Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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小澤征爾
 小澤征爾には何度も取材やインタビューを行っているが、いつもとんでもなく短い時間で、心臓バクバク、頭に血がのぼり、パニックに陥る。
 サイトウ・キネン・オーケストラの取材で松本に行ったときも、ヘネシー・オペラ・シリーズを行っていたときも、東京オペラシティオープニング・コンサートでバッハの「マタイ受難曲」を演奏したときも、それぞれ取材は大変だったが、もっとも短い時間だったのは、2008年に「東京のオペラの森」でチャイコフスキーの「エフゲニー・オネーギン」を振ることになっていたとき。
 このときは雑誌がカラーページを8ページも用意していたが、インタビューができたのはオザワがリハーサルの合間に楽屋に戻る階段と廊下の間だけ。汗びっしょりの彼は足早に楽屋に向かうのだが、それをカメラマンと一緒に追いかける形となった。
「オザワさん、少しでもいいですから時間をとってください。今回のオペラに関して話していただかないと…」
「うんうん、わかってるよ。いまちょっと時間がなくてさあ」
「でも、またリハが始まってしまうと、いつお話を聞くことができるかわかりませんので」
「あんた、ぼくのことわかってるじゃない、まかせるよ。なんでも好きに書いてくれていいよ」
「そんなマエストロ、私はいままでチャイコフスキーに関して聞いたことはないんですけど」
「ああ、そうだっけ。チャイコフスキーねえ。ぼくは昔からロシア作品が大好きで、チャイコフスキーは自分の心に近いと感じる。作品の内奥に迫ることが自然にできるから」
「『エフゲニー・オネーギン』に関しては?」
「このオペラは美しい旋律が多くて、心に響くと思う。オペラは難しいとか、長すぎるなどと思わず、一度足を運んでほしいって書いといてくれる。じゃあね」
 ああ、マエストロ、もう部屋に入っちゃった。
 これでどうやって8ページ書くのか。ムムム。頭を抱えていると、隣にいたカメラマンはもっと真っ青になっていた。
「伊熊さん、こんな場所で2分くらいじゃ、まったく写真撮れませんよ。もう一度出てきたら、しっかりつかまえてください。壁のところでアップを撮らないと」
 そんなこといわれたって、ああ、編集のかたはどこに行ったんだろう。きっと私たちがマエストロとすさまじい追いかけっこをしているうちに、はぐれてしまったのかなあ。
 そんなこんなで、また待つこと延々。でも、似たような時間しかとれず、それらをコラージュのようにつなぎあわせて記事を作り込んだ。
 小澤征爾はとても早口である。そして、私も時間がないとどんどん加速し、マエストロに負けず劣らず早口になる。周囲の人には「まるでケンカをしているみたいだ」といわれる。オザワは私の質問が終わらないうちに話し出し、私は彼の語尾を待たずに質問を浴びせかける。
 こういう修羅場を繰り返していると、のんびり話してはいられない。でも、一度でいいから、椅子にゆっくりすわってインタビューをしてみたい。以前はそういうことも可能だったが、最近はまったく無理。
 いまはサイトウ・キネン・フェスティバルの真っ最中。マエストロの体調はどうなのだろうか。秒読みのスケジュールの合間に、大好きなおそばを食べに行く時間があるといいのだが…。
 今日の写真は、いろんな雑誌に掲載されたインタビュー記事の一部。ひとつひとつ頭を悩ませながら書いたことが思い出される。


 
| 終わりよければ…取材奮闘記 | 17:24 | - | -
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