Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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木村大
 ギタリストの木村大とは、デビュー当時からライナーノーツを書いたりインタビュー記事を書くなど、おつきあいが長い。
 いつも真夏になると、彼の1枚のCDを無性に聴きたくなる。2005年3月にロサンゼルス郊外の高級住宅地パサデナにある「ファイアハウス」と名付けられたスタジオで録音された、「カリフォルニアの風〜アンドリュー・ヨーク作品集〜」(ソニー)というアルバムである。
 このときは現地に録音取材に出向き、3日間ずっと木村大とアンドリュー・ヨークのふたりのギター、ベースのラリー・スティーン、パーカッションのティム・ティマーマンズの演奏を聴き続けた。
 彼らの音楽は真っ青な空にスコーンと抜けていくような爽快さと、鍛え抜かれたテクニック、演奏を心から楽しみながら奏でている心意気が伝わってくるものだったが、集中力がすごく、本番中はスタジオ全体に緊迫感がみなぎっていた。
 ここで興味深かったのが、木村大の音楽を始めるときの掛け声。「よしっ、行こう!」と必ずいってからスタートするのだが、それが「よしこっ」と聞えるため、モニタールームにいたディレクターが私のほうを見てにやり。毎回、「ほらっ、また呼ばれたよ」と笑う。
 このアルバムにはアンドリュー・ヨークのさまざまな側面を映し出す曲が含まれ、アンディを尊敬する木村大は彼との共演でいやが上にも緊張感が増し、うれしさよりも「いい演奏をしなくちゃ」との思いのほうが大きかったようだ。
 すべての録音終了後、彼は本当に安堵した様子で、「デビュー当時からずっと曲を提供してくれたアンディに、何か恩返しをしたかった。今回は、いまの自分が素直に出せたと思う」と振り返った。
 この録音の合間に、アンディの彼女の家におじゃますることができた。クルマで30分ほど走ると、あたりはうっそうとした森のなかに入り、別荘地のような雰囲気の場所に着く。その1軒が彼女の家で、裏側が渓谷のようなところに面している。
 そこにベランダが張り出していて、おしゃれな机といすが置いてあり、実にすばらしい雰囲気。ここでおいしいお茶をいただいた。
「ねえ、Yoshiko、こっちに来て」と声をかけられてベッドルームに入ると、大きなキングサイズのベッドがデンと置かれていた。そこにはアンディと彼女の写真がたくさん飾られている。
「今回レコーディングした曲のいくつかは、彼がこの部屋で仕上げたものなのよ」
 えっ、そんな…。そこまでいうか(笑)。まあ、愛し合っているということをいいたいのだから、いいけどね。こっちがちょっと照れてしまう。
 アンディは、その後この彼女と結婚した。めでたしめでたし。
 私が特に何度も聴いているのが「アルバイシンの丘」。アンディの最新作で、大のために書かれた。フリギア旋法的な部分があり、スペイン好きの私の心をとらえてやまない。
 もうあれから6年目の夏を迎える。だが、あのときにレコーディングで聴いた彼らのまさに「カリフォルニアの風」を思わせる演奏は、いまだ耳の奥に確かな存在感をもっていすわり続けている。
 木村大とは、その後も話をする機会が多いが、いつも本音で語るナイスガイ。そして演奏は全力投球型。もっともっと大きくはばたいてほしい。カリフォルニアの真っ青な空に飛翔していくように。
 今日の写真はそのジャケット写真。ここでひとつとっておきの話。この撮影のとき、日曜日でデパートが休みだったため、彼らは撮影用の洋服が買えず、大変な苦労をした。そんなエピソードもいまはなつかしい(?)

| 親しき友との語らい | 17:45 | - | -
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