Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ミハイル・ヴォスクレセンスキー
 ウクライナ出身のピアニスト、ミハイル・ヴォスクレセンスキーは、モスクワ音楽院でショパン・コンクール第1回の優勝者、レフ・オボーリンに師事した。
 彼はオボーリンのレッスンをいまでも鮮明に記憶しているという。
「彼はこまかいことをいう先生ではありませんでした。音楽家としての方向性を示してくれるという教えで、それが私の性格に非常に合ったのです」
 こういうレッスンは合わない生徒もいたようで、もっと基本的なことを習いたい人には向かなかったようだ。ただし、ヴォスクレセンスキーのような、すでに基礎を充分に習得している生徒にはとても有益で、いまや自身がモスクワ音楽院で教える立場になったときにも、その教えは生かされているという。
 オボーリンはショパンを得意としたことで知られるが、実はベートーヴェンのピアノ・ソナタも大切なレパートリーとし、全曲演奏をしたいと願っていた。だが、病気に倒れ、それがかなわなかった。
「ですから、私は恩師の代わりにぜひベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏を成し遂げたかったのです」
 ヴォスクレセンスキーは勉強を重ね、のちにこの偉業を達成し、高い評価を得た。彼はこのほかにも、スクリャービンのソナタ全曲演奏、ショパンの全作品演奏も成し遂げている。全曲を演奏することにより、その作曲家の全体像が俯瞰でき、作曲家の魂に近づけるのだそうだ。
 このインタビューは今月発売の「ムジカノーヴァ」で掲載される予定だ。
 ヴォスクレセンスキーは、とても誠実で温かい人柄。1995年から始まったスクリャービン・コンクールの審査委員長をずっと務めているが、つい先ごろチャイコフスキー・コンクールのピアノ部門の審査員も務めた。
「コンクールは参加者も大変ですが、審査員もまた大変です。新たな才能を見出すのは大いなる喜びですが、一度落ちたからといって、自暴自棄になる必要はありません。私のモットーは、『人の心から発生した音楽は、人の心に届く』。あせらず、じっくりと、人の心に届く音楽を奏でられるように自分を磨いていけばいいのです」
 このインタビューのときは風邪気味だそうで、「声が聞き取りにくいでしょう」とこちらを気遣ってくれたが、それでも一生懸命話をしてくれた。こういう先生に師事したピアニストは幸せだ。彼のレッスンはモスクワ音楽院でも桐朋学園でも根強い人気を誇るが、教えるだけでなく、積極的にステージにも立っている。
 12月7日には東京文化会館小ホールで、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番、第31番、第32番というプログラムでリサイタルを行う。インタビューでは、ベートーヴェンについて多くを語ってくれた。それを実際の音楽として聴くことができる。まだ先のことだが、リサイタルが待ち遠しい。
 今日の写真はインタビュー時のもの。「どれ、どんなふうに写っているのかな」と写真を何度も見て、チェックした。
「おでこが光りすぎていないかい?」
「顔色、悪いかなあ」
「ちょっと疲れているように見えない?」
 どんなことにも手を抜かない、熱心な姿勢がそこでも感じられた。

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