Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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エマニュエル・パユ
 ステージで演奏する姿を見たり、実際の演奏を聴いたり、またあらゆる写真の表情を見たりしていると、そのアーティストの性格や素顔をある程度想像してしまうものだが、インタビューで会ってみると、まったく自分の考えていた人とは異なる場合がある。
 フルートのエマニュエル・パユがまさしくそんなひとり。いつも雑誌にはいわゆるイケメンの写真ばかり掲載され、CDのジャケット写真もクールな表情。だが、実際はものすごく気さくで、日本の居酒屋が大好きという、自称「おやじ系」の親しみやすい人柄だった。
「インタビュー・アーカイヴ」の第42回はそのパユの登場だ。

[intoxicate 2007年12月号]

さまざまな版の研究、人の話を聞いて解釈を掘り下げたニールセン

 多彩なレパートリーを誇るフルーティストのエマニュエル・パユが、長年あたためてきた大切な作品、ニールセンのフルート協奏曲をついに録音した。共演はサイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルという豪華な布陣だ。
「10年ほど前からニールセンのコンチェルトを録音したいと思い、あらゆる版の研究を続けてきました。これまでコペンハーゲンのデンマークラジオシンフォニーと2度演奏する機会があり、そのときにニールセンゆかりの人々から数々のコメントを取り、音楽家にも作曲家や作品に対する思いを聞き、そうしたことを踏まえながら作品の解釈をより深めるよう努力してきました」
 パユはベルリン・フィルの首席奏者を務め、作品の世界初演も行うほどの名手として知られるが、新たな作品と対峙するときは常に人々の意見に広く耳を傾ける。
「私の作品に対するアプローチは昔から変わっていません。作曲家がその作品をいかなる状況で書いたのか、精神状態はどうだったのか、時代背景から歴史、文化まであらゆる状態を調べ、音楽家や研究家からその土地に住む人々まで取材してまわり、作品の内奥に迫っていきます。ニールセンはこのコンチェルトを書いたとき、旅から旅の日々を送っていた。そして体調はすぐれず、その心の痛みや悲痛な叫びまでをも音に託した。強い感情表現がフルートのカデンツァなどに込められています」
 これは非常な難曲とされている。テクニック、表現、解釈などすべてにおいて最高のものが要求される作品である。ラトルはニールセンの交響曲を得意としているため、ライヴ録音は熱い火花が散った。
「長年熟成させた作品をラトルと録音することができ、ラッキーでした。彼とベルリン・フィルはコンビを組んで5年目に入ります。最初は両者が多少とまどいながら歩みを進めてきましたが、いまはラトルが私たちから何を引き出してくれるかが明確にわかるようになりました。仲間がみんな一丸となって同じ方向を目指して進んでいます。管楽五重奏曲はまさにそんな仲間とのコラボレーション。全員一緒に息ができた、という感じです」
 パユは夢を追いかけるのではなく、実現に移す実践派。2008年1月にはJ.S.バッハのソナタを録音する予定だが、ここではずっと尊敬してきたトレヴァー・ピノックとの共演が実現することになっている。
「以前、ピノックが演奏するバッハの《ブランデンブルク協奏曲》を聴いて、特別な何かがその音楽に宿っていることに気づきました。それ以来、大ファン(笑)。今夏、私たちが主宰しているサロン・ド・プロヴァンス音楽祭で共演したんだけど、人間的にもすばらしい! 非常に多くのことを教えられた。録音が本当に待ち遠しいよ」 
 先輩からは多くを学び、それを後輩に伝えていこうと樫本大進や趙静らとの共演を積極的に行う。食事をする時間も惜しいというほどの仕事人間は、常に前進あるのみ。中学時代から1日も休みをとっていないとか…。

 今日の写真はその雑誌の一部。パユは「本当は少し休みをとるようにしないといけないんだけどね」といいながら、すぐに仕事の話を始める。「日本にくるとみんな夜中まで働いていて、それが自然に受け入れられているからすごく安心。ワーカホリックだといわれないからね」と笑う。
 唯一の息抜きは居酒屋で和食に舌鼓を打つこと。それも高価なものではなく、揚げ出し豆腐や焼き鶏や煮物などが好物。楊枝でチッチとやるのをまねして面白がっている。イケメンなのに、困ったもんだ(笑)。




| インタビュー・アーカイヴ | 23:18 | - | -
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