Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ニコライ・デミジェンコ
 5月27日のブログでも紹介したが、6月にロシアのピアニスト、ニコライ・デミジェンコのコンサートを聴き、インタビューを行った。
 録音で聴いたときに感じていた以上に、ライヴでは非常に美しい弱音が際立ち、ディミヌエンドの表現も息をのむようなニュアンスに富んでいた。
 特にショパンのピアノ協奏曲第1番では、ショパンが愛したプレイエルの楽器をほうふつとさせるような繊細かつ気品あふれる響きをピアノから引き出し、オーケストラとの対話も自己を決して強く主張するわけではないのに、確実にデミジェンコがリードしていく絶妙のテクニックを披露した。
 インタビューでは、やはりこの弱音の美しさが話題となったが、彼は開口一番こういった。
「みんなロシア・ピアニズムというと、大きな音量でガンガン力任せにピアノを弾くと考えているようだけど、本当の奏法はまるで違うんですよ。もちろん、楽器を歌わせることは必要ですが、必ずしも大きな音は必要ない。私はロシア・ピアニズムのルーツはジョン・フィールドからきていると思います。フィールドはロシアで30年間も演奏し、教えていたのですから」
 それからは自身の考えを滔々と述べ、ロシア・ピアニズムをまちがってとらえてほしくないと力説した。このインタビューは「ムジカノーヴァ」の今月発売号に掲載される予定である。
 デミジェンコはとても真面目な人だった。ひとつの質問に対し、ゆっくり考え、じっくりとことばを選びながら、本当に相手が理解しているだろうかとこちらの表情をのぞきこみながら話を進める。
 たとえ話や比喩なども多く挟み込まれ、その内容はすこぶる濃密で、「よくわかりました」とひとつひとつ納得してしまうような説得力の強さを備えていた。
 こういうピアニストに教えを受けたら、さぞ内容の充実した演奏が身につくだろうなと思ったら、生徒は持っていないそうだ。教えることは責任を伴うし、膨大な時間を要する。ほんのちょっとだけの時間で教えられるわけがない、とこれまた真摯な答えが返ってきた。
 でも、本当に心の底から学びたいと切望している生徒がいたら、いつでも教える準備はできていると語った。
 デミジェンコのピアノを聴くと、これまで聴いてきたその作品が異なる光を浴びたように鮮やかに輝き、あたかも新しい作品のように思える。彼は1970年代に、ロシアのさまざまな名手の実演に触れ、それがひとつひとつ強烈な印象としていまなお心に残っているという。それらが自身の糧となり、自分が演奏するときに道を照らしてくれるのだそうだ。
 またすぐにでも来日してほしいピアニストである。こんなにもインパクトの強い演奏をする人はそうそういないのだから。
 今日の写真はインタビュー時のもの。「笑って」といっても、ニコリともしなかった。一瞬たじろいだけど、またそれが彼らしくていいかも(笑)。

| アーティスト・クローズアップ | 22:53 | - | -
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