Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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スコット・ロス
 いま書いているスペインとフランスの本のなかに、私の大好きなチェンバリスト、スコット・ロスが登場する。
 彼は1989年、病気のために38歳という若さで亡くなってしまった。この年は私が独立した年なので、よく覚えている。
 スコット・ロスはこの年に来日公演を予定していたそうだ。本当に残念でたまらない。
 彼の名は、世界初のドメニコ・スカルラッティのソナタ全曲録音で一躍広く知られるところとなった。1980年夏にはブルージュでナマの演奏を聴いたが、いまでもそのときのスカルラッティは強烈な印象として脳裏に刻まれている。
 ロスの新譜はもう発売されることはないだろうと思っていたが、EMIから未発売音源2枚がリリースされた。1988年1月に録音されたJ.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」と、死の直前1989年3月に録音されたフレスコヴァルディの「トッカータ集」である。
 もう、第1音から異次元の世界へと運ばれ、至福のときを味わうとともに、ブルージュでの姿が浮かんできて、平常心は保てない。
 こういうすばらしい演奏に出合うと、それをことばで表現することの難しさをつくづく感じてしまう。以前、アシュケナージにインタビューをしたとき、彼が「私は演奏ですべてを表現しているのだから、それをことばでいい表すのは意味がないと思う」といわれて絶句したことを思い出す。
 しかし、私の仕事はアーティストの思いを文章で伝えなければならない。それを懸命に説明してアシュケナージからことばを引き出した。
 さて、もう一度スコット・ロスを聴こう。本当はもっと聴かなくてはならない音源が山ほどあるのに、今日はロスにつかまってしまった。
 こういう躍動感あふれる心にグサリと迫ってくる演奏を聴くと、「ああ、チェンバロが弾きたい」という思いがふつふつと湧いてくる。調律時間を必要としない電子チェンバロを買いたいのだが、そうなったら仕事そっちのけになってしまうことは明らか。
 うーん、がまんがまん。フレスコヴァルディ、すごく好きなんだよねえ。でも、聴くだけでがまんしなくちゃ。ロスは罪な人じゃ(笑)。
 今日の写真はそのジャケット。この絵もステキ。
 
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