Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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マーク・パドモア
 現代最高のエヴァンゲリスト(福音史家)のひとりといわれるロンドン生まれのテノール、マーク・パドモアは、ピリオド楽器の大家や偉大な指揮者との共演でバッハをはじめとするバロック作品を数多く歌っている。
 そんな彼が、近年シューベルトの3大歌曲集を各地で歌い、ポール・ルイスのピアノとの共演によるシューベルトの「冬の旅」の録音は、高い評価を得た。
 今夜はトッパンホールにそのパドモアの「冬の旅」を聴きに行った。
 パドモアのシューベルトは、歌うというよりも語りかける唱法。透明感に満ちた特有の高音は繊細で気高く、曲によってテンポを速めにとり、快活で生命力あふれる響きを生み出す。
 その解釈はこれまで聴いたどの「冬の旅」とも異なる個性的なもので、主人公である青年の深い孤独と疎外感と虚無感と絶望などが、節度ある歌いかたと端正な表現のなかで静かながら劇的なドラマとして綴られていく。
 彼はテキストに深く入り込むことで知られているが、まさに「冬の旅」の内奥に迫るべく、あるときは詩を朗読するように静謐に、またあるときは歌詞の内容を挑みかかるような表情で表現し、聴き手の心を揺さぶった。
 以前、ポール・ルイスにインタビューしたとき、「マークは楽譜の読みがとても深く、洞察力に富むシューベルトを生み出す。一緒に演奏していると、シューベルトの異なった面が見えてくるんだ」と語っていたが、まさに今夜は新たな「冬の旅」に出合った感じがした。
 今日の共演者はティル・フェルナー。彼らは来日直前の11月28日に、パリのサル・ガヴォーで「冬の旅」を演奏してきたばかり。抑制した響き、歌にピタリと寄り添うルイスとはまた異なる奏法のピアノだったが、フェルナーもパドモアのお気に入りのピアニスト。2008年に同ホールで「冬の旅」を演奏したときはイモージェン・クーパーだったが、3人のピアニストがみなブレンデルの弟子というのも興味深い。ブレンデルといえば、シューベルト。パドモアの共演者の選びかたは一貫しているようだ。
| アーティスト・クローズアップ | 22:00 | - | -
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