Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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北川曉子
 初期の教育の大切さを説くピアニストで教育者でもある北川曉子は、「ムジカノーヴァ」(今月発売号)のインタビューで非常に有意義な話をしてくれた。
 彼女は日本でL.コハンスキー教授に、ウィーンでR.ハウザー教授に師事している。その先生たちの教えが、東京芸術大学音楽学部教授として生徒を教える立場になったときにとても役立ったと述懐する。
「ピアノを教えるとき、曲の構造やどういう和声を用いているか、どういう形式で書かれているかということは教えられます。でも、どんなふうに弾いたらいいか、どんな気分で演奏すべきかということは教えるべきではないと思います。それは生徒ひとりひとりが自分で考えることだからです」
 よく、この曲はこういう景色が浮かんでくるようにとか、こんな気分になって弾くようにという教えがあるが、北川曉子は教師はそれをすべきではないと断言する。
 彼女は「日本人はリズムと和声に弱い」といわれることを考慮し、自身も学生時代に作曲家に就いて和声の勉強を徹底して行った。そして現在は、生徒たちにその大切さを説く。
 話を聞いていると、とてもきびしいレッスンが行われるように感じられるが、実質的で理論的で愛情深いレッスンはとても人気があり、生徒たちはみな楽しいと感じ、笑顔でレッスンにやってくるそうだ。
 そんな彼女は、これまでもベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏を2度行っているが、2011年12月から2012年6月にかけて(全7夜)、第3回目の全曲演奏会に取り組んでいる。
 3月16日(津田ホール 19時開演)の第4夜は、東京芸術大学音楽学部退任記念コンサートと銘打ち、長年の教授生活を退任する記念のリサイタルとなっている。
 プログラムはピアノ・ソナタ第10番、第22番、第29番「ハンマークラヴィーア」。
「ベートーヴェンのピアノ・ソナタはずっと身近にある存在。弾くたびに新たな発見があり、昔は偉大さばかりに目が向いていたけど、いまは人間ベートーヴェンの奥に潜むものに近づきたいと思っています。世界各地で研究が進むんでいるため、楽譜の読みかたも変わってきました。それを表現したい」
 北川曉子は好奇心旺盛でエネルギッシュで、豊かな探求心と前向きな精神の持ち主である。
 3月には教授職から離れるため、自由な時間ができる。「時間ができたら何をしたいですか」と聞くと、こんな答えが戻ってきた。
「以前少し弾いていたヴァイオリンをまたやりたいと思っているの。それから語学もまたいろいろ勉強したい。私は本の虫で、本がないとダメなタイプ。時間ができたら、読みたい本はたくさんあるのよ」
 こういう知的好奇心があふれんばかりの人と接すると、そのオーラに自然に包まれ、私もいろんなことに挑戦したくなる。生徒たちが笑顔でレッスン室に現れるのがわかるような気がした。
 今日の写真はインタビュー時のワンショット。そうそう、彼女が最後に語ったことばも印象的だった。
「人間は現状に満足してしまったら、それでおしまい。演奏もどうしたら聴いてくれる人に伝わるのだろうか、と常に疑問を感じ、否定形で物を考えないと。自己満足の演奏はだれも聴いてくれないから」



 
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