Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ウラディーミル・ソフロニツキー
 先日あるピアニストと話していて、ロシアの偉大なるピアニスト、ウラディーミル・ソフロニツキーの話題になった。
 私は以前からソフロニツキーの演奏に魅せられていて、多くの録音を聴いている。昔はまったく音源が手に入らず、いわゆる「幻のピアニスト」のひとりだったが、1997年に遺族の承認と協力を得たエディション(コロムビア)がリリースされ、その全貌が明らかになった。
 ソフロニツキーはウラディーミル・ホロヴィッツとほぼ同時代に生きたピアニスト(1901〜1961)で、長い間西側の世界ではほとんど知られていなかった。しかし、彼の名前はロシアやポーランドなどでは特別な存在として知られる。
 深い抒情性をたたえ、神秘的で崇高なるピアノを奏でた稀有なピアニストとして、人々の記憶に深く刻み込まれている。
 だが、これまで正規の録音がほとんど紹介されなかったため、私たちはその名声だけで実際の音楽を耳にすることはできなかった。
 ようやく日の目を見た録音では、ソフロニツキーは形式的な解釈をあざ笑い、ひたすら自己の音楽を追求し、演奏前には緊張のあまり口もきけなくなり、終演後は悔恨にくれるという人物だったらしいが、そのすべてがこれらの録音に現れている。
 たとえばシューベルトの「即興曲作品90−3」。美しい旋律に彩られたこの曲は、よくアンコールとして弾かれる。しかし、ソフロニツキーの演奏はそうしたアンコール・ピース的な弾きかたとはまったく異なり、深い憂愁に満ち、悲嘆にくれた表情を持つ。それは晩年健康を害して心に大きな苦悩を抱えていたシューベルトの秘められた気持ちを代弁するような演奏で、聴き手の心にグサリと切り込んでくる。
 こんなにも作曲家の魂に寄り添った即興曲がいままであっただろうか。
 シューマンの「幻想曲」もショパンのマズルカもスクリャービンの前奏曲も、みな特有の打鍵の深さを伴って重々しく迫ってくる。
 テンポもゆっくりとり、神に祈りを捧げるように一音一音敬虔な響きをもって弾き込んでいく。
 ロシアのピアニストに聞くと、だれもがため息をもらしながら「すばらしい!」と称賛するソフロニツキー。私もいつもCDを聴くたびにため息をもらすどころか、頭を垂れてひたすら聴き入ってしまう。
今日の写真はそのジャケット写真。高貴な表情をしているが、演奏も「リラの馨しさ」と称された。



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