Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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チョ・ソンジンの成長
 昨夜は、すばらしい才能の成長過程を目の当たりにすることができ、ある種の深い感動を覚えた。
 韓国出身の19歳になったばかりのピアニスト、チョ・ソンジンについては以前もその自然体の演奏と、人柄のよさを綴ってきたが、久しぶりに浜離宮朝日ホールで聴くリサイタルは、彼の才能が飛躍的に伸びたことを示すに十分なものだった。
 前半はシューベルトのピアノ・ソナタ第13番からスタート。大きな特質である美しい音が最大限生かされた演奏で、シューベルトらしい歌謡的な主題を歌曲のようにのびやかに、また、自然な奏法で進めていく。
 チョ・ソンジンの演奏は、以前からからだの使いかたの実に自然なことに驚きを覚えていたが、なおいっそう力が抜け、弱音の美しさが際立つようになった。
 次いでプロコフィエフのピアノ・ソナタ第2番が演奏され、これは昨秋からパリ高等音楽院でミシェル・ベロフに師事して研鑽を積んでいる成果が如実に現れるものとなった。
 チョ・ソンジンは、この変化に富む、非常に前衛的で幻想的であるソナタを、完全に自分の音楽として自信をもって奏でたからである。
 ベロフは、この若き才能に大きな自信を植え付けたようだ。
 チョ・ソンジンは2009年11月、浜松国際ピアノ・コンクールにおいて15歳で最年少優勝を遂げ、2011年6月にはチャイコフスキー国際コンクールで第3位入賞を果たしている。
 だが、この入賞直後にパリ留学を決意していることから、自分に何が足りないのか、何を勉強したらいいのかをじっくり考えたに違いない。
 そしていま、彼の音楽は大きく変貌し、それが後半に演奏されたショパンのピアノ・ソナタ第2番「葬送」にリアルに現れていた。
 各々の楽章に変化をもたせ、強弱、リズム、フレーズ、ルパート、テンポ、主題のうたわせかたなど、すべての面において非常に個性的なショパンを聴かせたからである。
 これを聴き、私は次回の2015年のショパン国際ピアノ・コンクールに出場し、優勝を目指すのではないかという思いを強くした。
 説得力があり、存在感があり、そのなかで透明感に満ちた美音を遺憾なく発揮していくチョ・ソンジンのショパン。これはおそらく審査員の心も聴衆の心もとらえるのではないだろうか。
 そしてプログラムの最後には、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」を披露したが、これこそパリで勉強しているチョ・ソンジンのすべてを物語っていた。ラヴェルの渦巻くようなワルツのなかから湧き上がるきらめき、ファンタジー、彫刻を思わせるような立体的な響きを超絶技巧をものともしない自然なテクニックでかろやかに、しかも奥深い響きで最後まで一気に聴かせたからだ。
 チョ・ソンジンの演奏は、底力がある。からだはそんなに大きくなく、以前よりもスリムになったが、ピアノを豊かに鳴らすスケールの大きさと、けっしてたたきつけずにおなかに響くような強音は圧巻だ。
 次回また聴くときは、よりいっそう成熟したピアニズムが堪能できるのではないだろうか。
 昨夜は、会場を訪れた同業者が、みんな口をそろえて絶賛していた。すばらしき若き才能は、その場に居合わせた全員の心をとらえたようだ。
 
 
 
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