わってパリ・シャトレ座のコンサートを指揮。「すべてはこのコンサートから始まった」と語った。



| インタビュー・アーカイヴ | 17:27 | - | -
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