Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ナージャ・サレルノ・ソネンバーグ、セルジオ&オダイル・アサド
 息の合った演奏家同士の共演は、実力がより強く発揮され、音楽の楽しさが倍増する。
 イタリア出身のヴァイオリニスト、ナージャ・サレルノ・ソネンバーグと、ブラジルのギター・デュオ、セルジオとオダイルのアサド兄弟の場合も、才能と才能がぶつかりあい、とてつもないパワーを生み、聴き手をとりこにした。
「インタビュー・アーカイヴ」の第33回はその3人。音楽も濃厚で情熱的ではげしいものだけど、彼らの顔も「すごく濃い(笑)」。3人そろうと、なかなか壮観。こちらも体温が5度くらい上昇する感じだった。

[FM fan 2000年7月10日〜7月23日号]

「曲想がガンガン湧いてきたよ」(セルジオ)
「兄貴は演奏での難しい面は全部オレにおっかぶせる。ひどいもんだよ」(オダイル)
「即興なんて、目が点になっちゃうわよ」(ナージャ) 


 ナージャ・サレルノ・ソネンバーグといえば、ヴァイオリンの濃厚な響きと個性的な容貌、枠にとらわれない奔放な性格で有名だ。ギターのアサド兄弟も濃さでは負けていない。見事なひげは濃い顔の作りをいっそう際立たせ、演奏も深い思考と超絶技巧、内に秘められた情熱などを特徴とし、しかもそれらがごく自然な形で表現される。
 この3人がトリオを組んで録音したのが「GYPSY」(ワーナー)。セルジオ・アサドが各地のロマ(ジプシー)音楽を自分のフィルターを通してスリリングな曲に仕上げたもので、すさまじい超絶技巧が随所に盛り込まれている。
「兄貴はいつもそうなんだ。自分は作曲にエネルギーを費やすから、演奏での難しい面は全部オレにおっかぶせる。ひどいもんさ。これだってとてつもなく難しい奏法が出てきて、ホント録音中は頭が火事になりそうだったよ」
 弟のオダイルはふだん寡黙だが、曲の難しさに触れると、途端に火を吹く。これに呼応するのがナージャだ。
「あら、私の譜面もものすごく難しいわよ。こんなの弾けるわけないじゃない、っていうところがいくつもあったもの。私はクラシックのヴァイオリニストなのよ。即興なんて、目が点になっちゃうわよ。オダイルが火山爆発なら、私は嵐の状態だったわね」
 とにかく録音はすさまじい雰囲気で行われた。だが、セルジオは彼らならできると判断し、難曲を課した。
「オダイルがブーブーいうのは、いつものことさ。ぼくはナージャに初めて会ったとき、その音楽にほれ込んだんだ。すごいエネルギーとパッションがある。曲想がガンガン湧いてきたよ」

演奏も性格も嵐のよう


 アサド兄弟がニューヨークのナージャの部屋を訪れたのは、音合わせのとき。彼らはナージャの部屋に飾ってある鮫のはく製に度肝が抜かれた。
「ふたりはね、私が以前捕獲した鮫が部屋にドーンと置いてあるのを見て恐怖を感じたらしいの。なんていう恐ろしい女だろうって思ったみたい。これは共演するのは大変だってね」
 ナージャはこういって大笑いする。
「そりゃそうだよ。なんて危険な女性だろうって思った。捕って食われるかもって(笑)。でも、音楽的にはピッタリ合ったんだ。不思議だよねえ」
 アサド兄弟は口をそろえる。しかし、ナージャは最初、ふたりのなかに入っていくのに大変な苦労を要した。
「だって、相手は常にふたり一緒に演奏している。すべて理解しつくしているわけでしょ。私はやっていることも違うし、兄弟でもない。共演が決まったときはすごくナーバスになっちゃって、長い間悩んだの。それで初対面のときはカチカチ。でも、その後飲みにいったらすっかり意気投合しちゃって、いまでは妹みたいなもんよ」
 5月には東京・台場にオープンしたライブ&レストラン、トリビュート・トゥ・ザ・ラブ・ジェネレーションで彼らのライブが行われ、このCDから何曲か披露した。
 その演奏は熱くはげしく深く、ナージャはほとんど暗譜。終始ふたりのギターに雄弁に語りかけ、オダイルはひたすらギターを情感豊かに歌わせ、セルジオが全体をコントロールしていた。彼らはヴァイオリンと2本のギターという斬新な組み合わせを存分に楽しませてくれた。
「私にとって、一番難しかったのはすべてが新しいということ。共演者、作品、そして演奏する場も。最初は1音ずつ音を読んでいかなくてはならなかったから大変だったけど、こういう曲を演奏した後にいつものクラシックのレパートリーに戻ると、何かが違っていることに気づいたの。リズムやフレーズのひとつひとつに新しい感覚で立ち向かえる。弾き慣れた曲に異なる角度からの解釈が加わるわけ。これは発見ね。ふたりに感謝しているわ」
 ナージャがこういうと、アサド兄弟はわざと深々とおじぎをする。
「それはどうも。ぼくたちは彼女からエネルギーをもらったよ。こっちが疲れていると、途端にゲキが飛んでくる。演奏も性格も嵐のようにすごい妹さ」

 今日の写真はその雑誌の一部。このインタビューは時間を過ぎてもみんなの話がいっこうに終わらず、お祭りのようだった。あまりにテンションが高かったため、私は1週間くらい、思い出すとクラクラとめまいがする感覚にとらわれた。いやはや、ものすごく熱い3人でした。

| インタビュー・アーカイヴ | 23:23 | - | -
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