Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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舘野泉
 今日は、来月発売の「ムジカノーヴァ」の対談で、ピアニストの舘野泉のご自宅に伺った。
 これはピアニストがさまざまなジャンルの人から対談をしたい相手を自由に選び、いろんな話をふたりでするという企画。
 先日、編集部から舘野さんが私を指名してくださったと聞き、本当に驚いた。そしてとても光栄に感じた。
 舘野さんとは、私が「ショパン」にいた時代から長年にわたっておつきあいがあるが、実はインタビューの回数はそんなに多くない。だが、いつもお会いするたびに話がはずみ、心温まるひとときを過ごすことができ、演奏と同様のおだやかさと深遠さと思考を促す面に触発されている。
 久しぶりにお会いした今日も、2時間の対談予定を大幅に超え、3時間にわたっていろんな話題に話が飛び、心が癒されたり、高揚したり、人生を考えさせられたり…。
 舘野さんは2002年に脳出血で右半身不随となったが、2年後に「左手のピアニスト」として奇跡の復活を遂げた。以後、既存の左手のための作品のみならず、日本人の作曲家への委嘱作品を含め、さまざまな作品を演奏。
「いまは左手で演奏するとか両手で演奏するということはあまり考えません。音楽を演奏しているわけですから」
 こう語る表情は、昔のように平穏で自然で嬉々としている。そんな彼が「舘野泉フェスティヴァル――左手の音楽祭2012-2013」を今年5月18日から来年11月10日まで全16回行う。これは3年前から計画し、ようやく実現にこぎつけたそうだ。
 現在は、家族の住むフィンランドに1年の半分ほど、日本で半分ほど過ごすというが、実は世界各地を演奏旅行で飛びまわっているため、一か所でゆっくりはできないようだ。
 舘野さんの元には右手を故障したり不自由になった人が大勢駆け付け、指導してくださいと頼まれるそうだ。しかし、彼は「教えることは苦手でねえ」とゆったりとした笑みを見せる。ただ、左手用の作品の紹介や、新たな作品を生み出すことには大きな意義を見出し、同じ境遇にある人たちの力になれればと語る。
 舘野さんはひとりでいることが大好きだそうだ。長時間の飛行機や電車の移動も気にならず、その時間はひとりになれるから幸せなのだという。
 私とはまったく逆だ。私は乗り物があまり得意ではなく、その時間がとても辛く感じる。ひとりでいるよりも、だれかと一緒にいるほうがいい。
 いつも感じることだが、舘野さんと私は話のテンポもまったく異なる。彼はゆったりとひとことずつ考えながらリラックスした表情でおだやかに話を進めていく。声もそんなに大きくなく、静けさが宿っている。そこに私は2倍、3倍の速さで切り込み、声は大きく、パッパカパッパカ話を進めいく。舘野さんはそんな私を優しい笑顔で見つめながら、「うん、うん、そうねえ」という感じであくまでもマイペース。私は「ハイ、ハイ、それで」と追い打ちをかけていく。
 今日もこのリズムと速さの違いにふたりで大笑いしてしまった。
 いよいよ5月から「左手の世界シリーズVol.1 新たな旅へ…ふたたび」が始まる。聴き手もこの新たな旅を通じ、新たな発見があるに違いない。
 今日の写真は帰りにご自宅の玄関先で写した1枚。これだけで、ふんわりと温かい空気が伝わってくるでしょう。私はいまでもなんだか胸の奥があったかい。今日は風がすごく冷たかったのに、帰り道でも心はポッカポカだった。舘野さん、ありがとう!! 演奏会、楽しみにしています。

| 親しき友との語らい | 23:44 | - | -
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