Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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レイ・チェン
 幕別町の「チロット音楽祭」に出かけたのはたった4日間だが、その前はほとんど半徹夜状態で締切りをこなし、戻ってからも原稿に追われる日々が続いている。
 こういうときに限ってすばらしい試合が行われていて、夜中に起き出しては応援している。サッカーの女子ワールドカップの「なでしこジャパン」の活躍である。
 私は昔から沢穂希のファン。彼女は努力型で、ガッツと責任感がある。沢にボールが渡ると、何かしてくれるのではないかと期待が高まる。
 いよいよ決勝戦まで来た。このチームは結束が固く、しかもおもしろくて創造力に満ちたサッカーをし、夢と希望を与えてくれる。
 女子サッカーはあまりイエローカードが出ないし、フェアプレイが多い。からだの大きなドイツ人やスウェーデン人に真っ向勝負を挑む姿は、ほれぼれしてしまう。決勝も声を嗄らして応援するからね!!
 さて、今日は最近私がその才能に惚れている若きヴァイオリニスト、レイ・チェンの話題。1989年台湾生まれの彼は、2009年のエリザベート王妃国際音楽コンクールで優勝の栄冠に輝き、一躍その名が世界に知られるところとなった。
 その前年にはユーディ・メニューイン国際コンクールで優勝を果たしているが、そこからカーティス音楽院に戻ったところ、仲のいい友人が「メニューインはそんなに大きなコンクールではないから、もっと大きなエリザベートを一緒に受けに行こうぜ」と誘われたそうだ。レイ・チェンはようやく優勝を果たして戻ったばかりだったため、またすぐに翌年の準備をするのは大変だと考えたが、友人が熱心に誘うため、準備にとりかかることにした。
 ところが、翌年いよいよ参加するための書類を提出する時期になり、友人が「ぼく、やめたよ」とあっさり宣言。
「ものすごくショックを受けた。だって、エリザベートを受けるために日に9時間も練習して準備していたのに、最初にいい出した友だちがやめたんだもの。自分は室内楽のほうに道を変えたといって。本当はぼくもやめようかと思ったけど、せっかく身も心も削って(笑)必死に練習したんだから、やはり受けようと思って参加することにしたんだ」
 母親は食事を作ったり、さまざまなサポートをしてくれたが、「メニューインの優勝者なんだから、せめて第2次予選までは進んでね」といいながら送り出してくれたという。
 その心配をよそに、彼は見事に優勝を勝ち取った。以後、国際舞台で幅広く活躍するようになった。メニューイン・コンクールのときに審査員を務めていたマキシム・ヴェンゲーロフに認められ、彼が指揮をしている各地のオーケストラのソリストとして招かれ、ときにはともにヴァイオリンを弾くという。
「マキシムはようやく肩が治りつつあり、ぼくと2台のヴァイオリンのための作品などで共演してくれる。いつもガンガン弾きながら教えてくれるし、ぼくにとっては大切なメンターともいうべき存在。特にJ.S.バッハの作品に関することを教えてもらっている」
 レイ・チェンのデビューCD「ヴィルトゥオーゾ」(ソニー)はそんな彼のあらゆる魅力が凝縮したディスク。このインタビューはもうすぐ発売される「婦人公論」に掲載される予定。
 演奏は集中力に富み、野太く情熱的な音が印象的だが、素顔は明るく率直で自然体。来日中に覚えた「ジョーダンです!!」という日本語を連発し、みんなを笑わせて喜んでいる。
 もう次なるアルバムが決まっていて、メンデルスゾーンとチャイコフスキーという2大コンチェルトを録音するそうだ。
「こんなに有名な作品を録音するのって、結構怖くない? みんなが知っている曲だから」
 といったら、急に「アーッ」と叫んで両手で顔を覆った。
「なんでそういうこと、早くいってくれないの。もう決まっちゃったんだよ。そうか、やっぱり怖いよなあ。ああ、どうしよう。この録音、リリースしないほうがいいかも」
 そういってディレクターを見ながら、本当に困惑顔をしていたが、「まっ、仕方ないよね。やるっきゃないから」と素早い立ち直り。
 レイ・チェンは日本のペットボトルのウーロン茶が気に入り、大きなボトルを何本も飲み干し、何度も席を立った。
「またちょっと席はずすよ、ごめんね。飲みすぎちゃって…」
 そして戻るやいなや、またがぶ飲み。憎めない人です(笑)。天才的な音と表現力の持ち主なのに、なんとおかしいことか。
 今日の写真は「演奏がすばらしいんだから、それ相応のシリアスな表情してみて」といったところ、このポーズで決まった。ちょっと気どりすぎかも…。



 
| ああ愉しき(?)、締切り地獄 | 22:22 | - | -
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