Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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インゴルフ・ヴンダー
 若い才能が一気に空に駆け上がっていく様子はこれまで何度も目にしてきたが、2010年のショパン国際ピアノ・コンクール第2位に輝いたウィーン出身のインゴルフ・ヴンダーもそんなひとり。
 今日は紀尾井ホールで行われた彼の初リサイタルを聴きにいった。
 前半はモーツァルトのピアノ・ソナタ第13番、リストの超絶技巧練習曲より「夕べの調べ」、「死のチャルダーシュ」という、いまヴンダーがもっとも弾きたい作品が組まれ、後半はショパンのピアノ・ソナタ第3番と「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」という代名詞的な作品が並んだ。
 ショパン・コンクールからはや1年半が経過。ガラ・コンサートで来日したころはまだ多忙ぶりに「自分を見失いそうだ」と語っていたが、今日の演奏を聴く限り、すっかり落ち着きを取り戻したようで、本来のヴンダーらしい安定したピアニズムが印象に残った。
 彼はコンクール時からずっと燕尾服を着用。現在では若手ピアニストはコンチェルトでも結構ラフな服装を好む。だが、ヴンダーは演奏も往年の名手を思わせるような古典的な奏法で、伝統にのっとったピアノを奏でる。
 こういう人は燕尾服がピッタリ。いまの若手ピアニストで、こんなにも燕尾服を自然な形で着こなせる人はいないのではないだろうか。若いころからずっと燕尾服を着ているピアニストといえば、ポリーニとツィメルマンだ。インゴルフ、演奏も彼らに続けー!!
 この公演評は次号の「公明新聞」に書くことになっている。
 ウィーン出身者らしく、モーツァルトはとても華麗で躍動感に満ち、リズムがからだの奥に入り込んでいる感じだった。そしてリストは超絶技巧を得意とするヴンダーの独壇場。しかも終始、情感豊かに旋律を響かせた。
 ショパンになると、もうこれらは着慣れた上着を身につけたような自然体の演奏。コンクール時よりも数段成熟し、ヴィルトゥオーソ的でもあり、ピアノ好きをうならせるほどの創造性に富んでいた。
 そしてアンコールがまた実に創意工夫に満ちたものだった。まず、ホロヴィッツの「風変りな踊り」、次いでスクリャービンの「エチュード 作品8-12」、最後にモシュコフスキーの「火花」。いずれも自身の心の歌をうたうように、また、ディナーのあとのデザートを聴衆にプレゼントするように、本人が楽しみながら演奏。胸が幸せ色でいっぱいになった。
 終演後、私の大好きな友人のKさんに会った。彼女は「あなたはまだ若いからそうは思わないでしょうけど、私はこういう演奏を聴くと、ああ、生きていてよかったと思うのよ」と感動的なことばを聞かせてくれた。
 明日は、「音楽の友」のためのヴンダーのインタビューが行われる。インタビューが終わったら、Kさんのことばをヴンダーにぜひ伝えたい。どんな顔をするだろうか…。
| クラシックを愛す | 23:12 | - | -
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