Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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クリストファー・ホグウッド
 インタビュー・アーカイヴの第18回は1941年イギリスのノッティンガム生まれの指揮者、クリストファー・ホグウッド。彼は指揮者としてだけでなく、古楽に関する著作も多数あり、音楽学者としても知られる。
 1973年にエンシェント室内管弦楽団を設立、その生き生きとした躍動感あふれる演奏には定評がある。
 インタビューでは音楽について真摯に雄弁に語っていた彼だったが、インタビューが終了した途端、「また、会おうねえ」と両手を高々と上げてにこやかに去って行った。その姿がなんともユーモラスで、印象に残っている。

[レコパル 1991年11月25日〜12月8日 No.25]

モーツァルトが聴いていた音が蘇る! 新発見満載のオペラ

 今年はモーツァルト没後200年を記念し、数多くのディスクがリリースされているが、ここにまたモーツァルトのオペラの代表作「後宮からの逃走」(ユニバーサル)の新録音が登場した。
 しかし、この「後宮」、ちょっと従来の演奏と趣が異なっている。なにしろ指揮は、いまや古楽演奏の大家となった学究肌のホグウッドである。聴く前から「これは何か新しい発見があるな」と胸躍らせたのは事実。そして、やはりありました、大発見が。
 ホグウッドは第1幕の兵士の合唱の前にいままでなかった行進曲を持ってきているのです。これはまったく新しい試み。彼は今回新モーツァルト全集の楽譜をもとに録音しているが、最近発見されたこの行進曲は新鮮な響きをもたらすばかりではなく、ストーリーの展開上、合唱が突然出てくるよりもこのほうがごく自然な感じを受ける。セリム・パシャをたたえる合唱がスッと耳に入ってくるのである。今回はまずこの新解釈に対する質問からインタビューに入った。
「『後宮』はもともと小さな劇場用に書かれた作品です。ですからこの行進曲もいままではふつうの録音には必要とされず、長い間取り上げられずに阻害されていました。この行進曲が記されている楽譜は新モーツァルト全集だけなのです」
 彼はこの楽譜に1978年に初めて出合った。もちろん楽譜の研究は充分なされていたが、これを初めてオリジナルの形で録音するのは自分が最初になるだろうとこのときに思ったそうだ。

随所に新しい試みが見られ、新鮮な感覚が全体を覆う

 エンシェント室内管弦楽団の演奏はオリジナル楽器によるため、モーツァルト時代の響きそのものが味わえる。それはかろやかではつらつとしたリズムを刻む序曲からはっきりと楽器の違いを感じ取ることができ、特に各打楽器の連打が小気味よい。
 トルコ風の異国情緒に満ちた旋律がシンバルやトライアングル、大太鼓のアクセントに乗ってぐんぐん進んでいくさまは、これだけでもうオペラ全体の楽しさを予感させるのに充分だ。
「後宮」は、トルコの太守に捕えられたスペインの高貴な家の娘コンスタンツェを故郷の恋人ベルモンテが救い出すという話。ここに従僕のペドリッロと小間使いのブロントヒェン、そして太守邸の番人のオスミンらがからむ。
 最後は懐の大きな太守の計らいで、ハッピーエンドとなる。
 ここでは歌手陣も若手が起用され、みずみずしい歌声を披露している。特に主役のコンスタンツェ役のイギリス出身のリン・ドーソンと、ベルモンテ役のドイツのウヴェ・ハイルマンは、ホグウッドが絶賛しているだけあって声のみならずこまかい表現力が秀逸である。
 ホグウッドは常に新しい有能な歌手を探すことに努めているという。
 もう一箇所、従来と違っているのは、第3幕18番の「ロマンス」。ここでホグウッドは、ふつうはC管が使われているのだがG管ピッコロを使っている。さらに全体の通奏低音にはチェンバロだけではなく、フォルテピアノを使用。
「みんなモーツァルトが書いたとおりにやっているだけ。別に私の考えでも何でもない、偉いのは作曲家なんだよ」
 と、ホグウッドはあくまでも謙虚な姿勢を崩さないが、これによってモーツァルト時代の音に、さらに一歩近づいている。
 最近ハイドンの交響曲全集の録音に取り組んだり、ヘンデルのオペラに意欲を燃やしたりとエネルギッシュな活動が目立つが、素顔の彼は「自分のしたいことをしているだけ」とあっさり。
「あまり世界中がモーツァルト、モーツァルトって騒ぐんでちょっと危険だと思い、音楽的バランスを取るためにも私はハイドンに目を向けているんだけどね」
 ホグウッドはこのように次々と新しい音楽をわれわれの耳に届けてくれる。
 つい最近のヘンデルのオペラ「オルランド」も世界初録音だったが、今度はヘンデルの「エツィオ」にも挑戦したいとのこと。今回の来日でもなかなか演奏されないモーツァルトのオペラ・セリア(正歌劇)「皇帝ティートの慈悲」全曲を演奏会形式でじっくりと聴かせてくれた。
 実は、ホグウッドは大変なオーディオ好きということが今回の取材で判明。家ではB&Wのスピーカーを使っているのだが、先日訪れた友人宅のポーズのスピーカーに魅せられてしまった。
「ボーズはサイズが気に入ったんです。すごくコンパクトでしょ。パワーのある低音もすばらしいし。もちろんB&Wのクオリティーは、デッカが録音に使っているくらいですから保証尽きですけど、なにしろ場所を取られてしまうので…」
 彼はボーズで「室内楽を聴いたら、きっと最高だ」と力説していた。

 今日の写真はそのときの雑誌の一部。偉大なマエストロなのに撮影のときも結構ジョークを飛ばしていた。

| インタビュー・アーカイヴ | 22:09 | - | -
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