Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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シルヴィア・マクネアー
 雨模様のうっとうしい気分の日が続くと、私はいつもあるCDを聴いて心を開放させる。シルヴィア・マクネアーの「マクネアー・シングズ・ジェローム・カーン・ウィズ・プレヴィン」と「ドリーミング・アメリカ/マクネアー・ウィズ・プレヴィン」(フィリップス)だ。
 でも、これらは昼間の明るい時間帯に聴くものではなく、どちらかというと夜向きの音楽。照明をちょっと落としてウィスキーなどをチビチビやりながら聴くと、もう極楽。天気の悪さなどどこかに飛んでいってしまう。
 ただし、決して多人数でワイワイいいながら聴く音楽ではない。しっとりとことば少なに音楽に酔いしれる。これが最高!
 マクネアーの歌は実に堂に入っていて、こちらが本職かしらと思ってしまうほどのジャジーなノリ。こういうのを聴いていると、なんだかどんどんこっち方面の歌を聴きたくなり、ヘレン・メリルなんかも引っ張り出してしまう。
 ここで注目したいのが、アンドレ・プレヴィンのピアノ。こののびやかさ、実に楽しそうにピアノと戯れている感じの音楽を聴いていると、なんかふっきれた感じがする。
 彼は一時期クラシック1本にしぼり、私は指揮者だと無理やり自分を鋳型にはめていたけれど、この録音のころに「またジャズもやり始めたんだよ」とインタビューで語っていた。ひと皮むけて本当に好きな音楽を楽しんで弾いている、そんな表情が音から見えるようだ。
 今回のインタビュー・アーカイヴ第12回は、そんなシルヴィア・マクネアーの登場。最近は来日の機会がないが、ぜひあの歌声をナマで聴きたい。

[アサヒグラフ 1996年12月6日号]

「私はプレヴィンのすべてを吸収しようと努力したつもり」

 アメリカ出身のソプラノ、シルヴィア・マクネアーは、オペラ、歌曲などのクラシックのレパートリーにとどまらずジャズ、ポップスなど幅広い歌を手がけている。
 それも単なる余技ではなく、アンドレ・プレヴィンのピアノと共演したジェローム・カーンやハロルド・アーレンのソングブックの録音は、絶賛を博した。
「私はアメリカ育ちだから、ジャズもポップスもミュージカルもからだのなかに入り込んでいるの。好きな歌手もエラ・フィッツジェラルドとサラ・ボーンなのよ。
 プレヴィンとの共演もすごく楽しくて、曲に対する違和感はまったくなかったわね。プレヴィンはすばらしいピアニスト。私はスポンジのように彼のすべてを吸収しようと努力したつもり」
 マクネアーがプロのオペラ歌手としてデビューしたのは15年前。以後、バロック時代から現代までさまざまな作品を歌い、いまや世界中の指揮者から引っ張りだこの売れっ子歌手となった。
 年に10カ月は各地を飛び回り、指揮者でピアニストでもあるご主人ハル・フランスとはほとんど離ればなれだと嘆く。
「1998年には、日本で彼の伴奏で歌曲を歌う予定が入っているからそれが楽しみ。歌手の生活というのは一見派手に見えるけど、本当に大変。山もあれば谷もある。のどの調子が悪かったり、時差で体調を崩しているときでもきちんと歌わなくてはならない。
 うまく歌えなくて、深い谷に落ちてしまったときは人にいえないほど落ち込んで、ひとりで滅入るの」
 マクネアーの歌声は明るく自然な高音が特徴で、リズム感のよさが武器。ただし、それを万全に保つのには日々のたゆまぬ努力がものをいう。
 いまはオペラでもいろんな役を歌い、さまざまな曲に挑戦しているが、あるとき先輩格のジェシー・ノーマンにいわれたことばが頭から離れない。
「オペラ歌手は5つの役が歌えればいい。その役が本当にうまく歌えるのなら、決して欲張ることはないっていわれたの。もちろん、私は心に響く音楽なら何でも歌いたいと考えているけど、いずれ好きなヘンデルやドビュッシー、マーラーなどをじっくり歌っていきたいと思っている」
 マクネアーは3歳から母親についてピアノを始め、7歳でヴァイオリンを学んだ。父親が教会の合唱団の指揮をしていた関係上、子どものころから教会でもよく歌っていた。高校生のころはロック歌手を夢見る少女でもあった。
 オペラに目覚めたのは、インディアナ大学時代。いくつかのオペラの主役を歌い、すっかりオペラのとりことなってしまった。
「昔はいまより声のコントロールも役づくりも未熟だった。人間の成長に合わせて声に深みが出てくるのは当然のこと。今後はもっと人間的に掘り下げた内容のある役を歌っていきたい。それが夢でもあるから」

 今日の写真はそのときの雑誌の一部。彼女はご主人のことを口にするとき、とても幸せそうな表情をした。「一緒に過ごす時間が本当に少ないの。でも、ニューヨーク郊外にある緑あふれる自然のなかにある家で過ごすときは、ほんの短い時間でもすごく有意義なのよ」といってにっこりほほ笑んだ。うーん、たっぷりあてつけられた感じでしたね(笑)。

| インタビュー・アーカイヴ | 23:18 | - | -
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