Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ルドルフ・ブッフビンダー 
 今日は、すみだトリフォニーホールにルドルフ・ブッフビンダーのインタビューに行った。
 これまでブッフビンダーについて書かれた記事を読むと、通常の作品論や録音について、自身の演奏についてはあまり語らないタイプだということがわかった。
 だが、演奏と同様、非常に誠実で思ったことは率直に話す性格だとそれらの記事は伝えている。
 ブッフビンダーのCDの解説を書いているドイツを代表する音楽評論家のひとり、ヨアヒム・カイザーは、彼を「わが友、ルディ」と呼んでいる。そこで私は敬意と親しみを込めて、「ルディさま」と心のなかで呼ぶことに決めた。
 さて、インタビューが始まった。ルディさまは、おだやかな笑みを浮かべながら、ひとつひとつの質問に丁寧に応えてくれる。しかし、やはり「演奏するときの感情、表現、自身の作品に対する思い」などはさらりとかわしていく。
「曲に関しては、もうあらゆるところでさまざまな記事が紹介されているでしょう。いまさら私が説明しなくても、みなさんよくご存じだから」 
 だが、それを聞くのが私の仕事である。あらゆる角度からいろいろ試してみたが、「私はピアニストだから、ピアノを弾くだけ」とあっさり。
 ここで負けていたら、文章が書けないもんね。と、ねばっていたら、楽譜の出版社がオリジナルと異なった音符や表記を平気で行っていることに対し、ずっと戦っているんだという話題になり、にわかに口がなめらかに。
 ルディさまは、私がその話題の質問を掘り下げていったら、楽屋のピアノの前に進み、「ほら、いま話したベートーヴェンのソナタのまちがいはここだよ」と演奏を始めた。
「ベートーヴェンはここの3つの音符にf、f、そして最後は何も記していない。ところが、楽譜出版社は3つともfと堂々と印刷している。なんと腹立たしいことか。大きなまちがいだ。それを私が何度も指摘しているのに、一向に直そうとしない。原典を見ていないんだよ。自分たちが正しいと勘違いしている」
 ルディさまは、それまでのやさしい表情と打って変わって怒りを露わにした。
「私はひとつの作品を演奏するときに8から10の楽譜を研究することにしている。それでも足りないくらいだ。ベートーヴェンをはじめとする作曲家に敬意を表し、作曲家の意図したことに近づくためには、こうしたまちがいを正す必要がある。これは一生、戦っていかなくてはならないことなんだ」
 このインタビューは新聞、雑誌、WEBなど、さまざまなところで紹介したいと思っている。彼は真摯で実直で偉大なピアニストだから、ぜひもっと多くの人に知ってもらいたい。欧米にくらべ日本では、まだ知名度があまりにも低いと思うので。
 短時間のインタビューで、最初はどうしたら内容のあることを聞くことができるかと内心心配したが、ピアノも弾いてくれ、ジョークをはさみながらいろんなことを話してくれた。
 明日はブラームスのピアノ協奏曲第1番と第2番を聴きにいく予定。そして来年は、ウィーン・フィルとベートーヴェンのピアノ協奏曲の弾き振りで来日するそうだ。うーん、待ち遠しい。
 今日の写真はインタビュー後のルディさま。リラックスしたいい雰囲気でしょ。最初に撮ったら、こうはいかなかった(笑)。 

 
| 終わりよければ…取材奮闘記 | 22:31 | - | -
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