Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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マーティン・ヘルムヘン、ヴェロニカ・エーベルレ、石坂団十郎
 今日はトッパンホールで行われたマーティン・ヘルムヘン(ピアノ)、ヴェロニカ・エーベルレ(ヴァイオリン)、石坂団十郎(チェロ)のトリオの演奏会を聴きに行った。
 ヘルムヘンは初来日のときからずっと聴き続けているピアニストで、柔軟性を備えた音の美しさと情感豊かな表現に魅了されている。
 彼は2001年のクララ・ハスキル国際コンクールの優勝者。このコンクールの歴代の優勝者は大音響とは無縁で、しかもテクニック優先ではなく、作品の内奥にひたすら迫っていくタイプが多い。そして叙情的な演奏を得意とし、音が美しく、派手なパフォーマンスを苦手とし、滋味豊かな音楽を聴かせる。クリストフ・エッシェンバッハ、リチャード・グード、ミシェル・ダルベルト、ティル・フェルナー、河村尚子ら、みなある種の共通点がある。
 ヘルムヘンの今夜の演奏も、まさにしなやかでかろやかでリリカルなピアニズムが前面に現れたものだった。プログラムはハイドンのピアノ三重奏曲ハ長調Hob.XV-27からスタート。これはピアノが主体となった作品。ヘルムヘンは健康的で明朗なハイドンを聴かせ、エーベルレは若々しい熱気をみなぎらせ、石坂団十郎はどっしりと構えて通奏低音の役割に徹した。
 続くブラームスのピアノ三重奏曲第3番は、若きブラームスのみずみずしい息吹が感じられる作品。3人は終始エネルギッシュに、ブラームスならではの寂寥感をスパイス的に用いながら、ドラマティックに旋律を歌わせていく。
 そして後半は、シューベルトの40分余りの長大なピアノ三重奏曲第1番。最晩年に書かれた大作で、4楽章構成。各々の楽器に多種多様な表現を課し、技巧的にも難しく、精神性の高い音楽となっている。
 しかし、こうした作品こそ、このドイツ出身の若きトリオの実力の見せどころである。彼らは長い作品を一瞬たりとも弛緩せず、緊迫感あふれる演奏を行い、しかもシューベルトの歌心を存分に表現した。
 よく、ピアニストに話を聞くと、室内楽を演奏するのは本当に楽しいという。ピアニストはふだんひとりで演奏することが多く、ツアーでもひとり。孤独な職業だといわれる。それが音楽的にも人間的にも合う仲間を得て室内楽を演奏すると、一気に精神が解放されるのだそうだ。
 今日も、弦楽器ふたりはもちろんのこと、ヘルムヘンがいつものピアノ・リサイタルのときとは別人のように心が高揚している感じだった。演奏も躍動感ある明快な響きが印象的で、いかに彼がアンサンブルを楽しんでいるかが伝わってきた。
 私も室内楽をこよなく愛す。若き実力派のトリオは、あたかも桜が美しい花を精一杯咲かせて見上げる人に幸せを与えてくれるのと同様、春の宵をロマン豊かな演奏で美しく彩り、聴き手の心をほんのりした温かさで包み込んだ。
 今日の写真はコンサートのチラシ。次はこのホールでぜひベートーヴェンを聴きたい。

| クラシックを愛す | 23:38 | - | -
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