Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ルドルフ・ブッフビンダー
 2010年4月、東京オペラシティコンサートホールでルドルフ・ブッフビンダーの「オール・ベートーヴェン・プログラム」を聴いたときの感動は、いまだ胸の奥に熱いマグマのように燃えたぎっている。
 このときはピアノ・ソナタ第8番「悲愴」とほぼ同時期に書かれた愛らしい曲想をもつピアノ・ソナタ第10番からスタート。次いで第23番「熱情」、最後に第29番「ハンマークラヴィーア」が演奏された。
 いずれも精神性が高く、作曲家の魂に近づく一途な演奏だったが、ウィーン人らしい踊りと歌の要素が随所に顔をのぞかせ、堅苦しさや真面目一方の演奏とは一線を画した人間性あふれるピアニズムだった。
 そのブッフビンダーが、2010年から2011年にかけてドレスデンのゼンパーオーパーで行ったベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会のライヴ・レコーディングから、特に日本の音楽ファンのために選んだ4曲がリリースされた。「悲愴」「月光」「熱情」「告別」である。
 ここに聴くブッフビンダーの演奏は、2年前にリサイタルで聴いたときと同様の深い洞察力に富み、真摯で誠実で作曲家への敬愛の念を感じさせる。
 彼は今年6月、再び来日し、すみだトリフォニーホールで演奏する。6月16日はリサイタルで、ベートーヴェンの「悲愴」「熱情」、シューマンの「交響的練習曲」を。6月19日は協奏曲で、アルミンク指揮新日本フィルとの共演でブラームスのピアノ協奏曲第1番、第2番を演奏する予定。
 ブッフビンダーはこれまで日本では知名度が高いとはいいがたく、ヨーロッパの評価に後れを取っていたが、ようやくその真価が認められるようになった。
 彼は派手なことはいっさいせず、自分が表に出る演奏は決してしない。あくまでも作曲家の意図に寄り添う。前回の来日公演では、「ハンマークラヴィーア」の途中で弦が切れるアクシデントに見舞われた。だが、調整後、何事もなかったかのように、自然で美しい伽藍を思わせるような演奏を聴かせた。
 あの心に染み入るピアノをまた聴くことができると思うと、早く6月にならないかなあと思ってしまう。本当はもう5月が終わってしまうと思うと「なんと月日のたつのは早いことか」と焦る気持ちになるが、ブッフビンダーの演奏が目の前に迫っていることはうれしい限りだ。
 今日の写真は新譜の「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ名曲集」(ソニー)。これから各誌のCD評を書く時期だが、これは絶対に欠かせないな。
 それにしてもユニークなジャケット写真だ。よくテニスの選手が試合に勝った後にテレビの前のガラスにサインをすることがあるが、それと同じ。よく見ると、ピアノから音符が湧き出てくるような絵なんだよね。彼はアマチュア画家であると自負しているそうだが、このジャケット、それをリアルに表現している。こういうのって、ぜひ本物の絵を見たくなるよねえ(笑)。



  
 
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