Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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グスタフ・レオンハルト
 チェンバリストとして指揮者、教育者として国際舞台で活躍したグスタフ・レオンハルトが1月16日に亡くなった。享年83。
 生前何度かインタビューし、演奏を聴き続け、あるときはベルギーで開催された「フランドル・フェスティヴァル」まで足を運んだが、常に凛としたすばらしい演奏を聴かせてくれ、話も真摯で一徹な感じだった。
 インタビュー・アーカイヴの第31回はそのレオンハルト。来週と再来週アップのヤマハWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」でも以前のインタビュー記事を紹介するつもり。
 今日は別の雑誌の記事を取り上げたいと思う。

[FM fan 1996年6月3日〜6月16日号]

バッハはもっとも自分の心に近い作曲家。バッハを弾いていると作品のおもしろさ、深さにどんどん魅せられていく

 チェンバロ、オルガン、指揮と幅広く活動を続けているレオンハルトが来日し、チェンバロとオルガンのリサイタルを開いた。いずれも会場は超満員。静かな熱気に包まれた充実した演奏会となった。
 レオンハルトは余分なものを持つことを好まない。楽譜と着替えを入れた小さなバックひとつで来日し、お土産も必要とせず、常に身軽。その生きかたが演奏にも反映し、音楽は余分な物がそぎ落とされたシンプルな美しさ。
 演奏者自身もぜい肉のまったくないスリムないでたちで、楽器と相まって彫刻のようなフォルムを形成していた。

バッハの音楽は非常に多彩。演奏する側の気持ちを常に刺激します

――プログラムはバッハからフレスコヴァルディ、フローベルガーなど多岐にわたっていますが、何かテーマを決めているんですか。
「いいえ、私はプログラムにテーマのようなものを持たせたことはありません。ただし、2度続けて同じ曲を弾くことを好まないので、前の演奏会とは異なった形のものを組むだけです。チェンバロの場合は好きな曲を組んでいけばいいのですが、オルガンとなるとその場所、楽器が大きく影響してきますから、まず楽器を考えてから組み立てます」
――やはりバッハが一番の中心で…。
「そうです。私はチェンバロに目覚めたのがバッハだったんです。もうかなり昔のことになりますが、ピアノを弾いていたころバッハに出会い、バッハばかり弾いていました。でも、何か違うなと感じていた。そのころチェンバロの音色を聴き、これでバッハを演奏したら、自分が思い描いているような音が出るのではないかと直感しました。もちろんそれはモダン・チェンバロでしたが、私はすっかり魅せられてしまいました。それ以後、バーゼルで本格的に勉強したわけです」
――それから歴史チェンバロに出合ったわけですね。
「ええ、やがていろんな楽器にめぐり合うようになりました。でも、いつもバッハばかり弾いていました(笑)。もちろんほかの作曲家の作品も勉強しましたが、バッハはもっとも自分の心に近く、バッハを弾いていると作品のおもしろさ、深さにどんどん魅せられていってしまうのです。いまでもこの気持ちは変わりません。和声的な展開、フレーズの微妙なつなげかた、多彩なリズム、曲の構成など凡庸なものはひとつとしてありません。バッハはギャラント・スタイルを先取りしていたような、次の時代を見ていた面もあります。また一方、パレストリーナのような前の時代の様式を取り入れた部分もあります。音楽が非常に多彩で、とてもコンパクトにまとまっているかと思うと、次に長いフレーズが出てくる。演奏する側の気持ちを常に刺激します」
――指揮もバッハが多いですよね。バッハの映画「アンナ・マグダレーナ・バッハの日記」にも主演されましたし。
「一時は指揮ばかりしていると自分が実際に弾きませんから、なんだかなまけものになったような気がして辛かったんですが、いまは作品を勉強して演奏会までもっていく過程は同じだと考えています。指揮をしたことで学んだことも多いですし…。実は、あの映画はスタッフがチェンバロとオルガンの両方が弾ける人を探していたため、私に決まったんです。当時は、この両方を弾く人がごく限られていましたから選ばれただけで、選択の幅は狭かったというわけです。でも、尊敬する偉大なバッハを演じられて、とても光栄でした。またまた、バッハが好きになりました」

自分の好きな作曲家の作品を好きな楽器で演奏できる、こんな幸せはありません

――もうすでに多くのレパートリーを演奏し、また録音もしていらっしゃるわけですが、今後何か新しいことに挑戦するということは?
「いいえ、いまは新しいことに挑戦することはまったく考えていません。いままで行ってきたことを深めていき、少しずつ新しい方向が見つけられればと思っています。私はいま本当に自分の好きな時代の、好きな作曲家の、好きな作品を、好きな楽器で演奏できる。こんな幸せなことはありません。理想的な人生だと思って感謝しています。このスタイルがずっと続くことを祈っています」

 レオンハルトは17世紀から18世紀にかけて作られた「ハウス・バルトロッティ」と名付けられたオランダ最盛期の跡を残した大きな家に住み、古い家具や彫刻や美術品に囲まれて暮らしていると話していた。
 その家に関して話す彼の様子を見ているだけで、その時代に運ばれていくような感覚にとらわれた。レオンハルトの演奏、たたずまい、すべてがバッハの時代へといざなう。もう会えない、あの演奏を聴くことができないと思うと、たまらなく寂しい…。
 今日の写真はそのときの雑誌の一部。素敵な雰囲気をたたえているでしょう。

| インタビュー・アーカイヴ | 23:38 | - | -
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