Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ウィーン・フィル ニューイヤー・コンサート
 毎年、1月1日の午前11時にウィーンのムジークフェラインで開幕となるウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートは、新たな年の始まりとして華やかな雰囲気をたたえている。
 最初にこのコンサートを聴きに行ったのは、1984年のロリン・マゼールが指揮したとき。当時はマゼールが毎年指揮台に立ち、現在のように代わる代わる著名な指揮者が登場するスタイルではなかった。
 それから何年か後に、マゼールにインタビューをしたとき、このときのことをつい話したのがいけなかった。彼は当時ウィーン・フィルとはあまりいい関係ではなく、その後このコンサートから離れる結果となった。
 私は幸い前から3列目の非常にいい席だったため、アンコールでマゼールがヴァイオリンを弾きながら指揮したときに写真を撮った。通常は演奏中にこうしたことは許されないが、ニューイヤー・コンサートはお祭り気分の雰囲気がただよい、まわりの人たちがみなアンコールになったらシャッターを切っていたため、私もついまねして1枚だけ撮ったのである(もちろん、演奏終了後の一瞬)。
 その話をマゼールにすると、「きみ、ぜひその写真がほしいんだけど」といい出した。当時はまだデジカメではなく、フィルムの時代。私は家に戻ってあちこち探しまくったが、このフィルムはなぜか見つからなかった。
 もうすっかり忘れていたころ、またマゼールのインタビューがあった。
 彼は私の顔を見るなり、「ああきみ、よかった会えて。あの写真もってきてくれたかね」といわれ、私は彼のあまりの記憶力のよさにことばを失った。
「すみません、探したんですけど、見つからなくて…」というと、インタビューの最中ずっとこのことばかりいわれた。
「私はね、あのときの気持ちをずっと忘れたことはないんだよ。とても複雑な気分で指揮したコンサートだったんだ。もちろんプロが撮ったオフィシャルな写真はいくらでもあるよ。でも、私はきみが客席から撮ったというたった1枚のリアリティのある写真がほしいんだよ」
もう、冷や汗タラタラである。以後、私はマゼールのインタビューに行くことはできなくなった。依然として写真は見つからないからだ。
 そして1987年、再びニューイヤー・コンサートに出かけた。このときの指揮者はヘルベルト・フォン・カラヤン。当時、私は仕事でとてつもないストレスにさらされ、体調も悪く、何か自分を解放することをしない限り、気が変になりそうだった。そんなとき、カラヤンが指揮することを知り、急きょチケットを申し込み、ウィーンに飛んだ。
 そのときの様子をいま発売中の「モーストリー・クラシック」に書いている。今月発売号の特集は「ワルツ王シュトラウス」。雑誌を見ているだけで、ウィーンの空気が伝わってくるようだ。
 カラヤンはただ一度の指揮となってしまったが、このコンサートは私の生涯の宝物として心の奥に深い記憶となって残っている。
 マゼールも、もう写真のことは忘れてくれただろうか。あれから長い年月がたったから、そろそろ会っても大丈夫かしら(笑)。
 今日の写真は「モーストリー・クラシック」2012年2月号のカラヤンのページ。たった1ページの記事だが、私の思い出が詰まった1ページである。

| 終わりよければ…取材奮闘記 | 21:45 | - | -
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