Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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アンドレアス・シュタイアー
 以前、まだチェンバロを弾いていたころ、特に愛していた作曲家がフランスのルイ・クープラン(1626〜1661)とドイツのヨハン・ヤーコプ・フローベルガー(1616〜1667)だった。
 ルイ・クープランは、大クープランと呼ばれるフランソア・クープランの叔父にあたり、偉大な音楽一家、クープラン一族の基礎を確立した人物だ。作曲家として、クラヴサン奏者として活躍し、いくつかの舞曲をまとめて組曲になったクラヴサン曲を多く残している。
 私が魅せられたのもこの組曲で、ゆったりしたテンポ、フーガの採用、創意と工夫に満ちた主題に彩られた作品は、とりこになるほどだった。
 一方、フローベルガーは、作曲家としてオルガニストとして活躍。ローマに留学して、初期イタリア・バロックの大作曲家として知られるジローラモ・フレスコヴァルディに学んでいる。ウィーンに戻ってからは宮廷オルガニストとしての地位にあった。
 その音楽は、大胆な和声や幻想的な曲想が印象的で、「トッカータ」はJ.S.バッハに影響を与えたといわれている。
 そんなふたりの作曲家をすばらしいテクニックと表現力、音楽性で表現し、1枚のCDを作り上げたのが、1955年ゲッティンゲン生まれのチェンバロ奏者、アンドレアス・シュタイアーである。
 彼の演奏はこれまでナマもずいぶん聴いてきたが、常にその率直で自然で、流れるような美しさをもつ響きに魅了されてきた。
 シュタイアーが今回録音したアルバムは、「憂鬱をやり過ごすために―ドイツ、フランス・バロックの鍵盤作品集」(キングインターナショナル)と題されている。メランコリア(憂鬱)というテーマをもとに選曲されたプログラムで、シュタイアーの綴ったライナーノーツによれば、死者を悼む、墓を意味する「トンボー」と、嘆きを意味する「プラント」が取り入れられ、さらに静寂、空虚、孤独を象徴する瞑想的な空気を伴うという。
 そうした考えにより、このCDのジャケットの表紙にはジョルジョーネの2枚のポートレートが用いられている。さらに内部にはアルブレヒト・デューラーの謎めいた銅版画「メランコリア」など複数の絵が登場し、いずれも瞑想的な空気を編み出している。
 もちろん、演奏はさまざまな表情が幾重にも変容していく見事さで、シュタイアーの底力が発揮されている。
 こうしたひとつひとつのディテールにとことん凝ったアルバムは、芸術品といえるのではないだろうか。
 もちろん、チェンバロの音色はメランコリックなだけではなく、あるときは光彩を放ち、またあるときは疾走する指の動きに心が高揚する。
 もう何度聴いただろうか。このアルバムは、私の宝物のひとつである。
 今日の写真はそのジャケットと、シュタイアーの顔写真。なお、今回の使用楽器は、17世紀末にフランスで製造されたクラヴサン「Anonyme Collesse」で、2000年から2004年にロラン・スマニャックによって修復されたもの。スマニャックは2500時間以上の時間をかけて修復したという。
 すばらしい響きは、スマニャックの尽力によるところも大きい。





 
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