Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ボー・スコウフス
 オペラ歌手は、舞台ではその役柄になりきっているため、つい本人をその役柄に重ねてしまう場合が多いが、インタビューで会うと、素顔はまるで反対というケースがよくある。
 デンマーク出身のバリトン、ボー・スコウフスも、ドン・ジョヴァンニとはまったく逆の明るい気さくな人柄だった。
「インタビュー・アーカイヴ」の第43回は大柄で陽気なスコウフスの登場だ。

[FM fan 1997年5月5日〜18日号 No.11]

私は歌で喜びを見出し、それを人々に伝えることができれば最高です

 いま、ウィーンで大人気を博しているのがボー・スコウフス。当たり役の「ドン・ジョヴァンニ」のタイトルロールを始め、「タンホイザー」のヴォルフラムなどを得意とし、カヴァリエリ(騎士のように高貴な)バリトンと評されている。 そんな彼はリートも大切なレパートリー。シューベルト・イヤーの今年は日本で「美しき水車小屋の娘」を披露した。190センチを超すスコウフスはステージ映えする容姿の持ち主。さて、その素顔は…。

私はドン・ジョヴァンニというのは若くないとダメだと思う

―1988年に「ドン・ジョヴァンニ」でセンセーションを巻き起こしたわけですが、そのときの様子を聞かせていただけますか。
「実は、初めて大きなステージに立ったのがそのときだったんです。リハーサルから大変で、とにかく初日さえ終わればリラックスできると自分にいいきかせていました。地獄落ちのシーンがすばらしい演出だったんですが、そこまで進めば楽になるだろうと、そればかり考えていました。でも、実際はあそこでミスしちゃった、あそこはこうすればよかったという思いばかりが残り、すべてが終わってもまったく満足が得られませんでした。それから現在にいたるまで、満足のいくステージというのはありません。常に何か課題が残ります」
―どんなドン・ジョヴァンニ像を描いていたのでしょう。
「私はドン・ジョヴァンニというのは若くないとダメだと思うんです。いまを生きる、いまを楽しむ、そんな人間だと思うからです。彼は後悔というものをしないし、誠実感がみなぎっている。あなたを愛していると女性にいうときは本当にそう思っているんです。もちろん3分後には忘れてしまいますけどね(笑)。
 この役を歌うときにはその感覚が一番大切だと思いました。常に情熱を持って、カメレオンみたいに変幻自在にサッと変わっていく」
―フォルクスオーパーの総監督、ヴェヒターさんはどうおっしゃいましたか。
「彼はドン・ジョヴァンニを得意としていた人ですし、私自身とても尊敬しています。そのヴェヒターさんがこの公演直後、『次はウィーン国立歌劇場の契約だよ。いままでのことは忘れて、さあここにサインして』というんです。天にものぼる気持ちでした。
 それから5年間、本当に世話になりました。彼から学んだことはゆっくり役をこなしていくこと。若い歌手はすぐに多くの役を歌い、スターを夢見がちですが、彼はその点をしっかり私に教えてくれました。声の成長に合わせて役を選ぶということを」

リートをできる限り新鮮な声で歌いたい
若い時代に歌いたいリートがたくさんある


―スコウフスさんはオペラとリートを同時にスタートさせていますね。
「リートをできる限り新鮮な声で歌いたいと考えているからです。若い時代に歌いたいリートがたくさんある。それにリートを歌っていると、オペラで何がたりないかがわかるときがあるんです。リートが声楽の先生のような役割を果たしてくれる。シューベルトの『冬の旅』は大好きなんですが、この作品を歌うにはまだ機が熟していない。いろんなことを経験しないと、あの曲は歌えませんから」
―セーナ・ユリナッチ先生から一番学んだことは?
「彼女がヴェヒターさんに紹介してくれたんです。彼女は人生をとても大切にし、歌にも真剣に取り組む。そうした姿勢を教えてくれました。リートには美しい詩がつけられている。その詩を音楽を通して人々に紹介する。その大切さを学びました。
 私は昔から詩を暗唱して朗読することが好きでした。ですからリートに対する彼女の考えがよく理解できます。いま、欧米の大きなオペラハウスから話がくると、キャリアになるから引き受けたほうがいいでしょうが、やはりリートを勉強する時間もほしいし、オネーギンを歌った次の日に『詩人の恋』を歌うなんていうことは私にはできない。ひとつのことに集中したいほうなので。次の計画としては98年秋に初めてハンブルクで『ヴォツェック』を歌います」
―忙しい合間には何か息抜きを?
「ワインを作ることが趣味なんです。ウィーン郊外にワイン畑を持っていて、私は外国人なので友人の畑なんですが、そこで年間400本のワインを作っています。ラベルには毎年オペラの役柄をつけています。いつの日か歌えなくなったらワインを作って暮らそうかと思っているんですよ(笑)。
 私は学費を払うために肉屋でアルバイトをしたり、ボートこぎをしたり、音楽だけではなくいつも何か仕事をしてきました。そういうふつうの人との交流から多くのことを学んできたんです。ですから、そういう人がオペラハウスにきてくれるような音楽を目指したい。みんなが興味を持ってくれるためにはどうしたらいいか、それを常に考えています。
 妻も忙しく、いまウィーンに新しくできたカラヤン・センターの所長をしているんですが、ふたりとも自分がしていることに喜びを見い出せれば一番幸せだと考えています。私は歌で喜びを見出し、それを人々に伝えることができれば最高なんですが―」

 スコウフスの名前であるボーは芸名で、本名はすごく長くてみんなが覚えにくいとか。そのためにデビューしたときに「一番短くボーにしたんだ」と笑う。
 最近はナマの歌声を聴くチャンスに恵まれないが、ぜひオペラの新しい役かリートを聴きたい。来日してくれないかなあ。
 今日の写真はそのときの雑誌の一部。近くで会うと、やっぱりデ・カ・イ。


 
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