Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ワレリー・ゲルギエフ
 11月にマリインスキー歌劇場管弦楽団とともに来日する指揮者のワレリー・ゲルギエフは、ロシア・オペラの象徴であるこの劇場を復活させた立役者。
 今回は12日にナタリー・デセイがタイトルロールを務めるドニゼッティの「ランメルモールのルチア」のコンサート形式、14日にデニス・マツーエフをソリストにラフマニノフのピアノ協奏曲第3番、そしてショスタコーヴィチの交響曲第5番というプログラムを組んでいる。
 2007年にはゲルギエフの活動の中心地であるサンクト・ペテルブルクを訪れ、オペラとシンフォニーの演奏を聴いた。
 そのときに雑誌「カイラス」に書いた記事を振り返ってみたい。

 かつてのロシア帝国の首都、サンクト・ペテルブルクが、いま大きな変貌を遂げている。町はあちこちが工事中で、人々は臨時に組まれた足場の悪い通路を文句をいいながらしぶしぶと渡っている。
「まったく工事ばかりで嫌になるよ。でも、町の発展のためには仕方ないんだろうね」
 こう語る市民の目は、いまもっとも大きな工事が行われている大ネヴァ川のほとり、マリインスキー劇場のすぐ隣の細い運河をはさんだ土地へと向けられる。
 マリインスキー劇場は、サンクト・ペテルブルクが世界に誇る、偉大な歴史と伝統を有したオペラとバレエの劇場。1988年にワレリー・ゲルギエフが35歳の若さで芸術監督に就任した。
 彼はソ連崩壊後の混乱期を持ち前のパワーと忍耐力で乗り切り、同歌劇場管弦楽団の質を向上させ、新人歌手の発掘を行って世界の舞台へと送り出し、ロシアの古典オペラに新しい演出を加えて上演回数を増やし、マリインスキー劇場の名を世界に知らしめた。
「私はこの町を愛しています。サンクト・ペテルブルクは美しい景観とすばらしい聖堂や美術館、多くの歴史的な建造物が随所に存在し、人々の心を魅了します。私はそこに音楽の楽しみを加えたいのです。芸術は人々の心のよりどころと成り得るものですから」
 マエストロ・ゲルギエフは、1993年に「白夜の星国際芸術祭」の本格的な運営に着手、毎年5月から6月にかけての白夜の季節にさまざまな劇場でオペラからシンフォニー、室内楽、バレエなどを幅広く上演。いまでは世界各地から音楽祭を聴きにファンが訪れる。
 ゲルギエフのサンクト・ペテルブルクを芸術的な都市にする壮大な計画はまだ始まったばかりだが、2007年11月には2003年に火災で焼失した舞台装置の倉庫で、レンガ造りの建物を外壁のみを残して一新、新コンサート・ホール(マリインスキー)をオープンさせた。
 このホールは小規模なオペラも演奏できるようにオーケストラ・ピットも備え、バレエの上演も可能。ロビーも広々し、明るく華やかな雰囲気をたたえている。内部はといえば、木のぬくもりが感じられる造りで、響きはとても温かく柔らかい。音響はゲルギエフが日本のサントリーホールや札幌のKitaraホールの音響を設計した豊田泰久氏に依頼し、ひとつの大きな夢を実現させた。
 さらに、いまゲルギエフはより大きな夢に向かって構想を練っている。市民が注目するマリインスキー劇場の隣の造船所跡地に建設中の建造物は、マリインスキー供ニューヨークのリンカーンセンターのように、さまざまな芸術センターが集合する形となるようだ。
 プーチン大統領の信頼も厚いゲルギエフ。指揮だけにとどまらず、経済面の交渉など多大なリスクを背負いながら、ロシア芸術を世界へと広めることに意欲を燃やす。数時間しか睡眠をとらずに走りまわる彼は、演奏も生きる姿勢も、まさにエネルギー全開だ。
| アーティスト・クローズアップ | 21:27 | - | -
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