Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

ブログ

<< ドビュッシー 音楽と美術 印象派と象徴派のあいだで | main | 東儀秀樹 >>
小川典子
 小川典子に会うと、いつも元気な様子にこちらも刺激され、励まされる思いがする。ところが、彼女の長年の音楽仲間であり、敬愛しているというピアニスト、キャサリン・ストットは、その上をいくエネルギッシュな人だそうだ。
「伊熊さんは私のことを元気だといってくれるけど、私はキャサリンと会っているときはほとんど聞き役。彼女は姉御肌で、ものすごくタフ。演奏もすばらしいけど、面倒見がよくてエネルギーのかたまりのような人。今回の音楽祭でも、初日に一緒に2台ピアノの曲を演奏したんだけど、あなたの音楽祭だから一生懸命弾いてあげるわよといってくれ、聴き惚れてしまうくらいの演奏をしてくれたの」
 この音楽祭とは、小川典子が企画者で、BBCフィルが共催となっている「REFLECTION ON DEBUSSY〜ドビュッシーの反映〜」音楽祭のこと。英国・マンチェスターのブリッジ・ウォーターホールで1月20日から6月9日まで全8プログラムが組まれている。
 実は、この音楽祭が立ち上がるまでの苦労話がとても興味深かった。インタビュー記事は次号の「音楽の友」に掲載される予定だが、そこには書ききれずに削ってしまった内容がある。
 小川典子はドビュッシーを長年演奏し続け、生誕150年の今年は何か企画したいと思っていたそうだが、3年ほど前からマンチェスターのブリッジ・ウォーターホールのプログラム・マネージャーと話をし、そこにBBCフィルが加わり、大きなプロジェクトが完成する運びとなった。
 だが、彼女は資金面の調達まで担い、これが非常に大変だったという。
「最初はこんな大きな音楽祭になるとは思いもせず、しかも私がメインとなり、すべてを中心となって決めなくてはならなくなるとは考えもしなかったの。でも、それから予算の問題が出てきて、結局スポンサー探しに奔走したわけ。ひとりであちこち走り回り、音楽祭の意義を語り、いかにすばらしいかを説得して回った。私、スーツを着て、姿勢を正して、凛とした表情でいろんな企業に乗り込んでいったのよ。貧しそうに、恥ずかしそうに、お金がありませんという顔は絶対できないじゃない。そのうちに少しずつ反応が現れ、英国の日本好きのイギリス人がみんな賛同してくれたわけ。彼らは横のつながりがあり、次第にスポンサーが増えていったの。この部分が一番大変だったわね。プログラムを決めたり共演者を決めるのは、逆に楽しかったし、すぐに決まったけど」
 すでにマンチェスターでは1月の初日を終え、4月にはドビュッシーや武満徹の作品などを演奏する公演が3回組まれている。
 そんな彼女は、昨年10年間におよぶ長期プロジェクトの「ドビュッシー:ピアノ曲全集」(BIS キングインターナショナル)を完結し、6枚組のCDをリリースした。ここには彼女のドビュッシーに対する愛情と、作品に対する深い洞察力、ひたすら磨いてきたテクニック、積み重ねてきた表現力などすべてが詰まっている。
 小川典子のドビュッシーを聴くと、私は1987年のリーズ国際コンクールから現在までの歩みに思いを馳せ、深い感慨に浸る。どんな困難にもくじけることなく、いまや英国のピアノ界に確かな足跡を刻み、なくてはならない存在だと思われている彼女。なんとすばらしいことか。
 そんなすぐれた地位を確保しているのに、いつも謙虚で自然体で昔とちっとも変わらない。演奏のみならず、この人間性にも私はほれ込んでいる。
 今日の写真はインタビュー時の彼女。私の着ていった洋服をすごくほめてくれたけど、彼女の洋服もステキだ。


  
 
| 親しき友との語らい | 22:09 | - | -
CALENDAR
S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< March 2017 >>
CATEGORIES
ARCHIVES
LINKS
PROFILE