Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ジュゼッペ・シノーポリ
 1997年夏、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団の本拠地、ゼンパーオーパーの指揮者室で、ジュゼッペ・シノーポリと向かい合った。
 ここは歴代の著名な指揮者たちの写真がずらりと額に入れて飾られている部屋。それらをバックに、シノーポリは「私がどんなにこの地位を栄誉あるものだと感じているか、おわかりでしょう」といった。
「インタビュー・アーカイヴ」の第16回は、そのシノーポリ(1946〜2001)の登場。話を聞いてからまもない2001年、まだまだこれから大きな仕事を成し遂げるという矢先、シノーポリはオペラを振っている最中に急逝した。訃報を聞いたときはことばを失い、いつまでも信じられなかった。本当に残念でたまらない。

[アサヒグラフ 1997年12月5日号]


「弦も管もすべてが美しい響きを持ってこそ、
アンサンブルが完全な調和を生み出すのです」
 


 イタリア出身の指揮者ジュゼッペ・シノーポリが、ドイツの古都ドレスデンにある名門オーケストラ、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団の首席指揮者に就任したのは、1992年のことだった。それからはや5年、このオーケストラは往年の輝かしい響きを取り戻したと評判だ。
「このオーケストラは来年、創立450年を迎えます。長い歴史を持っているでしょう。昔はさまざまな作曲家が自作を振ったり、初演を行ったりして指揮台に立ったんですよ。ウェーバーもワーグナーも、また、R.シュトラウスも、みんなこのオーケストラで振ったものです」
 シノーポリはその時代の音をよみがえらせたいと願って、このオーケストラのシェフを引き受けた。彼が初めて彼らと共演したのは1987年。録音のためにドレスデンを訪れ、ブルックナーの交響曲を振った。
「確か、第7番だったと思います。その後、同じくブルックナーの第4番も指揮しました。当時はまだ社会主義の統治にあった時代で、オーケストラは録音を除いては、あまりいろんな指揮者のもとで演奏することはありませんでした。
 でも、私はすぐに昔の響きが伝統的に受け継がれていることに気づきました。特に弦楽器の、とてもかろやかで美しい音色におどろかされました」
 シノーポリは当時ロンドンのフィルハーモニア管弦楽団の音楽監督の地位にあった。それでも、このオーケストラからの誘いにはすぐに応じた。それほど魅力的な音だった。
「私はドレスデン歌劇場管弦楽団の録音は昔から聴いていたんです。歴代の重要な録音をね。そこからは弦楽器がどのように弓を動かしているか、どのくらいの長さに弾くかなど、こまかい部分も聴きとれました。
 この弦の響きはウィーン・フィルやベルリン・フィルとはまったく違うものです。これはこのオーケストラが独特の弓の技術を代々伝えてきたからにほかなりません」 
 シノーポリはそれを維持しつつ、さらに踏み込んで昔の音をより鮮明によみがえらせたいと考えた。ウェーバーやシュトラウス時代の音を。ワーグナーが管楽器の美しさを称して「金の鉄砲」といった、その管楽器の音色も取り戻したかった。
「私は完全な調和を目指しています。弦も管もすべてが美しい響きを持ってこそ、アンサンブルが完全な調和を生み出すのです。ワーグナーは人を威圧するのではなく、軽く、しかも人を引き付けるフォルティシモが出せるこのオーケストラをとても気に入っていました。非常に調和のとれたフォルティシモだったわけです」 
 来年1月の来日公演では、こうしたドレスデンゆかりの作曲家の作品がプログラムに組まれている。
 ドレスデンは美しいエルベ川のほとりに位置する静かな町。第2次世界大戦で廃墟と化したものの、現在は宮殿も教会も劇場も、すべてが元の姿に復元され、町は中世のたたずまいを見せている。
 このオーケストラは町の象徴でもあるオペラハウス、ゼンパーオーパーを本拠地としている。ここはゴットフリート・ゼンパーが設計したイタリア・ルネサンス様式の劇場。ゼンパーがこだわり続けた形式、色調、絵画、彫刻なども現在、見事に再現されている。
「ドレスデンの人々はこまかいところまでこだわり、すべて原形のままに復元された。それがここの人々の気質なんです。ですから私も音楽にこだわりたい。日本ではドレスデンならではの美しい響きをお聴かせします。伝統の音を聴いて、心のなかでドレスデンへ旅してください」
 シノーポリはイタリア人だからイタリア・オペラが得意と思われがちだが、昔から目はドイツ、オーストリア方面に向けられていたという。
「私は10歳のときに《ドン・ジョヴァンニ》の舞台を見て、指揮者になることを決意したんです。モーツァルトのオペラが5つ振れれば、もう思い残すことはない。
 モーツァルトの語法を表現するのは非常に難しい。作品には大きな緊張感と強い光とデモーニッシュ、そして劇場性とシンメトリーの感覚が宿っています。しかし、よく見るとシンメトリックでない場面も存在する。それらは指揮をするときの基本ともなります」
 シノーポリの音楽は作曲家ならではの知的な分析力と楽譜の深い読みが特徴。彼はオーケストラから歌心を引き出す名人。調和のとれたアンサンブルと豊かな歌心に期待したい。

 このときはすぐそばにマイセンがあると知り、仕事仲間3人でオフの時間にタクシーを飛ばし、マイセン焼きを買いに行った。私は子どものころからモスグリーンが大好き。美しいグリーンで絵付けされたティーカップを見つけ、すぐさま購入。いまでは大切なお客さまがあると、このカップにお取り寄せのおいしい紅茶を入れてお出しする。これまでみんなが大感激してくれ、必ず「おかわりっ」という。
 今日の写真はそのマイセンのティーカップ。これを見るといつもシノーポリの一生懸命インタビューに答えてくれた顔が浮かんでくる。
 もう1枚はそのときの雑誌の一部。偉大なマエストロたちの写真の前でシノーポリが誇らしげにポーズをとってくれた。



| インタビュー・アーカイヴ | 23:25 | - | -
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