Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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イダ・ヘンデル
 イダ・ヘンデルは、「伝説のヴァイオリニスト」といわれる。
 ポーランド出身で、幼少のころよりカール・フレッシュやジョルジュ・エネスコから手ほどきを受け、1933年わずか5歳のときにコンクールでベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を弾いて優勝した。
 1935年にはヴィエニャフスキ国際コンクールで第1位ジネット・ヌヴー(16歳)、第2位ダヴィド・オイストラフ(27歳)らそうそうたる入賞者のなかにあり、7歳で特別賞を受賞した。
 以後、世界各地で活発な演奏活動を行い、録音にも積極的に取り組んでいる。
 彼女に最初に会ったのは、2003年の来日時だった。そのときに音楽に対するとても真摯な姿勢に感動を覚え、前向きなエネルギーにあふれた、その生きる姿勢に触れ、大きな力をもらったものである。
 以来、何度かインタビューの機会をもった。
 そして今日、また再会することができ、一緒に食事をする機会に恵まれた。
 このインタビューは次号の「intoxicate」に書く予定になっている。
 イダは、「何でもおいしくいただくのよ」といい、関係者とともに4人でホテルの中華レストランのテーブルを囲んだ。
 いつ会っても好奇心が強く、明るく雄弁で、音楽に対してひたむきな姿勢を崩さない。彼女が生涯を通じて弾き続けているバッハの「シャコンヌ」のこと、自身のこれまでの音楽人生、恩師から受けた教え、最近の若手ヴァイオリニストのこと、マスタークラスについて、楽譜の読みかたなど、話は尽きない。
 イダは、初めてDeccaと録音契約したときに、スタッフからクリスマスに犬を贈られ、Deccaと命名。それから何代目にもなる犬の名前はいつも同じ。これまではメスだったそうだが、いまは初めてオスになったそうだ。
 私がそのワンちゃんのことを覚えていて、「Deccaは元気ですか」と聞いた途端、彼女は「ああ、会えなくて寂しい」と表情を曇らせた。
 ここでふたつのエピソードを披露してくれた。
 今回の来日でもピアニストを務めているミーシャ・ダチッチと、以前マイアミの自宅を出てリハーサルに向かおうとしたとき、Deccaはいつになく大声で吠え、イダを行かせまいとしたという。
「どうしても私を離さないの。そこでミーシャが力ずくで犬を家に押し込み、ドアをパタンと閉めたのね。ところが、リハーサル会場に着いた途端、私は急に血圧が上昇して倒れ、救急車で病院に運ばれたのよ。Deccaはそれを予知していたに違いないの。その本能的な態度には、本当に驚いたわ」
 もうひとつは、イダの親しいスペイン人の男性を自宅に呼んだときのこと。いつもはそんなに吠えることはないのに、Deccaは彼を家に入れないように大騒ぎをして吠え続けたのだという。
 きっと、イダはその人にかなり好意をもっていたに違いない。Deccaは妬いたのではないだろうか。
「以後、彼は私の家にきてくれなくなったのよ(笑)」
 Deccaは勝ったのだ、すごいなあ。イダを独り占めしたかったんだろうね。私も昔は実家で犬や猫を飼っていたため、彼らの気持ちはよくわかる。飼い主が本気である人に好意をもつと、ジェラシーをむき出しにするんだよね。
 音楽の話からワンちゃんの話まで、さまざまな話題が飛び出し、イダの温かい人間性に触れ、その演奏と同様、私の心はすっかり彼女のとりことなった。
 イダ・ヘンデルが2009年にリリースした「魂のシャコンヌ」(ソニー)は、2008年の来日時に録音されたものである。バッハの「シャコンヌ」は、6度目の録音にあたる。
 その録音の話になったとき、彼女はこう明言した。
「何度弾いても、録音を行っても、けっして満足のいく演奏はできないの。まだまだ私は勉強しなければならないことがたくさんあると思っている。一生、学び続けなければならない。それが音楽家の人生なのよね」
 このことばは私の心の奥に深く刻み込まれた。なんとすばらしいことばであろうか。そしてなんとすばらしいヴァイオリニストだろうか。
 彼女は今日、素敵なグリーンの靴を履いていた。会ってハグした後にその靴をほめると、「私ね、靴が大好きで、1000足以上もっているんだけど、あと1足買いたいの。ホテルの下のお店で見つけてしまったのよ」
 こういって、いたずらっ子のように肩をすぼめてクスッと笑う彼女。みんなに愛される笑顔がそこにはあった。
 今日の写真はランチをいただいたときに撮ったワンショット。照明の関係で多少見にくいけど、いい表情しているでしょ。大好きなんです、この笑顔。






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