Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ネマニャ・ラドゥロヴィチ
 セルビア出身の若きヴァイオリニスト、ネマニャ・ラドゥロヴィチの演奏を初めて聴いたのは、5年前にフランスのナントで開催された「ラ・フォル・ジュルネ」音楽祭に取材に行ったときだった。
 1985年生まれの彼は14歳で家族とともにフランスに移り、翌年パリ国立高等音楽院に入学。この時期にメニューインやアッカルドの薫陶を受けている。
 彼は長髪をなびかせながら、からだをぐっと反らし、躍動感あふれる劇的な演奏を行う。まるでパガニーニのようだといわれ、タルティーニの「悪魔のトリル」を収録したアルバムはふだんクラシックを聴かない若者たちの心をもとらえた。
「僕のモットーは自由な演奏。感情の赴くままに、豊かな歌心をもって弦を鳴らしたい。それは3人の先生が教えてくれたことなんだよ」
 こう語るラドゥロヴィチは、7歳のときに絶対音感があることを先生に指摘され、ヴァイオリンを始めた。
 3人の先生とは、生地で師事したオイストラフの弟子であるデヤン・ミハイロヴィチ、その後、戦争で祖国を離れざるを得なくなり、ザールブリュッケンで短期間就いたヨシュア・エプシュタイン、パリで学んだパトリス・フォンタナローザ。それぞれの先生が音楽する心と演奏する喜びを教えてくれたという。
 そんな彼には何度かインタビューをしているが、もっとも印象に残っているのは、東京の「ラ・フォル・ジュルネ」に参加したときに話を聞いたとき。このときは髪型を非常に気にしていて、髪に手を置きながらからだをくねらせ、こんなことをいった。
「ねえ、ホテルのドライヤーがすごく強くて髪がうまくいかないんだけど、どこかやわらかい風が出るドライヤー売っているところ知らない?」
 ヘアスタイルを何度も気にして、インタビューどころではない。実は、そのときの様子を私が形態模写しながら仕事仲間の男性に話したところ、「えーっ、すっごく似ている。ネマニャそのもの。うますぎるー」といい、のけぞって笑い出した。
「ねえねえ、ネマニャを知っている人みんなにその真似、見せてあげてよ」といいながら、「伊熊さん、職業まちがえたんじゃない」などといって、しばらくおなかを抱えて涙を流さんばかりに笑っていた。
 そんなわけで、私はネマニャに会うたびにそのときのことを思い出してしまう。そんな彼にまたまた会った。
 セルビアとフランスの音楽仲間15人を集めて3年前に結成したアンサンブル、ドゥーブル・サンスとの共演で、ついにヴィヴァルディの「四季」を録音したのである(キングインターナショナル)。彼は弾き振りを行っている。
 この「四季」のなんと推進力に満ちていることか。冒頭から疾走し、ドラマチックで視覚的。いままで聴いたどの「四季」とも異なる味わい。
 彼はインタビューで各々の季節に関しての聴きどころをことばを尽くして話してくれた。これは次号の「intoxicate」に掲載される予定である。
 エキサイティングで、聴き手をぐいぐい音楽のなかに引き込んでいく演奏をするのに、ふだんはとてもやさしい目をしたおだやかな笑顔が印象的。このコントラスト、悪魔的な演奏と天使のような笑顔。髪振り乱してロック歌手のような格好で演奏するのに、ステージを降りると「髪が気になって…」とブツブツ。あまりのギャップについ笑ってしまう。
 ネマニャという名前は11世紀の王族の名に由来しているそうだが、「僕の名前、日本人は発音しにくいでしょう。ごめんね」などと心優しき面を見せる。
 うーん、またまた携帯模写しちゃいそう(笑)。 新譜には日本を主題としたセルビア人作曲家アレクサンダル・セドラルの「日本の春・2011」がカップリング。これは東日本大震災への追悼として坂本九の「上を向いて歩こう」をモチーフに書かれた新作。ここでもおだやかさと恐怖の対比に耳が奪われる。 
 今日の写真はインタビュー時のもの。ねっ、不思議な魅力を放っているでしょう。


 
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